報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「いま、再びの関東へ」

2017-04-10 19:36:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月28日16:00.天候:晴 千葉県成田市 成田国際空港]

 稲生達を乗せた飛行機が成田空港へと着陸する。
 この際、機体に取り付けられたカメラで着陸の模様を機内モニタにて中継されるのだが、稲生には緊張を維持する為のツールでしか無かった。

 マリア:「見なければいいんじゃないか?」
 稲生:「でもそれだと、いつ着陸の衝撃があるか分からない!」
 マリア:「クイーン・アッツァーの時、飛空艇に乗ったじゃないか」
 稲生:「あれはアッツァー号から命からがら脱出する時だったんで、それどころじゃなかったんですよ」
 イリーナ:「そろそろ降りるよー」
 稲生:「あ、はい」

 どうやらもうターミナルに降りれるようだ。
 稲生とマリアはハットラックから手荷物を降ろして、通路を進んだ。

 稲生:「それにしても、どうして飛行機はいつも『お出口は左側』なんですか?」
 イリーナ:「何でって言われてもなぁ……。船が必ずそうしていたから、飛行機も真似ただけだと思うよ」
 稲生:「それだけ!?」

 では何故船がそうしていたのかは、鉄ヲタでは分からない。

 イリーナ:「うへ……集まってる」

 イリーナが嫌そうな顔をしたのは、既に到着ロビーの所にアナスタシア組とマルファ組(1人だけだが)が勢ぞろいしていたからだ。
 黒服集団がズラッと並ぶその様は、はっきり言って異様としか言いようが無い。

 アナスタシア:「ダンテ先生、よくぞ御無事であそばされました。このアナスタシア・ペレ・スロネフ以下25名、心よりお喜び申し上げます」
 ダンテ:「うむ。出迎え、ご苦労」
 アナスタシア:「今宵は先生の為に、盛大なパーティーを御用意致しましたので、ご案内致します」
 イリーナ:「ハラーショ!タダ酒〜!」
 マルファ:「コサックダンス、踊りまショウ!」
 アナスタシア:「オマエらに奢る酒など無いわ!だいたい、なに!?今回の件について、完璧さが全く見られない上に無駄なルートと時間掛け過ぎ!」
 イリーナ:「いや、先生から頼まれたことについては完遂できたわけだしぃ……」
 アナスタシア:「このドアホ!100%できるのは当たり前!最低でも150%はできないとダンテ流魔道師の名が廃るッ!」
 マリア:「ユウタ、何がどう150%なんだろう?」
 稲生:「恐らく今回の件がよくできたから、次は50%の成果でも十分って意味ですよ」
 マリア:「おー」
 アナスタシア:「勝手に100%と50%に分割するな!」
 ダンテ:「まあまあ、ここで立ち話もなんだから、早くホテルに行こう。私も疲れたよ」
 アナスタシア:「イリーナ!よくもダンテ先生を疲れさせたわね!あとで説教よ!」
 イリーナ:「いや、同期のアンタに説教されたくないし。てか、先生が疲れたのはアンタの暑苦しい出迎えだと思う」
 ダンテ:「まあまあ。ここはそろそろ解散した方がいいということだね。それじゃ、イリーナ組の皆はここまでってことで。ほんと、今回はどうもありがとう。良い旅だったよ。特に稲生君、とても素晴らしいプランだった。ルゥ・ラで一っ飛びするだけでは味わえない旅情というものを楽しませてもらったよ」
 稲生:「こちらこそ、大変光栄です。ありがとうございました」
 マルファ:「えー、もう帰っちゃうのー?一緒にパーティーやろーよー!」
 イリーナ:「アンタがナスターシャ達を説得できたら、是非ともそうしたいわ」
 マルファ:「えーと……。んじゃ、そういうことで!」
 イリーナ:「うんうん、やっぱそうなるよね」

 ここでイリーナ組はダンテやアナスタシア達と別れる。

 稲生:「取りあえず、成田空港からは離れようと思います」
 イリーナ:「まあ、ナスターシャもそうしてくれた方がありがたいだろうねぇ……」
 マリア:「東アジア魔道団は敵組織だということが分かりましたが、門内でもそういうのがいるとは……」
 イリーナ:「ま、魔道師にも色んなジャンルがあるからねぇ。それぞれに重い過去を引きずっていたりいなかったりで、結局は色々な個性派が集まるってことさ」
 稲生:「なるほど。何か、僕だけ過去が軽くて申し訳ないですね」
 イリーナ:「いいのいいの。むしろ、それがいいんだから。皆、暗い過去の魔女達だけ集まったりでもしたら、絶対そんなの楽しくないから」
 稲生:「はあ……」
 イリーナ:「それより気づいた?アンナがユウタ君のこと、ガン見してたよ?惚れられちゃったかねぇ……」
 マリア:「ええ。私が睨み返しておきました
 稲生:「えーと……。それじゃ……うわっ、もうこんな時間!?」
 イリーナ:「え……?」
 マリア:「なに?」

[同日16:22.天候:晴 JR空港第2ビル駅]

〔「1番線に到着の電車は16時22分発、特急“成田エクスプレス”36号、大船行きと新宿行きです」〕

 稲生:「間に合ったー!」
 マリア:「ユウタ、スケジュール、ギリギリ!」
 稲生:「すいませーん!」
 イリーナ:「ナスターシャの相手、まともにしなくて良かったねぃ……」

 稲生達は12号車に乗り込んだ。
 そこはグリーン車である。
 もちろん、弟子達だけなら乗れない場所だ。

 マリア:「久しぶりに走ったから汗かいた……」

 マリアは座席に腰掛けると、着ていたローブを脱いだ。
 停車時間は短く、電車は稲生達を乗せるとすぐに発車した。

 稲生:「すいません、走らせちゃって……。今度の宿泊先のホテル、大浴場がありますから、そこでゆっくりできますよ」
 マリア:「ほんと?温泉か?」
 稲生:「完全な天然温泉ではないですけどね」
 イリーナ:「さすがは稲生君。そこはちゃんと忘れてないね」
 稲生:「もちろんです。明日は高速バスなので、帰りは楽ですよ」
 イリーナ:「おっ、それはいいね。あ、それで新宿行きなんだ」
 稲生:「そうです」
 イリーナ:「終点まで乗るんだったら、また寝させてもらうよ。着いたら起こしてね」
 稲生:「は、はい」

 グリーン車は空いていて、イリーナの隣に座る者はいなかった。

 マリア:「ユウタ、ちょっとトイレ行ってくる」
 稲生:「あ、どうぞ」

 マリアは稲生の足を跨いで通路に出た。

 イリーナ:「何だかんだ言って、あの大先生と一緒だと気疲れするよねぇ……」
 稲生:「先生もですか?」
 イリーナ:「アタシが頭が上がらないくらいさ。あ、ユウタ君はアタシに気を使わなくていいからね」
 稲生:「いえ、そういうわけには……」
 イリーナ:「だろ?そういうもんさ。日本には無礼講なんて言葉があるけどね、ありゃ『無礼講という名の気づかい』だ。今頃、ナスターシャ達もそれの準備をしていることでしょう」
 稲生:「アナスタシア先生の場合、無礼講というよりは接待のような気がしますが……」
 イリーナ:「正しくそれ。アタシはそれをするのもされるのも嫌いでねぇ、本当に楽しいパーティだったら大歓迎なんだけどほぉ……」

 イリーナは最後に欠伸をした。

 稲生:「あー、着いたら起こしますんで」
 イリーナ:「ん、頼んだよ」

 イリーナはフードを深く被り、グリーン車ならではの深いリクライニングを倒して仮眠モードに入った。
 新型車両の“成田エクスプレス”は、イリーナやマリアも含めた多くの外国人旅行客を乗せて東京方面へ向かう。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師達の旅」 3

2017-04-10 14:52:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月28日13:58.天候:晴 SAT仙台空港駅→仙台空港ターミナル]

 稲生達を乗せた快速電車は、軽やかな速度で仙台空港へ向かっていた。
 仙台空港駅の手前で、滑走路の下を潜る地下トンネルに入る。

 稲生:「東日本大震災の時は、このトンネルに水が入り込んで、ここが1番復旧に時間が掛かったそうですよ」
 ダンテ:「東日本大震災ねぇ……。私ですら、あれは予知できなかった。バァルとはあの時、久しぶりに大ゲンカしたよ」

 ダンテに騙されて冥界の奥深くへと追いやられたことを知ったダンテが、大水晶を使って魔力を増幅させてその力を大爆発させた。
 その多大な影響を受けたものが、東日本大震災だったという。
 ……のだが、どうも話を聞いていると、少し矛盾していることが多い。
 マリアやエレーナが、その時に限って魔界にいたのは何故か。
 バァルの復活に備える為とはいえ、ザコ魔法使い同然だった2人に何かできるものではなかったはずだ。

〔まもなく終点、仙台空港、仙台空港。お出口は、左側です。今日も仙台空港アクセス鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 仙台空港アクセス線内は単線であり、上下線とは途中駅で行き違いを行う。
 美田園(みたぞの)駅と仙台空港駅の間は3キロ以上離れている上、トンネルがあったり、トンネルを出るとすぐ高架線に入るせいか(しかもカーブしている)、見通しが悪い。
 特に仙台空港方面で、トンネルから出ようとすると場内信号機が見づらい為か、遠方信号機が設置されている。
 これは閉塞信号機と違い、防護区間を持たない従属信号機であるが、中継信号機と違うのは、停止表示が無いことである。
 場内信号機に従属して設置されるもので、場内信号機が停止であった場合は注意信号(黄色)となり、運転士に減速を指示する。
 (作者が数年前に確認した際、場内信号機は進行と停止の2灯式だった。単線区間で停止を現示されて停車しても、それでは対向電車が行き違いできない為、結局は美田園駅で停車していなければならないことになり、ただ単に運転士に1番線と2番線、どっちのホームに入るかを指示する為の信号……という役割が実質的だろう)

 運転士:「遠方、進行!」

 と、歓呼した後、

 運転:「場内、進行!2番!制限、20!」

 という歓呼をしていると思われる(仙台空港駅2番線の進入速度は20キロ)。
 仙台空港駅は頭端式のホームである為、進入速度も低めに抑えられているのだろう。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台空港、仙台空港です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 ドアが開いて乗客達が一斉に降り出す。

 稲生:「すぐに搭乗手続きしますか?」
 ダンテ:「できるのかい?」
 稲生:「ええ。残り1時間切りましたから」
 ダンテ:「そうか。それならそうしよう。国内線だから国際線ほど慌てる必要は無いのだろうが、早いに越したことは無い」
 稲生:「分かりました」

 ホームから改札口からターミナルまでの通路はフラットであり、段差は無い。
 有効長は6両編成分だが、ほとんどが2両編成での運転なので、ホーム先端部分が余っている状態だ。

 稲生:「これが航空チケットです」
 ダンテ:「おっ、ありがとう」
 イリーナ:「ANA3234便か」
 マリア:「あまり大きな飛行機じゃない?」
 稲生:「そうですね。ポーイング737-500?……737系500番台?」
 マリア:「いや、それ違う!」

 手荷物検査場を通る。
 X線検査の際、ベルトコンベアで荷物が移動するのだが……。
 トレイの上に乗っていたミク人形とハク人形。

 ミク人形:「バイビー」

 ミク人形とハク人形、入る時はメイド服だったのだが……。

 係員:「あれ!?」

 出て来た時、ミク人形はタキシードとタイにシルクハット、ハク人形はバニーガールの衣装になっていた。

 稲生:「いや、手品の瞬間移動じゃないんだから!」
 係員:「お客様、こちらはロボットか何かですか?」
 マリア:「すいません、魔法解くの忘れてました」
 稲生:「ロボットです!今、電池抜きますんで!」
 イリーナ:「あらあら……」

 毎度のことながら、手荷物検査の際に何かがある魔道師達。

 ダンテ:「ボクは何も無いよ」
 イリーナ:「先生、誰に向かって言ってるんですか?」
 ダンテ:「はっはっはっ!そこは華麗にスルーしてくれたまえ」
 稲生:「ていうか、マジで背中に電池背負ってたし!」
 マリア:「電池って機内持ち込みOKだったっけ?」

 弟子2人が1番遅かった。

 稲生:「すいません、遅くなりました」
 ダンテ:「はっはっはっ!何も問題は無いよ」
 イリーナ:「ユウタ君は地上の乗り物オンリーかねぇ……」
 稲生:「そのようです」
 ダンテ:「まあまあ。それより、搭乗時間までまだ少し間があるから、ゆっくりしておこう」
 イリーナ:「はい」

[同日14:55.天候:晴 ANA3234便機内]

 機内のシート配置は中央に通路があり、その両隣に3人席が並んでいるタイプのものだった。

 稲生:「エコノミークラスしか無いんですよ」
 ダンテ:「いやいや、いいよ」

 翼より後ろの方の席、進行方向左側の席に2人ずつ前後して座った。
 因みに人形達はハットラックの中に入っている。
 窓側と中央席に座るが、稲生達の席で通路側に座る者はいなかった。
 満席で飛ぶというわけではないらしい。

 マリア:「緊張しているのか?」
 稲生:「久しぶりの飛行機なもので、少し手に汗握ります」
 マリア:「高い所、苦手?」
 稲生:「別に高層ビルの高層階が嫌ってわけじゃないんですが、やっぱり高い所から下を覗き込もうとすると……フリーズします」
 マリア:「なるほど。それじゃ、ホウキには乗れないな」
 稲生:「ムリです。エレーナみたいに急降下とか、絶対チビります」
 マリア:「うん、そうだね。それじゃ……」

 マリアは肘掛けを握る稲生の左手を握った。

 マリア:「取りあえず、これで安心して」
 稲生:「は、はい!」
 マリア:「大丈夫。師匠がいつものように寝てるってことは、この飛行機は100%安全だってことだ」
 稲生:「な、なるほど……」

 飛行機は離陸の準備を終えて、誘導路へと向かった。
 天候は晴れているから、揺れもそんなに大きくないと思われる。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師達の旅」 2

2017-04-10 10:03:38 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月28日13:15.天候:晴 JR仙山線快速電車内→JR仙台駅在来線ホーム]

〔まもなく終点、仙台、仙台。お出口は、左側です。新幹線、東北本線、仙石線、仙石東北ライン、常磐線、仙台空港アクセス鉄道仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 稲生:「先生方、もうすぐ到着です」
 ダンテ:「お、そうだな。しかし、ここまで来ると電車も賑わうねぇ」
 稲生:「まあ、そうですね」

 電車は4両編成。
 郊外区間ではガラガラだった車内も、今では座席は全部埋まり、立ち客も目立っている状態となっていた。

 ダンテ:「ここで乗り換えだね」
 稲生:「そうです。今度は仙台空港線です」
 ダンテ:「うむ。分かった。そろそろイリーナを起こした方がいいな。イリーナ、そろそろ起きなさい」
 イリーナ:「んん……デスマーチ……」
 稲生:「デスマーチ?」
 イリーナ:「デスマのレッスンが……」
 ダンテ:「いつの夢を見ているのかね?いいから早く起きなさい」

 そうこうしているうちに、電車が仙台駅7番線に入線する。
 ドアが開くと、ぞろぞろと乗客が降りて行く。

〔せんだい〜、仙台〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ようやくイリーナを降ろした魔道師達は、次なる乗り換え先へ向かう。

 稲生:「仙台空港アクセス線の乗り場は3番線です」

 稲生はガラガラとバッグを引っ張りながら、3人を先導する。
 エスカレーターでコンコースに上がり、切り欠きホームになっている3番線に下りた。
 まだ発車までだいぶあるのだが、ホームには既に2両編成の電車が停車していた。
 それまで稲生達が乗って来た仙山線の車両、E721系と同じではあるのだが、塗装と内装が異なっている。
 SAT721系というタイプで、これはこの仙台空港アクセス線を運行している仙台空港アクセス鉄道の車両である。
 塗装も青が目立ち、内装も赤系のモケットが目立った。

 稲生:「それじゃまあ、こちらに」
 ダンテ:「うん」

 因みにSAT721系を含むE721系のボックスシートは、従来車に比べると広めに造られている。
 横幅が、というよりは前後が。
 明らかに、首都圏中距離電車のそれより実感できる広さになっている。

〔この電車は仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きです〕

 稲生:「何か、飲み物でも買ってきましょう」
 ダンテ:「うむ、頼むとするか。できれば、デザートも頼めるかな?何しろ、弁当だけだったからな」
 稲生:「あ、はい」
 マリア:「ユウタ。私も行こう。人形達にそろそろ買って行かないと、電車が運転できなくなる」
 稲生:「え?……あ」

 網棚ではなく座席の上に置いたバッグの中から、メイド服姿の人形2体が現れて、何かを喋っていた。

 ミカエラ:「スイーツ」
 クラリス:「スイーツ」
 稲生:「な、なるほど……」

 稲生達はホームのキヨスクに向かった。

 稲生:「やっぱり人形達はアイスですか?」
 マリア:「今のところ、それだけで済んでいるから安いものだ」
 稲生:(アイスクリームを食べるメイド人形……)

 稲生はお土産用のずんだ餅に目をやった。

 稲生:「これなんかいいんじゃないかな?」
 マリア:「あー、それはダメだ」
 稲生:「えっ、どうしてです?ずんだ餅、美味しいですよ」
 マリア:「昔、大師匠様がオランダ人に化けて日本に入国した際、出された餅を喉に詰まらせて、危うく死にかけた過去があったらしい」
 稲生:「わざわざオランダ人に化けてってことは、江戸時代の話ですか。ていうか当時、オランダ人に餅出した日本人がいたのか……。初めて聞いた」
 マリア:「それ以来、餅はトラウマだ」
 稲生:「今や、世界を裏から操れる力をお持ちの大師匠様がねぇ……」
 マリア:「つまり、魔法は凄い力だけれども、万能ではないってことさ。私だって昔、異形の者から情報を聞き出す際に、ティーカップ半分くらいの血を提供してやっと聞き出したことがある」
 稲生:(何の情報かは聞かない方がいいんだろうなぁ……)

 買い物をして稲生達は戻って来た。

 稲生:「すいません、センス無くてこういうので」
 ダンテ:「いやいや、結構だ」

 結局、全部アイスクリームになった。

 ミカエラ:「美味い!」
 クラリス:「テーレッテレー♪」
 イリーナ:「……あなたの人形達、何か古いギャグやってるよ?魔法使いなだけに……」
 マリア:「そのギャグに気づく師匠も師匠です」
 稲生:「?」

 35歳以上の読者しか分からないネタでしたw

[同日13:41.天候:晴 仙台空港アクセス線・後部車両]

 2両編成の電車は多くの乗客を乗せて発車した。
 仙台空港アクセス線は、例えJR線内である仙台〜名取間においてもワンマン運転を行う。
 但し、地方のワンマン列車と違って、ドア扱いは他のツーマン電車と同じく全車両開閉する(但し、半自動)。
 これはこのワンマン電車の運行区間全駅において、無人駅が1つも無いからである。
 座席は全部埋まり、立ち客も結構いる状態なので、そろそろ4両編成を常態化させても良いのかも。

〔今日も仙台空港アクセス鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きです。途中の停車駅は名取です。次は、名取です。……〕

 稲生:「この電車はずっと地上区間、もしくは高架区間を走るだけなので大丈夫だと思うんですが……」
 ダンテ:「うん?」
 稲生:「いえ、さっきの仙山線で、面白山トンネルを潜ったわけですよ。山形県と宮城県の県境の長いトンネルですね」
 ダンテ:「ああ。途中に冥界鉄道公社の列車が停車していたって?本当に困ったものだねぇ……」

 面白山トンネルの中には面白山信号場という、行き違い設備がある。
 仙山線は全区間単線なので、どこかで上下線の電車を行き違いさせる設備が必要となる。
 それは大抵、途中駅なのであるが、山岳区間となると駅間距離も長くなり、また全駅に行き違い設備があるわけではないことから、トンネル内にそういう信号場が設けられた。
 もっとも、今はそれは通常使用はされていない。
 なので通常の定期列車がそこを通過しても、それを待つ別の列車が止まっていることは基本的に無い。
 ……はずなのだが、今回はあった。
 それも、廃車になったはずの455系。
 もちろん、冥鉄列車は普通の人間の目には見えないことから、あれが見えたのは魔道師達だけであろう。

 ダンテ:「本来はこの世界に干渉してはいけないとされるものの1つなんだから、あれで隠れてるつもりだというのなら、ちょっと指摘が必要かもしれないね」
 稲生:「はい」

 もちろん、仙山線の運行に支障は無かったわけだが。
 仙台空港アクセス鉄道はまだ新しい鉄道ということもあってか、まだ冥鉄の洗礼を受けてはいないようである。
 春の日差しを浴びて、その快速電車は名取駅までJRの線路を突き進む。
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