報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「マルチタイプの腕交換」

2016-12-04 22:13:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月26日09:00.天候:雨 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 業務用駐車場に停車する1台の白いプリウスα。
 そこに乗っていたのは敷島とアリス、そしてシンディであった。

 敷島:「どれ、いよいよか……」
 アリス:「シンディ。分かってると思うけど、取り付けた後ですぐ帰れるわけじゃないから。色々と動作テストをしなきゃいけないから、一日掛かりになるからね」
 シンディ:「はい、よろしくお願い致します」

 敷島達は通用口から中に入る。
 敷島だけ入館証が無いので、ここの警備受付で入館証を受け取る。
 対応は人間の警備員が行うが、廊下の向こうにはセキュリティロボットがこちらをジーッと見ており、突破しようものなら、赤い目を光らせて突進してくる。
 警備受付で発行されるセキュリティカードは電子ロックを開けられるカードキーになっており、セキュリティロボットもカードに内蔵されたマイクロチップを瞬時に読み込んで、それが正規の来客であるかどうかを見分けるのだ。
 シンディに関しては、ほぼ顔パス状態。
 セキュリティロボットの上位機種である為、シンディに対して行動を起こす個体が存在しない。

 ゴンスケ:「今日は雨たべや。ガッカリだっぺよ。今日は倉庫で昼寝でもしてんべか」
 R2-D2(……によく似たロボット):「土砂降りノ中デモ、畑仕事ガ出来ルノがロボットのメリットだゾ?」
 ゴンスケ:「今日はジャガイモ畑の様子でも見て来んべ」
 R2-D2:「キュルキュルキュルキュル」
 ゴンスケ:「あ、シンディ様!アリス博士!敷島社長!おはようございます!」
 シンディ:「ああ」
 アリス:「Hi.」
 敷島:「おう。相変わらず、精が出るな」

 敷島達が研究室エリアに向かう最中、本当に9時になる。
 DCJでは9時から始業の時間なのだが、ここ最近、DCJでは始業のメロディに……。

 敷島:「これ、ボカロが聴いたら歌い出しそうだな〜」
 アリス:「そーらーを越えて〜♪lalala♪星のかーなた〜♪……」

 歌は入っていないが、シンセサイザーによる“鉄腕アトム”のテーマが1コーラス流れる。

 敷島:「銃火器を取り外したらその分、だいぶ体が軽くなるだろうから、代わりに1度取り外したジェットエンジンをもう1度取り付けてもいいかもしれんね」
 アリス:「今、考えてるところ。でも今のところ、ブースターよる大ジャンプだけで事足りてるでしょ?」
 敷島:「まあな。ロックマンは基本空は飛べないが、ブースターよる大ジャンプはできる。俺的には確かに、そっちの方が現実的な気がするよ」
 アリス:「まあ、そういうこと」

 本当に必要な時とか、こういう所でイベントを行う時の余興として再びジェットエンジンを取り付けて飛ぶことはある。

[同日09:30.天候:雨 DCJロボット未来科学館]

 シンディの腕交換作業が行われている様子は非公開ではなく、実は研究室内のカメラにより、一般来館客の目に映る所で公開されている。
 具体的にはエントランスホールの横に40インチのモニタが置かれ、そこに映し出されているのである。
 シンディはいつもの衣装を脱いで、下着代わりのビキニ姿になっていた。
 交換するのは銃火器が仕込まれた右腕だけでなく、重さのバランスの調整の為、左腕も交換される。

 アルエット:「社長さん、こんにちはー」
 敷島:「おー、アルエットか。佐久間博士の事件の時はご苦労さんな」
 アルエット:「お役に立てて何よりです」

 8号機のアルエット。
 一応、マルチタイプの後継機という設定の為、それまでの7号機に次いで連番の8号機のナンバーが与えられているが、殆ど規格の変わったフルモデルチェンジ版であり、小型化・軽量化を狙った設計の為、7号機までが成人女性・男性の姿だったのに対し、女子中学生くらいの見た目になったロリ化である
 それでも馬力はオリジナル版並みにあり、武器としてレザーブラストが装備されている上、やはり超小型ジェットエンジンを取り付ければ飛べることから、『リアル・ウランちゃん』とファンから呼ばれている(ウランちゃんって飛べたっけ???)。

 敷島:「お前の腕の設計をモデルにしたから、そのデータも役に立ってるよ。とにかく、これで国家公安委員会の目も逸らすことができるってわけだ」
 アルエット:「私のデータが役に立てるなんて嬉しいです」
 敷島:「レザーブラストはなかなか使えるからな。形が銃火器でないこともあって、うまいこと誤魔化せるってもんだ」

 復元された7号機のレイチェル。
 体の半分が壊れてもまだ動いて敷島を追い回してきた執念深さがあったが、同じく半壊していたアルエットがレザーブラストでとどめを刺したことは敷島も記憶している。
 新型が旧型に勝った瞬間であった。

 アルエット:「エミリーお姉ちゃんはどうなんですか?」
 敷島:「エミリーの新しい腕も、お前の腕の設計を参考にしているから、やっぱり似たようなものになると思うね」
 アルエット:「なるほどぉ……」
 萌:「社長さん、おはざざざざざざざーっす!」

 妖精型ロイドの萌が敷島の胸の中に飛び込んでくる。

 敷島:「萌か。その様子だと、元気にやってるみたいだな」
 萌:「井辺さんは!?井辺さんは来てないんスかぁー!?」
 敷島:「悪い。井辺君は総合プロデューサーの仕事が忙しいから。今度、この科学館で行われるクリスマスイベントには、うちのボカロ……MEGAbyteがお世話になる。MEGAbyteのマネージャーは井辺君だから、今度その打ち合わせで来るよ。もうちょっと待ってな」
 萌:「ちぇーっ」

 アルエットが目をライト代わりにしようとすると、両目が光る。
 これはカメラの位置が目ではなく、前頭部に付いているため。
 光源による熱で故障の心配が無いからである。
 普段は黒い前髪の中に隠れている。
 前髪の隙間から前方を撮影しているのである。
 アルエットの髪の色が黒に変わったのも、カメラのレンズを隠す為だということ。
 でも両目が光る為に、やはりアトムのようだと言われる。
 因みに萌は全身を発光させることができる。
 ファンタジーの妖精と同じようにだ。
 但し、萌の場合はその分、発熱もするので、これが結構な武器になる。
 触ると、人間なら火傷をするくらい。

 敷島:「アルエットも、DCJさんに新たなマルチタイプ製造の計画があることは聞いてるな?」
 アルエット:「はい。お姉ちゃん達の規格で造るそうですね。大きな妹ができそうで、何だか複雑です」
 敷島:「アルエットの規格なら、何とか個人で所有しても良さそうに見えるが、シンディ達の規格だとなぁ……。俺は危険なような気がするんだ」
 アルエット:「やっぱりお姉ちゃん、怖いですか?」
 敷島:「怖いな。こっちなんか何度も修羅場を潜り抜けたからいいが、あの爺さん、ジャニスとルディが相手だと間違い無く殺されるような気がしてならない。それだけ、マルチタイプは扱いが難しいんだ」

 自信を持たせようとすると増長してしまう。
 ジャニスが敷島に負けたのは、敷島が何の躊躇も無く特攻してきたことだ。

 敷島:(こいつらに搭載されている『感情』は、機械的に取り付けられたもの。だから人間の感情とは違い、計算された感情で動く。俺が計算外の動きをしてやったから、フリーズしただけのことさ……)
 アルエット:「私は……今の社長さんの方が怖いです」
 敷島:「え、なに?」
 アルエット:「今の社長さんの顔、怖かったです。私は逆らいませんから、どうか怖い顔しないでください」
 敷島:「あ、いや、悪かった。アルエットは素直なタイプだからな、お前はジャニスみたいにならないと信じているよ」

 アンドロイドマスターの名はダテではない敷島だった。
コメント
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