報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「エミリーの秘め事」

2016-12-16 20:47:11 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月12日22:00.天候:晴 東京都江東区東雲 某マンスリーマンション]

 敷島は風呂上がりに、エミリーにマッサージを受けていた。
 いつもならシンディが行うポジションである。
 もちろん、同型機であるエミリーもそれはできた。

 敷島:「俺もトシかな?ここ最近、体のあちこちが痛くなってきた」
 エミリー:「オーバーホールを・受けますか?」
 敷島:「ふふっ、シンディと似たようなこと言いやがる」

 敷島はベッドにうつ伏せになり、エミリーから背中をほぐしてもらっていた。

 エミリー:「この・肩甲骨を・ほぐすと・楽になると・思います」
 敷島:「よろしく」

 同型機とはいえ、この鋼鉄姉妹にマッサージを頼むと、姉妹で少しやり方が違うのである。
 設定された性格の違いが出ているのだろうか。
 シンディだと、どちらかと言えばリフレクソロジー(足ツボマッサージ)に近く、エミリーだと整体に近い。
 また、このマルチタイプ、耳かきを頼むこともできる。
 元々はメイドロボット(メイドロイドは商標名)を平賀が開発している時に、取り付けたい機能だったらしい。
 それを上位機種たるエミリーに実験的に取り付けられ、南里には大好評だった為、このまま七海にも取り付けられ、今ではメイドロイド全機種に標準装備されている。
 もちろん、シンディにも取り付けられた。
 ここにもエミリーとシンディの性格の違いが出ていて、エミリーはとにかく耳垢を完全に除去しようとする(無理の無い範囲内で)。
 ところが、シンディはあえて耳垢を少し残す。
 『耳垢は全て取り去る方が却って耳に悪いのです』とのことで、むしろこちらが正解のようだ。

 敷島:「こういうこともできるんだから、本当に何でもできるマルチタイプだな」
 エミリー:「プロフェッサー南里や・プロフェッサー平賀の・望まれた・結果です」
 敷島:「こういう所は所長達に感謝だな」

 エミリーはよく年寄りである南里の肩をもんだり、叩いたりしていた。
 マッサージの技能については、エミリーの方が先に南里に仕込まれていたのかもしれない。
 シンディはシンディで、足ツボマッサージをウィリーが好んだということで、そちらを仕込まれたと思われる。
 シンディが敷島の頭の前に回り、前屈みになる。
 その際、自慢の巨乳が敷島の頭に乗せられる形になった。

 敷島:「エミリーは俺のユーザー登録を外れたのに、今でも言う事を聞いてくれるな。ユーザー登録から外れたってことは、俺の言うことを無理して聞かなくていいってことでもあるんだぞ」
 エミリー:「人間なら……」
 敷島:「ん?」
 エミリー:「人間なら、『古くからの付き合いだから』という理由が成り立つでしょう?私も敷島さんとは長い付き合いですし、これからも長くお付き合いをしたいのです。だから、私は敷島さんの言う事を聞きます」

 エミリーが急に滑らかな口調で語り出した!

 敷島:「エミリー、おまっ……?!」

 敷島が慌てて顔を上げる。
 その時、顔が豊かな胸の間に挟まってしまった。
 だがエミリーは嫌がるどころか、敷島を抱きしめて胸の中に埋めさせた。

 エミリー:「このことは平賀博士にも、シンディにも、誰にも内緒ですよ?あなたを『アンドロイドマスター』と認め、私の秘密をお教えします。南里博士しか知らない秘密を……」

[同日22:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島とアリスのマンション]

 アリス:「ただいまァ……」
 二海:「お帰りなさいませ、マスター」

 アリスが帰宅すると、メイドロイドの二海が出迎えた。

 アリス:「すぐにお風呂にするわ」
 二海:「はい、すぐ御用意致します。少々お待ちください」

 だがその時、奥の部屋から幼子の泣き声がした。

 アリス:「トニーの夜泣きだね。いい、アタシが行く。二海はお風呂の用意して」
 二海:「かしこまりました」
 アリス:「よしよし、トニー。ごめんね。ママ、仕事が忙しくて……。二海、タカオの方はどう?エミリーがちゃんと監視してくれてるかしら?」
 二海:「そのようです」
 アリス:「『ようです』ってなに?ちゃんと確認してるの?」
 二海:「エミリー様は状況を口頭のみで通信されるだけで、画像は送ってくださいません」
 アリス:「ちょっと、エミリーと通信リンクが……って、アタシじゃアクセス拒否ってか」

 エミリーとって、アリスは南里の仇敵であるドクター・ウィリーの孫娘である。
 まだ、完全に信頼しているわけではない。
 南里からエミリーを相続した平賀自身もそうなので、持ち主の意向を汲んでいるのだろう。

 二海:「平賀博士はエミリー様に対して、シンディ様と同じように監視されるよう、命じられたと伺っております」
 アリス:「それは知ってる。だけど何かねぇ……」
 二海:「エミリー様を信用されないのですか?」
 アリス:「いや、エミリーはそつなく仕事するタイプだよ。そうじゃなくて、何かあの2人、別の意味で繋がっているような気がしてねぇ……」
 二海:「別の意味?」
 アリス:「ユーザー登録が切れたくせに、エミリーのヤツ、随分と素直にタカオの命令を聞くからね。普通は『アクセス権限(※)が無いから拒否』ってなるのに……」

 ※ここでは命令する権利という意味。但し、他人であっても無理の無い頼まれ事は聞く。

[同日23:00.天候:晴 東京のマンスリーマンション]

 エミリー:「深夜電力の・時間に・なりましたので・充電させて・頂きます。お休み・なさいませ」
 敷島:「俺も寝るよ。何だか疲れた……」

 もちろん、エミリーにしっかりマッサージをしてもらったおかげで、寝付きが良くなりそうというのもある。
 敷島はフローリングの上に設置されたベッドで寝るが、シンディはロフトの上で休眠に入る。
 シンディのポジションを、今夜はエミリーが使用した。
 当初よりはだいぶ軽量化されたこともあって、ロフトの上にいることも危険ではなくなったというのもある。
 エミリーはシャワーを使わせてもらい、体を洗った。
 いつもの衣服(紺色のノースリーブに、深いスリットの入ったロングスカートのワンピース)は脱いで、裾の短いワンピースタイプの夜着を着ていた。
 ロフトに上がる梯子を登るわけだから、黒いビキニショーツが見えてしまう。
 彼女らにとって、ビキニブラとショーツは装甲板のようなもので、体を洗う時以外は絶対に取ろうしない。
 消灯して敷島がベッドに潜り込むと、あとはエアコンの暖房の音すら聞こえなくなる。

 敷島:(エミリーが言ってたことは本当なのか……)

 エミリーが滑らかな口調になり、表情も不敵なものに変わった時、まるで人格が入れ替わったかのように見えた。
 ある秘密を敷島に語った後は、また元の口調に戻り、表情も元に戻った。

 敷島:(俺はとんでもない肩書きを手にしちゃったのかもしれない……)
コメント
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