[11月7日15:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]
平賀:「……これで行くしかないな」
平賀もまたエミリーの右腕を封印した。
銃火器の取り外しはできなので、腕ごと交換することになる。
銃弾を全て取り除き、右腕は銃に変形できないようにした。
ゼミ生A:「エミリーさんの能力が1つ失われて、残念ですね」
ゼミ生B:「あんな命令を出す国家公安委員会は横暴ですよ」
見学していたゼミ生達が口を開いた。
平賀:「だが、確かに必要性の弱まっていたものではある。KR団は正式には崩壊した。その後のロボットテロがほぼ鎮静化した以上、マルチタイプの銃火器は要らないだろうという見方だからな」
ゼミ生C:「それで先生、エミリーさんは今後どうなるんですか?」
平賀:「案ずるな。こんなこともあろうかと、実は新しい腕は製作中なんだ。本当はできてから、キミ達に見せたかったんだけど……」
ゼミ生D:「……何だか、メイドロイドの腕に似てますね」
平賀:「そうだろう。だが、中身は銃火器なんかよりも驚くものを仕込んである。完成したら、まず真っ先にゼミ生のキミ達に見せることを約束しよう」
ゼミ生A:「是非、よろしくお願いします」
エミリーは学術的、シンディは商業的な立場で活躍している。
その後、平賀は科学雑誌の取材を受けた。
平賀:「……確かに国家公安委員会の通達は急なものではありますが、しかし予め想定できたことでもあります。その為、こちらの対応策として、予め法規制に則った新しい腕を製作することができました」
記者:「でも、まだ完成していないんですね?」
平賀:「ええ。ですので正直、急な話だったというわけです。でもそれは公安委も想定済みなのか、ある程度長い猶予期間を設けてくれましたが」
記者:「段階を踏ませることで、実質長い猶予期間ですね」
平賀:「そうです。まず、通達内容に対する異議申し立てをする期間が2週間ありました」
異議申し立てをする場合は2週間以内に申し出よ、というものだ。
敷島の場合、次の日には異議申し立てをしたわけだが、もっと冷静になれば、あえて期限ギリギリに異議申し立てを行い、2週間儲けることができたわけだ。
平賀の場合は異議申し立てをするつもりが無かったので、何も回答する必要は無い。
返答無きは認めたも同様だからだ。
つまり現時点においてはまだ通告を受けただけの段階なので、まだエミリーは銃火器を装備できるし、当然発砲もできる。
平賀:「認める場合はどのような対応策をするのかの案を提出しなければなりませんが、それとて2週間の期間が設けられています。つまり、実質的に約1ヶ月の猶予があるわけですね」
記者:「それなら何も、まだ封印する必要は無いんじゃないでしょうか?」
平賀:「封印はしましたが、それは解除しようと思えばいつでも解除できる状態です。封印をすることにより、こちらの意思を示すつもりです」
記者:「なるほど。平賀教授としましては、どのような腕を取り付けるつもりですか?」
平賀:「まだ開発途中なので言及できませんが、それまでの銃火器と比べれば、見た目にも物騒なものではないことはお約束できますよ」
記者:「それは殺傷能力のあるものですか?」
平賀:「KR団が崩壊したとはいえ、あいにくとまだロボットテロの脅威が無くなったけではありません。また、テロは何もロボットが起こすものだけではありません。これまで通り、人間が起こすテロの方がまだ圧倒的に数が多いわけですね。で、そんなテロリスト達は当然ながら殺傷能力のある武器を持っているわけです。それに対抗する為には、あいにくとこちらもそれなりの能力を持たせたものを装備しておかないと、太刀打ちできないのが現状です。公安委の通告には従いつつも、テロの脅威に対抗しうるものを開発するつもりです」
そう答えた平賀の眼鏡が光った。
いや、眼鏡ではなく、目が光ったのか。
[同日17:00.天候:曇 東北工科大学・南里志郎記念館]
https://www.youtube.com/watch?v=sneVLQ7ju7I
https://www.youtube.com/watch?v=KYWd8f6qsAo
いつもの時間になり、エミリーは記念館のエントランスホールにあるグランドピアノを弾いていた。
何故か今日の曲は暗いものが多い。
https://www.youtube.com/watch?v=vJHO0EYS8-s
エミリー:「…………」
エミリーは弾き終わると、鍵盤の蓋を閉めた。
平賀:「エミリー、今日は3曲だけか。もっと弾いてもいいんだぞ」
エミリー:「プロフェッサー平賀」
平賀:「右腕の銃は封印したが、それ以外は通常使用できるはずだ。何か、異常があるか?」
エミリー:「ノー。通常使用に・問題は・ありません」
平賀:「それならいいじゃないか」
エミリー:「ただ……」
平賀:「?」
エミリー:「物凄く・違和感・あります。それまで・使えていた・機能が・急に・使えなくなった・こと……」
平賀:「まあ、そうだろうな。だが、短い間だけ。ほんの暫定的な間だけだ。今に、それまでの腕が嘘みたいに、いいものを取り付けてやるぞ。お前は南里先生の最高傑作だ。最後まで師事していた自分が、それに恥じない物を今作っているからな」
エミリー:「楽しみに・しております」
平賀:「取りあえず、火炎放射器はそのままでいい」
そう言った後で、
平賀:(もっとも、火炎放射器自体、使い勝手は良くないように見えるがな)
と思った。
なので、新しい腕になったら火炎放射器も無くすつもりである。
エミリー:「シンディは・どうなのでしょうか?」
平賀:「まあ通告内容は同じだし、お前もシンディも同型機だから、行き着く所は同じだと思うがな。アリスのことだから、何か物騒なものを取り付けそうな気がするが、そこは敷島さんが阻止してくれるだろう」
エミリー:「了解・しました」
平賀は記念館を出た後で思った。
平賀:(まあ、銃火器も結構重い物だし、これを機に更にエミリーの軽量化もできるってもんだ)
平賀:「……これで行くしかないな」
平賀もまたエミリーの右腕を封印した。
銃火器の取り外しはできなので、腕ごと交換することになる。
銃弾を全て取り除き、右腕は銃に変形できないようにした。
ゼミ生A:「エミリーさんの能力が1つ失われて、残念ですね」
ゼミ生B:「あんな命令を出す国家公安委員会は横暴ですよ」
見学していたゼミ生達が口を開いた。
平賀:「だが、確かに必要性の弱まっていたものではある。KR団は正式には崩壊した。その後のロボットテロがほぼ鎮静化した以上、マルチタイプの銃火器は要らないだろうという見方だからな」
ゼミ生C:「それで先生、エミリーさんは今後どうなるんですか?」
平賀:「案ずるな。こんなこともあろうかと、実は新しい腕は製作中なんだ。本当はできてから、キミ達に見せたかったんだけど……」
ゼミ生D:「……何だか、メイドロイドの腕に似てますね」
平賀:「そうだろう。だが、中身は銃火器なんかよりも驚くものを仕込んである。完成したら、まず真っ先にゼミ生のキミ達に見せることを約束しよう」
ゼミ生A:「是非、よろしくお願いします」
エミリーは学術的、シンディは商業的な立場で活躍している。
その後、平賀は科学雑誌の取材を受けた。
平賀:「……確かに国家公安委員会の通達は急なものではありますが、しかし予め想定できたことでもあります。その為、こちらの対応策として、予め法規制に則った新しい腕を製作することができました」
記者:「でも、まだ完成していないんですね?」
平賀:「ええ。ですので正直、急な話だったというわけです。でもそれは公安委も想定済みなのか、ある程度長い猶予期間を設けてくれましたが」
記者:「段階を踏ませることで、実質長い猶予期間ですね」
平賀:「そうです。まず、通達内容に対する異議申し立てをする期間が2週間ありました」
異議申し立てをする場合は2週間以内に申し出よ、というものだ。
敷島の場合、次の日には異議申し立てをしたわけだが、もっと冷静になれば、あえて期限ギリギリに異議申し立てを行い、2週間儲けることができたわけだ。
平賀の場合は異議申し立てをするつもりが無かったので、何も回答する必要は無い。
返答無きは認めたも同様だからだ。
つまり現時点においてはまだ通告を受けただけの段階なので、まだエミリーは銃火器を装備できるし、当然発砲もできる。
平賀:「認める場合はどのような対応策をするのかの案を提出しなければなりませんが、それとて2週間の期間が設けられています。つまり、実質的に約1ヶ月の猶予があるわけですね」
記者:「それなら何も、まだ封印する必要は無いんじゃないでしょうか?」
平賀:「封印はしましたが、それは解除しようと思えばいつでも解除できる状態です。封印をすることにより、こちらの意思を示すつもりです」
記者:「なるほど。平賀教授としましては、どのような腕を取り付けるつもりですか?」
平賀:「まだ開発途中なので言及できませんが、それまでの銃火器と比べれば、見た目にも物騒なものではないことはお約束できますよ」
記者:「それは殺傷能力のあるものですか?」
平賀:「KR団が崩壊したとはいえ、あいにくとまだロボットテロの脅威が無くなったけではありません。また、テロは何もロボットが起こすものだけではありません。これまで通り、人間が起こすテロの方がまだ圧倒的に数が多いわけですね。で、そんなテロリスト達は当然ながら殺傷能力のある武器を持っているわけです。それに対抗する為には、あいにくとこちらもそれなりの能力を持たせたものを装備しておかないと、太刀打ちできないのが現状です。公安委の通告には従いつつも、テロの脅威に対抗しうるものを開発するつもりです」
そう答えた平賀の眼鏡が光った。
いや、眼鏡ではなく、目が光ったのか。
[同日17:00.天候:曇 東北工科大学・南里志郎記念館]
https://www.youtube.com/watch?v=sneVLQ7ju7I
https://www.youtube.com/watch?v=KYWd8f6qsAo
いつもの時間になり、エミリーは記念館のエントランスホールにあるグランドピアノを弾いていた。
何故か今日の曲は暗いものが多い。
https://www.youtube.com/watch?v=vJHO0EYS8-s
エミリー:「…………」
エミリーは弾き終わると、鍵盤の蓋を閉めた。
平賀:「エミリー、今日は3曲だけか。もっと弾いてもいいんだぞ」
エミリー:「プロフェッサー平賀」
平賀:「右腕の銃は封印したが、それ以外は通常使用できるはずだ。何か、異常があるか?」
エミリー:「ノー。通常使用に・問題は・ありません」
平賀:「それならいいじゃないか」
エミリー:「ただ……」
平賀:「?」
エミリー:「物凄く・違和感・あります。それまで・使えていた・機能が・急に・使えなくなった・こと……」
平賀:「まあ、そうだろうな。だが、短い間だけ。ほんの暫定的な間だけだ。今に、それまでの腕が嘘みたいに、いいものを取り付けてやるぞ。お前は南里先生の最高傑作だ。最後まで師事していた自分が、それに恥じない物を今作っているからな」
エミリー:「楽しみに・しております」
平賀:「取りあえず、火炎放射器はそのままでいい」
そう言った後で、
平賀:(もっとも、火炎放射器自体、使い勝手は良くないように見えるがな)
と思った。
なので、新しい腕になったら火炎放射器も無くすつもりである。
エミリー:「シンディは・どうなのでしょうか?」
平賀:「まあ通告内容は同じだし、お前もシンディも同型機だから、行き着く所は同じだと思うがな。アリスのことだから、何か物騒なものを取り付けそうな気がするが、そこは敷島さんが阻止してくれるだろう」
エミリー:「了解・しました」
平賀は記念館を出た後で思った。
平賀:(まあ、銃火器も結構重い物だし、これを機に更にエミリーの軽量化もできるってもんだ)