報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「敷島家の引っ越し」 3

2017-09-07 19:36:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月2日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家(引っ越し前)]

 荷造りも終わって、敷島は缶ビールを飲んでいた。

 敷島:「プハハーッ!明日は引っ越し屋のトラックに荷物を乗せて運ぶだけだな」
 エミリー:「はい、お疲れさまでした」

 ピンポーン♪

 シンディ:「あ、ピザ来ましたよ」

 冷蔵庫の中身も空けたので、夕食は出前。

 敷島:「おっ、頼むよ」
 シンディ:「はい」
 ピザ屋:「お待たせしました。ピザハットです」
 シンディ:「はい、ご苦労さまです」

 玄関からシンディとピザ屋のやり取りが聞こえる。
 敷島はビールを飲みながら思い出し笑いをした。

 エミリー:「何ですか?」
 敷島:「いや、悪い。実は今のシンディを稼働させた直後のこと、覚えてるか?」
 エミリー:「私はロイドです。『忘れる』ことはありません」
 敷島:「だな。いや、あいつにメイドの仕事やらせてみたら、物凄いポンコツぶりだっただろ?」
 エミリー:「ああ。前期型の時はドクター・ウィリーやアリス博士のお世話をしていた割には、ヒドかったですね」

 ハウスメイドをやらせた時、確かに掃除そのものはよくできたのだが、害虫が出た時に火炎放射器を使って焼殺しようとしたことがあった。
 キッチンメイドをやらせてみたら、調味料として青酸ナトリウムを入れようとしたことがあった。
 塩化ナトリウム(食塩)と間違えたらしく、ナトリウム違いではあるものの、恐らくこれはスパイ兼暗殺者のプログラムが組み込まれたままであったらしいとされた。
 そのプログラムは解除され、メイドのプログラムを組み込まれて事無きを得た。
 クリームソーダを持って来させたら、クリームソーダ風にアレンジされた苛性ソーダを持って来たこともあった。
 暗殺者としてナトリウムは青酸ナトリウム、ソーダと言えば苛性ソーダが真っ先に検索データとして上がるようになっていたらしい。
 メイドならナトリウムは塩化ナトリウム、ソーダと言えばクリームソーダかメロンソーダになるのだが……。

 シンディ:「お待たせしました。お釣り、ここに置いておきますね」
 敷島:「ビールのお代わりも来たな」
 エミリー:「社長、一缶は奥様の分ですよ」
 敷島:「分かってるって。シンディ、ちゃんと追い返さずに対応したな。偉い偉い」
 シンディ:「もう昔の私ではございませんよ」
 敷島:「宅配業者に『ハンコください』と言われて、『下等で愚かな人間にやる物など無い』と言って追い返そうとしたもんな」
 シンディ:「ですから、昔の話ですって」

 敷島はビールのお代わりを取った。

 敷島:(それにしても……シンディといい、マザーといい、人工知能がついに『下等で愚かな人間ども』と言うようになったとしたら……危険だな)
 アリス:「たっだいま〜!」
 敷島:「おっ、帰って来た」
 アリス:「あー、疲れた……」
 シンディ:「アリス博士、お帰りなさいませ。夕食のピザが届いてございます」
 アリス:「うん、Thank you.」
 敷島:「土曜日なのに、わざわざDCJに出向かないといけないとは……」
 アリス:「社員データの現住所変更しておかないと、向こうのAIが何してくるか分かんないからさぁ……」
 敷島:「正式に役所に手続きしてからでいいだろうが」
 シンディ:「確かに、科学館のセキュリティは時々ボケかましますからね」
 敷島:「そうなのか?」
 シンディ:「大抵はゴンスケが槍玉に上げられていますけどね。たまに私達にも間違えて侵入者扱いして、レーザービーム放って来ることがあるんですよ」
 敷島:「どういうセキュリティだ!“バイオハザード”の秘密研究所か!」
 エミリー:「その度に私達がセンサーを睨みつけて鎮めるんですが」
 敷島:「さすがは全てのロボットの女帝だ」

 最近はアリスの護衛にシンディが付き添うことがあるのだが、このポンコツセキュリティのせいかもしれない。

[2時間後]

 敷島:「さて、風呂入るか。このマンション最後の風呂だな」

 敷島は脱衣所に入った。

 敷島:「ん?」

 だが、洗濯機の上に置いていた着替えとタオルが無くなっていた。

 敷島:「なあ。風呂場に置いていた俺の着替えとタオル知らないか?」

 アリスはシンディのバッテリー交換をしていた。

 アリス:「アタシが荷物の中にしまっておいたわよ」
 敷島:「は?」
 アリス:「What?」

 ダンボールの山を見て……。

 敷島:「俺の着替えとタオル……どれ?」
 アリス:「えーと……」
 エミリー:「スキャンして……みますか?」
 敷島:「それで分かるもんじゃないだろう?」

[9月3日09:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家・旧居→新居]

 引っ越し屋:「おはようございます。埼玉スーパー引越しセンターです!」
 敷島:「はい、お願いします」

 既に荷造りは済んでいるので、荷物の積み込みは業者が全て行った。

 敷島:「俺達は車で行くぞ」

 普段はアリスが通勤で使っている。
 そのうち、トニーが幼稚園にでも入ろうものならその通園に使われるかもしれない。

 敷島:「……といっても近くだから、車で10分か15分ってところか?何しろ同じ区内だからな」

 敷島は車のナビをセットした。

 敷島:「それじゃ行くぞ」

 敷島は車を走らせた。

[同日15:00.天候:晴 敷島家・新居]

 引っ越しの作業が全て完了した。

 敷島:「よし。じゃあ、部屋の使い道を決めよう。まず、ここがリビングなのは言うまでもないが……」

 最初の洋室。

 敷島:「ここが俺とアリスの寝室」
 アリス:「ベッドを別々にするなんて……!」
 敷島:「お前の寝相の悪さのせいで、俺が何度夜中起こされたことか……」
 アリス:「どうせ、トニーの夜泣きで起こされるんだからいいじゃない」
 敷島:「そういう問題じゃない。トニーのベビーベッドを置いても、ここなら余裕だな」

 次の洋室。
 さっきの洋室よりは狭い。

 敷島:「ここはPCと本の部屋」

 次の洋室。
 敷島夫妻の寝室よりは狭いが、PCと本の部屋よりは広い。

 敷島:「そして、ここがお前達の部屋だ」
 エミリー:「えっ?私達の部屋?」
 シンディ:「私達は納戸では?」
 敷島:「いや、よくよく考えてみたら客間としての用途以外に使い道が無かった。トニーが大きくなったら、トニーの部屋にしようとは思うんだが……。それまではお前達で使えよ」
 アリス:「サービスルームに荷物入れ過ぎて、シンディ達の寝場所が無くなっただけじゃない。トニーが大きくなったら、あのサービスルームの荷物を断捨離しないとダメよ」
 敷島:「お前、よく断捨離なんて言葉覚えたな……」
 エミリー:「トニーお坊ちゃまの弟様か妹様をお作りになられる場合、私達は倉庫にでも移動しますから」
 敷島:「い、いや、多分大丈夫」
 アリス:「大丈夫……?」
 敷島:「あ、いや、そうじゃない!その時は4LDKSにでも引っ越すさ。いつでも引っ越しできるのが、賃貸のいい所なんだから」

 持ち家を持つ気は無いのか、敷島?

 敷島:「とにかく、当分はこれでいいだろう。とにかく皆、お疲れさん」
 エミリー:「お疲れさまでした」
 シンディ:「お疲れさま」
 二海:「お疲れさまです」

 こうして敷島達の新しい生活が始まった。
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“戦う社長の物語” 「敷島家の引っ越し」 2

2017-09-07 10:30:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月2日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家(引っ越し前)]

 敷島:「部屋の大掃除だけでも、結構掛かるもんだな……。まあ、お昼も挟んだことだし、じゃあ次は荷造りだな」
 エミリー:「かしこまりました」
 シンディ:「了解しました」
 二海:「お任せください」
 敷島:「……といっても、俺の私物が4割、アリスの私物が5割といったところか。悪いな、手伝わせちゃって」
 エミリー:「いえ、何でもお申し付けください」
 敷島:「うん」

 というわけで、荷造りを始める敷島達。
 二海が本棚の本をダンボールに詰めていた。

 二海:「ん?これは……」

 それはアルバムだった。
 敷島の……。

 シンディ:「こら、二海。ちゃんと荷造りを……」

 シンディがそのアルバムに目を落とした時、彼女が反応した。
 何故ならそのアルバムは、敷島の子供の頃の写真があったからである。

 シンディ:「社長!かわいいっ!……はあっ!この“不死身の敷島”ぶりがたまりません!」
 エミリー:「どれどれ……?ほおほお。『信号無視の乗用車にはねられそうになるも、横から来た居眠り運転のトラックがその車に突っ込んだことで、奇跡的に無傷だった孝夫』か」
 シンディ:「場所は中国かどこか?」
 エミリー:「『ホームから線路に落ちた孝夫だが、やってきた電車が直前に脱輪した為、奇跡的に無事だった孝夫」』
 シンディ:「ふ、不死身だ……!」
 エミリー:「『マンションの8階から落ちた孝夫だが、その下にいた布団屋のトラックの布団がクッションになって奇跡的に無傷だった孝夫』」
 シンディ:「不死身過ぎ!」

 シンディは思わず右手を光線銃に変形させた。

 エミリー「シンディ!?」
 シンディ:「お、思えば私、よく暗殺とかやってたけれども……。その成功率は姉さんよりも上だったわけだけれども……社長を暗殺できる確率が、どうしても高く算出できない……!」
 エミリー:「私もだ。社長とて人間。本来なら私達の成功率は99.999%のはず」
 シンディ:「ところが社長に対してだけは、どうしても0.99999%になってしまうの!」
 エミリー:「私もだ!」
 敷島:「なーにサボってんのかなぁー?」
 エミリー:「ぴっ!?」
 シンディ:「ごめんなさい!」
 敷島:「そのアルバム、半分くらいデタラメだから」
 エミリー:「デタラメ?」
 敷島:「ほら、四季グループって元々は映画制作会社だったわけだ。ま、今でもグループの屋台骨としてやってるわけだけども……」
 シンディ:「はい。敷島制作所ですね」

 映画制作部門のそれとエンターテイメント部門である四季エンタープライズとは、吸収合併して今の大手プロダクションとなった。
 後者のエンターテイメント部門のはしりこそが、敷島孝之亟が運営していたストリップ劇場だったのである。

 敷島:「俺も一時期、子役として出演していたんだよ。まあ、チョイ役だけどな。これはその時の写真だ」
 シンディ:「何だぁ……」
 エミリー:「そうでしたか」
 敷島:「アクションシーンとかが多かったが、有り得ない写真ばっかだろうが。ほら、これを見ろ」

 ギャング団に拉致された敷島の写真があった。
 ついに警察隊に包囲され、興奮し切った団長が敷島に銃口を突き付けているところだ。
 おおかた、

 警察官A:「ギャング団長!お前は完全に包囲されている!無駄な抵抗はやめて人質を解放し、直ちに投降せよ!」
 警察官B:「お前の部下達は全員逮捕した!あとはお前だけだ!」
 ギャング団長:「うるせぇ!俺は1人になっても戦うぞ!このガキ、ブッ殺すぞ!!」

 という感じのシーンだろう。

 敷島:「と、そこへ……こんな感じで、突然団長の頭が無くなるわけだな。ま、実際は当時の特殊撮影でそう見せてるだけなんだが……」
 エミリー:「潰れたトマト……」
 シンディ:「誰かが団長の頭を狙撃したのですね、分かります」

 シンディは元スナイパー。
 暗殺成功率の高さは、遠くから狙撃して百発百中の性能を誇っていた。
 今は取り外されてしまったが、右手に装備されていたライフルで、多くの暗殺稼業を旧ソ連政府(というよりKGBか?)から命じられていた。
 だが、日本国内においてはライフルによる狙撃はナリを潜め、銃撃と言えばマシンガンやハンドガン、はたまた大型ナイフでの直接攻撃に終始していた。
 その理由はシンディにも分からない。
 ライフルによる狙撃を(ウィリアム博士から)命じられなかったから、というのがシンディの理由である。

 敷島:「ここで、スーツアクターの登場だ」
 エミリー:「特撮映画の撮影だったのですね」
 シンディ:「何か、性能悪そうなデザインのロボットですね」
 敷島:「まあ、当時の特撮だから……。その頃から既に……」

 その時、敷島が一瞬フリーズした。

 シンディ:「社長?」
 敷島:「俺が子役の頃にはもう、お前達のようなヤツが映画の中には出て来たんだよなぁ……」
 エミリー:「あくまで、映画の話でしょう?」
 敷島:「いや。東京決戦での勝利の秘訣は、あの映画の中にあったんだよ。バージョンの包囲網を潜り抜けるのに、俺はたまたま放置されていたバスを使ったが、実は映画の中にも似たようなシーンがあって、主人公の仲間が大型トラックで突っ込むというのがあったんだ。それを思い出して俺も真似しようと思ったんだが、近くにあったのは大型トラックじゃなくて、バスだった。それを代用しただけなんだ」
 シンディ:「そうだったんですね」
 敷島:「後で東京都交通局には新車で弁償しておいた」

 東京決戦で使用されたバスは、いすゞ・キュービックだった。
 現在でこそノンステップバスに統一された都営バスだが、当時はまだツーステップバスも残っていたのである。

 敷島:「……おっと!こうしてる場合じゃない!早いとこ、荷物をまとめるぞ」
 シンディ:「はい!」
 エミリー:「そうでした!」
 敷島:「俺は寝室の方をまとめてくる。こっちは頼んだぞ」

 敷島はそう言って部屋を出た。

 敷島:(ふー、危ねぇ危ねぇ。あいつらには『半分デタラメ』と言ったが、それってつまり、『半分は本当』という意味だからな……)
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