[12月17日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
敷島:「お、来たか」
科学館の業務用駐車場に1台のミニバンが到着する。
中から降りて来たのは、運転してきたマネージャーの篠里と、後ろに乗っていた初音ミクだった。
ミク:「たかお社長!」
敷島:「無事に到着したな。篠里君、ご苦労さん」
篠里:「いえ、これも業務命令ですから。人間のアイドルのマネージャーには無いことですよ」
敷島:「だろうな」
ミクのオーバーホールは、仕事の関係でこの時間に行われる。
通常の整備はDCJから敷島エージェンシーに派遣されている技術者が行うが、オーバーホールなどの本格的なものについてはここで行われる。
本来はもっと前に行われるはずだったのだが、スケジュールの都合で今日になった。
マリオ:「道ヲ開ケテクダサイ!」
ルイージ:「取材ハ拒否シマス!」
アリスが製造したバージョン5.0の兄弟、赤い塗装のマリオと緑の塗装のルイージがミクの護衛に当たる。
敷島:「おい、バックヤードじゃ集る人もマスコミもいねーよ」
シンディ:「全く。こいつらは……」
マリオとルイージに大げさに護衛をされながら、ミクは研究室に入った。
エミリー:「社長。プロフェッサー平賀は・夕方に・こちらに・参ります」
敷島:「わざわざ取りに来てくれるの?」
エミリー:「本日は・東京都心大学に・特別講義に・来て・おります。その・帰りに・寄るそうです」
敷島:「そうなのか。じゃあ、エミリーを借りた御礼をしないとな」
シンディ:「御馳走の準備をしないとね」
敷島:「いや、平賀先生と夜のナンギン(大宮駅東口南銀座。主に飲み屋街))とキタギン(大宮駅東口北銀座。主に風俗街)を楽しむのだ!」
シンディ:「ほほぉ……。マスターに報告しておくわ」
エミリー:(アンドロイドマスターたるもの、遊びも全力ということね)
シンディ:「アルエットの自爆装置は取り外したの?」
敷島:「ああ。水素電池駆動が危険だって流布されたもんだから、アルエットの場合は大慌てさ。とはいえ、今さらアルエットをバッテリー駆動に改造なんかできないから、自爆装置だけ取り外してな」
シンディ:「良かった。アルエットがお蔵入りにされなくて……」
敷島:「最初はそうだったんだ。倉庫に閉じ込められて、アルエットのヤツ、気を落としてたもんな」
シンディ:「やっぱり!?」
敷島:「強化ガラス張りのブースに置くことにしたんだけど、ルディのあの大爆発ぶりだろ?強化ガラスったって、無理だよな」
シンディ:「だよねぇ……」
敷島:「自爆装置は取り外したし、元々ここはそういったロボットの実験施設だった所なんだから、大目に見てくれということにした」
シンディ:「よくそれで通ったわねぇ……」
敷島はチラッとエミリーを見た。
敷島:「ボカロ達のおかげさ」
シンディ:「えっ?」
敷島:「とある音楽家に頼んで、1曲作ってもらったんだ。その歌をミクに歌わせたら、アルエットが爆発しないか心配する声は激減したよ」
シンディ:「ボーカロイドの歌は人間の心に響くって言われるものねぇ……」
敷島:(ヘタすりゃ人間の脳幹までストップさせるんだとよ)
敷島は何も知らぬシンディに、心の中でツッコミを入れた。
エミリーは微笑を浮かべているだけだったが、まるで自分だけが知っている者だという優越感に浸っているような気がした。
敷島:「それだけじゃない。ロボットの活動まで止めるくらいだ。東京決戦の時、ミクの歌が頭の中に響いてきてノビてたんだろ?」
シンディ:「よく分かったわね。頭が割れるように痛くなって、気持ち悪くなって、もうオイルやら何やら吐き散らしてたよ」
敷島:「もしかして、ミクのあの歌はロボット達が聴くと、まるでジャイアンの歌のように聴こえるのか?」
シンディ:「どうだろうねぇ……」
敷島達が展示室エリアに行くと、アルエットが満面の笑みを浮かべながらやってきた。
アルエット:「わあ!またお姉ちゃん達と会えたー!」
シンディ:「ちょっとツラいことがあったけど、もう心配無いよね?」
アルエット:「うん!」
エミリー:「いい子に・してたか?」
アルエットはシンディに抱きつき、エミリーはアルエットの頭を撫でていた。
敷島:「優秀なお前をお蔵入りにはさせないからな」
敷島もまたアルエットの頭を撫でた。
[同日15:00.天候:晴 ロボット未来科学館]
敷島:「ああ、そうか。……うん、分かった。じゃあ、そういう方向でスケジュールを調整しといて。……ああ、よろしく」
敷島は通用口の外で事務所と電話をしていた。
早速、再起動したシンディが脇に控えていたのだが、そこへエミリーがやってきた。
エミリー:「ちょっと・社長と・話が・したい。席を・外して」
シンディ:「私が伝えておくよ。なに?」
するとエミリー、眉を潜めた。
エミリー:「直接・話が・したい」
シンディ:「わ、分かったよ」
シンディは慌てて館内に入り、代わりにエミリーが敷島に近づいた。
敷島:「……あ、マルビプランニングの飯田さん、いつもお世話になっております。……はい、今度の企画の件について、うちのボカロを出させて頂くという件ですね。現在のところ、空いているのはMEIKOとルカになりますが、どちらに……」
敷島は今度は付き合いのある制作会社の担当者と電話をしていた。
エミリーは無表情でゆっくりと敷島に近づいて行く。
そして、スリットの深いロングスカートの間から覗く右足の脛から何かを取り出した。
それは大型ナイフ。
まるで前期型のシンディが振るっていたそれそのものだ。
エミリーはそっと敷島に近づき……。
1:ナイフを振り上げた。「お前はアンドロイドマスター失格だ。だから死んでもらう」
2:ナイフを敷島に渡した。「あなたをアンドロイドマスターと認めます」
3:ナイフを再びしまった。「いや……。現時点では、まだ判断できない」
4:ナイフを持ったまま立ち尽くした。「ブロックが掛かっている?どういう意味だ?」
敷島:「お、来たか」
科学館の業務用駐車場に1台のミニバンが到着する。
中から降りて来たのは、運転してきたマネージャーの篠里と、後ろに乗っていた初音ミクだった。
ミク:「たかお社長!」
敷島:「無事に到着したな。篠里君、ご苦労さん」
篠里:「いえ、これも業務命令ですから。人間のアイドルのマネージャーには無いことですよ」
敷島:「だろうな」
ミクのオーバーホールは、仕事の関係でこの時間に行われる。
通常の整備はDCJから敷島エージェンシーに派遣されている技術者が行うが、オーバーホールなどの本格的なものについてはここで行われる。
本来はもっと前に行われるはずだったのだが、スケジュールの都合で今日になった。
マリオ:「道ヲ開ケテクダサイ!」
ルイージ:「取材ハ拒否シマス!」
アリスが製造したバージョン5.0の兄弟、赤い塗装のマリオと緑の塗装のルイージがミクの護衛に当たる。
敷島:「おい、バックヤードじゃ集る人もマスコミもいねーよ」
シンディ:「全く。こいつらは……」
マリオとルイージに大げさに護衛をされながら、ミクは研究室に入った。
エミリー:「社長。プロフェッサー平賀は・夕方に・こちらに・参ります」
敷島:「わざわざ取りに来てくれるの?」
エミリー:「本日は・東京都心大学に・特別講義に・来て・おります。その・帰りに・寄るそうです」
敷島:「そうなのか。じゃあ、エミリーを借りた御礼をしないとな」
シンディ:「御馳走の準備をしないとね」
敷島:「いや、平賀先生と夜のナンギン(大宮駅東口南銀座。主に飲み屋街))とキタギン(大宮駅東口北銀座。主に風俗街)を楽しむのだ!」
シンディ:「ほほぉ……。マスターに報告しておくわ」
エミリー:(アンドロイドマスターたるもの、遊びも全力ということね)
シンディ:「アルエットの自爆装置は取り外したの?」
敷島:「ああ。水素電池駆動が危険だって流布されたもんだから、アルエットの場合は大慌てさ。とはいえ、今さらアルエットをバッテリー駆動に改造なんかできないから、自爆装置だけ取り外してな」
シンディ:「良かった。アルエットがお蔵入りにされなくて……」
敷島:「最初はそうだったんだ。倉庫に閉じ込められて、アルエットのヤツ、気を落としてたもんな」
シンディ:「やっぱり!?」
敷島:「強化ガラス張りのブースに置くことにしたんだけど、ルディのあの大爆発ぶりだろ?強化ガラスったって、無理だよな」
シンディ:「だよねぇ……」
敷島:「自爆装置は取り外したし、元々ここはそういったロボットの実験施設だった所なんだから、大目に見てくれということにした」
シンディ:「よくそれで通ったわねぇ……」
敷島はチラッとエミリーを見た。
敷島:「ボカロ達のおかげさ」
シンディ:「えっ?」
敷島:「とある音楽家に頼んで、1曲作ってもらったんだ。その歌をミクに歌わせたら、アルエットが爆発しないか心配する声は激減したよ」
シンディ:「ボーカロイドの歌は人間の心に響くって言われるものねぇ……」
敷島:(ヘタすりゃ人間の脳幹までストップさせるんだとよ)
敷島は何も知らぬシンディに、心の中でツッコミを入れた。
エミリーは微笑を浮かべているだけだったが、まるで自分だけが知っている者だという優越感に浸っているような気がした。
敷島:「それだけじゃない。ロボットの活動まで止めるくらいだ。東京決戦の時、ミクの歌が頭の中に響いてきてノビてたんだろ?」
シンディ:「よく分かったわね。頭が割れるように痛くなって、気持ち悪くなって、もうオイルやら何やら吐き散らしてたよ」
敷島:「もしかして、ミクのあの歌はロボット達が聴くと、まるでジャイアンの歌のように聴こえるのか?」
シンディ:「どうだろうねぇ……」
敷島達が展示室エリアに行くと、アルエットが満面の笑みを浮かべながらやってきた。
アルエット:「わあ!またお姉ちゃん達と会えたー!」
シンディ:「ちょっとツラいことがあったけど、もう心配無いよね?」
アルエット:「うん!」
エミリー:「いい子に・してたか?」
アルエットはシンディに抱きつき、エミリーはアルエットの頭を撫でていた。
敷島:「優秀なお前をお蔵入りにはさせないからな」
敷島もまたアルエットの頭を撫でた。
[同日15:00.天候:晴 ロボット未来科学館]
敷島:「ああ、そうか。……うん、分かった。じゃあ、そういう方向でスケジュールを調整しといて。……ああ、よろしく」
敷島は通用口の外で事務所と電話をしていた。
早速、再起動したシンディが脇に控えていたのだが、そこへエミリーがやってきた。
エミリー:「ちょっと・社長と・話が・したい。席を・外して」
シンディ:「私が伝えておくよ。なに?」
するとエミリー、眉を潜めた。
エミリー:「直接・話が・したい」
シンディ:「わ、分かったよ」
シンディは慌てて館内に入り、代わりにエミリーが敷島に近づいた。
敷島:「……あ、マルビプランニングの飯田さん、いつもお世話になっております。……はい、今度の企画の件について、うちのボカロを出させて頂くという件ですね。現在のところ、空いているのはMEIKOとルカになりますが、どちらに……」
敷島は今度は付き合いのある制作会社の担当者と電話をしていた。
エミリーは無表情でゆっくりと敷島に近づいて行く。
そして、スリットの深いロングスカートの間から覗く右足の脛から何かを取り出した。
それは大型ナイフ。
まるで前期型のシンディが振るっていたそれそのものだ。
エミリーはそっと敷島に近づき……。
1:ナイフを振り上げた。「お前はアンドロイドマスター失格だ。だから死んでもらう」
2:ナイフを敷島に渡した。「あなたをアンドロイドマスターと認めます」
3:ナイフを再びしまった。「いや……。現時点では、まだ判断できない」
4:ナイフを持ったまま立ち尽くした。「ブロックが掛かっている?どういう意味だ?」