[3月27日21:00.天候:雪 山形県山形市 ホテルメトロポリタン山形→JR山形駅前]
稲生がホテルの客室から見た駅前の風景。
空間に浮かぶ魔法陣の姿。
そして、流血の惨。
稲生:「マリアさん、ちょっと出てきます!外で何かあったみたいなんで!」
稲生は入浴中のマリアに、バスルームの外から言った。
マリア:「えっ、なに?」
ドアを隔てていた上、シャワーを使っていたマリアは、外で稲生の声がしたことには気づいたが、何と言っているかまでは分からなかった。
稲生は一旦自分の部屋に戻り、ワイシャツの上からローブを羽織って、自分の魔法の杖を持った。
そして、もう1度部屋の外に出る。
が!
イリーナ:「おっと!」
稲生:「うわっ、先生!すいません!」
部屋から飛び出した稲生を、ドアのすぐ前にいたイリーナが受け止めた。
稲生の顔面に師匠の豊胸が当たった。
イリーナ:「慌てなさんな。外の様子を見に行くんでしょう?」
稲生:「そうです!」
イリーナ:「それは野次馬として?それとも、魔道師として?」
稲生:「魔道師としてに決まってるじゃないですか!」
イリーナ:「だったら、行くのはやめなさい。あなたの手に負える状態じゃない。もちろん、マリアもね」
稲生:「ええっ!?」
イリーナ:「本当は寝ていたいアタシが、こうして行こうとしている。ダンテ先生は先に行った」
稲生:「外で何が起きてるんですか?」
イリーナ:「だいたい想像つくでしょ?このタイミングで、先生やアタシが行こうって事態……」
稲生:「東アジア魔道団……」
イリーナ:「あなたは、自分の部屋かマリアの部屋にいなさい。特に今、マリアは無防備でしょ?」
稲生:「た、確かに……」
イリーナは手持ちの魔法の杖で床をドンと突くと、そこから紫色の光が円状に光った。
その光がイリーナを包み込む。
イリーナ:「ここはアタシ達に任せて。あなた達は、くれぐれも人質になったりしないように……」
稲生:「は、はい!」
稲生が応えると、イリーナの姿は消えた。
稲生:「こうしちゃいられない」
稲生は、マリアの部屋のインターホンを鳴らした。
稲生:「まだ、お風呂の最中かな?」
なかなかドアが開かないので、稲生は諦めて自分の部屋に戻ろうと思った。
と、その時、ドアが開いた。
マリア:「何かあったのか?」
稲生:「そうなんです!」
マリアは部屋備え付けのナイトウェアを着ていた。
普段、屋敷でもそれ用に着ているものを、もう少し地味にした感じ。
屋敷では裾の短いものを着ていたが、ホテル用のせいか、こっちは裾が長い。
マリア:「入って」
稲生:「はい!」
マリアは風呂上がりだから当然だが、ショートの金髪がしっとりと濡れていた。
カチューシャは着けていない。
稲生:「どうも駅前で、東アジア魔道団が集結したみたいなんです。だけど、誰かが戦っているみたいで……」
マリアはカーテンを開けて、窓から駅前の様子を見た。
マリア:「……ここからじゃ、よく見えないな。ただ、確かにパトカーが何台も来ていて、大ごとになっているのは分かる」
稲生:「そうなんです。で、さっき、魔法陣が空に浮かび上がったのが見えて……」
マリア:「魔法陣が?」
稲生:「はい!」
マリア:「派手にやったみたいだな。警察が出動して、とんでもないことになりそうだ」
稲生:「今、大師匠様とイリーナ先生も現場に向かったんです。僕達はここに残るようにと……」
マリア:「魔法陣を空に浮かび上げて、それを敵の攻撃魔法に使うなんて派手にやってるくらいじゃ、私達の出番は無いよ」
稲生:「そうなんですか」
マリア:「Aクラスの攻撃魔法で、やっとそういうのが出てくるんだ。てことは、戦っているのは師匠クラスだよ?ハイマスターとかグランドマスターとか」
稲生:「う……それじゃ、確かに見習の僕は足手まとい……ですね」
マリア:「そういうことになるな。それだけじゃない。人質にでもなったりしたら、余計迷惑だ」
稲生:「あ、それ、先生にも言われました。ここにいていいんでしょうか?」
マリア:「ホテルから出なければ大丈夫……だと思う。だた、敵がこの時既にホテルに入り込んだりしていなければ、だが」
稲生:「ええっ?」
と、その時、部屋のインターホンが鳴った。
稲生:「先生かな?」
マリア:「いや、違うと思う」
マリアは水晶球を出して、ドアの外を映し出した。
すると部屋に立っているのは、黒いローブにフードを深く被った魔道師の姿だった。
稲生:「東アジア魔道団!?」
マリア:「シーッ!」
マリアは稲生の口を塞いだ。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……」
そして、何か魔法の呪文を唱える。
マリアの魔法の杖から、薄紫色の魔法陣が浮かび上がり、それが部屋のドアに張り付いた。
と、同時にドアがドンドンと乱暴に叩かれる。
マリア:「ふうっ!危なかった……。危うく、ドアをすり抜けて入って来られるところだった」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「他に、入って来られそうな場所にも結界を張っておこう」
稲生:「あの通気ダクトとか、浴室にもありますね」
マリア:「分かった。師匠達が戻ってくるまで、ユウタは部屋から出ないでね」
稲生:「分かりました」
マリア:「私も一応、着替えて来る」
マリアは先ほど脱いだ服をクロゼットの中から取り出すと、それでバスルームの中に入った。
今、結界はエアコンのダクトとバスルームの天井板、そして窓に張られている。
ホテルに侵入した団員がどれだけいるのかは不明だが、これで一先ずは安心だ。
緊張の中にあって、しかし少しの安心感があり、更にそれまでの間も緊張を強いられた時間があった為に、稲生は精神的に疲れていた。
安心感から、ジワジワとやってきた眠気についつい誘われてしまい……。
マリア:「ユウタ、今の状態は……あっ」
稲生:「スー……スー……」
マリア:「あの師匠にしてこの弟子あり……か。いや、まあ、しょうがないか」
マリアは上半身だけベッドに寝そべっている勇太の下半身もベッドの上に乗せた。
イリーナ:「師匠が戻って来てから起こせばいいか……」
稲生がホテルの客室から見た駅前の風景。
空間に浮かぶ魔法陣の姿。
そして、流血の惨。
稲生:「マリアさん、ちょっと出てきます!外で何かあったみたいなんで!」
稲生は入浴中のマリアに、バスルームの外から言った。
マリア:「えっ、なに?」
ドアを隔てていた上、シャワーを使っていたマリアは、外で稲生の声がしたことには気づいたが、何と言っているかまでは分からなかった。
稲生は一旦自分の部屋に戻り、ワイシャツの上からローブを羽織って、自分の魔法の杖を持った。
そして、もう1度部屋の外に出る。
が!
イリーナ:「おっと!」
稲生:「うわっ、先生!すいません!」
部屋から飛び出した稲生を、ドアのすぐ前にいたイリーナが受け止めた。
稲生の顔面に師匠の豊胸が当たった。
イリーナ:「慌てなさんな。外の様子を見に行くんでしょう?」
稲生:「そうです!」
イリーナ:「それは野次馬として?それとも、魔道師として?」
稲生:「魔道師としてに決まってるじゃないですか!」
イリーナ:「だったら、行くのはやめなさい。あなたの手に負える状態じゃない。もちろん、マリアもね」
稲生:「ええっ!?」
イリーナ:「本当は寝ていたいアタシが、こうして行こうとしている。ダンテ先生は先に行った」
稲生:「外で何が起きてるんですか?」
イリーナ:「だいたい想像つくでしょ?このタイミングで、先生やアタシが行こうって事態……」
稲生:「東アジア魔道団……」
イリーナ:「あなたは、自分の部屋かマリアの部屋にいなさい。特に今、マリアは無防備でしょ?」
稲生:「た、確かに……」
イリーナは手持ちの魔法の杖で床をドンと突くと、そこから紫色の光が円状に光った。
その光がイリーナを包み込む。
イリーナ:「ここはアタシ達に任せて。あなた達は、くれぐれも人質になったりしないように……」
稲生:「は、はい!」
稲生が応えると、イリーナの姿は消えた。
稲生:「こうしちゃいられない」
稲生は、マリアの部屋のインターホンを鳴らした。
稲生:「まだ、お風呂の最中かな?」
なかなかドアが開かないので、稲生は諦めて自分の部屋に戻ろうと思った。
と、その時、ドアが開いた。
マリア:「何かあったのか?」
稲生:「そうなんです!」
マリアは部屋備え付けのナイトウェアを着ていた。
普段、屋敷でもそれ用に着ているものを、もう少し地味にした感じ。
屋敷では裾の短いものを着ていたが、ホテル用のせいか、こっちは裾が長い。
マリア:「入って」
稲生:「はい!」
マリアは風呂上がりだから当然だが、ショートの金髪がしっとりと濡れていた。
カチューシャは着けていない。
稲生:「どうも駅前で、東アジア魔道団が集結したみたいなんです。だけど、誰かが戦っているみたいで……」
マリアはカーテンを開けて、窓から駅前の様子を見た。
マリア:「……ここからじゃ、よく見えないな。ただ、確かにパトカーが何台も来ていて、大ごとになっているのは分かる」
稲生:「そうなんです。で、さっき、魔法陣が空に浮かび上がったのが見えて……」
マリア:「魔法陣が?」
稲生:「はい!」
マリア:「派手にやったみたいだな。警察が出動して、とんでもないことになりそうだ」
稲生:「今、大師匠様とイリーナ先生も現場に向かったんです。僕達はここに残るようにと……」
マリア:「魔法陣を空に浮かび上げて、それを敵の攻撃魔法に使うなんて派手にやってるくらいじゃ、私達の出番は無いよ」
稲生:「そうなんですか」
マリア:「Aクラスの攻撃魔法で、やっとそういうのが出てくるんだ。てことは、戦っているのは師匠クラスだよ?ハイマスターとかグランドマスターとか」
稲生:「う……それじゃ、確かに見習の僕は足手まとい……ですね」
マリア:「そういうことになるな。それだけじゃない。人質にでもなったりしたら、余計迷惑だ」
稲生:「あ、それ、先生にも言われました。ここにいていいんでしょうか?」
マリア:「ホテルから出なければ大丈夫……だと思う。だた、敵がこの時既にホテルに入り込んだりしていなければ、だが」
稲生:「ええっ?」
と、その時、部屋のインターホンが鳴った。
稲生:「先生かな?」
マリア:「いや、違うと思う」
マリアは水晶球を出して、ドアの外を映し出した。
すると部屋に立っているのは、黒いローブにフードを深く被った魔道師の姿だった。
稲生:「東アジア魔道団!?」
マリア:「シーッ!」
マリアは稲生の口を塞いだ。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……」
そして、何か魔法の呪文を唱える。
マリアの魔法の杖から、薄紫色の魔法陣が浮かび上がり、それが部屋のドアに張り付いた。
と、同時にドアがドンドンと乱暴に叩かれる。
マリア:「ふうっ!危なかった……。危うく、ドアをすり抜けて入って来られるところだった」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「他に、入って来られそうな場所にも結界を張っておこう」
稲生:「あの通気ダクトとか、浴室にもありますね」
マリア:「分かった。師匠達が戻ってくるまで、ユウタは部屋から出ないでね」
稲生:「分かりました」
マリア:「私も一応、着替えて来る」
マリアは先ほど脱いだ服をクロゼットの中から取り出すと、それでバスルームの中に入った。
今、結界はエアコンのダクトとバスルームの天井板、そして窓に張られている。
ホテルに侵入した団員がどれだけいるのかは不明だが、これで一先ずは安心だ。
緊張の中にあって、しかし少しの安心感があり、更にそれまでの間も緊張を強いられた時間があった為に、稲生は精神的に疲れていた。
安心感から、ジワジワとやってきた眠気についつい誘われてしまい……。
マリア:「ユウタ、今の状態は……あっ」
稲生:「スー……スー……」
マリア:「あの師匠にしてこの弟子あり……か。いや、まあ、しょうがないか」
マリアは上半身だけベッドに寝そべっている勇太の下半身もベッドの上に乗せた。
イリーナ:「師匠が戻って来てから起こせばいいか……」