[4月10日18:00.天候:晴 東京都内の某シティホテル内レストラン]
クリプトン製ボーカロイドの年少組がメディアに露出しているのに対し、試作機などの年長組はメディアに出る機会は少なくなりつつある。
その代わり、ライブやディナーショーに出ることが多い。
MEIKO:「いやだよmorning♪夜明けが来なきゃ〜♪煙草にまかれ〜て〜♪」
MEIKOは本来、初音ミクの持ち歌になる予定だった自分の持ち歌を披露していた。
衣装はデフォルト(公式イラスト)の赤いバドスーツである。
初音ミクに対し楽曲を提供している音楽家がプロデュースしたものなのだが、歌詞の内容に煙草や酒が出てくる為、設定年齢16歳の初音ミクが歌うには不適切だと待ったが掛かり、急遽、成人女性ボーカロイドのMEIKOが代わりに持ち歌にすることにした次第。
こういった例は他にもあり、例えばアニメ“創聖のアクエリオン”のテーマソングを歌っていたのが、当時未成年だったAKINOだった。
ところがこのアニメがCR機としてリリースされることになり、未成年歌手の歌をそのまま使うことに抵抗があったのか、成人だけで構成された声優達が歌っているバージョン(エレメント合体バージョン)に差し替えられている。
え?“海物語”のウリンちゃんは15歳だって?中の人が成人だったら、細けぇこたぁいいんだよ。
MEIKO:「ありがとうございました」
歌い終わった後で、拍手が巻き起こる。
MEIKO:「今日は皆様、私ボーカロイド、MEIKOのディナーショーにお越し頂き、真にありがとうございます。私も今ではボーカロイドの中では最古参(※)となりましたが、まだまだ新型機には負けないように頑張りますので、よろしくお願い致します」
※クリプトン製としてではなく、他メーカーも含めて、本当に最古の試作機だと思う。
MEIKO:「こう見えまして、実は3回ほどボディを丸ごと交換しているんです」
どよめく客席。
MEIKO:「ですから、製造年月日は最古ですけど、機器はそんなに古くないのでご安心ください」
ドッと笑いが起きる客席。
[同日20:30.天候:晴 同ホテル前]
MEIKO:(もうこんな時間か。早いとこタクシー拾って、事務所に戻らなきゃ)
因みに専属マネージャーは、急用で先に事務所に戻っていた。
MEIKOはいつもの衣装の上から、ベージュのコートを羽織っている。
関係者用通用口から外に出ると、MEIKOを迎えに来ている者がいた。
シンディ:「よ、お疲れさん」
MEIKO:「シンディ」
シンディ:「社長に頼まれてね、あなたを迎えに来たよ」
MEIKO:「あー、それはありがとう。別に、1人で帰れるのに……」
シンディ:「何かと物騒だからだってさ。ボーカロイドは用途上、戦闘力は持ってないからね」
MEIKO:「まあね」
シンディとMEIKOは大通りに出てタクシーを拾った。
シンディ:「豊洲4丁目までお願いします」
運転手:「はい、豊洲4丁目ですね」
タクシーが走り出す。
MEIKO:「アリス博士の護衛はしなくていいの?」
シンディ:「二海もそこそこ強いしね。年度初めになって、博士もそんなに忙しくなったわけじゃないから。お坊ちゃまの相手は、二海とアリス博士ご自身で大丈夫みたいだね」
MEIKO:「ふーん……。何だか、エミリーが来てから手持無沙汰?」
シンディ:「そうかもね。社長的には姉さんと私を交互に使いたいらしいけど、姉さんが嫌がってるみたい」
MEIKO:「エミリーって意外と独占欲強いんだね。昔は南里博士一筋って感じだったのに」
シンディ:「姉さんに限らず、マルチタイプにはよくあることよ。私だって前のボディの時は、ウィリアム博士一辺倒だったもんね。その博士の為だったら、自爆も厭わない的な?」
MEIKO:「なるほど。(その割には暴走して惨殺したんだよねぇ、このロイド)」
タクシーのラジオからは、初音ミクの歌が聞こえて来た。
MEIKO:「お、ミクの歌だ」
シンディ:「“ワンダーランドと羊の歌”か。ミクが1番持ち歌多いかな」
MEIKO:「まあ、私みたいな試作型と違って、ミクは量産先行機だからね」
シンディ:「その試作機も、ちゃんと人気が維持できてるんだから凄いじゃない。古参のファンとかもいるんでしょ?」
MEIKO:「おかげさまで」
MEIKOのファンクラブは、MEIKOのイメージカラーである赤い法被やTシャツなどで統一している。
サイリウムの色も当然赤。
ボーカロイドはそれぞれ各自、イメージカラーを持っている。
但し、その数が増えつつある為、1色では足りない個体も出て来た。
例えばMEGAbyteの1人であるLilyは黄色と黒である(黄色だけだと鏡音リン・レンと被る為)。
[同日20:40.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル]
昼間であれば正面エントランスの前か、地下駐車場を経由しての車寄せに着けるのがデフォである。
しかし夜間で正面エントランスが閉まっている時間は、地下階の車寄せも閉まっている為、こういう時はビル裏手の通用口に着けてもらう。
地下1階へ下りる階段があり、そこを下りると防災センターの受付前に差し掛かる。
受付には常に警備員が座っている。
シンディ:「18F敷島エージェンシーです」
MEIKO:「同じく」
2人のロイドはテナント入館証を提示した。
警備員:「はい、どうもお疲れさまです」
警備員は頷いた。
さすがにここには、セキュリティロボットは配置されていない。
まだまだ実験段階で、一般には出回っていないのが実情だ。
奥に進むとエレベーターホールがあり、そこから18階まで一気に上がる。
MEIKO:「シンディも泊まるの?」
シンディ:「ええ。社長がそうしろって」
MEIKO:「シンディがいてくれた方が安心だね」
シンディ:「そう言ってくれるの、MEIKOくらいだよ」
事務室に寄ると、井辺が残っていた。
井辺:「ああ、MEIKOさん、お疲れさまです」
MEIKO:「ただいま帰りました」
井辺:「先ほどKAITOさんも、別のホテルのディナーショーから帰って来たところですよ」
MEIKO:「KAITOもやるねぇ……」
シンディ:「私はKAITOの方は何も言われてないよ?」
井辺:「KAITOさんの方は青野さん(専属マネージャー)が付いていましたから結構です」
シンディ:「MEIKOはもう上がっていいでしょ?」
井辺:「はい。明日は9時からグラビアの撮影が入ってますね。どうぞ、先に休んでてください」
MEIKO:「それじゃ、お疲れさまでしたー」
シンディ:「お疲れ様」
MEIKOは事務室を出て、奥の部屋に向かった。
図面上はボーカロイドを保管しておく倉庫ということになっているが、実際は各個室で区切られている。
井辺:「シンディさんもどうぞ」
シンディ:「いや、一応、ここの警備を社長から頼まれてる以上はプロデューサーが帰るまでここにいるわ」
井辺:「ボカロフェスのことなので、帰りは最終バスになると思います」
シンディ:「プロジューサーは錦糸町のマンションだっけ?それだと豊洲駅前21時53分発だね。了解」
もちろん、それより遅くなった場合はタクシーで帰っても良いことになっている。
シンディ:「コーヒーでも入れようか?」
井辺:「あー……じゃ、お願いします」
シンディ:「ちょっと待っててね」
シンディは給湯室に向かった。
シンディ:(社長が自分の片腕にしたいのは分かるし、確かに仕事はできるけど、多分アンドロイドマスターには……ちょっと足りないかな。レイチェルにいいように使われたくらいだしね)
クリプトン製ボーカロイドの年少組がメディアに露出しているのに対し、試作機などの年長組はメディアに出る機会は少なくなりつつある。
その代わり、ライブやディナーショーに出ることが多い。
MEIKO:「いやだよmorning♪夜明けが来なきゃ〜♪煙草にまかれ〜て〜♪」
MEIKOは本来、初音ミクの持ち歌になる予定だった自分の持ち歌を披露していた。
衣装はデフォルト(公式イラスト)の赤いバドスーツである。
初音ミクに対し楽曲を提供している音楽家がプロデュースしたものなのだが、歌詞の内容に煙草や酒が出てくる為、設定年齢16歳の初音ミクが歌うには不適切だと待ったが掛かり、急遽、成人女性ボーカロイドのMEIKOが代わりに持ち歌にすることにした次第。
こういった例は他にもあり、例えばアニメ“創聖のアクエリオン”のテーマソングを歌っていたのが、当時未成年だったAKINOだった。
ところがこのアニメがCR機としてリリースされることになり、未成年歌手の歌をそのまま使うことに抵抗があったのか、成人だけで構成された声優達が歌っているバージョン(エレメント合体バージョン)に差し替えられている。
MEIKO:「ありがとうございました」
歌い終わった後で、拍手が巻き起こる。
MEIKO:「今日は皆様、私ボーカロイド、MEIKOのディナーショーにお越し頂き、真にありがとうございます。私も今ではボーカロイドの中では最古参(※)となりましたが、まだまだ新型機には負けないように頑張りますので、よろしくお願い致します」
※クリプトン製としてではなく、他メーカーも含めて、本当に最古の試作機だと思う。
MEIKO:「こう見えまして、実は3回ほどボディを丸ごと交換しているんです」
どよめく客席。
MEIKO:「ですから、製造年月日は最古ですけど、機器はそんなに古くないのでご安心ください」
ドッと笑いが起きる客席。
[同日20:30.天候:晴 同ホテル前]
MEIKO:(もうこんな時間か。早いとこタクシー拾って、事務所に戻らなきゃ)
因みに専属マネージャーは、急用で先に事務所に戻っていた。
MEIKOはいつもの衣装の上から、ベージュのコートを羽織っている。
関係者用通用口から外に出ると、MEIKOを迎えに来ている者がいた。
シンディ:「よ、お疲れさん」
MEIKO:「シンディ」
シンディ:「社長に頼まれてね、あなたを迎えに来たよ」
MEIKO:「あー、それはありがとう。別に、1人で帰れるのに……」
シンディ:「何かと物騒だからだってさ。ボーカロイドは用途上、戦闘力は持ってないからね」
MEIKO:「まあね」
シンディとMEIKOは大通りに出てタクシーを拾った。
シンディ:「豊洲4丁目までお願いします」
運転手:「はい、豊洲4丁目ですね」
タクシーが走り出す。
MEIKO:「アリス博士の護衛はしなくていいの?」
シンディ:「二海もそこそこ強いしね。年度初めになって、博士もそんなに忙しくなったわけじゃないから。お坊ちゃまの相手は、二海とアリス博士ご自身で大丈夫みたいだね」
MEIKO:「ふーん……。何だか、エミリーが来てから手持無沙汰?」
シンディ:「そうかもね。社長的には姉さんと私を交互に使いたいらしいけど、姉さんが嫌がってるみたい」
MEIKO:「エミリーって意外と独占欲強いんだね。昔は南里博士一筋って感じだったのに」
シンディ:「姉さんに限らず、マルチタイプにはよくあることよ。私だって前のボディの時は、ウィリアム博士一辺倒だったもんね。その博士の為だったら、自爆も厭わない的な?」
MEIKO:「なるほど。(その割には暴走して惨殺したんだよねぇ、このロイド)」
タクシーのラジオからは、初音ミクの歌が聞こえて来た。
MEIKO:「お、ミクの歌だ」
シンディ:「“ワンダーランドと羊の歌”か。ミクが1番持ち歌多いかな」
MEIKO:「まあ、私みたいな試作型と違って、ミクは量産先行機だからね」
シンディ:「その試作機も、ちゃんと人気が維持できてるんだから凄いじゃない。古参のファンとかもいるんでしょ?」
MEIKO:「おかげさまで」
MEIKOのファンクラブは、MEIKOのイメージカラーである赤い法被やTシャツなどで統一している。
サイリウムの色も当然赤。
ボーカロイドはそれぞれ各自、イメージカラーを持っている。
但し、その数が増えつつある為、1色では足りない個体も出て来た。
例えばMEGAbyteの1人であるLilyは黄色と黒である(黄色だけだと鏡音リン・レンと被る為)。
[同日20:40.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル]
昼間であれば正面エントランスの前か、地下駐車場を経由しての車寄せに着けるのがデフォである。
しかし夜間で正面エントランスが閉まっている時間は、地下階の車寄せも閉まっている為、こういう時はビル裏手の通用口に着けてもらう。
地下1階へ下りる階段があり、そこを下りると防災センターの受付前に差し掛かる。
受付には常に警備員が座っている。
シンディ:「18F敷島エージェンシーです」
MEIKO:「同じく」
2人のロイドはテナント入館証を提示した。
警備員:「はい、どうもお疲れさまです」
警備員は頷いた。
さすがにここには、セキュリティロボットは配置されていない。
まだまだ実験段階で、一般には出回っていないのが実情だ。
奥に進むとエレベーターホールがあり、そこから18階まで一気に上がる。
MEIKO:「シンディも泊まるの?」
シンディ:「ええ。社長がそうしろって」
MEIKO:「シンディがいてくれた方が安心だね」
シンディ:「そう言ってくれるの、MEIKOくらいだよ」
事務室に寄ると、井辺が残っていた。
井辺:「ああ、MEIKOさん、お疲れさまです」
MEIKO:「ただいま帰りました」
井辺:「先ほどKAITOさんも、別のホテルのディナーショーから帰って来たところですよ」
MEIKO:「KAITOもやるねぇ……」
シンディ:「私はKAITOの方は何も言われてないよ?」
井辺:「KAITOさんの方は青野さん(専属マネージャー)が付いていましたから結構です」
シンディ:「MEIKOはもう上がっていいでしょ?」
井辺:「はい。明日は9時からグラビアの撮影が入ってますね。どうぞ、先に休んでてください」
MEIKO:「それじゃ、お疲れさまでしたー」
シンディ:「お疲れ様」
MEIKOは事務室を出て、奥の部屋に向かった。
図面上はボーカロイドを保管しておく倉庫ということになっているが、実際は各個室で区切られている。
井辺:「シンディさんもどうぞ」
シンディ:「いや、一応、ここの警備を社長から頼まれてる以上はプロデューサーが帰るまでここにいるわ」
井辺:「ボカロフェスのことなので、帰りは最終バスになると思います」
シンディ:「プロジューサーは錦糸町のマンションだっけ?それだと豊洲駅前21時53分発だね。了解」
もちろん、それより遅くなった場合はタクシーで帰っても良いことになっている。
シンディ:「コーヒーでも入れようか?」
井辺:「あー……じゃ、お願いします」
シンディ:「ちょっと待っててね」
シンディは給湯室に向かった。
シンディ:(社長が自分の片腕にしたいのは分かるし、確かに仕事はできるけど、多分アンドロイドマスターには……ちょっと足りないかな。レイチェルにいいように使われたくらいだしね)