ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“Gynoid Multitype Cindy” 「マルチタイプ新造計画」

2016-11-29 21:13:17 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月23日16:00.天候:晴 東京都板橋区常盤台 某大邸宅]

 「板橋の田園調布」と呼ばれる高級住宅街。
 その一画に構えられた邸宅にも、『敷島』の表札を掲げる家がある。
 その家の主人は90歳近くにもなる老人で、彼は大広間と見間違うほどの和室に掲げられた大インチのテレビを見ていた。
 テレビといっても、普通に何かの番組を見ていたわけではない。
 彼が見ていたのはボーカロイドのライブ動画、そして敷島エージェンシーで活躍するシンディの姿であった。

 主人:「フム……。死ぬ前に、最後の贅沢がしたいものじゃ……」

 主人はいかにも高価そうな木製の卓の上にあるインターホンを押した。

 家政婦:「はい、旦那さま。お呼びでしょうか?」
 主人:「うむ。孝夫の会社にファックスしてくれ。それが終わったら、本人にも電話を繋いでほしい」
 家政婦:「かしこまりました」

[同日同時刻 天候:曇 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]

 平賀:「これでよし。本格的なオーバーホールは、大学が冬休みに入ってから行うことにする」

 軽くエミリーの整備をしていた平賀。
 学生達が興味津々にその光景を見つめている。

 エミリー:「ありがとう・ございます。シンディは・診て頂けないのですか?」
 平賀:「シンディの整備はDCJさんが一手に行っている。自分が勝手に手を出すわけにはいかんよ」

 本当はアリスが一手に引き受けているのだが、かつての仇敵の孫娘とはどうしても相容れないようだ。

 平賀:「自分は敷島社長とこれから行く所があるから。エミリーのピアノの演奏はこれまで通り行うから」
 学生A:「はい」
 学生B:「先生、シンディさんはフルートを吹いてくれないんですか?」
 敷島:「そこは敷島さんに聞かないと……。ん?」

 その時、平賀達はスマホ片手に慌てて外に飛び出す敷島の姿を見た。

 平賀:「何かあったのかな?」
 学生A:「まさか暴走ロボットの出現ですか!?」
 学生B:「KR団の生き残りですか!?」
 学生C:「行ってみましょう!」
 平賀:「こらこら!野次馬みたいなことしない!」

 敷島は思いも掛けない人物からの電話に慌てたのだった。

 ???:「やあ。ワシだが、覚えているかね……?」
 敷島:「は?どちら様でしょう?」
 ???:「常盤台の隠居と言えば、分かるかの?」
 敷島:「か、会長!……も、もとい、最高顧問!」
 ???:「いかにも。四季ホールディングス最高顧問にして、お前の大叔父の敷島孝之亟じゃ。久しぶりじゃの」
 敷島:「な、何の御用でしょうか?特に敷島エージェンシーとしては、何か問題を抱えているようなことは無いはずですが……」
 最高顧問:「問題を抱えておらぬ会社など無いと何度言ったら分かるんじゃ?KR団というテロ組織に狙われているのと、国家公安委員会に目を付けられたそうじゃないか?それで問題無しと言えるのかね?」
 敷島:「も、申し訳ありません!……それで、何の御用でしょうか?」
 最高顧問:「かような問題に直面しながら、たいそう好調な売り上げの実績、ワシは重く受け止めておる」
 敷島:「あ、ありがとうございます!」
 最高顧問:「ボーカロイドについての存在はお前さんからも何度も聞いたが、ワシが別に興味を持ったものがある」
 敷島:「何でございましょう?」
 最高顧問:「お前さんの所の秘書ロボット……あー……」
 敷島:「シンディですか?」
 最高顧問:「うむ。そちらもかなりの評判じゃそうじゃないか」
 敷島:「おかげさまで……」
 最高顧問:「それで、だ。モノは相談じゃが、そのロボットは1つ造るのにどれくらい掛かるのかね?」
 敷島:「今はDCJさんとライセンス契約を結んでまして、販売もそちらに委託していますが、シンディのタイプですと50億円ほどになりますが……」
 最高顧問:「50億か。うむ。確かに評判なだけに、良い値段をしおる」
 敷島:「そうですね。メーカー希望小売価格のようなものですが、そもそも小売店で扱っているような代物でも無いので、これ以上は安くできませんよ」
 最高顧問:「じゃろうな。まあ、ワシのポケットマネーにプラス、コレクションのルノワールとサルバドール・ダリの絵を2〜3枚売った金で捻出できるじゃろう」
 敷島:「大叔父さん……じゃなかった。最高顧問、四季ホールディングスでシンディを御入用でしたら、お貸ししますよ?」
 最高顧問:「馬鹿者!ワシは新品のロボットが欲しいのじゃ!50億円は後でキャッシュで用意する!直ちにそのロボットの製造の準備をせい!受注生産なんじゃろう?」
 敷島:「へ?ええーっ!?」

 敷島は飛び上がらんばかりに驚いた。

[同日18:00.天候:曇 宮城県仙台市青葉区国分町・八波亭]

 

 平賀:「ええっ!?敷島さんの大叔父さんから!?」
 敷島:「そうなんですよ。シンディみたいなのを造ってくれって」
 平賀:「……アルエットじゃなくて?」
 敷島:「大叔父さんは、シンディの活躍が気に入ったので、是非シンディを抱えたいとのことでした。どうせ老い先短いですから、しばらくの間シンディを貸しても良かったんですが、なかなか実はガンコジジィだったりして、どうしても新品でないとダメだとか言いましてですね……」
 平賀:「50億円用意できるんですか?」
 敷島:「それが、用意すると……」
 平賀:「そう簡単に一般で造れないようにする為に設定した値段ですよ。それをまさか本当に……」
 敷島:「桃太郎ランドみたいに、200億円くらい吹っ掛けた方が良かったですかね?」
 平賀:「アルエットは、もう少し値上げしてもいいかな……」

 因みに値段設定の権限があるのは敷島と平賀だけである。
 DCJのメーカー希望小売価格だというのは、あくまで表向き。
 何しろDCJは、製造と販売を敷島から委託されているだけなのだから、値段設定の権限は敷島にある。
 別に敷島がボロ儲けしたいからわざと50億円にしているのではなく、さすがにエミリーやシンディのような、使い方を間違えれば町1つ壊滅させかねない兵器にも転用できるロイドを一般販売できないようにする為であった。

 敷島:「詳しいことは明日、会社にファックスが届いているそうなので、それを確認します。単なる年寄りの気紛れで済んでくれればいいのですが……」
 平賀:「本気だったらどうします?」
 敷島:「……平賀先生、造ってくれません?」
 平賀:「まあ、いいですけど、敷島さんに注文が来たんだから、実際はDCJさん、つまりアリスが造ることになるでしょう?」
 敷島:「そうですね。この後、サウナ行きましょうか」
 平賀:「いいですね。行きましょう」

 敷島達はアルコールと一品料理を口に運んだ。
 ついに新たに注文が入ったマルチタイプの新造。
 果たして詳細は如何に?
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