報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「羽生パーキングエリアの戦い」

2017-09-28 23:40:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月14日09:05.天候:曇 埼玉県羽生市 東北自動車道下り 羽生PA]

 バスは首都高速内で多少の渋滞に巻き込まれた。
 しかし、東北自動車道に入ればそこは下り。
 朝ラッシュで都心へ向かう上りと比べればガラ空きであった。

〔「羽生パーキングです。こちらで15分休憩を致します。出発は9時20分です。9時20分に出発致します。それまでにバスにお戻りになるよう、お願い致します」〕

 バスは羽生パーキングエリアに到着した。
 パーキングエリアにしては広いのは、隣の蓮田サービスエリアが混雑しやすい為、そのガス抜きという意味合いがある。
 おかげで蓮田サービスエリアが混雑していても、こちらは年間を通じて満車になることは殆ど無いという。
 その為、駐車場の混雑を嫌う高速バスなどは、こぞってこちらに停車する傾向がある。
 大型の駐車スペースにバスが止まると、大きなエアー音がしてドアが開いた。

 稲生:「ちょっと降りてみましょうか」
 マリア:「そうだな」

 稲生達は他の乗客に混じって、乗降口へ向かった。
 後ろから付いてくるのは、ミク人形とハク人形。

 運転手:(平日でも外国人観光客は多いなぁ……。バックパッカーかな?)
 稲生:「行ってきます」
 マリア:「…………」
 運転手:「お気をつけて。(かわいい白人のコと手を繋いでる……)」
 ミク人形:「ヨ!」
 ハク人形:「ヨ!」
 運転手:「お気をつけ……は!?」

 運転手の帽子がズリッとズレる。
 トントントンとステップを降りて、軽やかにそのフランス人形達は白人と日本人のカップルの後ろに付いて行った。

 運転手:(ま、まあ……最近のAIはかなり発達してるからなぁ……)

 で、建物の中に入る稲生達。

 稲生:「また付いて来ちゃったよ、あのコ達……」
 マリア:「まあ、しょうがない。ああ見えても、私の使い魔なんだ。許してやってよ」
 稲生:「絶対バスの人達、びっくりしてますよ」
 マリア:「ま、今に始まったことじゃない」
 稲生:「こんな所、魔女狩り上等キリスト系カルト教団に見つかりでもしたら……」

〔「こちらは、ヨハン埼玉キリスト教会です。ただいま、このパーキングエリアに、神をも恐れぬ悪質な魔女達が侵入したとの情報が入っております。お騒がせを致しますが、皆様のご協力をお願い致します。……」〕

 何と、ここでキリスト系カルト教団の街宣車が現れた!

 稲生:「やばっ!」
 マリア:「ユウタっ、早く日蓮正宗に連絡を!」
 稲生:「羽生市にもお寺はあると思いますけど、高速のパーキングまで来れないですよ!」

〔「……尚、ご協力者には漏れなく聖母マリアからの慈しみ溢れる愛が注がれることでしょう。魔女共に告ぐ!神に背くお前達は必ずや裁きを受ける!」〕

 稲生:「聖母マリアですって」
 マリア:「冗談!私のフルネームはマリアンナだから違う!」
 稲生:「聖母も含めてマリアって名前の女性、聖書には10人くらいいるらしいですよ」
 マリア:「知ってる!私も人間時代はクリスチャンだったから」
 稲生:「あっ、そうか」

 と、そこへその街宣車を取り囲む者達がいた。

 キリスト信者A:「な、何だお前達は!?」
 顕正会員A:「顕正会だ!邪教を撲滅に来た!」
 顕正会員B:「お前達こそ、浅井先生に背く邪教は必ず滅ぶのだ!」
 顕正会員C:「責任者、降りてこい!法論だ!」

 何と、平日なのにクソヒマな顕正会員数名がキリスト系カルト教団の街宣車を取り囲んだ。

 稲生:「おおっ、やった!」
 マリア:「ユウタ!ミカエラ達のアイスクリームを買ったぞ!」
 稲生:「よし、さっさとバスに戻りましょう!」

 稲生とマリアは大型車駐車スペースへ走った。

 キリスト信者B:「むっ!?あのローブと杖は……!?あいつら怪しいぞ!」
 キリスト信者C:「きっとあいつらが魔女共だ!逃がすな!」
 顕正会員D:「いやいやいや!お前ら、どこに行くんだよ!?まだ法論は終わってないぞ!」
 顕正会員E:「そうだそうだ!キリスト教が正しいという証拠を見せろ!」
 顕正会員F:「今お前達がやってる魔女狩りが正しいという証拠を見せろ!逃げんじゃねぇ!」
 キリスト信者D:「くそっ、邪魔するな!エセ仏教徒共め!」

 バスに乗り込んだ稲生達。

 稲生:「何だか今回に限ってだけ、顕正会が正しいような気がした」
 マリア:「仏教の方がまだ魔女狩りしないからな」

 そんな主人達の汗などどこ吹く風で、使い魔の人形達は美味しそうにハーゲンダッツを食べていたという。

 稲生:「あ、ケーサツ来た」
 マリア:「だろうな。おおかた、連行される際に『宗教弾圧だ!』とか叫ぶと思う」
 稲生:「弾圧されてもいい宗教も存在するんですがねぇ……」

 キリスト信者A:「宗教弾圧だ!裁判に訴えるぞ!」
 キリスト信者B:「埼玉県警本部と埼玉県公安委員会と国家公安委員会にこのことを訴える!」
 キリスト信者C:「ヴァチカンにも訴えるぞ!国際問題になるニダ!」
 顕正会員A:「いや、違う!警察は創価学会の手先だ!公明党の犬だ!」
 顕正会員B:「お巡りさん!悪いのはこいつらですよ!こいつらが邪教の害毒を振り撒いていたんです!」
 顕正会員C:「そうだそうだ!俺達は冨士大石寺顕正会と言って……」

 ザシャアアァァ〜ッ!!(←ポテンヒットさん、ごめんなさい)

 警部補:「ほお?ヨハン埼玉キリスト教会に、顕正会か。それはそれは……」

 警部補、警察手帳によく似た名刺入れから名刺を差し出す。
 そこに書いてあったのは……。

 顕正会員A:「みょ、みょ、妙観講ぉぉぉっ?!」
 キリスト信者A:「何それ?」
 警部補:「行けっ、全員折伏だ!」

 何と、警官隊は全員妙観講員だった!
 更に大騒ぎになるパーキングエリア。

 稲生:「な、何たるちゃあ……」
 マリア:「何か……宗教ってウザいな」
 稲生:「僕、魔道師の門流に入って良かった」

 いつの間にか運転手、人数確認を終えて運転席に戻った。

 運転手:「お待たせ致しました。それでは皆様お揃いになりましたので、出発致します。次は、下今市駅前に止まります」

 バスが出発する。

 キリスト信者B:「ああっ、魔女達が逃げるぞ!」
 顕正会員C:「う、うぬっ!かつて合宿で浅井先生がステテコでお泊りになった恐れ多き地、鬼怒川温泉に勝手にバス路線を開設するとはっ!あれこそが仏敵!」
 警部補:「あー、分かったからまずは全員、署まで来てもらおうか。48時間の勾留が終わった後、折伏はそれからだ」

 尚、取り調べとしての勾留はともかく、妙観講の折伏で早目に解放された信者達は誰もいなかったという。
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