[12月13日07:00.天候:雨 東京都江東区東雲 某マンスリーマンション]
敷島:「う……」
朝になって、敷島はスマホのアラームで目が覚めた。
敷島:「もう朝か……」
敷島が起きると、既にエミリーは起動していた。
エミリー:「おはよう・ございます」
敷島:「ああ、おはよう」
エミリーはキッチンに立って、敷島の朝食の準備をしていた。
敷島:「昨夜のことなんだが……」
エミリー:「昨夜のこと・ですか?」
敷島:「お前が話した例の話、本当にすべて本当なのか?」
エミリー:「キュルキュルキュルキュルキュル……」(←過去のメモリーを検索している)
敷島:「いや、俺にマッサージの最中、話しただろ?」
エミリー:「アリス博士は・22時30分に・ご帰宅・されました」
敷島:「あいつも帰りが遅いなー。……って、違う違う!その……ロイドの秘密のことだよ」
エミリー:「……データに・ありません」
敷島:「おいおいおい!急にシンディみたいな口調になって、俺に話したじゃないか!」
エミリー:「データが・ありません」
敷島:「俺、夢でも見てたのかぁ……?」
敷島は頭をかいて、洗面所に向かった。
[同日08:30.天候:雨 敷島のマンション前→タクシー車内]
敷島達はマンション前から呼んでいたタクシーに乗り込んだ。
エミリー:「豊洲アルカディアビルまで・お願いします」
運転手:「豊洲駅前のあのビルですね」
タクシーはワイパーを規則正しく動かしながら出発した。
敷島:「雨のせいか、マスコミが張ってなかったな」
しかし、もしかすると、事務所の入口前には張っているかもしれない。
今日も地下駐車場の車寄せまで行ってもらう必要がありそうだった。
〔「……アンドロイド自爆事件によって不通になっていた新交通ゆりかもめですが、本日より始発から営業を再開しています。……」〕
ルディの自爆によって発生していた影響も、ようやく消えつつある。
警察は爆発から残ったハウスの中にあった団長の遺品などを押収し、新KR団との関連を調べているようだ。
[同日09:30.天候:雨 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
今日も敷島エージェンシーは通常通りの業務を行っている。
エミリー:「…………」
エミリーは給湯室で敷島のコーヒーを入れていた。
井辺:「あの、エミリーさん、ちょっとよろしいですか?」
エミリー:「イエス。プロデューサー井辺」
井辺:「社長、何かあったんですか?」
エミリー:「今朝の・メディカルチェックでは・何も・異常ありません」
井辺:「そうですか。いえ、出社される時に何だか浮かない顔をされていましたし、朝礼の時もどことなく上の空みたいな所がありましたので……」
エミリー:「きっと・シンディの・復旧が・長引いたので・寂しがって・おられるのでしょう」
井辺:「そういうものですかね?」
エミリー:「そういう・ものです。私は・代理ですので・お役に・立てなくて・申し訳・ございません」
井辺:「いえ、そんなことは……。まあ確かに、予定通りですと、今日がシンディさんの復帰の日でしたからね」
エミリー:「シンディほど・お役に・立てなくて・申し訳・こざいませんが、代理の・役目を・果たさせて・頂きます」
井辺:「いえ。こちらこそ、よろしくお願いします」
エミリー:(井辺プロデューサーは、アンドロイドマスターになれない。レイチェルに騙された時点で失格だ)
エミリーは給湯室から出て行く井辺の背中を見ながら言った。
敷島:「…………」
敷島が社長室の中のキャビネットから引っ張り出したのは、南里研究所時代から蓄積していた活動データの記憶媒体である。
エミリー:「コーヒーが・入りました」
敷島:「…………」
エミリー:「敷島・社長?」
敷島:「……ん?ああ、悪い!ここに置いてくれ」
エミリーはコーヒーの皿に載ったカップを机の上に置いた。
敷島:「なあ、エミリー。トボけるのもいい加減にしろ。お前が……本当は恐ろしいマルチタイプだということは理解するつもりだ。お前は……いや、お前達は俺が考えていた以上に怖い存在だったということを理解するつもりだ。だから、もっと教えてくれ。お前は……何をするつもりだ?」
エミリーはフッと笑うと、敷島の耳元で囁いた。
エミリー:「アンドロイドマスターともあろう御方が、何をうろたえているのですか?あなたが1番、私達のことを理解してくださっていると見込んでいるのですよ?まさか、あなたは私達をただの機械人形だと思っていたわけではないでしょう?」
敷島:「そんなことは微塵も考えていない。お前達は特別な存在だということは理解している。これからもっと俺も深く理解しなきゃいけないということも分かった。だから、教えてくれ。もっと深い話を……」
だが、エミリーは敷島から顔を放した。
エミリー:「落ち着いて下さい。一瞬、あなたをアンドロイドマスターと認めたことが間違いかなと思いましたが、まだ様子見で良いことが分かりました」
敷島:「何だと?」
エミリー:「そのデータで何をお調べになるのかは分かりませんが、その中に色々なヒントが隠されております。それを調べる為に、そのデータをダウンロードするおつもりであると判断します」
敷島:「……ああ、そうだな。ヒント、ありがとう」
エミリーは一瞬俯いたかと思うと、フッとまた顔を上げた。
エミリー:「10時から・四季エンタープライズの・矢沢専務が・お見えに・なります。応接室に・ご案内・致しますか?」
敷島:「いや、いいよ、ここで。いつもここで話してるし……」
エミリー:「かしこまりました。13時より・番組制作会社の・鈴木社長と・商談・ですが……」
敷島:「それなら、応接室Aで話そう。ここはまだ身内で話す分にはいいけど、外部と話すには不適切だ」
敷島はまた元の口調に戻るエミリーを見て、ふと思った。
敷島:(もしかしてエミリー、どこか故障してるのか?……いや、それにしては“人格”の切り替えがスムーズだし、やっぱりこいつは……)
エミリーが敷島に語った秘密とは一体何か?
それまでロイド達とガチバトルを繰り広げて来た敷島が狼狽するような内容のようだ。
敷島:「う……」
朝になって、敷島はスマホのアラームで目が覚めた。
敷島:「もう朝か……」
敷島が起きると、既にエミリーは起動していた。
エミリー:「おはよう・ございます」
敷島:「ああ、おはよう」
エミリーはキッチンに立って、敷島の朝食の準備をしていた。
敷島:「昨夜のことなんだが……」
エミリー:「昨夜のこと・ですか?」
敷島:「お前が話した例の話、本当にすべて本当なのか?」
エミリー:「キュルキュルキュルキュルキュル……」(←過去のメモリーを検索している)
敷島:「いや、俺にマッサージの最中、話しただろ?」
エミリー:「アリス博士は・22時30分に・ご帰宅・されました」
敷島:「あいつも帰りが遅いなー。……って、違う違う!その……ロイドの秘密のことだよ」
エミリー:「……データに・ありません」
敷島:「おいおいおい!急にシンディみたいな口調になって、俺に話したじゃないか!」
エミリー:「データが・ありません」
敷島:「俺、夢でも見てたのかぁ……?」
敷島は頭をかいて、洗面所に向かった。
[同日08:30.天候:雨 敷島のマンション前→タクシー車内]
敷島達はマンション前から呼んでいたタクシーに乗り込んだ。
エミリー:「豊洲アルカディアビルまで・お願いします」
運転手:「豊洲駅前のあのビルですね」
タクシーはワイパーを規則正しく動かしながら出発した。
敷島:「雨のせいか、マスコミが張ってなかったな」
しかし、もしかすると、事務所の入口前には張っているかもしれない。
今日も地下駐車場の車寄せまで行ってもらう必要がありそうだった。
〔「……アンドロイド自爆事件によって不通になっていた新交通ゆりかもめですが、本日より始発から営業を再開しています。……」〕
ルディの自爆によって発生していた影響も、ようやく消えつつある。
警察は爆発から残ったハウスの中にあった団長の遺品などを押収し、新KR団との関連を調べているようだ。
[同日09:30.天候:雨 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
今日も敷島エージェンシーは通常通りの業務を行っている。
エミリー:「…………」
エミリーは給湯室で敷島のコーヒーを入れていた。
井辺:「あの、エミリーさん、ちょっとよろしいですか?」
エミリー:「イエス。プロデューサー井辺」
井辺:「社長、何かあったんですか?」
エミリー:「今朝の・メディカルチェックでは・何も・異常ありません」
井辺:「そうですか。いえ、出社される時に何だか浮かない顔をされていましたし、朝礼の時もどことなく上の空みたいな所がありましたので……」
エミリー:「きっと・シンディの・復旧が・長引いたので・寂しがって・おられるのでしょう」
井辺:「そういうものですかね?」
エミリー:「そういう・ものです。私は・代理ですので・お役に・立てなくて・申し訳・ございません」
井辺:「いえ、そんなことは……。まあ確かに、予定通りですと、今日がシンディさんの復帰の日でしたからね」
エミリー:「シンディほど・お役に・立てなくて・申し訳・こざいませんが、代理の・役目を・果たさせて・頂きます」
井辺:「いえ。こちらこそ、よろしくお願いします」
エミリー:(井辺プロデューサーは、アンドロイドマスターになれない。レイチェルに騙された時点で失格だ)
エミリーは給湯室から出て行く井辺の背中を見ながら言った。
敷島:「…………」
敷島が社長室の中のキャビネットから引っ張り出したのは、南里研究所時代から蓄積していた活動データの記憶媒体である。
エミリー:「コーヒーが・入りました」
敷島:「…………」
エミリー:「敷島・社長?」
敷島:「……ん?ああ、悪い!ここに置いてくれ」
エミリーはコーヒーの皿に載ったカップを机の上に置いた。
敷島:「なあ、エミリー。トボけるのもいい加減にしろ。お前が……本当は恐ろしいマルチタイプだということは理解するつもりだ。お前は……いや、お前達は俺が考えていた以上に怖い存在だったということを理解するつもりだ。だから、もっと教えてくれ。お前は……何をするつもりだ?」
エミリーはフッと笑うと、敷島の耳元で囁いた。
エミリー:「アンドロイドマスターともあろう御方が、何をうろたえているのですか?あなたが1番、私達のことを理解してくださっていると見込んでいるのですよ?まさか、あなたは私達をただの機械人形だと思っていたわけではないでしょう?」
敷島:「そんなことは微塵も考えていない。お前達は特別な存在だということは理解している。これからもっと俺も深く理解しなきゃいけないということも分かった。だから、教えてくれ。もっと深い話を……」
だが、エミリーは敷島から顔を放した。
エミリー:「落ち着いて下さい。一瞬、あなたをアンドロイドマスターと認めたことが間違いかなと思いましたが、まだ様子見で良いことが分かりました」
敷島:「何だと?」
エミリー:「そのデータで何をお調べになるのかは分かりませんが、その中に色々なヒントが隠されております。それを調べる為に、そのデータをダウンロードするおつもりであると判断します」
敷島:「……ああ、そうだな。ヒント、ありがとう」
エミリーは一瞬俯いたかと思うと、フッとまた顔を上げた。
エミリー:「10時から・四季エンタープライズの・矢沢専務が・お見えに・なります。応接室に・ご案内・致しますか?」
敷島:「いや、いいよ、ここで。いつもここで話してるし……」
エミリー:「かしこまりました。13時より・番組制作会社の・鈴木社長と・商談・ですが……」
敷島:「それなら、応接室Aで話そう。ここはまだ身内で話す分にはいいけど、外部と話すには不適切だ」
敷島はまた元の口調に戻るエミリーを見て、ふと思った。
敷島:(もしかしてエミリー、どこか故障してるのか?……いや、それにしては“人格”の切り替えがスムーズだし、やっぱりこいつは……)
エミリーが敷島に語った秘密とは一体何か?
それまでロイド達とガチバトルを繰り広げて来た敷島が狼狽するような内容のようだ。