[3月27日16:00.天候:不明 魔界王国アルカディア・王都アルカディアシティ 3番街駅]
魔界高速電鉄(愛称はアルカディア・メトロ。まだ浸透していない)の3番街駅はアルカディアシティの中心街の一画にあり、そこは地元の新聞社アルカディア・タイムス本社の最寄り駅である。
基本的に新聞は定期購読か駅売り、または店舗で購入する。
しかし新聞社のサービスとして、この3番街駅や路面電車のターミナル駅などで壁新聞として掲示もされている。
そろそろ夕方のラッシュも始まろうとする時間帯、それは夕刊の時間でもある。
メトロの駅では電車の接近放送があったり無かったりと、バラバラである。
3番街駅には自動放送が無い為、入線してくる電車は警笛を鳴らしてやってくる。
回送などの通過電車は断続的に鳴らして通過する。
旧ソ連製の電車に酷似した電車が入線してきた。
メトロは基本的にワンマン運転である。
人間界で運行されていた頃はツーマン仕様であっても、ここでワンマン化改造されている。
地上の高架鉄道はツーマン運転なのに、地下鉄がワンマン運転である理由は明らかにされていない。
電車のドアが開くと、最後尾の車両の1番後ろのドアから山積みになった新聞が一気に降ろされた。
見ると、6両編成の電車のうち、最後尾だけ乗客が乗っていない。
車内には山積みの新聞が置かれている。
新聞社は発行した新聞の輸送に、電車を利用しているのである。
地上でも、高架鉄道や路面電車などでそれが行われている。
魔界では自動車交通が無いからだ。
係員A:「売店に持って行くから、壁新聞よろしく!」
係員B:「了解!」
地下鉄の停車時間は短い。
放送は無くても発車のブザー(かつての“営団ブサー”に音が似ている)は鳴るので、それで電車が発車するタイミングは測れるのだが。
3番街駅では受け取る係員がいない為、乗車している係員が降りる。
車内にはまだ係員が便乗して、各駅に新聞を降ろしていくのである。
2人の係員と新聞の束を降ろした電車は、旧ソ連製の電車よろしく、勢い良く乗降ドアを閉めて発車していった。
3番街駅のホームは天井が高く、ホームも広い。
その為、ホームの中央に壁新聞を貼れるスペースがある。
係員Bがその掲示板に、刷り上がったばかりの夕刊を貼り付けた。
そして、売店に新聞を卸したAと共に、次の電車に乗って帰って行った。
今度は開業したての地下鉄銀座線100形(東京高速鉄道)に酷似した電車であった。
電車の乗客達は電車を待ったり、改札口へ向かう合間に壁新聞に目を通す。
記事には人間界で起きた大きな事件も掲載されているのだが、今回は魔道師達のことが書かれていた。
『ダンテ一門総師範、東ア団支部長と会談!』『緊張の糸に耐えかねた弟子が暴走!』『ダンテ一門勢が有利か?』
以下、本文。
「日本時間3月27日10時より、魔道師組織による会談が行われた。一方は人間界は元より、魔界においても多大な影響力を持つ『ダンテ一門』その総師範であるダンテ・アリギエーリ師。もう一方は、最近勢力を伸ばしつつある東アジア魔道団(以下、東ア団)日本支部長の渡辺正幸(韓国帰化人。旧名、辺 正幸)師である。会談内容は日本国内におけるシェアについてであるが、会談はダンテ師と直弟子であるイリーナ・レヴィア・ブリジッド師と渡辺師と副支部長の大森次郎師の2対2で行われ、随行の弟子達は会場外で待機という状態にあった。
そのような中、12時27分頃、睨み合いの続く会場外では、ついに緊張の糸が断ち切れた。
緊張に耐えられなくなった東ア団韓国支部の支部員が、ダンテ一門側随行員2名に突如として飛び掛かったのである。
(写真はイギリス人魔道師に襲い掛かる韓国人魔道師)
危うく乱闘になる所であった為、会談は一時休止。最初に騒ぎを起こした随行者は退場となったが、これにより、ダンテ一門側が交渉に有利な運びとなる。
東日本一帯のみならず、東海地方もダンテ一門がシェアすることとなった。
尚、具体的な最終案については後日発表される見込みである」
『各師の声明。尚、「師」は正式な魔道師のみとし、見習に関しては「氏」とする』
「ダンテ師:孫弟子の1人の案、『JRの管轄で如何でしょう?』というものを採用した。細かい境界線については後日また会談する必要があるものの、取りあえずはJR北海道、東日本の他、JR東海のエリアもシェアすることができた。できればJR西日本の部分も頂きたかったが、そこは難しかった。尚、乱闘騒ぎに乗じて『沖縄』と書き込んだ弟子については別途処分する。
イリーナ師:JRの無い沖縄県やその他離島を頂こうとして失敗したのが痛かった。取りあえずは70%成功したので、一応良しとしたい。
稲生氏:大石寺のあるJR東海エリアをダンテ一門でシェアすることができて良かった。でも、“やきそばエクスプレス”からJRバスが撤退したのは痛いと思います。
マリアンナ師:いきなりコリアンが襲って来たのには驚いたが、あれが火病というヤツか。とにかく、冷静に対処できて良かった。
渡辺師:到底納得の行くべき会談内容ではない。西日本エリアはシェアできたものの、ダンテ一門とは相容れぬ存在であることが分かった為、関係改善には先方の努力が必要であろう。
大森師:大変な会談となってしまった。少なくとも支部の場所を西日本に移転させる必要があり、今後は多忙となる為、ダンテ一門どころの騒ぎではなくなると思われる」
乗客A:「何だか人間界も大変だねぇ……」
乗客B:「人間界が、じゃないよ。魔道師達が、だよ」
乗客A:「それもそうか」
乗客B:「何しろ彼の国には、人間成り済ましの人外が侵食しているって話だからな」
乗客A:「おい、それマジかよ?」
乗客B:「だいぶ前、この新聞で見た。ま、この新聞もたまにセンセーショナルなこと書くから、どこまで本当かは知らねぇよ」
乗客A:「でも、火の無い所に煙は立たないって言うぜ?」
乗客B:「まあな」
壁新聞に見入っていた2人の乗客達は、やってきた電車に乗り込んだ。
人間界のことなど、どこ吹く風といったかのように、電車は短い発車ブザーの後、すぐにドアを閉めて走り去ったのだった。
魔界高速電鉄(愛称はアルカディア・メトロ。まだ浸透していない)の3番街駅はアルカディアシティの中心街の一画にあり、そこは地元の新聞社アルカディア・タイムス本社の最寄り駅である。
基本的に新聞は定期購読か駅売り、または店舗で購入する。
しかし新聞社のサービスとして、この3番街駅や路面電車のターミナル駅などで壁新聞として掲示もされている。
そろそろ夕方のラッシュも始まろうとする時間帯、それは夕刊の時間でもある。
メトロの駅では電車の接近放送があったり無かったりと、バラバラである。
3番街駅には自動放送が無い為、入線してくる電車は警笛を鳴らしてやってくる。
回送などの通過電車は断続的に鳴らして通過する。
旧ソ連製の電車に酷似した電車が入線してきた。
メトロは基本的にワンマン運転である。
人間界で運行されていた頃はツーマン仕様であっても、ここでワンマン化改造されている。
地上の高架鉄道はツーマン運転なのに、地下鉄がワンマン運転である理由は明らかにされていない。
電車のドアが開くと、最後尾の車両の1番後ろのドアから山積みになった新聞が一気に降ろされた。
見ると、6両編成の電車のうち、最後尾だけ乗客が乗っていない。
車内には山積みの新聞が置かれている。
新聞社は発行した新聞の輸送に、電車を利用しているのである。
地上でも、高架鉄道や路面電車などでそれが行われている。
魔界では自動車交通が無いからだ。
係員A:「売店に持って行くから、壁新聞よろしく!」
係員B:「了解!」
地下鉄の停車時間は短い。
放送は無くても発車のブザー(かつての“営団ブサー”に音が似ている)は鳴るので、それで電車が発車するタイミングは測れるのだが。
3番街駅では受け取る係員がいない為、乗車している係員が降りる。
車内にはまだ係員が便乗して、各駅に新聞を降ろしていくのである。
2人の係員と新聞の束を降ろした電車は、旧ソ連製の電車よろしく、勢い良く乗降ドアを閉めて発車していった。
3番街駅のホームは天井が高く、ホームも広い。
その為、ホームの中央に壁新聞を貼れるスペースがある。
係員Bがその掲示板に、刷り上がったばかりの夕刊を貼り付けた。
そして、売店に新聞を卸したAと共に、次の電車に乗って帰って行った。
今度は開業したての地下鉄銀座線100形(東京高速鉄道)に酷似した電車であった。
電車の乗客達は電車を待ったり、改札口へ向かう合間に壁新聞に目を通す。
記事には人間界で起きた大きな事件も掲載されているのだが、今回は魔道師達のことが書かれていた。
『ダンテ一門総師範、東ア団支部長と会談!』『緊張の糸に耐えかねた弟子が暴走!』『ダンテ一門勢が有利か?』
以下、本文。
「日本時間3月27日10時より、魔道師組織による会談が行われた。一方は人間界は元より、魔界においても多大な影響力を持つ『ダンテ一門』その総師範であるダンテ・アリギエーリ師。もう一方は、最近勢力を伸ばしつつある東アジア魔道団(以下、東ア団)日本支部長の渡辺正幸(韓国帰化人。旧名、辺 正幸)師である。会談内容は日本国内におけるシェアについてであるが、会談はダンテ師と直弟子であるイリーナ・レヴィア・ブリジッド師と渡辺師と副支部長の大森次郎師の2対2で行われ、随行の弟子達は会場外で待機という状態にあった。
そのような中、12時27分頃、睨み合いの続く会場外では、ついに緊張の糸が断ち切れた。
緊張に耐えられなくなった東ア団韓国支部の支部員が、ダンテ一門側随行員2名に突如として飛び掛かったのである。
(写真はイギリス人魔道師に襲い掛かる韓国人魔道師)
危うく乱闘になる所であった為、会談は一時休止。最初に騒ぎを起こした随行者は退場となったが、これにより、ダンテ一門側が交渉に有利な運びとなる。
東日本一帯のみならず、東海地方もダンテ一門がシェアすることとなった。
尚、具体的な最終案については後日発表される見込みである」
『各師の声明。尚、「師」は正式な魔道師のみとし、見習に関しては「氏」とする』
「ダンテ師:孫弟子の1人の案、『JRの管轄で如何でしょう?』というものを採用した。細かい境界線については後日また会談する必要があるものの、取りあえずはJR北海道、東日本の他、JR東海のエリアもシェアすることができた。できればJR西日本の部分も頂きたかったが、そこは難しかった。尚、乱闘騒ぎに乗じて『沖縄』と書き込んだ弟子については別途処分する。
イリーナ師:JRの無い沖縄県やその他離島を頂こうとして失敗したのが痛かった。取りあえずは70%成功したので、一応良しとしたい。
稲生氏:大石寺のあるJR東海エリアをダンテ一門でシェアすることができて良かった。でも、“やきそばエクスプレス”からJRバスが撤退したのは痛いと思います。
マリアンナ師:いきなりコリアンが襲って来たのには驚いたが、あれが火病というヤツか。とにかく、冷静に対処できて良かった。
渡辺師:到底納得の行くべき会談内容ではない。西日本エリアはシェアできたものの、ダンテ一門とは相容れぬ存在であることが分かった為、関係改善には先方の努力が必要であろう。
大森師:大変な会談となってしまった。少なくとも支部の場所を西日本に移転させる必要があり、今後は多忙となる為、ダンテ一門どころの騒ぎではなくなると思われる」
乗客A:「何だか人間界も大変だねぇ……」
乗客B:「人間界が、じゃないよ。魔道師達が、だよ」
乗客A:「それもそうか」
乗客B:「何しろ彼の国には、人間成り済ましの人外が侵食しているって話だからな」
乗客A:「おい、それマジかよ?」
乗客B:「だいぶ前、この新聞で見た。ま、この新聞もたまにセンセーショナルなこと書くから、どこまで本当かは知らねぇよ」
乗客A:「でも、火の無い所に煙は立たないって言うぜ?」
乗客B:「まあな」
壁新聞に見入っていた2人の乗客達は、やってきた電車に乗り込んだ。
人間界のことなど、どこ吹く風といったかのように、電車は短い発車ブザーの後、すぐにドアを閉めて走り去ったのだった。