[12月5日18:00.天候:晴 東京都江東区臨海部分 タクシー車内]
敷島とシンディはマンスリーマンションに帰宅する為、タクシーに乗っていた。
敷島:「何だって?あのピエロが?」
シンディ:「ええ。一瞬、ルディの反応がしたの」
敷島:「何で、ルディがサーカスなんかにいるんだよ?」
シンディ:「分からないけど……」
敷島:「……待てよ。確かジャニスとルディは俺達を出し抜いて、フィリピン行きの貨物船で密航したはずだ。で、どういう経緯だか分からないが、麻薬組織で使われることになった。ところが態度が悪い姉弟は、恐らくボスの不興でも買って、壊されることになったんだろう。ジャニスは見事に壊されたけども、ルディは逃げ延びた。……というところまでは想像が付くよ。で、どうしてサーカスに?」
シンディ:「あのサーカス、ここへ来る前はフィリピンで興行してたんでしょう?きっとルディが紛れ込んだんだわ」
敷島:「何でわざわざ日本に?あいつは俺達から逃げてフィリピンに行ったんじゃないか。わざわざ戻ってくる動機があるのか?」
シンディ:「きっと、私達に復讐する為よ。今はサーカスのピエロとして働きながら機会を伺ってるんだわ」
敷島:「そうかなぁ……???」
シンディ:「あのピエロに会えないかしら?」
敷島:「ちょっと待て」
敷島はパンフレットを開いた。
敷島:「木曜日は休演日とあるな。恐らく団長が休みたいのと、ロボットのメンテナンスでもあるんだろう。この時を狙ってみるか。……あ、そうだ」
シンディ:「なに?」
敷島:「リンとレンも、水曜日はあまりスケジュールが入ってないな。ボーカロイドで唯一、ルディ達と会った奴らだ。あいつらにも照合してもらおう」
シンディ:「そうね。それがいいわ。姉さんも呼んだら?」
敷島:「平賀先生がこっちに用事がある時じゃないと無理だよ」
シンディ:「動画を姉さんに送信するわ。それで照合してもらいましょう」
敷島:「動画ってお前、公演は撮影禁止だぞ?」
シンディ:「しょうがないじゃない」
シンディは左目を指さした。
そこにはシンディが見た物をメモリーに記録するカメラが内蔵されている。
敷島:「……なるほど。ま、仕様だからしょうがないか」
シンディ:「そういうこと。いいでしょ?」
敷島:「ああ、頼んだぞ。……ていうか、俺も平賀先生に連絡だけはしておくか。信じる信じないはあなた次第ですってな」
[同日19:00.天候:晴 ロボット大サーカス・関係者専用エリア]
アレックス(ルディ)はショーに使用するトラのロボットを洗っていた。
サンダーボルト:「よっ、新人。ちゃんとやってるか?」
アレックス:「はい!」
サンダーボルト:「んー?あー、これじゃダメだ。汚れが落ちてないぞ。もっとちゃんと力を入れて磨け」
アレックス:「はい!」
アレックスはサンダーボルトに言われた通り、力を入れてガシガシ洗った。
団長:「おい、マーガレット。あの新米ロボットはちゃんとやってるか?」
マーガレット:「ええ。あそこで白いトラを磨いてますよ」
団長:「は?白い?うちにホワイトタイガーのロボットなんていたか?」
団長は真っ白いトラのロボットを磨いているアレックスに近づいた。
団長:「おい、アレックス。何だこの白いのは?」
アレックス:「あ、団長。黒と茶色の汚れを落としたところです」
団長:「そうかい、そいつぁ感心だなぁ……って、このドアホ!それは汚れじゃねぇ!塗装だ!お前は塗装と汚れの区別も付かんのか!クビだ、クビ!!」
アレックス:「はい、首」
アレックス、トラロボットの首を外して団長に渡す。
団長:「バッキャロ!ふざけるな!お前なんかこうだ!!」
団長、アレックスに電気鞭を振り下ろす。
だが、アレックスがそれを瞬時に避けた為、鞭は機器が剥き出しになったトラロボットの首の中に当たった。
ロボットに流れている電気が、鞭を通して団長に……。
団長:「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーっ!」
マーガレット:「あら、感電しちゃった。ドジねぇ、全く。あははははははっ!」
アレックス:「ごめんなさい。つい、避けちゃった」
マーガレット:「あなた、いいフットワークしてるわねぇ。訓練すれば、きっと高度なショーに出られるようになるわ」
団長:「その前に俺の身とカネが持たねぇよ!勘弁しやがれ!!」
[12月6日10:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
鏡音レン:「鏡音レン、入ります」
鏡音リン:「な、なぁに……?リン、何も悪いことしてないYo〜?」
社長室に入る鏡音リンとレン。
敷島:「ああ、いや。別に説教ってわけじゃない。……ってかリン、お前、何かやましいことでもあるのか?」
リン:「し、してないよ……何も」
シンディ:「後でメモリーチェックやるからね」
リン:「ええーっ!?」
レン:「あ、あの、それより、何の話でしょうか?」
敷島:「ああ。お前達、いつも仕事頑張ってくれてるからな。今度の水曜日はあまりスケジュールも入ってないみたいだし、今話題のロボットサーカスに連れて行ってやろうと思って」
リン:「ええーっ!?リン、サーカスに売られちゃうの!?あんまりだYo〜!もうイタズラしないから許してぇ!」
レン:「取りあえず、僕ができるのはバック宙ですが、空中ブランコとかできるかなぁ……」
敷島:「いや、あの……『サーカスに出てもらう』とは言ってないからな?観客として連れて行ってやるって話だ」
リン:「えっ?」
レン:「と、言いますと?」
敷島:「確かにお前達はボーカロイドの中でも、1番高い身体能力を持っている。そういうお前達から見て、サーカスがどんなものなのかを勉強してもらう。ロボット団員達がどういう動きをしているのか、それを勉強してもらって、次のライブとかに生かしてもらうというのが目的だ」
リン:「なーんだ。心配して損したYo〜!」
レン:「なるほど。ボクもバック宙以外に、何かやりたいと思っていたところです。サーカスの技を少しでもライブで披露したら、もっと盛り上がりますもんね」
敷島:「そういうことだ。井辺君とマネージャーの吉井君には俺から言っておくから」
シンディ:(本当は違う目的があるんだけどね。それにしても、まさか本当に平賀博士と姉さんまで来るなんて……。これで実は私の照合エラーでしたなんてなったら、姉さんに張り倒されそうな気がするなぁ……。『シンディ、敷島社長と・平賀博士の・貴重な・お時間を・無駄に・使わせるとは・良い度胸だ。タダで・済むと・思うな』なんて、胸倉掴まれて……)
敷島:「ん、どうした、シンディ?フリーズしちゃって?」
リン:「シンディ、顔が蒼くなってるYo?」
レン:「何だか知りませんが、出力が低下してるみたいですよ、社長?」
敷島:「やっぱりシンディのオーバーホール、年内にやった方がいいかなぁ……?」
敷島とシンディはマンスリーマンションに帰宅する為、タクシーに乗っていた。
敷島:「何だって?あのピエロが?」
シンディ:「ええ。一瞬、ルディの反応がしたの」
敷島:「何で、ルディがサーカスなんかにいるんだよ?」
シンディ:「分からないけど……」
敷島:「……待てよ。確かジャニスとルディは俺達を出し抜いて、フィリピン行きの貨物船で密航したはずだ。で、どういう経緯だか分からないが、麻薬組織で使われることになった。ところが態度が悪い姉弟は、恐らくボスの不興でも買って、壊されることになったんだろう。ジャニスは見事に壊されたけども、ルディは逃げ延びた。……というところまでは想像が付くよ。で、どうしてサーカスに?」
シンディ:「あのサーカス、ここへ来る前はフィリピンで興行してたんでしょう?きっとルディが紛れ込んだんだわ」
敷島:「何でわざわざ日本に?あいつは俺達から逃げてフィリピンに行ったんじゃないか。わざわざ戻ってくる動機があるのか?」
シンディ:「きっと、私達に復讐する為よ。今はサーカスのピエロとして働きながら機会を伺ってるんだわ」
敷島:「そうかなぁ……???」
シンディ:「あのピエロに会えないかしら?」
敷島:「ちょっと待て」
敷島はパンフレットを開いた。
敷島:「木曜日は休演日とあるな。恐らく団長が休みたいのと、ロボットのメンテナンスでもあるんだろう。この時を狙ってみるか。……あ、そうだ」
シンディ:「なに?」
敷島:「リンとレンも、水曜日はあまりスケジュールが入ってないな。ボーカロイドで唯一、ルディ達と会った奴らだ。あいつらにも照合してもらおう」
シンディ:「そうね。それがいいわ。姉さんも呼んだら?」
敷島:「平賀先生がこっちに用事がある時じゃないと無理だよ」
シンディ:「動画を姉さんに送信するわ。それで照合してもらいましょう」
敷島:「動画ってお前、公演は撮影禁止だぞ?」
シンディ:「しょうがないじゃない」
シンディは左目を指さした。
そこにはシンディが見た物をメモリーに記録するカメラが内蔵されている。
敷島:「……なるほど。ま、仕様だからしょうがないか」
シンディ:「そういうこと。いいでしょ?」
敷島:「ああ、頼んだぞ。……ていうか、俺も平賀先生に連絡だけはしておくか。信じる信じないはあなた次第ですってな」
[同日19:00.天候:晴 ロボット大サーカス・関係者専用エリア]
アレックス(ルディ)はショーに使用するトラのロボットを洗っていた。
サンダーボルト:「よっ、新人。ちゃんとやってるか?」
アレックス:「はい!」
サンダーボルト:「んー?あー、これじゃダメだ。汚れが落ちてないぞ。もっとちゃんと力を入れて磨け」
アレックス:「はい!」
アレックスはサンダーボルトに言われた通り、力を入れてガシガシ洗った。
団長:「おい、マーガレット。あの新米ロボットはちゃんとやってるか?」
マーガレット:「ええ。あそこで白いトラを磨いてますよ」
団長:「は?白い?うちにホワイトタイガーのロボットなんていたか?」
団長は真っ白いトラのロボットを磨いているアレックスに近づいた。
団長:「おい、アレックス。何だこの白いのは?」
アレックス:「あ、団長。黒と茶色の汚れを落としたところです」
団長:「そうかい、そいつぁ感心だなぁ……って、このドアホ!それは汚れじゃねぇ!塗装だ!お前は塗装と汚れの区別も付かんのか!クビだ、クビ!!」
アレックス:「はい、首」
アレックス、トラロボットの首を外して団長に渡す。
団長:「バッキャロ!ふざけるな!お前なんかこうだ!!」
団長、アレックスに電気鞭を振り下ろす。
だが、アレックスがそれを瞬時に避けた為、鞭は機器が剥き出しになったトラロボットの首の中に当たった。
ロボットに流れている電気が、鞭を通して団長に……。
団長:「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーっ!」
マーガレット:「あら、感電しちゃった。ドジねぇ、全く。あははははははっ!」
アレックス:「ごめんなさい。つい、避けちゃった」
マーガレット:「あなた、いいフットワークしてるわねぇ。訓練すれば、きっと高度なショーに出られるようになるわ」
団長:「その前に俺の身とカネが持たねぇよ!勘弁しやがれ!!」
[12月6日10:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
鏡音レン:「鏡音レン、入ります」
鏡音リン:「な、なぁに……?リン、何も悪いことしてないYo〜?」
社長室に入る鏡音リンとレン。
敷島:「ああ、いや。別に説教ってわけじゃない。……ってかリン、お前、何かやましいことでもあるのか?」
リン:「し、してないよ……何も」
シンディ:「後でメモリーチェックやるからね」
リン:「ええーっ!?」
レン:「あ、あの、それより、何の話でしょうか?」
敷島:「ああ。お前達、いつも仕事頑張ってくれてるからな。今度の水曜日はあまりスケジュールも入ってないみたいだし、今話題のロボットサーカスに連れて行ってやろうと思って」
リン:「ええーっ!?リン、サーカスに売られちゃうの!?あんまりだYo〜!もうイタズラしないから許してぇ!」
レン:「取りあえず、僕ができるのはバック宙ですが、空中ブランコとかできるかなぁ……」
敷島:「いや、あの……『サーカスに出てもらう』とは言ってないからな?観客として連れて行ってやるって話だ」
リン:「えっ?」
レン:「と、言いますと?」
敷島:「確かにお前達はボーカロイドの中でも、1番高い身体能力を持っている。そういうお前達から見て、サーカスがどんなものなのかを勉強してもらう。ロボット団員達がどういう動きをしているのか、それを勉強してもらって、次のライブとかに生かしてもらうというのが目的だ」
リン:「なーんだ。心配して損したYo〜!」
レン:「なるほど。ボクもバック宙以外に、何かやりたいと思っていたところです。サーカスの技を少しでもライブで披露したら、もっと盛り上がりますもんね」
敷島:「そういうことだ。井辺君とマネージャーの吉井君には俺から言っておくから」
シンディ:(本当は違う目的があるんだけどね。それにしても、まさか本当に平賀博士と姉さんまで来るなんて……。これで実は私の照合エラーでしたなんてなったら、姉さんに張り倒されそうな気がするなぁ……。『シンディ、敷島社長と・平賀博士の・貴重な・お時間を・無駄に・使わせるとは・良い度胸だ。タダで・済むと・思うな』なんて、胸倉掴まれて……)
敷島:「ん、どうした、シンディ?フリーズしちゃって?」
リン:「シンディ、顔が蒼くなってるYo?」
レン:「何だか知りませんが、出力が低下してるみたいですよ、社長?」
敷島:「やっぱりシンディのオーバーホール、年内にやった方がいいかなぁ……?」