報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「バージョン・シリーズ」

2017-09-03 19:34:57 | アンドロイドマスターシリーズ
 さて、敷島達が仙台でイベントを行っていた中、DCJロボット未来科学館でもイベントが行われていた。
 特別展として『ロボット研究 負の遺産展』という、およそ誰得とツッコミたくなる特別展があった。
 具体的には、テロ用途ロボットとして名高いバージョン・シリーズを展示しているものである。
 今現在、現役で稼働しているのは4.0と5.0であるが、当然ながら3.0以前のシリーズも存在した。
 それをどこで確保したのか、初期モデルから展示されていた。
 今回はそれを御紹介しよう。

 アルエット:「はいはーい!マルチタイプ8号機のアルエットでーす!今日は皆さんに、私の下僕達を紹介しちゃうよ!」
 萌:「世界唯一の妖精型ロイド、萌でーす!さらっとテロロボットを下僕と呼ぶアルエットが少し怖いですけど、一緒に頑張りまーす!」

 バージョン1.0とは……。

 アルエット:「えーと、これは世界的なマッドサイエンティスト、ウィリアム・フォレスト博士が最初に開発したテロロボットです。……ちっちゃ!」
 萌:「最近のシリーズは人の身長よりも大きいけど、これは小さいね。アルエットより小さい」
 アルエット:「とことこと敵に近づいて、自爆するだけのロボットって、それだけ!?」
 萌:「結局、コストパフォーマンスが高いということで、数えるほどしか生産されなかったみたいだよ」
 アルエット:「えーと、次は2.0です。おっ、少し大きくなった」
 萌:「オーソドックスな人型タイプだね」
 アルエット:「人型って、他にもあるの?」
 萌:「派生機種で、亀型もあるって」
 アルエット:「亀!?」

 ゾウガメみたいな大きさの亀型ロボットが現れた。

 アルエット:「もはや別個体じゃん、これ!」
 萌:「まあ、そうだね」
 アルエット:「でも私、見たこと無いよ、これ」
 萌:「ジャングルなどが戦場になった時にゾウガメのフリをしたり、或いはウミガメのフリをさせて軍艦に近づいたりして攻撃するんだって」

 すると、ゾウガメロボットは口を大きく開けた。

 アルエット:「何か飛ばした!?」
 萌:「えーと、口から硫酸を吐いて敵を攻撃するんだって」
 アルエット:「銃火器じゃないんだ!?」
 萌:「でもこれ、欠陥だらけで結局製造中止になったんだって」
 アルエット:「何で?」
 萌:「まず、亀だから動きが遅い。敵が逃げても追い掛けることができない上に……」

 亀が再び硫酸を吐き飛ばす。
 放物線を描いて硫酸が飛ぶ。

 萌:「必ず上に向かって硫酸を吐くわけだから、こうして身を低くして近づけば酸が掛かることがないって欠陥」
 アルエット:「噛み付いてこないの?」
 萌:「来ないんだって」
 アルエット:「ダメじゃん、それ!近づいてマグナム撃ち込んだら、すぐ壊せるよ?」
 萌:「うん、そうだね」

 そして3.0が登場する。

 

 アルエット:「これは東京決戦で、前期型のシンディお姉ちゃんが3.0軍団を操っている絵だね」
 萌:「2.0のフルモデルチェンジが3.0で、一気に大きくなってゴツくなりましたー」
 アルエット:「部品の調達が容易になるよう、造形美より機能美を重視した結果だって」
 萌:「この時はまだバージョン達も、銃は持ってないね」
 アルエット:「腕っぷし命だから、鉄パイプとか槍とか持ってるだけだね。今の後期型のお姉ちゃんに聞いても、『あのバカの役立たずども』って厳しい感想だよ。何でも、物凄い欠陥があったんだって」
 萌:「欠陥?社長さんも井辺さんも、そんなこと言ってなかったなー」
 アルエット:「んーとね、お姉ちゃんが言うには……」

 アルエット、3.0の横にピッタリとくっつく。

 萌:「?」
 アルエット:「あー、やっぱり!」
 萌:「なに?」
 アルエット:「横に近づき過ぎると、どういうわけだか振り向けないんだってよ」
 萌:「はあ!?」
 アルエット:「ほら、こっち向いて!」
 3.0:「…………」(←全く動かない)
 萌:「えっ、うそぉ?」
 アルエット:「ホントだよ」

 アルエットは3.0から少し離れた。
 すると3.0がやっと90度向いた。
 そしてまた近づく。
 するとまた3.0は振り向けない。

 萌:「凄い弱点……」
 アルエット:「横に立ったらハメ殺し確定だねっ」

 そして今度は4.0である。

 4.0:「ドウモ〜、バージョン4.0デヤンス」
 萌:「この個体から喋れるようになったんだね」
 アルエット:「いや、3.0からだよ。さっきのヤツが無口なだけ」
 萌:「あ、そうなの」
 4.0:「旧型ヨリ台詞のバリエーションが増エマシタ」
 萌:「何ができるの?」
 4.0:「物真似ガ出来マス。『この惑星の住民達は、常に忙しい。何という余裕の無さだ』」
 萌:「宇宙人ジョーンズ!?」
 アルエット:「他には?」
 4.0:「玉乗リト曲芸撃チガデキマス」
 アルエット:「じゃあ玉乗りしながら曲芸撃ちやって!」
 4.0:「了解デヤンス!」
 萌:「もはやテロロボットでも何でも無くなったねぇ……。えーと、この他にももっと滑らかに喋ることができたり、中には次に紹介する5.0に改造された個体もあるそうです」

 次は5.0。

 マリオ:「どうも〜。アリス博士最高傑作のマリオです」
 ルイージ:「同じくルイージです」
 アルエット:「……といってもこれは、アリス博士のアレンジ・バージョンなんです」
 萌:「さっきまでの4.0と違って、スマートになったね。マリオの方は赤く塗装されて、ルイージの方は緑に塗装されて」
 アルエット:「金属剥き出しだから相変わらずカテゴリーはロボットだけど、これに人の皮を被せたらアンドロイドになれるんじゃないかっていうくらいの精巧さです」
 マリオ:「お褒めに預かりまして。これ、ゴンスケの畑で作ったキノコです」
 ルイージ:「今なら読者様に抽選でプレゼント」
 アルエット:「メタ発言しない!てか、これ何のキノコ?」
 マリオ:「1UPキノコです」
 ルイージ:「スーパーキノコです」
 萌:「……という名のベニテングタケとタマゴテングタケでした」
 アルエット:「後でお姉ちゃん達に言って、キノコは全部焼却してもらうからね!」
 マリオ:「そんな!」
 ルイージ:「御無体な!」
 アルエット:「毒キノコは栽培するなと、お姉ちゃん達に散々言われたはすだけど?」
 マリオ:「観賞用です!」
 ルイージ:「布教用です!」
 アルエット:「えーい、うるさい!」
 萌:「因みに5.0のオリジナルバージョンは、ウィリアム博士が設計だけして亡くなってしまったので、実際には製造されていません。アリス博士によると、およそ造形美とは離れたブサイクなデザインだったので、大幅に設計し直したらしいです。尚、アリス博士が敷島社長と敵対していた時以外、5.0が実際に犯罪者以外の人に銃口を向けたことが無く、テロ用途とは少し離れたものになっています」
 アルエット:「毒を以て毒を制す的な、対テロ用ロボットとして使われることを想定しているみたいです」
 マリオ:「血で血を洗うとも言います」
 萌:「それ、ダメな意味だから!」

 そして最後に紹介するは、バージョン400である。

 萌:「相変わらずデカいねぇ」
 アルエット:「バージョン4.0の3倍の大きさだよ。自動運転も可能だし、頭の中がコクピットになってて、そこで手動操縦もできるの」

 アルエット、早速400に乗り込む。

 萌:「アルエットは操縦できるんだもんね」
 アルエット:「うん。お姉ちゃん達と違って、私、腕力はダメダメかもだけど、こうしてロボット達を操ることはできるよ」
 4.0:「アルエット御嬢様!」
 マリオ:「どこまでも付いて行きます!」
 ルイージ:「何卒ご命令を!」
 アルエット:「よーし!お前達、ついてきな!科学館一周するよ!」

 アルエットの操縦で、ズシンズシンと400が進む。

 萌:「ロボットパレードだねぃ!」

 敷島達がイベントで盛り上がっている中、科学館は科学館で盛り上がっていたもよう。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「3日目の夜」

2017-09-03 10:37:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月13日19:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町 某飲食店]

 

 座敷のある個室を貸し切っての打ち上げが行われた。

 敷島:「支社長、今回もサポートありがとうございました!」
 内野支社長:「う、うむ……。何だか途中、ロボットの暴走があったみたいだが……」

 四季エンタープライズ仙台支社長は上座に据えられていたが、何故かバーコード頭には汗が滲んでいた。

 敷島:「大丈夫です。大勢に影響はありませんでした」

 そう言って、敷島は内野にビールを注いだ。

 敷島:「支社長の後押しのおかげです!」
 内野:「私は何もしとらんよ」
 シンディ:「支社長、どうぞグイッと行ってください」
 内野:「わあっ!」

 エミリーとシンディはコンパニオンよろしく、いつもの服から胸の大きく開いたスーツに着替えていた。

 シンディ:「さあさあ、さあさあ」
 内野:「わあっ!ち、近づくな!人殺し!」

 内野はササッとエミリーの傍に行く。

 内野:「ふぅ……落ち着く」

 そうして、やっとビールをグイッと飲むのだった。
 前期型のシンディに殺されかけた思い出があるので、如何にまだ手が汚れていない後期型であっても、そっくりなデザインである為にトラウマがあるのだろう。

 敷島:「支社長、こっちのシンディは前期型とは似て非なる者だと何度もお伝えしましたでしょう?」
 内野:「なっ、なっ、何が似て非なるだ!ま、まんま本人じゃないか!は、は、半径5メートル以内に近づけさせるな!」
 シンディ:「よろしいのですか?半径5メートル以内でしたら、しっかりと射程範囲内でございますが……」
 内野:「ま、守ってくれーっ!」
 エミリー:「お任せください」

 内野はしっかりエミリーの胸の中に飛び込んでいた。

 村上:「フォフォ(笑)、楽しんでいるようじゃな」
 ロイ:「よろしいのですか?有泉さんはお呼びしなくて……」
 村上:「彼は車の運転があるからの。現時点で中型以上の免許を持っているのは、彼だけじゃ」
 ロイ:「なるほど。そうでしたか」
 村上:「それに、彼は下戸で一滴も酒は飲めない」
 ロイ:「それはそれは……」
 シンディ:「村上博士、お代わりいかがでしょう?」

 シンディが村上の所にやってきた。

 村上:「うむ。頂くとしよう」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディは日本酒の入った徳利を持って来た。

 ロイ:「おっ、そうだ。シンディさんに、お渡ししたいものがあるんですよ」
 シンディ:「なに?」

 ロイは1輪のヒマワリを取り出した。

 ロイ:「御存知ですか?ヒマワリの花言葉。『私はあなただけを見つめる』『愛慕』『崇拝』です」
 シンディ:「なっ……!?」
 ロイ:「どうぞ」

 ロイはシンディの胸の谷間にヒマワリを差し込んだ。

 シンディ:「

 シンディの体の中から、ピッピッという明らかに何かカウントダウンされるような音が聞こえた。

 村上:「あ……あー、シンディや。つまみに何か持ってきてくれんか。これはワシが預かろう」

 村上は胸の谷間に差し込まれたヒマワリを取った。
 すると、カウントダウンが止まる。

 シンディ:「かしこまりました。少々お待ちください。ロイの半殺しは後にしておきますね……
 村上:「はは……さすがは、かの世界的狂科学者の生んだガイノイドじゃ」

[同日21:45.天候:晴 JR仙台駅・新幹線ホーム]

 敷島:「打ち上げも無事に終わったことだし、あとは帰るだけだな」
 シンディ:「そうですね……」
 敷島:「ん?シンディはどうかしたのか?」
 エミリー:「いえ、【お察しください】」
 敷島:「んん?」

 尚、2人の鋼鉄姉妹はいつもの服に着替えている。
 とはいえ、こちらもロングスカートとはいえ、スリットが深い。

〔13番線に、21時47分発、“やまびこ”60号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、福島、郡山、宇都宮、大宮、上野に止まります。グリーン車は、9号車。自由席は1号車から5号車です。まもなく13番線に、“やまびこ”60号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 ホームで列車を待っていると、女声の自動放送が響いた。
 その後で英語放送が流れる。

 敷島:「平賀先生はタクシーで帰られたし、支社長も支社長車で帰ったと……」

 地方支社の支社長車は、首都圏の黒塗りタクシーとして普通に使われている車種の中で、少しグレードの良いものである(大手タクシー会社の黒塗りタクシーみたいなもの)。

 敷島:「村上教授は……あれ?」
 エミリー:「今、シンディにその話はしない方がいいですよ」
 敷島:「は?」

〔「13番線、ご注意ください。“やまびこ”60号、東京行きの到着です。お下がりください。東京行き、本日の最終電車となります。お乗り遅れ
の無いよう、ご注意ください」〕

 古参のE2系電車が入線してくる。
 井辺達が乗って行ったE5系と違い、ヘッドライトがHIDではなく、通常の黄色いヘッドランプである。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。車内にお忘れ物、落し物の無いよう、お降りください。13番線の電車は、東京行き最終“やまびこ”60号です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 概して夜の上り列車は閑散としているが、グリーン車はもっとガラガラだった。
 盛岡始発の列車であるが、数えるほどしか先客のいないグリーン車に関しては下車客など皆無に等しかった。
 エミリーが先に乗り込んで、窓の無い客室への自動ドアを開ける。
 敷島がその後ろを進んで、シンディが殿(しんがり)を守るという構図だった。

 敷島:「ガラガラだな。よし」

 敷島は座席を向かい合わせにした。

 敷島:「エミリーは俺の前に座ってくれ。シンディは俺の隣だ」
 エミリー:「はい」
 シンディ:「かしこまりました」

 敷島は進行方向向き窓側に座り、エミリーがその向かい、シンディが敷島の隣の通路側という意味。
 ホームからは“青葉城恋唄”の発車メロディが響く。
 列車としてはこの後、郡山止まりのものがある。
 なので厳密には最終列車ではないのだが、東京行きとしてはこれが最後。
 その為、駅員の肉声放送も乗り遅れ注意を再三に渡って放送している。

〔「東京行きの最終列車“やまびこ”60号でございます。まもなく発車致します」〕

 ドアが閉まると、車内にVVVFインバータの音が聞こえてくる。
 乗り遅れで地団太踏む利用者の姿は、少なくとも敷島の目には映らなかった。
 明るいホームを出ると、車窓には市街地の夜景が映り出す。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“やまびこ”号、東京行きです。次は、福島に止まります。……〕

 シンディの頭部からピッピッという電子音が聞こえてくる。
 これは別にカウントダウンではない。
 恐らく、敷島が無事に新幹線の終電に乗ったことをアリスに送信しているものと思われる。
 もちろん、ここにいるマルチタイプ達としては、新幹線に乗ってからも油断はできない。

 車販嬢:「車内販売でございます。冷たいお飲み物に……」
 敷島:「キミの温かいハートを1つ……」
 エミリー:「!!!」

 エミリー、慌てて敷島の口を塞ぐ。

 敷島:「フゴッ!?フガガガモゴ……!」
 車販嬢:「どうかなさいましたか?」
 シンディ:「いえっ、何でもありません!……ビール1つと焼き枝豆頂けますか?」
 車販嬢:「か、かしこまりました」

 つまり、こういうことである。
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