報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「ルディの最期」

2016-12-12 21:40:54 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月11日19:00.天候:雨 東京・お台場 ロボット大サーカス会場]

 アレックス(ルディ)はサーカスの先輩で、姉のように面倒を見てくれたマーガレットを無残に破壊された。
 演技に失敗したというのは確かに痛恨の一撃ではあるが、しかし日頃の整備を怠っていた団長に責任があるにも関わらず、マーガレットを破壊したのだ。
 アレックスの感情因子のリミッターが外れた。
 これは人間で言う『ブチギレ』である。

 団長:「うわっ、何をする!?」

 アレックスは団長に飛び掛かり、馬乗りになった。

 アレックス:「殺す!殺してやる!!」

 だが団長は、電気鞭を手にすることができた。

 アレックス:「ぐわっ!?」

 団長はアレックスに電気鞭の一撃を食らわせて怯ませると、その隙にハウスの外へ逃げ出した。

 サンダーボルト:「団長?どうしたんです?」
 団長:「さ、サンダー!いい所に!あ、あのバカを止めてくれーっ!」
 サンダーボルト:「はあ?」
 アレックス:「!!!!!!!!」(←声にならない叫び声を上げている)
 団長:「ひいっ!」

 団長はサンダーボルトに後を託すと、自分は車に乗って逃げた。

 サンダーボルト:「おい、アレックス!何があったんだ?落ち着け!」
 アレックス:「どけぇぇぇぇぇぇっ!!」

 アレックス、サンダーに右フックの一撃を食らわせる。

 サンダーボルト:「ぐわあぁっ!!」

 サンダーボルトは一撃で壊された。

 団長:「ひいっ!化け物だ!た、助けてくれーっ!!」

 団長はお台場の広い道路に出ると、ガシガシとアクセルを踏み込んだ。
 だが、アレックスは新型マルチタイプ自慢の超小型ジェットエンジンで飛んで追い掛けてくる。

 団長:「わあああっ!?」

 追い付かれた団長、アレックスに怒りの体当たりを受けた。

 団長:「コラ!よせ!やめろ!わ、分かった!俺が、俺が悪かった!許してくれーっ!」

 だが、リミット・ブレイク状態のアレックスに、団長の叫び声は聞こえなかった。

 団長:「わあああああっ!!」

 最後の体当たりで車は中央分離帯を乗り越え、対向車線を走って来た大型トラックと正面衝突!
 弾みで、

 通行人A:「うわあっ!」
 通行人B:「きゃああああっ!!」

 団長の車と、ぶつけられた大型トラックの隣を走っていた車が歩道に乗り上げ、そこを歩いていた通行人と次々にぶつかった。
 大型トラックは事故の衝撃で横転した。

 鷲田:「団長の車が慌てて出て行ったから何事かと思っていたのだが……」
 村中:「警視の恐れていた通りになりましたな!」

 2人の刑事が乗った覆面パトカー。
 屋根の上に赤いパトランプを乗せ、サイレンを鳴らして現場に向かう。

 村中:「緊急車両Uターンします!緊急車両Uターンします!道を開けてください!」

 村中がハンドルをグルンと回してUターンしようとした時だった。
 背後から大きな爆発音が聞こえた。
 どうやら、横転した大型トラックが爆発したらしい。

 鷲田:「あー、私だ!敷島社長、緊急事態だ!どうやらあのアレックスとやらが暴走したらしい。すぐにシンディをこっちに送ってくれないか?」
 敷島:「シンディがそれらしい電気信号を受信しましたんでね、もう向かってますよ!」
 村中:「おおっ、さすがだ!」

 マルチタイプがリミット・ブレイクする際、異常を知らせる電気信号を発することに気づいたアリスは、他のマルチタイプがそれを受信できるようにした。
 そうすることで、暴走を抑えに行けるようにするのが目的である。

 シンディ:「あんた……!何てことを……!」

 シンディのような旧型マルチタイプは、超小型ジェットエンジンが標準装備になっていない。
 それが備え付けられたブーツを着用する。
 シンディをそのブーツをはいて、敷島達より一足先に到着していた。

 アレックス:「…………」(←両目の赤いランプが点滅している)
 シンディ:「何かあったのね?ルディだった頃のメモリーが自動復元されたのかしら?だとしたら、容赦しないよ」
 団長:「た……たしゅけ……て………」

 団長、血だらけになりながら、ひっくり返った車の中から這い出てくる。

 アレックス:「オレはこいつを許さない。ルディなんてヤツは知らない。マーガレットさんを破壊しやがったこいつを殺す。邪魔するなら、あんたを破壊する」
 シンディ:「マーガレットって……ああ!あの時、あんたと一緒にいたガイノイド……って、壊した!?」

 シンディは驚いた様子で団長を見た。

 団長:「ゆ……許してくれ……」
 シンディ:「な、何があったのか知らないけど、取りあえずこのくらいにしときな。ってか……」

 シンディは周りを見渡した。
 見ると、明らかに死体と化している、事故に巻き込まれた人間達が何人も倒れていた。

 シンディ:「あんた、やり過ぎよ!!」
 団長:「ぐわっ!!」

 シンディが目を反らした隙に、ルディは右手からレーザービームを出して団長の頭部を射貫いた。

 シンディ:「やめなさい!!」

 シンディは左手から有線ロケットパンチを繰り出して、アレックスを殴りつけた。
 その左手を元の腕に戻した時、敷島達から無線が入った。

 敷島:「シンディ、聞こえるか!?今すぐそのアレックスを破壊しろ!何だかヤバそうだ!」
 アリス:「こいつのせいで何人も死傷者を出してる!さすがに引き取って直して終わりってわけにはいかないわ!」
 シンディ:「了解しました!……というわけで、覚悟してもらうわね?」

 シンディは右手の人差し指をアレックスに突き出した。
 新たに装着されたレーザービームを使う気である。
 だがアレックスは歪んだ笑みを浮かべた。

 アレックス:「心配無いよ、お姉さん。もう、マーガレットさんの仇を取った。だから、もういいんだ……」
 シンディ:「……?」

 シンディは一瞬、アレックスが何を言っているのか分からなかった。
 だが、すぐに気づいた。

 シンディ:「やめなさい!!」

 しかし、シンディの耳にははっきり聞こえた。
 アレックスが自分の舌を噛み千切った音。
 ロイドが自分の舌を噛み千切ることは、即ち、取り消しようの無い自爆装置のスイッチを入れたということである。

 シンディ:「くっ……!マスター!社長!すぐにここから退避してください!アレックスのヤツ、自爆します!!」
 敷島:「な、何だってー!?」
 アリス:「早く!車に乗るのよ!!」
 鷲田:「こ、こら!勝手にパトカーに……!」
 村中:「いや、早いとこ退避した方が良さそうです!!」

 敷島、アリス、鷲田、村中がセダンタイプの覆面パトカーに乗り込んで、車を急発進させる。

 敷島:「まだ周りの人達が避難してないよ!」
 鷲田:「ちょっと待て!そこまで大爆発するものなのかね!?」
 村中:「な、何だ!?車が浮いてる!?」

 シンディがジェットエンジンを吹かして、覆面パトカーを抱えて飛んだのだった。

 シンディ:「くっ……!緊急離脱用の短距離エンジンだから、もう燃料がもたない!」

 シンディは車を少し離れたビルの屋上に置いた。
 と、同時に大爆発を起こすアレックス。

 シンディ:「きゃあーっ!!」

 シンディは爆発の衝撃で、ビルの下の道路に転落した。
 人間なら即死だが、そこはマルチタイプ。
 無傷ではないものの、壊れたりはしない。

 シンディ:「はぁ、はぁ、はぁ……。鉄腕アトムってヤツ……よ、よくあんなこと……はあっ、はあっ!……余裕で、できるねぇ………」

 しかしギリギリとはいえ、それをやってのけたシンディであった。
 シンディは立ち上がった。
 体のあちこちに擦り傷ができて、機械が剥き出しになっていた。
 さすがに雨に当たるとマズいので、ビルの軒下に待避する。

 敷島:「シンディ!大丈夫か!?」
 シンディ:「社長……!」
 アリス:「シンディ、よくやったわ!あなたは優秀よ!!」
 鷲田:「礼なら後で言わせてもらう!何だか、爆発現場がヤバそうだ!行くぞ、村中君!」
 村中:「素直に今言えばいいのに……。ま、とにかく助かったよ。ありがとう。取りあえず、私も現場に戻るから」
 敷島:「は、はい!」
 アリス:「シンディ!?シンディ!?」
 シンディ:「…………」

 シンディは苦悶の顔を浮かべながら倒れた。

 敷島:「くそっ!何だか寒いと思っていたら……」

 雨は夜更け過ぎを待たずに、雪に変わっていた。

 アリス:「こちら、科学館研究室チームリーダーのアリスです。……はい、シンディに損傷と不具合が発生しているもようです。大至急、修理手配をするので、研究室を空けてください。……はい。ついでにオーバーホールもしようかと思います」

 シンディはDCJのどこかに連絡していた。
 現場からはパトカーや消防車などのサイレンの音や、ヘリコプターの音がやかましく響いていた。
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