報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「山形に到着」

2017-04-03 12:17:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月27日07:44.天候:曇 福島県福島市・JR福島駅]

 列車が東北地方に入ると、外の雨が止んだ。
 それでもどんよりとした曇り空が広がり、今度は雪が降りそうな空模様だった。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、福島です。東北新幹線、東北本線、山形線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。福島の次は、米沢に止まります〕

 他にも阿武隈急行線や福島交通飯坂線など、他社線もあるのだが、そこは案内しない。

〔「福島駅14番線到着、お出口は右側です。福島でお降りのお客様、お忘れ物の無いよう、お気をつけください。お乗り換えのご案内です。今度の東北新幹線下り、……【中略】。福島で3分停車致します。発車は7時47分です。引き続きご乗車のお客様は、発車までしばらくお待ちください。ありがとうございました。まもなく、福島です」〕

 列車がATC信号による自動ブレーキにより、減速していく。
 運転士が実際に手動でブレーキ操作を行うのは、時速30キロ以下になってからだという。
 福島駅も、有効長は他のフル規格新幹線駅と同じなのだが、山形新幹線の停車位置は同じ。
 恐らく他の駅でもそうだったのだろう。
 後ろに東北新幹線を連結していないせいで、ホームの先の方に止まっている感じだ。
 通常は解結作業で5分くらい掛かるのだが、今回はそれが無い為、通常の乗務員交替と時間調整だけで済むようである。

〔ふくしま、福島。ご乗車、ありがとうございました〕

 稲生:「マリアさん、ちょっと降りてきます」
 マリア:「列車の撮影でもするの?」
 稲生:「いえいえ」

 稲生は(グリーン車にも車椅子対応席がある為に)間口が広い乗降ドアからホームに降りた。
 降りると、東京よりも寒い風がホームを吹き抜けている。
 東京も雨のせいで肌寒い状態であったが、ここはそれ以上だ。
 本当に雪になるかもしれない。

 稲生:「マリアさん、紅茶飲みたがってたな。さすが、イギリス人だ」

 稲生は売店でペットボトル入りの紅茶を買い求めようとした。

 マリア:「ミルクティーで」
 稲生:「わっ、びっくりした。いつの間に!?」

 まさか、瞬間移動でも!?
 いや、そんなことはいい。

 稲生:「これとこれ……」

 稲生は飲み物のペットボトルを2つ買い求め、Suicaで支払った。

 稲生:「マリアさん、寒いから降りてこなくても良かったのに……」
 マリア:「いや、これくらい……。イギリスはもっと寒いから」
 稲生:「まあ、確かに日本より緯度は高いですねぇ……」

 暖房の効いた車内に戻ると、ダンテは集中して書類に目を通していたし、イリーナは寝ていた。

 マリア:「何もすることが無いからといって、暢気な師匠だ」
 稲生:「まあまあ」

〔「お待たせ致しました。山形新幹線下り、“つばさ”121号、山形・新庄行きが発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 タイトルは、“栄冠は君に輝く”。
 これの作曲者である古関祐而が福島市出身だったからである。
 因みにこの古関氏、作曲した中に“嗚呼神風特別攻撃隊”もあるだが、これのアレンジバージョンが顕正会の会歌として使用されている。
 顕正会員たるもの、先生の為に特攻しろ!ということを暗に示している。
 列車は定刻通りに福島駅を出発し、それまで高架線を走行していたものが、地上に下りて走ることとなった。

[3月27日08:57.天候:雪 山形県山形市 JR山形駅→ホテルメトロポリタン山形]

 福島県でも山間は雪が積もっていたものの、実際に降り出してきたのは山形県に入ってからだった。
 もうすぐ4月になるというのに、雪国ではまだまだ雪の姿を見ることができる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、山形です。仙山線、左沢線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。山形の次は、天童に止まります〕
〔「まもなく山形、山形です。2番線到着、お出口は右側です。山形からのお乗り換えをご案内致します。……」〕

 ダンテ:「イリーナ、そろそろ起きなさい」
 イリーナ:「ふぁい……」
 稲生:「ここからが正念場なんですね」
 ダンテ:「うむ。だがまあ、向こうさんも礼を失することはしてこないだろう。だから、我々も気を使う必要がある」
 稲生:「はい」

 列車は雪の積もる線路の上を減速し、山形駅構内へと入って行った。
 尚、福島から先は改軌された在来線の上を走る為、ATCは無い。
 全て運転士による手動運転である。

〔「ご乗車ありがとうございました。山形、山形です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。2番線に到着の列車は“つばさ”121号、新庄行きです。次は、天童に止まります。……」〕

 山形県の県庁所在地である町の中心駅で降りる乗客は多い。
 稲生達も、そういった乗客達の後に続いて降りる。

 稲生:「またここに来るとは思いませんでしたね」
 マリア:「あの時は、まだ東アジア魔道団が関わっているとは思わなかったな」
 ダンテ:「会談開始は10時の予定だが、もう向こうさんは来ているかもしれない。本来ならちょっと一息吐きたいところだが、ホテルまではこのまま直行したいと思う」
 稲生:「はい。ホテルは駅と直結しているので、すぐそこです」

 稲生達は新幹線改札口を出ると、エスカレーターでコンコースへと上がった。
 すると今度は在来線用の改札口があるので、そこも出る。
 出て右に曲がり、東口に向かう途中にホテルメトロポリタン山形がある。

 稲生:「会場は……ちょっと聞いてきます」

 稲生はホテルのフロントに行って確認することにした。

 イリーナ:「一般のシティホテルを会場にすることの意味は、どこにあるのでしょう?」
 ダンテ:「向こうさんは直接、拠点まで来てくれと言ってきたんだ。さすがにそれは呑めないと断らせてもらった。それだとこっちが完全アウエーになり、不利過ぎる。おたくらがせめて東京まで来るように言ったら、それも断られた。当然、キミ達の家に来ることもだ」
 イリーナ:「来られても、ちょっと困りますけどね」
 ダンテ:「折衷案がここだったというわけさ。これだって、私達の方が譲歩している方だ」
 イリーナ:「確かにそうですね」

 そこへ稲生とホテルマンがやってきた。

 稲生:「会場が分かりました」
 ホテルマン:「ダンテ・アリギエーリ様でございますね。ご案内致します。お荷物はいかがなさいますか?」
 ダンテ:「ああ、うむ……。会談に必要の無いものは預かってもらうことにしようか」
 イリーナ:「私の場合、全部必要なものですけど」
 稲生:「じゃあ僕はこの荷物を……」
 マリア:「じゃあ、私も」

 必要の無い大きな荷物だけを預け、稲生達はホテルマンの案内で会場へと向かった。

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