[4月18日18:00.天候:晴 東京都江東区東雲 某マンスリーマンション]
シンディ:「埼玉から役員車通勤している方もいらっしゃるそうですよ?社長は新幹線通勤にしてみては?」
敷島:「つったって、東京駅から都営バスだろ?だったら、会社の近くにマンスリーマンション借りてた方がいい。何かあった時、それが例え真夜中でも会社に駆け付けられるだろ?」
シンディ:「ですが……」
敷島:「いいのいいの。それより、早く夕飯にしてくれ」
シンディ:「はい」
敷島が埼玉のマンションを現住所にしている理由は、アメリカ人妻のアリスがDCJのロボット未来科学館(埼玉県さいたま市)に勤務しているからである。
DCJは外資系企業である為、手当の概念が無い。
以前、アリスの給料明細を見せてもらったことがあったが、日本の企業とはだいぶ違うのが見て取れた。
特にアリスは研究職だから、尚更ワケが分からない。
ただ、取りあえずアメリカに帰っても年収の高い仕事ではあるというのは理解できた。
シンディ:「あれ?姉さんから通信が来てます」
敷島:「何だ?」
シンディ:「予定通り、明日には復帰できるとのことです」
敷島:「分かった。それじゃ明日、エミリーが戻って来たら、お前も向こうに行っていいよ」
シンディ:「そうさせてもらいます」
[同日20:00.天候:晴 同マンション]
敷島:「ゴールデンウィーク前に、何かちょっとしたイベントをやるというのもいいな……」
シンディ:「社長、お風呂の準備ができました」
敷島:「おっ、ありがたい。ボディソープがそろそろ切れかかってたけど……」
シンディ:「それも大丈夫です」
敷島:「いつものだな。じゃ、入って来るぞ」
シンディ:「はい、ごゆっくり」
シンディは敷島が風呂に入っている間、室内の掃除を始めた。
敷島は30分くらい入っているから、その間に済ませる。
因みにどこから始めるかは、シンディとエミリーとでは違った。
敷島が風呂に入っている間なので、風呂は1番最後になるのだが。
シンディ:「メイドも秘書も子守りも何でもできます。それがマルチタイプです」
掃除機掛け中のシンディのつぶやきが入浴中の敷島に聞こえるわけが無いが、まるで呼応するかのように……。
敷島:「ふぅ……。シンディも見た目が美人だから、グラビアの仕事くらい引き受けて欲しいなぁ……。『用途外だからダメ』なんて言わずにさ。エミリーも似たようなものだが、エミリーの方が聞いてもらえるような気がする」
[同日20:30.天候:晴 同マンション]
敷島:「ふう……。いい湯だった」
シンディ:「ビール出しましょうか?」
敷島:「おっ、ありがとう」
シンディ:「1本でいいですか?」
敷島:「ああ。お前も体の汚れが気になったら、入っていいぞ」
シンディ:「ありがとうございます。そう言えばこの前、姉さんの体を洗ってあげたそうで?」
敷島:「前に背中流してもらったし、他にも色々やってくれてるから、その礼にな」
シンディ:「そういうことでしたか。じゃあ今度、私もお背中流します。なので……」
敷島:「分かった分かった。今度、シンディの体も洗ってやるよ」
シンディ:「楽しみにしています。じゃ、今日は自分で洗いますね」
敷島:「ああ」
シンディが浴室に入り、敷島はテレビのスイッチを入れた。
〔「……埼玉県さいたま市西区のガソリンスタンドで、ロボットが洗車機を勝手に使用するという事件があり、近くのDCJロボット未来科学館より、ガイノイド・マルチタイプが取り押さえました」〕
敷島:「ブーッ!」
敷島は口に運んだビールを噴き出した。
〔バージョン4.0:「エミリー様モ、シャワー一緒ニ浴ビマセンカ?」 エミリー:「アホか!早く外に出ろ!!」〕
敷島:「まだこんなことするヤツいるのか……。時間的に、エミリーの点検が終わった直後だな。エミリーも大変だったな」
画面にはエミリーに首根っこ掴まれて、洗車機から引きずり出されるバージョン4.0の姿が映し出されていた。
敷島:「待てよ。確か、前にもそんなことしてたアホロボットがいたな……。もしかして、これは……」
敷島は自分のスマホを取り出した。
敷島:「あ、もしもし。アリスか?俺だけど……」
アリス:「ああ、タカオ。なに?どうしたの?」
敷島:「いや、今テレビ観たんだけど、またバージョンがフザけたことしたらしいな?」
アリス:「たまたま点検中で、監視の対象から外した隙に脱走しやがったのよ」
敷島:「洗車機で体を洗うのが流行ってるのか?」
アリス:「分からないけど、シンディやエミリーがきれい好きでしょ?少なからず、影響されてると思うね」
敷島:「なるほど……」
アリス:「バージョン達はロボットだから、そんなに気にすること無いのにね」
敷島:「1つ思ったんだが、いっそのこと、ロボット専用の洗車機のような物を造ってみたらどうだ?」
アリス:「ええっ?バージョンしか使わないんだから、そんなもの売れないよ」
敷島:「だから、科学館の新しい展示物として作るんだよ。西山館長から聞いたぞ?従来からの展示物がマンネリ化してきたから、そろそろ新しい物を置きたいって」
アリス:「ま、それは聞いてるけどォ……」
敷島:「で、定期的にイベントとして実演するんだよ。ゴンスケ辺りも普段の仕事で、体が汚れやすいだろう?」
アリス:「まあ、そうねぇ……」
敷島:「バージョン達にも、その新しい機械で体を洗うように伝えるんだ。そうしたら、もうガソリンスタンドの洗車機を勝手に使うなんてことはしなくなるぞ」
アリス:「分かった。ボス(西山館長)に伝えてみるわ」
敷島:「ああ、よろしく。……ああ。それじゃ」
敷島は電話を切った。
〔「……都内の交差点で車同士の事故があり、うち1台が、弾みで歩道を歩いていた下校中の小学生の列に突っ込みました。尚、この際、見守りとして稼働していたロボットが車を受け止めた為、児童にケガはありませんでした」〕
敷島:「普段は上手くやってる奴らなんだがなぁ……。テロロボットから用途変更しただけで、悪の手先から正義の手先だ。うん」
〔バージョン4.0:「ソウデスネ。私ハタダ与エラレタプログラムニ従ッタダケデス」〕
敷島:「かつてのテロロボット達だが、謙虚さも出るようになったんだがなぁ……」
〔バージョン4.0:「体ガ汚レテシマッタノデ、洗車機デ体ヲ洗イタイデスw」〕
敷島:「コラぁ!」
取りあえず、関東地方は今日も平和。
シンディ:「埼玉から役員車通勤している方もいらっしゃるそうですよ?社長は新幹線通勤にしてみては?」
敷島:「つったって、東京駅から都営バスだろ?だったら、会社の近くにマンスリーマンション借りてた方がいい。何かあった時、それが例え真夜中でも会社に駆け付けられるだろ?」
シンディ:「ですが……」
敷島:「いいのいいの。それより、早く夕飯にしてくれ」
シンディ:「はい」
敷島が埼玉のマンションを現住所にしている理由は、アメリカ人妻のアリスがDCJのロボット未来科学館(埼玉県さいたま市)に勤務しているからである。
DCJは外資系企業である為、手当の概念が無い。
以前、アリスの給料明細を見せてもらったことがあったが、日本の企業とはだいぶ違うのが見て取れた。
特にアリスは研究職だから、尚更ワケが分からない。
ただ、取りあえずアメリカに帰っても年収の高い仕事ではあるというのは理解できた。
シンディ:「あれ?姉さんから通信が来てます」
敷島:「何だ?」
シンディ:「予定通り、明日には復帰できるとのことです」
敷島:「分かった。それじゃ明日、エミリーが戻って来たら、お前も向こうに行っていいよ」
シンディ:「そうさせてもらいます」
[同日20:00.天候:晴 同マンション]
敷島:「ゴールデンウィーク前に、何かちょっとしたイベントをやるというのもいいな……」
シンディ:「社長、お風呂の準備ができました」
敷島:「おっ、ありがたい。ボディソープがそろそろ切れかかってたけど……」
シンディ:「それも大丈夫です」
敷島:「いつものだな。じゃ、入って来るぞ」
シンディ:「はい、ごゆっくり」
シンディは敷島が風呂に入っている間、室内の掃除を始めた。
敷島は30分くらい入っているから、その間に済ませる。
因みにどこから始めるかは、シンディとエミリーとでは違った。
敷島が風呂に入っている間なので、風呂は1番最後になるのだが。
シンディ:「メイドも秘書も子守りも何でもできます。それがマルチタイプです」
掃除機掛け中のシンディのつぶやきが入浴中の敷島に聞こえるわけが無いが、まるで呼応するかのように……。
敷島:「ふぅ……。シンディも見た目が美人だから、グラビアの仕事くらい引き受けて欲しいなぁ……。『用途外だからダメ』なんて言わずにさ。エミリーも似たようなものだが、エミリーの方が聞いてもらえるような気がする」
[同日20:30.天候:晴 同マンション]
敷島:「ふう……。いい湯だった」
シンディ:「ビール出しましょうか?」
敷島:「おっ、ありがとう」
シンディ:「1本でいいですか?」
敷島:「ああ。お前も体の汚れが気になったら、入っていいぞ」
シンディ:「ありがとうございます。そう言えばこの前、姉さんの体を洗ってあげたそうで?」
敷島:「前に背中流してもらったし、他にも色々やってくれてるから、その礼にな」
シンディ:「そういうことでしたか。じゃあ今度、私もお背中流します。なので……」
敷島:「分かった分かった。今度、シンディの体も洗ってやるよ」
シンディ:「楽しみにしています。じゃ、今日は自分で洗いますね」
敷島:「ああ」
シンディが浴室に入り、敷島はテレビのスイッチを入れた。
〔「……埼玉県さいたま市西区のガソリンスタンドで、ロボットが洗車機を勝手に使用するという事件があり、近くのDCJロボット未来科学館より、ガイノイド・マルチタイプが取り押さえました」〕
敷島:「ブーッ!」
敷島は口に運んだビールを噴き出した。
〔バージョン4.0:「エミリー様モ、シャワー一緒ニ浴ビマセンカ?」 エミリー:「アホか!早く外に出ろ!!」〕
敷島:「まだこんなことするヤツいるのか……。時間的に、エミリーの点検が終わった直後だな。エミリーも大変だったな」
画面にはエミリーに首根っこ掴まれて、洗車機から引きずり出されるバージョン4.0の姿が映し出されていた。
敷島:「待てよ。確か、前にもそんなことしてたアホロボットがいたな……。もしかして、これは……」
敷島は自分のスマホを取り出した。
敷島:「あ、もしもし。アリスか?俺だけど……」
アリス:「ああ、タカオ。なに?どうしたの?」
敷島:「いや、今テレビ観たんだけど、またバージョンがフザけたことしたらしいな?」
アリス:「たまたま点検中で、監視の対象から外した隙に脱走しやがったのよ」
敷島:「洗車機で体を洗うのが流行ってるのか?」
アリス:「分からないけど、シンディやエミリーがきれい好きでしょ?少なからず、影響されてると思うね」
敷島:「なるほど……」
アリス:「バージョン達はロボットだから、そんなに気にすること無いのにね」
敷島:「1つ思ったんだが、いっそのこと、ロボット専用の洗車機のような物を造ってみたらどうだ?」
アリス:「ええっ?バージョンしか使わないんだから、そんなもの売れないよ」
敷島:「だから、科学館の新しい展示物として作るんだよ。西山館長から聞いたぞ?従来からの展示物がマンネリ化してきたから、そろそろ新しい物を置きたいって」
アリス:「ま、それは聞いてるけどォ……」
敷島:「で、定期的にイベントとして実演するんだよ。ゴンスケ辺りも普段の仕事で、体が汚れやすいだろう?」
アリス:「まあ、そうねぇ……」
敷島:「バージョン達にも、その新しい機械で体を洗うように伝えるんだ。そうしたら、もうガソリンスタンドの洗車機を勝手に使うなんてことはしなくなるぞ」
アリス:「分かった。ボス(西山館長)に伝えてみるわ」
敷島:「ああ、よろしく。……ああ。それじゃ」
敷島は電話を切った。
〔「……都内の交差点で車同士の事故があり、うち1台が、弾みで歩道を歩いていた下校中の小学生の列に突っ込みました。尚、この際、見守りとして稼働していたロボットが車を受け止めた為、児童にケガはありませんでした」〕
敷島:「普段は上手くやってる奴らなんだがなぁ……。テロロボットから用途変更しただけで、悪の手先から正義の手先だ。うん」
〔バージョン4.0:「ソウデスネ。私ハタダ与エラレタプログラムニ従ッタダケデス」〕
敷島:「かつてのテロロボット達だが、謙虚さも出るようになったんだがなぁ……」
〔バージョン4.0:「体ガ汚レテシマッタノデ、洗車機デ体ヲ洗イタイデスw」〕
敷島:「コラぁ!」
取りあえず、関東地方は今日も平和。