報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「合宿所であった怖い話」

2017-09-29 18:40:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日11:30.天候:曇 栃木県日光市 東京中央学園栃木合宿所]

 稲生:「いえ、やはりこのまま調査を続けましょう」
 マリア:「そうするか」
 稲生:「何か、このまま引き返したら引き返したらで危険な気がするんです」

 というわけで稲生達は、合宿所に向かった。
 駅前からタクシーに乗り、合宿所へ向かう。
 合宿所は公道のバス停から、更に登った所にある。
 タクシーならその道をスイスイ登って行けるというわけだ。

 運転手:「こんな時期に合宿なんてありましたかね?」
 稲生:「あー、いえいえ。僕、OBなんです。観光に来たついでに、ちょっと合宿所を見て行こうかと思いましてね」
 運転手:「そうでしたか」

 タクシーは門の前で止まった。
 もちろん運転手の言う通り、こんな時期に合宿など行われているはずも無く、門は固く閉ざされていた。

 運転手:「お戻りになるまで、待ちましょうか?」
 稲生:「いえ。しばらくゆっくりしていくつもりなので、それは結構です」

 ちゃっちゃっと終わらせられた場合、その選択肢は誤りということになるのだが……。

 運転手:「それなら、領収証を。ここのお電話番号に掛けて頂ければ、お迎えに上がりますので」
 稲生:「ああ、どうもすいません」

 稲生達はタクシーを降りた。

 稲生:「案の定、門が閉まってますね。せめて、大学生がサークル活動でもやっててくれないかなって思ったんですけど……」
 マリア:「大学も普通に講義のある日だろう?任せてくれ」

 マリアは裏門に回ると、そこの通用口に杖を当てた。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……ア・ヴァ・カ・ムゥ!」

 杖の先がポウッと光ると、通用口の鍵が開いた。

 稲生:「さすがマリアさん」
 マリア:「これだけ固く閉ざされていれば、中に誰もいないということでいいか?」
 稲生:「そのはずですよ」

 それでもなるべく物音を立てずに入口に進む。

 マリア:「それにしても、この建物も結構古いな」
 稲生:「元々はどこかの小学校だか中学校の分校だった所らしいんですよ。それが廃校になったのを東京中央学園が買い取って、合宿所として改築したものだそうです」
 マリア:「なるほど。上野の校舎ほどじゃないけど、ここもそれなりに霊気が漂っている」
 稲生:「やはりそうですか」
 マリア:「もっとも、魔界の入口にあるってわけじゃないから、別に害のある悪霊や魔族がいるってわけじゃなさそうだな」
 稲生:「それは良かったです。でも『3時の魔道師』は、何でこんな所に出入りしてるんですかね?」
 マリア:「それをこれから調べるんだろう?」
 稲生:「そうでした」

 2人が合宿所の正面玄関に回った時だった。

 マリア:「こ、これは……!」

 まるで正面玄関を塞ぐように、魔法陣が描かれていた。
 これは、あれだ。
 魔法陣の中に入って聖水を振り掛け、どこかへ移動するタイプのものだ。
 大抵、それは魔界へ行くものなのだが……。

 稲生:「魔法陣がどうしてここに!?」
 マリア:「『3時の魔道師』が実在する確率は、これでほぼ100%になったみたいだな」
 稲生:「この魔法陣で、それは出入りしているということですね?」
 マリア:「恐らく」
 稲生:「行ってみましょう。幸い、聖水ならあります」

 稲生は自分のローブの中から聖水の入った瓶を取り出した。

 マリア:「魔法陣の中に入ったら、もう後戻りはできないぞ。準備はいいか?」
 稲生:「はい!」

 稲生とマリアはローブを着込み、杖を手にした。
 そして魔法陣の中に入ると、聖水を振り掛けた。
 案の定、そこから紫色の光が浮かび上がり、稲生達を包み込んだ。

[同日19:00.天候:曇 同合宿所]

 稲生:「着いた!……って、ここは?」

 辺りは真っ暗だった。
 マリアは水晶球を取り出し、位置情報を確認した。

 マリア:「あれ?全然変わって無いぞ」
 稲生:「ええっ!?でも、真っ暗ですよ?」
 マリア:「いや、やっぱり同じ場所だ。ほら……」

 マリアは背後を指さした。

 稲生:「あれ!?」

 そこには合宿所があった。
 そして、正面玄関も……。

 マリア:「時間だけ移動したらしい」
 稲生:「な、何で!?」
 マリア:「分からないが、恐らく罠かもしれないな。その証拠に、あれを」
 稲生:「!」

 マリアが指さすと、正面玄関のドアが半開きになっていた。

 マリア:「『3時の魔道師』が、私達に入って来いって言ってる」
 稲生:「上等でしょう。僕には後輩2人を殺された恨みがあるんですから」
 マリア:「あまり無茶はするなよ。まだ相手の正体が分かってない」
 稲生:「分かってます」

 2人は正面玄関から合宿所の中に入った。

 稲生:「!」
 マリア:「うっ……!」

 そしてやはり案の定、玄関のドアが自動で閉まり、鍵が掛けられた。

 マリア:「さ、どういう歓迎の準備して待っているか……」

 中は当然ながら暗く、非常口誘導灯や消火栓の赤ランプくらいしか点灯していない。

 マリア:「ユウタ。『3時の魔道師』を呼び出す方法とか聞いてない?」
 稲生:「はい。その為の時計がこの合宿所のどこかにあって、その時計を3時に合わせると現れるとのことです」
 マリア:「その時計の場所は?」
 稲生:「そこまでは聞いてません。荒田君も知らないそうで……」
 マリア:「この程度の秘密なら、何も殺すまでも無さそうだな。恐らく、その時計の秘密まで知ってしまったので殺されたんだと思う」
 稲生:「そんな……」
 マリア:「時計の特徴は?」
 稲生:「それもちょっと……」
 マリア:「だけど普通の人間が魔道師を呼び出せるくらいだから、それなりの魔力は帯びていそうだ」

 マリアはローブの中からミク人形とハク人形を出した。

 マリア:「この建物のどこかに、魔力を帯びた時計があるはずだ。それを探して」
 ミク人形:「了解!」
 ハク人形:「了解!」
 稲生:「なるほど。その手がありましたか」
 マリア:「上野高校ほどではないが、元学校ということもあって、結構広い建物だ。闇雲に探しても、時間の無駄だろう。なら、そういう時にこそ使い魔を使う」
 稲生:「なるほど」
 ???:「そんなまだるっこしいことしなくても大丈夫ですよ……」
 稲生:「わっ!?」
 マリア:「誰だ!?」

 いつの間にか2人の背後に回っていた者がいた。
 それは人間ではない。
 一体、誰だろう?

 1:3時の魔道師
 2:荒田譲治(情報提供者)の幽霊
 3:菅原浩太(新聞部部長)の幽霊
 4:想像もつかない

(※バッドエンドが1つだけあります)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「無言の圧力」

2017-09-29 10:29:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日10:45.天候:晴 栃木県日光市 東武日光駅前バス停→駅構内]

 バスが観光客で賑わう東武日光駅前に停車する。

 稲生:「平日でも結構、人が多いな。景気も持ち直したみたいだし、週末はもっと賑わうのでしょう」

 その為か、ここで下車する乗客も稲生達だけではなかった。

 稲生:「『日光を見ずして結構と言う勿れ』なんですって」
 マリア:「大師匠様の御言葉か?」
 稲生:「いやあ、どうなんでしょう」
 マリア:「? それにしても、ダンテ一門の魔道師がここを訪れるのは私達が初めてじゃない」
 稲生:「そうなんですか。アナスタシア組が先に来てましたかねぇ……」
 マリア:「いや、彼女らよりももっと前」
 稲生:「世界的に有名な観光地ですから、当たり前と言えば当たり前ですが……。誰が最初なんです?」
 マリア:「公称しているのはミセス・ビショップ。もちろん、人前では殆ど魔法は使わなかった。ダンテ一門のアジア進出の調査に乗り出した御方だ」
 稲生:「……本名は?」
 マリア:「イザベラ・バード・ビショップ。もちろん、魔道師の名前はもっと別にあるけど、人間としてはその名前を使って活動していたという」
 稲生:「この人(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%99%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%89)ですか!?」
 マリア:「そう。人間としては死んだことになってるけど、魔道師としては生きてる。多分今、魔界の紀行文でも書かれているだろう」
 稲生:「ええ〜……」
 マリア:「確か従者に、ユウタと似た名前の日本人男を連れていたと聞いてる」
 稲生:「イザベラ・バード……師もイギリス人。マリアさんもイギリス人。そして、日本人の男性連れ。凄い偶然ですね」
 マリア:「全く。本当に日光を観光したくなるよ」
 稲生:「帰りに少し観光して行きます?」
 マリア:「いいのか?」
 稲生:「僕達の目的は、そもそも『3時の魔道師』とやらが本当に実在するのかどうか。そして、実在するのならば呼び出して、その目的を聞き出すことです。そんなに難しいことではないと思います」
 マリア:「さっさと終わらせればいいわけか」
 稲生:「今のうち、どこか宿でも取りましょうか?」
 マリア:「うーん……。まあ、それは終わってからでいいだろう。そんな時に限って、意外に手こずらされたりするものだ」
 稲生:「そうですね。今朝の事件からして、実在している確率はかなり高くなった上、手こずらされる確率も上がりましたからね。……あ、合宿所までは駅から少し離れて山の中にあるので、タクシーで行きましょう。ちょっとその前に……」

 稲生は東武日光駅の中に入った。

 稲生:「せめて、どこの宿がいいかのパンフレットくらいは確保した方がいいかと。あと、観光するにしてもどこがいいかとか……」
 マリア:「フッ……。できれば、イザベラ師の軌跡を辿ってみたいな」
 稲生:「あー、それいいですねー。その日本を旅していた時のイザベラさん、既にマスターだったんですか?」
 マリア:「聞いて驚け。私の同じローマスター(Low Master 一人前に成り立て)だったそうだ」
 稲生:「それまた凄い偶然だ!それなら……ん?」

 その時、稲生の耳に不穏な放送が聞こえて来た。

〔「お客様にお知らせ致します。北千住駅で起きました人身事故の影響で、特急“スペーシア”は運転を見合わせております。……」〕

 稲生:「東京の方は世知辛いなぁ……」
 マリア:「Sechigarai...?」
 稲生:「まあ、人身事故くらいなら、帰り際には復旧してるでしょうがね。一応、見てみますか」

 稲生はスマホを取り出した。

 マリア:「ユウタには水晶球は要らなさそうだな」
 稲生:「あははは……。水晶球は専ら受信用です」

 稲生はそれで事故について検索してみた。

 稲生:「ちょうど僕達が羽生パーキングでゴタゴタに巻き込まれていた頃に事故ったみたいですね。でも、おかしいな。北千住駅ほど大きな駅で事故が起きたなら、すぐに警察がやってきて、すぐに現場検証が終わって運転再開しそうなものなのに……」
 マリア:「そうなの?」
 稲生:「人身事故の復旧が遅いというのは、警察の現場検証が長引くからなんですよ」
 マリア:「ふーん……」
 稲生:「おっ、ニュースやってる」

 稲生はニュース記事を開いた。

 稲生:「ん!?」
 マリア:「どうした?」
 稲生:「これ……」

『……事故に遭ったのは学校法人東京中央学園上野高校に通う菅原浩太さん(18歳。3年生)と見られ、警察では事故と自殺両面で調べを進める方針。尚、上野高校では今朝も校舎内で1年生男子生徒が惨殺死体で見つかるなどの事件も起きている』

 稲生:「!!!」(;゚Д゚)
 マリア:「ユウタの知り合いなのか?」
 稲生:「新聞部の部長ですよ。僕に、『3時の魔道師』についての取材メモや過去記事が無いかどうかを見せてくれたんです」
 マリア:「これで『3時の魔道師』の実在性は99%になった」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「そうだろう?ユウタに『3時の魔道師』について情報提供した人間が連続して殺された。しかも2人目はご丁寧にも、この線路の先で殺されている。無言の、私達への圧力だよ」
 稲生:「マリアさんは、そこまでして僕達に圧力を掛けて来る理由って何だと思いますか?」
 マリア:「そもそも『3時の魔道師』とやらは、どういう風に人間達に伝わっているか、だな」
 稲生:「どういう風にと言っても、そもそも『3時の魔道師』に会った人間はいないというんです。荒田君の話では、それは会った人間が必ず殺されているからではないかと」
 マリア:「『魔道師の正体を知る者には死を!』」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「師匠が“怨嫉者”を抹殺する時の決め台詞の1つだ。中には、魔道師を“怨嫉”する者もいるからね。あの時のキリスト教団みたいにさ」
 稲生:「でも、僕達はキリスト教団じゃありませんよ」
 マリア:「分かってる。私は恐らく、『3時の魔道師』は魔道師じゃないのかもしれない。もっと別の存在か、或いは魔道師であっても、東アジア魔道団などの非協力的な派閥か……。そう思ってる。ただ、こうして私達に無言の圧力を加えて来てるということは、少なくも味方ではないってことだね」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「どうする?帰るなら今のうちだと思う。或いは観光するだけなら、圧力者も見逃すだろう。圧力者は私達に、『3時の魔道師』について調べられるのが困るみたいだから」

 1:「そうですね。このまま帰りましょう」
 2:「それでは、少し観光してから帰りましょうか」
 3:「いえ、やはりこのまま調査を続けましょう」

(※バッドエンドがあります。ご注意ください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする