[9月13日19:15.天候:晴 栃木県日光市 東京中央学園栃木合宿所]
稲生達の背後から声を掛けて来た者。
強い霊気の混じるその声は、明らかに人間のものではない。
稲生:「わあっ!出たーっ!」
稲生とて魔道師の端くれ(見習)。
特に、幽霊船クイーン・アッツァー号で幽霊はお腹一杯になるほど遭遇して来たはずなのに、さすがにまだ慣れるものではなく、飛び上がって驚いた。
荒田:「ええ……。確かに僕、死んでますよ……」
それは荒田譲治の幽霊だった。
意外にもその姿は、生前の状態を辛うじて保ったままだった。
違うのは、彼だけがまるで白黒映像の人物みたいに白黒だったことだ。
幽霊に足が無いというのは嘘で、クイーン・アッツァー号でもそうだが、ちゃんと足はある。
ただ、肉体の無い霊体の為か、やはりどこかふわふわした感じになっている。
稲生:「ど、どうしてここに?上野高校で殺されたんだろ?」
稲生は震える声で荒田に問うた。
その点はまだマリアの方が冷静である。
マリア:「自分が死んでいるという自覚はあるのか。それだと逆に面倒だな」
稲生:「面倒?」
マリア:「アッツァーの時でもそうだったろ?死んだ自覚の無い幽霊に対しては、それを自覚させるだけでも昇天したのに、こいつは自覚してるんだ。並大抵のことでは昇天しないぞ」
荒田:「大丈夫ですよ……。ここに来る前に……『埼玉アストライアが優勝するまで成仏できねぇぜ!ヒック!』と叫んでいた酔っ払いオジさんの幽霊がいましたが……。それと比べれば、僕を昇天させるのは……楽だと思います……」
稲生:「あー、そりゃ楽かもw」
マリア:「何のことだ???」
荒田の言葉のおかげで、少しは恐怖が薄らいだ稲生だった。
稲生:「それで荒田君の場合は、どうしたら昇天できるの?まさか僕やマリアさんの体を代わりに寄越せなんて言わないよね?」
荒田:「そうして頂ければ大変結構ですが……。恐らく無理難題でしょうね……。僕は『3時の魔道師』に殺されました……。だからどうか……僕の仇を取ってください……」
マリア:「分かった。できるだけそうしよう。それで、あなたの知っている情報を聞きたい。あなたは殺される直前、何を見た?」
荒田:「何も……見てないんです……」
マリア:「は!?」
荒田:「突然後ろから襲われて……。急いで振り向いたんですけど……。何か……バギクロスみたいな魔法で……体をズダズタにされて……」
稲生:「バギクロス!?」
マリア:「ヴァギィ・クロ・ゥスだ。確かにその『3時の魔道師』はそれを唱えたのだな?」
荒田:「はい……。この耳で聞きました……」
稲生:「マリアさん、バギクロスって相当強い魔法なんですよね?」
マリア:「ああ。魔法で真空状態を作り、それを敵にぶつける最強魔法だ」
敵にかまいたち現象を起こして攻撃する魔法では最強のものだという。
稲生:「それができるのは?」
マリア:「師匠なら余裕でできるだろう。魔道書によれば、優秀なミドルマスター(Middle Master 中堅魔道師)なら修得できるらしい。普通に修行していれば、ハイマスターから使えるようになるという」
稲生:「つまり『3時の魔道師』は、ミドルマスター以上の魔道師さんってことですか」
マリア:「そういうことになる」
『3時の魔道師』とは荒田が勝手に付けた呼び名だ。
なので正体の如何によっては、魔道師ではない人外だったかもしれなかったわけだ。
だが、荒田の証言で、そいつは100%魔道師であることが判明し、しかも階級だって稲生やマリアより上であることが分かった。
稲生:「僕達、勝てますかね?」
マリア:「勝負に持ち込む以前に、どうしてこんなことをしたのか問い質してからだな。なあ、ミスター荒田」
荒田:「何ですか……?」
マリア:「『3時の魔道師』とやら、最悪私達の知り合いかもしれない」
荒田:「何ですって……!?」
マリア:「もしそいつに会って問い質して、それで反省したなら、あなたの前で全力謝罪させる。それではダメか?」
荒田:「許しません……!僕の人生を何だと思っているんですか……!僕だけでなく、家族も泣いてるんですよ……!」
稲生:「そりゃそうだ。マリアさん、いざとなったら、先生に言って何とかしてもらうという手もありますよ」
マリア:「私が師匠なら、そんな面倒なことはしない」
稲生:「えっ?」
マリア:「とにかく、『3時の魔道師』とやらを探そう。ミスター荒田、仇を取りたいのならあなたも手伝ってくれ」
荒田:「はい……」
廊下の奥へ進む稲生達。
マリアはチラッと荒田を見た。
マリア:(私が師匠なら、この幽霊を強制的に昇天させる。師匠ほどの大魔道師なら、そんな魔法も使えるからな……)
そして、今度は稲生を見る。
マリア:(チンタラチンタラお経唱えて成仏させるより、一気に魔法で成仏させる方法があるというのに……。ブッダとやらは、それを弟子達に伝えなかったと見える……。そして、ユウタの宗派の創始者も……)
荒田:「あそこだけ……」
稲生:「えっ?」
荒田:「あの部屋の……中から……光が見えます……」
稲生:「光!?えっ?」
荒田:「ええ……。恐らく、先輩方には見えないでしょう……。でも、僕には見えるんです……。きっと、『3時の魔道師』を呼び出す時計は……あそこにあると思うんです……」
稲生:「行ってみましょう!」
それは2階の会議室だった。
10人ほどが入れる部屋に机と椅子が並べられている。
そこにハク人形とミク人形もいた。
稲生:「やっぱりこの部屋か。……ん?見つけたのかい?」
ハク人形とミク人形は、2人で1つの時計を抱えていた。
それは何の変哲も無いアナログ時計。
学校の教室には必ずあるタイプのものだ。
荒田:「これです……!これこそが……『3時の魔道師』を呼び出す時計……!」
それは2時59分で止まっていた。
荒田:「本当は……言い出しっぺの僕が……動かしたいところですが……。この通り、僕はもう……物体を持つことができません……。だから、稲生先輩……。先輩に……代わりに針を動かして頂きたいのです……。どうか……お願いします……」
1:素直に針を動かす。
2:マリアに動かしてもらう。
3:本当に荒田にできないのか確かめる。
4:人形達に動かしてもらう。
(※バッドエンドが1つあります。ご注意ください)
稲生達の背後から声を掛けて来た者。
強い霊気の混じるその声は、明らかに人間のものではない。
稲生:「わあっ!出たーっ!」
稲生とて魔道師の端くれ(見習)。
特に、幽霊船クイーン・アッツァー号で幽霊はお腹一杯になるほど遭遇して来たはずなのに、さすがにまだ慣れるものではなく、飛び上がって驚いた。
荒田:「ええ……。確かに僕、死んでますよ……」
それは荒田譲治の幽霊だった。
意外にもその姿は、生前の状態を辛うじて保ったままだった。
違うのは、彼だけがまるで白黒映像の人物みたいに白黒だったことだ。
幽霊に足が無いというのは嘘で、クイーン・アッツァー号でもそうだが、ちゃんと足はある。
ただ、肉体の無い霊体の為か、やはりどこかふわふわした感じになっている。
稲生:「ど、どうしてここに?上野高校で殺されたんだろ?」
稲生は震える声で荒田に問うた。
その点はまだマリアの方が冷静である。
マリア:「自分が死んでいるという自覚はあるのか。それだと逆に面倒だな」
稲生:「面倒?」
マリア:「アッツァーの時でもそうだったろ?死んだ自覚の無い幽霊に対しては、それを自覚させるだけでも昇天したのに、こいつは自覚してるんだ。並大抵のことでは昇天しないぞ」
荒田:「大丈夫ですよ……。ここに来る前に……『埼玉アストライアが優勝するまで成仏できねぇぜ!ヒック!』と叫んでいた酔っ払いオジさんの幽霊がいましたが……。それと比べれば、僕を昇天させるのは……楽だと思います……」
稲生:「あー、そりゃ楽かもw」
マリア:「何のことだ???」
荒田の言葉のおかげで、少しは恐怖が薄らいだ稲生だった。
稲生:「それで荒田君の場合は、どうしたら昇天できるの?まさか僕やマリアさんの体を代わりに寄越せなんて言わないよね?」
荒田:「そうして頂ければ大変結構ですが……。恐らく無理難題でしょうね……。僕は『3時の魔道師』に殺されました……。だからどうか……僕の仇を取ってください……」
マリア:「分かった。できるだけそうしよう。それで、あなたの知っている情報を聞きたい。あなたは殺される直前、何を見た?」
荒田:「何も……見てないんです……」
マリア:「は!?」
荒田:「突然後ろから襲われて……。急いで振り向いたんですけど……。何か……バギクロスみたいな魔法で……体をズダズタにされて……」
稲生:「バギクロス!?」
マリア:「ヴァギィ・クロ・ゥスだ。確かにその『3時の魔道師』はそれを唱えたのだな?」
荒田:「はい……。この耳で聞きました……」
稲生:「マリアさん、バギクロスって相当強い魔法なんですよね?」
マリア:「ああ。魔法で真空状態を作り、それを敵にぶつける最強魔法だ」
敵にかまいたち現象を起こして攻撃する魔法では最強のものだという。
稲生:「それができるのは?」
マリア:「師匠なら余裕でできるだろう。魔道書によれば、優秀なミドルマスター(Middle Master 中堅魔道師)なら修得できるらしい。普通に修行していれば、ハイマスターから使えるようになるという」
稲生:「つまり『3時の魔道師』は、ミドルマスター以上の魔道師さんってことですか」
マリア:「そういうことになる」
『3時の魔道師』とは荒田が勝手に付けた呼び名だ。
なので正体の如何によっては、魔道師ではない人外だったかもしれなかったわけだ。
だが、荒田の証言で、そいつは100%魔道師であることが判明し、しかも階級だって稲生やマリアより上であることが分かった。
稲生:「僕達、勝てますかね?」
マリア:「勝負に持ち込む以前に、どうしてこんなことをしたのか問い質してからだな。なあ、ミスター荒田」
荒田:「何ですか……?」
マリア:「『3時の魔道師』とやら、最悪私達の知り合いかもしれない」
荒田:「何ですって……!?」
マリア:「もしそいつに会って問い質して、それで反省したなら、あなたの前で全力謝罪させる。それではダメか?」
荒田:「許しません……!僕の人生を何だと思っているんですか……!僕だけでなく、家族も泣いてるんですよ……!」
稲生:「そりゃそうだ。マリアさん、いざとなったら、先生に言って何とかしてもらうという手もありますよ」
マリア:「私が師匠なら、そんな面倒なことはしない」
稲生:「えっ?」
マリア:「とにかく、『3時の魔道師』とやらを探そう。ミスター荒田、仇を取りたいのならあなたも手伝ってくれ」
荒田:「はい……」
廊下の奥へ進む稲生達。
マリアはチラッと荒田を見た。
マリア:(私が師匠なら、この幽霊を強制的に昇天させる。師匠ほどの大魔道師なら、そんな魔法も使えるからな……)
そして、今度は稲生を見る。
マリア:(チンタラチンタラお経唱えて成仏させるより、一気に魔法で成仏させる方法があるというのに……。ブッダとやらは、それを弟子達に伝えなかったと見える……。そして、ユウタの宗派の創始者も……)
荒田:「あそこだけ……」
稲生:「えっ?」
荒田:「あの部屋の……中から……光が見えます……」
稲生:「光!?えっ?」
荒田:「ええ……。恐らく、先輩方には見えないでしょう……。でも、僕には見えるんです……。きっと、『3時の魔道師』を呼び出す時計は……あそこにあると思うんです……」
稲生:「行ってみましょう!」
それは2階の会議室だった。
10人ほどが入れる部屋に机と椅子が並べられている。
そこにハク人形とミク人形もいた。
稲生:「やっぱりこの部屋か。……ん?見つけたのかい?」
ハク人形とミク人形は、2人で1つの時計を抱えていた。
それは何の変哲も無いアナログ時計。
学校の教室には必ずあるタイプのものだ。
荒田:「これです……!これこそが……『3時の魔道師』を呼び出す時計……!」
それは2時59分で止まっていた。
荒田:「本当は……言い出しっぺの僕が……動かしたいところですが……。この通り、僕はもう……物体を持つことができません……。だから、稲生先輩……。先輩に……代わりに針を動かして頂きたいのです……。どうか……お願いします……」
1:素直に針を動かす。
2:マリアに動かしてもらう。
3:本当に荒田にできないのか確かめる。
4:人形達に動かしてもらう。
(※バッドエンドが1つあります。ご注意ください)