報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「東京出発」

2017-04-01 22:47:48 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月27日05:15.天候:雨 東京都千代田区 ホテルメトロポリタン丸の内・客室]

 稲生のスマホからアラームが流れて来る。
 どこかの駅の発車メロディにしたはずなのだが、何故か流れて来たのは軍艦行進曲(パロディウスだ!Ver.)だった。

 稲生:「うーん……弾撃つ響きは雷の〜……♪って!」

 稲生、慌ててアラームを止める。

 稲生:「あれ?こんな発車メロディあったっけ……?」

 ダウンロード選曲を間違えたことに気づいていない稲生だった。
 稲生は起き上がると、カーテンを開けた。

 稲生:「うへ……」

 嫌そうな顔をしたのは、外が雨だったからである。
 もっとも、ホテルから東京駅は直結なので、雨に濡れる心配は無いのだが。

 稲生:「ベッドが良過ぎても、何だか落ち着かないなァ……」

 稲生はそう呟きながら、バスルームに入った。
 朝の身支度を整えていると、電話が掛かって来た。

 稲生:「はいはいっと」

 電話に出ると、電話を掛けて来たのはマリアだった。

 マリア:「おはよう。起きたか?」
 稲生:「おはようございます。もちろんですよ」
 マリア:「そうか。ユウタは早起きだな」
 稲生:「特に、早起きは苦手じゃないんで」
 マリア:「師匠は間違いなく寝ていると思うんだが、起こさなくて大丈夫かな?」
 稲生:「大師匠様がいらっしゃいますからねぇ……。多分、大丈夫だとは思いますが……。一応、出発時間も伝えてありますし」
 マリア:「まあ、そうだな。いや、師匠だけなら私がモーニングコールしようかと思っていたんだが……」
 稲生:「そうですねぇ……。一応、僕から掛けてみますよ」
 マリア:「頼む」

 稲生が掛けてみると、電話に出たのはダンテ。
 ダンテは起きたのだが、やはりイリーナが起きるのに苦労しているとのこと。
 しかし、ちゃんと出発時間までには間に合うようにして行くとのことだった。

[同日05:45.天候:雨 ホテルメトロポリタン丸の内]

 客室から出て来た時、イリーナはダンテに肩を担がれるような感じで出て来た。

 マリア:「師匠、いい加減にしてください!大師匠様の肩を借りるなんてっ!」
 イリーナ:「う……マリア……。あんまり大きな声出さないで……」
 ダンテ:「どうも昨夜、飲み過ぎたみたいでねぇ……」
 稲生:「二日酔いですか」
 ダンテ:「やっぱり体の使用期限が迫っているのかねぇ、だいぶ酒に弱くなった気がするよ」

 どうやら部屋に戻ってからも、ルームサービスなどで晩酌をしたらしい。
 ダンテは平気なのだが、イリーナには飲みにくい酒であったようだ。

 マリア:「この前、ウォッカ飲んで酔い潰れても平気だったのに……」

 マリアは呆れていた。

 稲生:「じゃあ僕、チェック・アウトしてきますので、少々お待ちください」
 ダンテ:「ああ、うむ……」

 ダンテはスーツのポケットからカードケースを出すと、1枚のクレカを出した。

 ダンテ:「このカードを使いなさい」
 稲生:「ブラックカード!?」
 ダンテ:「そうだ。私の名前の綴りは知ってるね?それと、暗証番号は【以下略】」
 稲生:「ありがとうございます」

 イリーナが持つプラチナカードの更に上を行くブラックカード。
 一体、ダンテの資金源はどこにあるのだろう?
 もちろん、1つだけではないようだが……。

 稲生がフロントに行っている間、イリーナはソファに座っていた。

 マリア:「寝ないでくださいよ、師匠?」
 イリーナ:「分かってるよ。ポーション(回復薬)無いの?」
 マリア:「たかが、二日酔いくらいでポーション使わないでくださいよ」

 マリアは呆れるように言った。

 ダンテ:「いや、ポーションはあくまで傷に対する回復薬だ。この場合はエリクサーの方がいいだろう」

 イリーナの二日酔いは、謂わばステータス異常のようのものらしい。

 ダンテ:「マリアンナ君、エリクサーを出してあげなさい」
 マリア:「大師匠様がそう仰るのでしたら……」

 マリアは自分のローブのポケットの中から、緑色の瓶を取り出した。
 ポーションは青い瓶なので、間違えないように注意する必要がある。

 ダンテ:「いい弟子を持って、幸せだね」
 イリーナ:「おかげさまで……」
 マリア:「最近はエレーナも、エリクサーの値段を吹っ掛けてくるようになったんです。これ一本で、100ユーロも要求してきたんですよ?」
 イリーナ:「何で払った?」
 マリア:「『ここは日本だ、バカヤロー!』と言って、1万円札投げつけてやりましたが」
 ダンテ:「今、1ユーロが118円くらいだから、1180円値切ったことになるのかな」
 イリーナ:「おー、マリア。値切りが上手くなったねぇ」
 マリア:「いやいやいや!魔界じゃ、100ゴッズ程度で買える代物ですよ!?」

 魔界における1ゴッズは、日本円にしておよそ10円くらい。
 つまり、魔界では1000円くらいで買えるということ。

 稲生:「精算、終わりました」
 ダンテ:「特に、問題は無かったようだな。それじゃ、案内よろしく」
 稲生:「はい、こちらです」

 稲生達は地上階へ向かうエレベーターに乗り込んだ。

 イリーナ:「下山、げざーん♪」
 マリア:「黙っててください」

 エリクサーを飲んで、すっかりステータス異常(という名の二日酔い)を治したイリーナだった。

[同日06:00.天候:雨 JR東京駅・JR東日本新幹線コンコース]

 外は雨が降っているが、ホテルと駅が直結しているおかげで、雨に濡れずに駅の中に入ることができた。

 稲生:「朝食、何か買ってきます。何がいいですか?」
 ダンテ:「お、駅弁にするのかい?」
 稲生:「はい」
 ダンテ:「欧米ではなかなか無いからねぇ……。フム、この辺に関しても、稲生君のセンスに任せてみよう」
 稲生:「えっ、僕ですか?」
 ダンテ:「うむ。費用は渡すから、キミも食べたいものをこれで買ってきなさい」

 と、ダンテ、今度は現金を渡してくる。
 今度は1万円札だ。

 マリア:「ユウタ、私も行こう」
 稲生:「あっ、マリアさん、すいません」

 2人して駅弁の売店に向かう。

 マリア:「ヨーロッパやアメリカじゃ、長距離列車には大抵食堂車が連結されているから、いちいち弁当を買って乗り込む必要が無いんだ」
 稲生:「何だか羨ましいですねぇ……」

 だがまあ、日本では衰退した食堂車だが、その分、駅弁文化は発達したということで。
 もっとも、その駅弁に関しても、既に全盛期を過ぎているという噂も……。
 稲生達は駅弁を購入して、再び師匠達の元へ戻った。
 そして、手荷物とそれらを引っ提げ、ホームへと向かった。
コメント
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