[3月28日16:00.天候:晴 千葉県成田市 成田国際空港]
稲生達を乗せた飛行機が成田空港へと着陸する。
この際、機体に取り付けられたカメラで着陸の模様を機内モニタにて中継されるのだが、稲生には緊張を維持する為のツールでしか無かった。
マリア:「見なければいいんじゃないか?」
稲生:「でもそれだと、いつ着陸の衝撃があるか分からない!」
マリア:「クイーン・アッツァーの時、飛空艇に乗ったじゃないか」
稲生:「あれはアッツァー号から命からがら脱出する時だったんで、それどころじゃなかったんですよ」
イリーナ:「そろそろ降りるよー」
稲生:「あ、はい」
どうやらもうターミナルに降りれるようだ。
稲生とマリアはハットラックから手荷物を降ろして、通路を進んだ。
稲生:「それにしても、どうして飛行機はいつも『お出口は左側』なんですか?」
イリーナ:「何でって言われてもなぁ……。船が必ずそうしていたから、飛行機も真似ただけだと思うよ」
稲生:「それだけ!?」
では何故船がそうしていたのかは、鉄ヲタでは分からない。
イリーナ:「うへ……集まってる」
イリーナが嫌そうな顔をしたのは、既に到着ロビーの所にアナスタシア組とマルファ組(1人だけだが)が勢ぞろいしていたからだ。
黒服集団がズラッと並ぶその様は、はっきり言って異様としか言いようが無い。
アナスタシア:「ダンテ先生、よくぞ御無事であそばされました。このアナスタシア・ペレ・スロネフ以下25名、心よりお喜び申し上げます」
ダンテ:「うむ。出迎え、ご苦労」
アナスタシア:「今宵は先生の為に、盛大なパーティーを御用意致しましたので、ご案内致します」
イリーナ:「ハラーショ!タダ酒〜!」
マルファ:「コサックダンス、踊りまショウ!」
アナスタシア:「オマエらに奢る酒など無いわ!だいたい、なに!?今回の件について、完璧さが全く見られない上に無駄なルートと時間掛け過ぎ!」
イリーナ:「いや、先生から頼まれたことについては完遂できたわけだしぃ……」
アナスタシア:「このドアホ!100%できるのは当たり前!最低でも150%はできないとダンテ流魔道師の名が廃るッ!」
マリア:「ユウタ、何がどう150%なんだろう?」
稲生:「恐らく今回の件がよくできたから、次は50%の成果でも十分って意味ですよ」
マリア:「おー」
アナスタシア:「勝手に100%と50%に分割するな!」
ダンテ:「まあまあ、ここで立ち話もなんだから、早くホテルに行こう。私も疲れたよ」
アナスタシア:「イリーナ!よくもダンテ先生を疲れさせたわね!あとで説教よ!」
イリーナ:「いや、同期のアンタに説教されたくないし。てか、先生が疲れたのはアンタの暑苦しい出迎えだと思う」
ダンテ:「まあまあ。ここはそろそろ解散した方がいいということだね。それじゃ、イリーナ組の皆はここまでってことで。ほんと、今回はどうもありがとう。良い旅だったよ。特に稲生君、とても素晴らしいプランだった。ルゥ・ラで一っ飛びするだけでは味わえない旅情というものを楽しませてもらったよ」
稲生:「こちらこそ、大変光栄です。ありがとうございました」
マルファ:「えー、もう帰っちゃうのー?一緒にパーティーやろーよー!」
イリーナ:「アンタがナスターシャ達を説得できたら、是非ともそうしたいわ」
マルファ:「えーと……。んじゃ、そういうことで!」
イリーナ:「うんうん、やっぱそうなるよね」
ここでイリーナ組はダンテやアナスタシア達と別れる。
稲生:「取りあえず、成田空港からは離れようと思います」
イリーナ:「まあ、ナスターシャもそうしてくれた方がありがたいだろうねぇ……」
マリア:「東アジア魔道団は敵組織だということが分かりましたが、門内でもそういうのがいるとは……」
イリーナ:「ま、魔道師にも色んなジャンルがあるからねぇ。それぞれに重い過去を引きずっていたりいなかったりで、結局は色々な個性派が集まるってことさ」
稲生:「なるほど。何か、僕だけ過去が軽くて申し訳ないですね」
イリーナ:「いいのいいの。むしろ、それがいいんだから。皆、暗い過去の魔女達だけ集まったりでもしたら、絶対そんなの楽しくないから」
稲生:「はあ……」
イリーナ:「それより気づいた?アンナがユウタ君のこと、ガン見してたよ?惚れられちゃったかねぇ……」
マリア:「ええ。私が睨み返しておきました」
稲生:「えーと……。それじゃ……うわっ、もうこんな時間!?」
イリーナ:「え……?」
マリア:「なに?」
[同日16:22.天候:晴 JR空港第2ビル駅]
〔「1番線に到着の電車は16時22分発、特急“成田エクスプレス”36号、大船行きと新宿行きです」〕
稲生:「間に合ったー!」
マリア:「ユウタ、スケジュール、ギリギリ!」
稲生:「すいませーん!」
イリーナ:「ナスターシャの相手、まともにしなくて良かったねぃ……」
稲生達は12号車に乗り込んだ。
そこはグリーン車である。
もちろん、弟子達だけなら乗れない場所だ。
マリア:「久しぶりに走ったから汗かいた……」
マリアは座席に腰掛けると、着ていたローブを脱いだ。
停車時間は短く、電車は稲生達を乗せるとすぐに発車した。
稲生:「すいません、走らせちゃって……。今度の宿泊先のホテル、大浴場がありますから、そこでゆっくりできますよ」
マリア:「ほんと?温泉か?」
稲生:「完全な天然温泉ではないですけどね」
イリーナ:「さすがは稲生君。そこはちゃんと忘れてないね」
稲生:「もちろんです。明日は高速バスなので、帰りは楽ですよ」
イリーナ:「おっ、それはいいね。あ、それで新宿行きなんだ」
稲生:「そうです」
イリーナ:「終点まで乗るんだったら、また寝させてもらうよ。着いたら起こしてね」
稲生:「は、はい」
グリーン車は空いていて、イリーナの隣に座る者はいなかった。
マリア:「ユウタ、ちょっとトイレ行ってくる」
稲生:「あ、どうぞ」
マリアは稲生の足を跨いで通路に出た。
イリーナ:「何だかんだ言って、あの大先生と一緒だと気疲れするよねぇ……」
稲生:「先生もですか?」
イリーナ:「アタシが頭が上がらないくらいさ。あ、ユウタ君はアタシに気を使わなくていいからね」
稲生:「いえ、そういうわけには……」
イリーナ:「だろ?そういうもんさ。日本には無礼講なんて言葉があるけどね、ありゃ『無礼講という名の気づかい』だ。今頃、ナスターシャ達もそれの準備をしていることでしょう」
稲生:「アナスタシア先生の場合、無礼講というよりは接待のような気がしますが……」
イリーナ:「正しくそれ。アタシはそれをするのもされるのも嫌いでねぇ、本当に楽しいパーティだったら大歓迎なんだけどほぉ……」
イリーナは最後に欠伸をした。
稲生:「あー、着いたら起こしますんで」
イリーナ:「ん、頼んだよ」
イリーナはフードを深く被り、グリーン車ならではの深いリクライニングを倒して仮眠モードに入った。
新型車両の“成田エクスプレス”は、イリーナやマリアも含めた多くの外国人旅行客を乗せて東京方面へ向かう。
稲生達を乗せた飛行機が成田空港へと着陸する。
この際、機体に取り付けられたカメラで着陸の模様を機内モニタにて中継されるのだが、稲生には緊張を維持する為のツールでしか無かった。
マリア:「見なければいいんじゃないか?」
稲生:「でもそれだと、いつ着陸の衝撃があるか分からない!」
マリア:「クイーン・アッツァーの時、飛空艇に乗ったじゃないか」
稲生:「あれはアッツァー号から命からがら脱出する時だったんで、それどころじゃなかったんですよ」
イリーナ:「そろそろ降りるよー」
稲生:「あ、はい」
どうやらもうターミナルに降りれるようだ。
稲生とマリアはハットラックから手荷物を降ろして、通路を進んだ。
稲生:「それにしても、どうして飛行機はいつも『お出口は左側』なんですか?」
イリーナ:「何でって言われてもなぁ……。船が必ずそうしていたから、飛行機も真似ただけだと思うよ」
稲生:「それだけ!?」
では何故船がそうしていたのかは、鉄ヲタでは分からない。
イリーナ:「うへ……集まってる」
イリーナが嫌そうな顔をしたのは、既に到着ロビーの所にアナスタシア組とマルファ組(1人だけだが)が勢ぞろいしていたからだ。
黒服集団がズラッと並ぶその様は、はっきり言って異様としか言いようが無い。
アナスタシア:「ダンテ先生、よくぞ御無事であそばされました。このアナスタシア・ペレ・スロネフ以下25名、心よりお喜び申し上げます」
ダンテ:「うむ。出迎え、ご苦労」
アナスタシア:「今宵は先生の為に、盛大なパーティーを御用意致しましたので、ご案内致します」
イリーナ:「ハラーショ!タダ酒〜!」
マルファ:「コサックダンス、踊りまショウ!」
アナスタシア:「オマエらに奢る酒など無いわ!だいたい、なに!?今回の件について、完璧さが全く見られない上に無駄なルートと時間掛け過ぎ!」
イリーナ:「いや、先生から頼まれたことについては完遂できたわけだしぃ……」
アナスタシア:「このドアホ!100%できるのは当たり前!最低でも150%はできないとダンテ流魔道師の名が廃るッ!」
マリア:「ユウタ、何がどう150%なんだろう?」
稲生:「恐らく今回の件がよくできたから、次は50%の成果でも十分って意味ですよ」
マリア:「おー」
アナスタシア:「勝手に100%と50%に分割するな!」
ダンテ:「まあまあ、ここで立ち話もなんだから、早くホテルに行こう。私も疲れたよ」
アナスタシア:「イリーナ!よくもダンテ先生を疲れさせたわね!あとで説教よ!」
イリーナ:「いや、同期のアンタに説教されたくないし。てか、先生が疲れたのはアンタの暑苦しい出迎えだと思う」
ダンテ:「まあまあ。ここはそろそろ解散した方がいいということだね。それじゃ、イリーナ組の皆はここまでってことで。ほんと、今回はどうもありがとう。良い旅だったよ。特に稲生君、とても素晴らしいプランだった。ルゥ・ラで一っ飛びするだけでは味わえない旅情というものを楽しませてもらったよ」
稲生:「こちらこそ、大変光栄です。ありがとうございました」
マルファ:「えー、もう帰っちゃうのー?一緒にパーティーやろーよー!」
イリーナ:「アンタがナスターシャ達を説得できたら、是非ともそうしたいわ」
マルファ:「えーと……。んじゃ、そういうことで!」
イリーナ:「うんうん、やっぱそうなるよね」
ここでイリーナ組はダンテやアナスタシア達と別れる。
稲生:「取りあえず、成田空港からは離れようと思います」
イリーナ:「まあ、ナスターシャもそうしてくれた方がありがたいだろうねぇ……」
マリア:「東アジア魔道団は敵組織だということが分かりましたが、門内でもそういうのがいるとは……」
イリーナ:「ま、魔道師にも色んなジャンルがあるからねぇ。それぞれに重い過去を引きずっていたりいなかったりで、結局は色々な個性派が集まるってことさ」
稲生:「なるほど。何か、僕だけ過去が軽くて申し訳ないですね」
イリーナ:「いいのいいの。むしろ、それがいいんだから。皆、暗い過去の魔女達だけ集まったりでもしたら、絶対そんなの楽しくないから」
稲生:「はあ……」
イリーナ:「それより気づいた?アンナがユウタ君のこと、ガン見してたよ?惚れられちゃったかねぇ……」
マリア:「ええ。私が睨み返しておきました」
稲生:「えーと……。それじゃ……うわっ、もうこんな時間!?」
イリーナ:「え……?」
マリア:「なに?」
[同日16:22.天候:晴 JR空港第2ビル駅]
〔「1番線に到着の電車は16時22分発、特急“成田エクスプレス”36号、大船行きと新宿行きです」〕
稲生:「間に合ったー!」
マリア:「ユウタ、スケジュール、ギリギリ!」
稲生:「すいませーん!」
イリーナ:「ナスターシャの相手、まともにしなくて良かったねぃ……」
稲生達は12号車に乗り込んだ。
そこはグリーン車である。
もちろん、弟子達だけなら乗れない場所だ。
マリア:「久しぶりに走ったから汗かいた……」
マリアは座席に腰掛けると、着ていたローブを脱いだ。
停車時間は短く、電車は稲生達を乗せるとすぐに発車した。
稲生:「すいません、走らせちゃって……。今度の宿泊先のホテル、大浴場がありますから、そこでゆっくりできますよ」
マリア:「ほんと?温泉か?」
稲生:「完全な天然温泉ではないですけどね」
イリーナ:「さすがは稲生君。そこはちゃんと忘れてないね」
稲生:「もちろんです。明日は高速バスなので、帰りは楽ですよ」
イリーナ:「おっ、それはいいね。あ、それで新宿行きなんだ」
稲生:「そうです」
イリーナ:「終点まで乗るんだったら、また寝させてもらうよ。着いたら起こしてね」
稲生:「は、はい」
グリーン車は空いていて、イリーナの隣に座る者はいなかった。
マリア:「ユウタ、ちょっとトイレ行ってくる」
稲生:「あ、どうぞ」
マリアは稲生の足を跨いで通路に出た。
イリーナ:「何だかんだ言って、あの大先生と一緒だと気疲れするよねぇ……」
稲生:「先生もですか?」
イリーナ:「アタシが頭が上がらないくらいさ。あ、ユウタ君はアタシに気を使わなくていいからね」
稲生:「いえ、そういうわけには……」
イリーナ:「だろ?そういうもんさ。日本には無礼講なんて言葉があるけどね、ありゃ『無礼講という名の気づかい』だ。今頃、ナスターシャ達もそれの準備をしていることでしょう」
稲生:「アナスタシア先生の場合、無礼講というよりは接待のような気がしますが……」
イリーナ:「正しくそれ。アタシはそれをするのもされるのも嫌いでねぇ、本当に楽しいパーティだったら大歓迎なんだけどほぉ……」
イリーナは最後に欠伸をした。
稲生:「あー、着いたら起こしますんで」
イリーナ:「ん、頼んだよ」
イリーナはフードを深く被り、グリーン車ならではの深いリクライニングを倒して仮眠モードに入った。
新型車両の“成田エクスプレス”は、イリーナやマリアも含めた多くの外国人旅行客を乗せて東京方面へ向かう。