報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「新宿での一夜」 2

2017-04-12 21:28:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月28日21:00.天候:晴 東京都新宿区 アパホテル新宿御苑前B1F大浴場]

 魔道師達は旅行最後の入浴を行っていた。
 稲生は壺風呂に浸かりながら、1日の疲れを癒す。

 稲生:「ふぅ〜……。明日はバスに乗って帰るだけだぁ……」
 横田:「クフフフフフフ……。お疲れさまです」
 稲生:「うわっ!?」

 いつの間にか隣の壺風呂に、聞き覚え、見覚えのある男が入っていた。

 稲生:「うわっ!」

 慌てて体勢を変えた為に、底で足を滑らせてドボンと潜ってしまう。

 稲生:「ガバゴボゲバベバベボ……」
 横田:「嗚呼、大丈夫ですか?稲生君」

 横田、稲生を湯船の底から引き上げる。

 稲生:「ぷはッ!」
 横田:「横田です。先般の静岡大会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「いや、時系列おかしいから!」

 稲生、手持ちのタオルで顔と頭を拭いた。

 稲生:「あー、死ぬかと思った……。てか、またイリーナ先生やマリアさんの下着を狙っているのか?いい加減にしろよ」
 横田:「いえいえ。それはもう諦めました。今回は静岡大会からの帰りで、たまたまこのホテルに一泊しているのでございます」
 稲生:「だから、時系列おかしいって」
 横田:「今日は厳虎さんも一緒なのでございます」
 稲生:「絶対ウソだ!」

 稲生はザバッと湯船から出た。

 横田:「嗚呼っ、稲生君。何処へ?」
 稲生:「体洗って出るよ」
 横田:「そうですか。それでは私はもう少し浸かっていることと致します」
 稲生:「勝手にしなよ」

 稲生は洗い場に向かった。
 洗い場は隣との境に石の壁ができている。
 これで隣の人を気にせず、思いっ切り体が洗えるということだ。
 稲生は体を洗いながら、横田が女湯に行きやしないかと心配で、チラチラと壺風呂の方を見た。
 しかし特段何かをするわけでもなく、おとなしく浸かっている。
 どうやら、今回は本当に普通に入浴している?

 横田:「大地ィ揺るぅが〜す足音は〜♪広宣流布のォ大行進♪……」
 稲生:「懐かしの顕正会歌、歌っちゃってもう……」

 どうやら本当に何かの大会の後で宿泊しているようだ……?

 横田:「……滂沱ァの紅涙〜♪頬ォ伝う〜♪」

 稲生が自分の頭を洗い終わる頃には、既に横田が3曲目の会歌を歌い終わった頃だった。

 稲生:(本当に今回は先生やマリアさんに興味が無いのか……)

 稲生が立ち上がって洗い場を出ようとした時だった。

 横田:「濁悪の〜♪此の世往く〜♪顕正会の♪往く手を阻むは♪何奴なるぞ〜♪」

 ズコーッ!

 稲生:「団体ちゃいまんがな!しかも勝手に歌詞変えて、もうっ! んっ?さんに怒られちゃうよ……」

 稲生は呆れた様子で大浴場から出ようとした。
 横田は機嫌良く歌いながら、手持ちの白いタオルで顔を拭く。

 稲生:「? 何だろう?この違和感……?」

 稲生は首を傾げた。
 バッと後ろを振り向く。
 しかしそこにいるのは、何人かの宿泊客と湯船に浸かって上機嫌で学会歌を顕正会に勝手に置き換えて歌っている横田の姿だった。
 横田の頭の上には白いタオルが乗っかっている。
 まるで銭湯の常連客のオヤジが、湯船に浸かって上機嫌で歌を歌っている図だ。
 それだけならそんなに違和感が無い。
 横田もそういう歳だということだ。
 それはいいのだが、どういうわけだか稲生には違和感が拭えなかったのだった。
 稲生は訝し気な顔をして、横田に近づいた。

 横田:「三類の敵〜♪興盛の時〜♪地涌の使命に♪我立てり〜♪」
 稲生:「今度は妙観講の歌かよ。どこで覚えるんだか……。もうメチャクチャだな」

 稲生が横田が浸かっている大きな湯舟に入った。

 稲生:「ん!?」

 その時、稲生が発見したものは……。

 稲生:「ちょっと横田理事!パンツはいて風呂入っちゃダメでしょ!」

 波立つ水面のせいでボヤけてしまっているが、確かに横田は黒いビキニブリーフのようなものをはいていた。

 横田:「嗚呼、稲生君。これには深いワケが……」
 稲生:「いや、ダメでしょうよ!水着着用はルール違反だよ!」
 横田:「いや、あの……」
 稲生:「ほら、上がって!」
 横田:「わあっ!」

 稲生が無理やり横田を立たせると、その黒いパンツはビキニブリーフとか競泳パンツとかではなかった。

 稲生:「じょ、女性の黒いショーツ……シルクの。何故に?」
 横田:「いやあ、ハハハ……お恥ずかしい。せっかくのレア物が手に入ったので、ついついハイテンションで穿いたまま入ってきてしまったのでございます」
 稲生:「いや、あのね……。だからって、穿いたまま入って来ちゃダメだって」
 横田:「そ、そうですね。以後、気をつけますです……」
 稲生:「……ところで、そのショーツは誰のだい?」
 横田:「えっ!?いや、その……あの……。そう!ここは歌舞伎町に近い所でございます。行き着けのキャバクラの嬢から譲ってもらったものですよ、ハイ」
 稲生:「何か怪しいなぁ……」
 横田:「合法的かつ平和的な話し合いで譲って頂いたもの。けして、犯罪ではございません」

 横田は頭の上に乗せていたタオルで顔の汗を吹いた。

 稲生:「ちょっと待った!」

 稲生はパッとそのタオルを奪い取った。

 横田:「嗚呼っ、稲生君!何を……!?」

 広げると、横田がはいていたギャル系の黒いシルクのショーツとは対照的な、清楚な女子中高生がはいていそうな綿混の白いショーツだった。

 稲生:「これ……!マリアさんのだろ……!?」
 横田:「ちちち、違います!これは、あの……!そう!これは渋谷の女子高生から買ったものなんですよ!ま、ちょっと黒に近いグレーな行為であったことは認めまするが……!」
 稲生:「その黒いショーツ、もしかしてイリーナ先生のじゃないか?」
 横田:「ちちち、違います!これは池袋のスナックのママから買ったもので……!」
 稲生:「おい!さっきと言ってることが違うぞ!!」
 横田:「無二の師匠、イエロー先生に断固としてお応えして参る決意であります!ケンショーレンジャァァァァァッ!!」
 稲生:「待てーっ!!」

 横田、ケンショーグリーンに変身し、大浴場のダクトから外へ脱出した。

 福田:「クフフフフフ……。ケンショーレンジャー必殺技48手の1つであります。これで安全に脱出……おごっ!?」

 突然、横田の頭に強い衝撃。
 憤怒の形相で魔法の杖を持つマリアの姿があった。

 マリア:「こ、こいつ……!殺す……!殺してやる……!!」

 魔法の杖でボコボコに殴り付けるマリア。

 イリーナ:「お巡りさん、こっちです。……マリア、ケーサツ呼んだから、もうこの辺にしておきな」
 警察官A:「ちょっと署まで来てもらえるかな?」
 横田:「わ、私は何も……!」
 マリア:「これは私の下着だ……!」
 イリーナ:「はぁ〜。これは私のショーツだね。証拠の品、揃ってんじゃんよ〜。お巡りさん、こいつです」
 警察官B:「窃盗の現行犯で逮捕する!」

 タイーホされ、パトカーに連行される横田。

 横田:「ふ、不当逮捕です!宗教弾圧です!地涌の菩薩にこんなことをすると謗法行為と見なされ、罪障を積んで堕獄しますよ!?」
 警察官A:「はいはい、話は署で聞くからね」
 横田:「べ、弁護士を呼んでくださーい!」

 新宿2丁目にパトカーのサイレンがこだまする。

 稲生:「マリアさんとイリーナ先生の下着以外にも、ちゃんと女湯からごっそり持って行ってたとは……。横田のロッカーから、こんなに一杯……」

 もはや職人技というか、人間技とは思えない横田の技に稲生は呆れる他無かったという。
コメント
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