ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“Gynoid Multitype Cindy” 「廃銃令」

2016-11-18 20:49:58 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月1日15:10.天候:晴 東京都中央区→江東区 覆面パトカー車内]

 敷島は銀座の町を歩いていると、敷島の所へ向かう途中だったという鷲田警視と偶然会った。
 敷島の事務所に向かう途中だということで、帰社途中だった敷島とシンディもそれに便乗した。
 運転しているのは若い刑事で、村中課長はいない。
 鷲田は助手席に座り、時々斜め後ろに座る敷島を見ながら言った。

 敷島:「今日は村中課長はいらっしゃらないんですね」
 鷲田:「ああ。別件でな」
 敷島:「それで、私に何か用でしょうか?」
 鷲田:「うむ……。まず、シンディが装備している銃火器は何だったっけか?」
 敷島:「ライフルとマシンガンとマグナムです」
 鷲田:「それは……必要なものなのか?」
 敷島:「それは鷲田警視も御存知のはずでしょう?」
 鷲田:「……実はな、そうは思っていない人達がいるんだ」
 敷島:「どういうことですか?」
 鷲田:「こいつらの銃火器装備は、本来は違反であることは知ってるな?」
 敷島:「ええ。ですけど、公安委員会が超法規的な措置で許可してくれているはずですが……」
 鷲田:「いや、許可はしていない。あくまで、黙認だ。もし正式に許可しているのならば、そういった書類があるはずだが、キミは持っているかね?」
 敷島:「た、確か、財団があった頃は本部に……あれ?」
 鷲田:「見たことが無いのも無理は無い。そもそも公安委員会で、そんなものは出していないからだ」
 敷島:「ええっ!?」
 鷲田:「だから、超法規的措置という物凄く曖昧な表現が使われていたのだろう」
 敷島:「も、もしかして……もしかすると……」
 鷲田:「もしかするぞ。ついにその公安委員会の方から、そいつらの銃火器を取り外せというお達しが来た。いつまでも超法規的な措置は続けていられんということだな」
 敷島:「ま、待ってください!まだKR団の残党が残っているかもしれないんですよ!?」
 鷲田:「正式にはKR団は壊滅したことになっている。残党を名乗っている者については、ただの模倣犯かもしれん」
 敷島:「模倣犯が“ゆりかもめ”やフランケンを暴走させるなんてムリですよ!」
 鷲田:「だが、いずれの場合もシンディは銃など使わずに解決したではないか。必要無いものを、曖昧な理由で持たせ続けるわけにはいかんということらしい」
 敷島:「う……」

 敷島はそれ以上言い返せなかった。
 確かに最近、暴走ロボットはナリを潜めたし、仮にいたとしても、マルチタイプの腕力を持ってすれば簡単に倒せるようになっている。
 また、逆に銃弾に強いロボットが開発されるようになって、必ずしもマルチタイプの銃火器で倒せるとは限らなくなってきた。

 敷島:「マルチタイプ達の銃火器は標準装備なんです。そう簡単に取り外しなんてできませんよ」
 鷲田:「今すぐにというわけではあるまい。但し、あまり反対し続けた場合、キミの可愛がっているロボット達が悉く稼働停止処分になることも覚悟しなくてはならないだろう」
 敷島:「そんな……!」
 鷲田:「いいか?キミ達に通告を出して来ているのは、東京都公安委員会ではない。国家公安委員会だ。警察も黙る国家公安委員会だよ。よく考えたまえ」

[同日15:45.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18階・敷島エージェンシー]

 敷島達が帰社すると、事務員ロイド(メイドロイドからの用途変更機)の一海から村中課長が来ていることを告げられた。
 すぐに応接室に向かう。

 村中:「鷲田警視!」
 鷲田:「おう、ご苦労さん。もう別件は済んだのか?」
 村中:「おかげさまで。奴さんも、だいぶおとなしくなったもんです」
 鷲田:「そうかそうか」
 村中:「敷島社長、お邪魔してますよ」
 敷島:「お待たせしました。鷲田警視から、大方の話は聞いています」
 村中:「それなら話が早い。ではこれが、公安委員会からの通告書です」

 敷島は村中から通告書を受け取った。
 確かに、シンディの銃火器を速やかに取り外すようにとの内容が書かれていた。

 村中:「従いますか?」
 敷島:「……異議申し立てを行います」
 鷲田:「いいのか?公安委員会を怒らせたりしたら、最悪、そこのロボットに廃棄処分命令が下るぞ?」
 村中:「そうですよ。あくまでも公安委は、シンディの銃火器を取り外せとしか言ってません。つまり、稼働自体はこれからもOKということです。悪い条件ではないと思いますが……」
 敷島:「今シンディ達が付けている装備は、全て必要なものであり、彼女達のアイデンティティーそのものです。前期型のシンディが大型ナイフを振りかざし、銃火器はそんなに使わなかったのに対し、後期タイプはそれを払拭する為でもある銃火器なんです。ロボット未来科学館のイベントでも、シンディの長距離からの狙撃は喝采を浴びています」
 鷲田:「その時はイベント用として、改めて許可を取れば良いではないか。いざとなったら、埼玉県公安委員会に私の知り合いがいる。イベント用としての申請だけなら、口添えくらいしてやるぞ?」
 敷島:「とにかく、こちらにも言い分はありますから、それは聞いて頂こうと思います」
 鷲田:「却下されたらどうする?え?というか、却下される可能性の方が大だぞ?」
 村中:「そうですよ。どうせ却下されるのなら、最初から従った方が心証もいいですよ」
 敷島:「とにかく、急な通告は納得しかねます。シンディの発砲により多大な迷惑を掛けてしまったという事実があるのなら吝かではありませんが、ただ単に必要性の有無だけで判断されたことについては真に遺憾だということです」

 敷島のこれだけは譲れないという態度に、2人のベテラン刑事はただ閉口するしか無かった。

[同日17:00.天候:晴 敷島エージェンシー・社長室]

 敷島:「勝っちゃん!これ、勝っちゃんのせいだろ!?フランケンの事件が表沙汰になったもんだから、余計な波風が立ったってことだ!」

 敷島は同級生の都議会議員に電話していた。

 勝又:「い、いやあ、都議会でちょっと議題になったもんだからさぁ……。誰かが公安委員会にチクりを入れたみたい」
 敷島:「勝っちゃんの力で、公安委員会に何か言えない?」
 勝又:「相手は国家公安委員会だろう?都議じゃムリだよ。実は国会でも暴走ロボットの問題については色々と問題視していた人達がいて、多分その人達が動いたんだと思う」
 敷島:「正式に、シンディの銃火器標準装備が許可される方法って無いかな?」
 勝又:「難しいね。警察の中でも、ロボットが人間の警官の代わりに事件を解決するってことが気に入らない幹部も多々いるんだ。恐らく公安委員の中にもそういう考えの人がいて、フランケンの事件を渡りに船とばかりに波風立てたかもしれないんだ」
 敷島:「くそっ!特撮ヒーローロボットものじゃ、鳴り物入りで大歓迎されてるってのに!」

 もちろん、例外もある。
 鷲田警視のような保守派の刑事が、ロボット刑事の活躍を最初は認めないという描写は多々ある。

 勝又:「とにかく、迷惑を掛けて済まなかった。こちらとしても、何とか和解策というかさ、折衷案というか、そういうのを考えてみるから、くれぐれもマルチタイプをけしかけて公安委員会の本部に殴り込みに行くような真似はやめてくれよ」
 敷島:「……殴り込みには行かないけど、取りあえず文句は言いに行こうと思った。よく分かったな、勝っちゃん?」
 勝又:「校長室にスクールバスで特攻したの、キミだけだもんな」
 敷島:「イジメ被害で自殺者まで出したのに、何もしなかったアホ校長に抗議しただけさ。今思えば、とてもバカなことをしたと思っているよ」
 勝又:「そうだろうそうだろう」
 敷島:「よくよく考えたら、隠蔽の指示出してたの教育委員会だったから、そっちの本部がある県庁に特攻するべきだった」
 勝又:「こらぁ〜!」
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