ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“Gynoid Multitype Cindy” 「ロイドとロボットの違いについて」

2016-11-28 21:05:07 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月23日15:00.天候:曇 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]

 レンタカーを駅前のレンタカーショップに返却すると、ここで敷島達の行動が別れる。
 アリスはトニーと二海を連れて、先に大宮に戻ることになった。

 アリス:「いい?くれぐれも遊び過ぎるんじゃないのよ?今日中に帰ってこないと、シンディに電流流させるからね」
 敷島:「分かった、分かったから」

 尚、同行者にはDCJ社員もいた。
 休日でありながら、仙台支社オープンに伴う準備には余念が無いようだ。
 アリスを見送った後で、敷島は平賀達と東北工科大学へ向かった。

 敷島:「あれ?記念館が開いてますよ?」

 敷島達を乗せたタクシーが記念館に近づく。

 平賀:「古い建物ですからね、常にメンテは必要なんですよ」
 敷島:「早く新しい建物を割り当ててくれるといいのにねぇ……」

 で、記念館のエントランスホールに入ると、記念館を掃除している者がいた。

 敷島:「あれ、七海じゃん!?久しぶりだなー!」
 七海:「敷島社長、お久しぶりです」

 七海はモップを手にしたまま、敷島達の方を向くとペコリとお辞儀した。
 七海は日本初のメイドロイドである。
 平賀と七海の稼働実験については、学内でも語り草となっている。

 平賀:「ナツもチビ達も今日一日いないので、七海をこちらに呼んだんです」
 敷島:「そうなんですか」

 七海はシンディに会釈した。

 シンディ:「ああ。ご苦労さん」

 いつもシンディは七海と会うと、ばつの悪そうな顔になる。
 前期型とはいえ、シンディと七海には東京決戦での因縁があるからだ。
 七海はメイドロイドでありながら、最上位機種のマルチタイプに立ち向かったことで有名だったりする。
 もちろん理由は、マスターの平賀の護衛である。
 相手が上位機種であっても、それが牙を剥いて来たら、主人の為に戦うという気概は今でも伝説である。

 平賀:「エミリーを展示ブースに戻して来ますので、敷島さんは応接室で休んでてください」
 敷島:「ありがとうございます」
 平賀:「七海、敷島さんにコーヒーをお入れしろ」
 七海:「かしこまりました」
 敷島:「さすがに『紅ヒー』というボケはしなくなったかな?」
 七海:「大丈夫ですよ」
 平賀:「さすがに人工知能は大幅に改善しました」
 敷島:「それは頼もしい」

 敷島がシンディと一緒に応接室に向かおうとすると、エントランスから学生らしき者が数人入って来た。

 学生A:「先生!平賀先生!もう戻られたんですか!?」
 平賀:「ああ。今しがたね。キミ達も済んだのかい?」
 学生B:「そうです」
 敷島:「一体、何の話ですか?」
 平賀:「南里先生はこの大学の名誉教授だった御方です。実際に遺骨が収められているお墓の他、ここには記念碑と銅像もあるんですよ。で、中にはそちらに献花したりする者もいるんです」
 敷島:「ああ!何か見たことあるなぁ!よし、俺達も行こう!」

 敷島とシンディは記念館の近くにある銅像と記念碑を見に行った。
 銅像は全身像で、冬場によく着ていた焦げ茶色のロングコートを着用し、両手を腰の後ろで組んで仁王立ちになっている銅像だ。
 因みに記念館内には、平賀の同級生で美大の講師が描いた肖像画もある。
 七回忌ということもあって、記念碑の周りには花束が置かれていた。

 敷島:「色々とブッ飛んだ博士だったが、人間味には溢れていた人だったからな。何だかんだ言って、人徳はあったってわけか」
 平賀:「そうですよ。ほんと、変わった人でしたけどねぇ……」

 何しろ遺影が、『アインシュタインのモノマネ』と称して、舌をペロッと出したものだった。
 他にも両手でピースサインをしたものなどがあり(本人曰く、「遺影だけにイェーイw」とのこと)、とても遺影に使えそうに無い写真ばかりであった。
 だが南里は、遺言でそのどれかを遺影に使えと遺した為、使わざるを得なかった。
 結局、科学者繋がりで、アインシュタインのモノマネをしている写真を使った由。
 それだけに、銅像の方は割とまともなものであった。
 ま、こちらは大学側が好意で建てたものであるが。

 エミリーは南里の銅像に向かって、深々とお辞儀をした。
 因みに肖像画の中には、南里がエミリーと並んで立つものもある。

 シンディ:「ウィリアム博士も……もう少し謙虚な人であったら……」
 敷島:「ああ。東京決戦すら無かっただろうな」

 未だにドクター・ウィリーこと、ウィリアム・フォレスト博士においては、世界的なマッドサイエンティストとして悪名高く、当然ながらそんな彼の顕彰などされるわけが無かった。

 館内に戻ってエミリーを展示ブースに戻す。
 因みにエミリーの隣には、空のブースがあった。
 これは敷島が平賀に頼んで用意してもらったもの。

 敷島:「いずれはシンディも役目を終えて、博物館にでも飾られる時が来るでしょう。その時、エミリーの隣に飾ってやって欲しいのです」

 ということだ。
 実際はDCJが是非にと引き取って、DCJ直営科学館にでも飾られていそうな気がするが。
 エミリーは南里の死によって半分その役目を終えたようなもの。
 KR団も表向きには崩壊した為、普段はここで飾られている。
 だが時折こうして、記念館から出ることもある。

 学生A:「先生、新たに『ロボットとロイドの違いについて』の文面を打ち直して来ました。後で向こうの展示室に設置しますが、これでよろしいですか?」
 平賀:「どれ……」
 敷島:「どれ……」
 シンディ:「社長も見るの?」

 人工知能のみ搭載されたものをロボット、人工知能の他に感情因子も搭載されたものをロイドとするという定義。
 簡潔にまとめればそういう内容なのだが、他にこんなことが書いてあった。
『二足歩行のみならず、人間と見た目が同じタイプをロイドと呼ぶように発案したのは(株)敷島エージェンシー代表取締役の敷島孝夫氏であり、それを受けた平賀太一教授が学会で提唱したものです』
 と。

 敷島:「あれ?俺の名前出てる」
 平賀:「あ、これはどうも失礼しました。おいおい、ダメだよ。勝手に敷島さんの名前出しちゃ……」
 学生A:「すいません」
 敷島:「まあ、別にいいですけどね。ただ、私はボーカロイドを手掛けているもので、他にシンディみたいなマルチタイプに、一海みたいなメイドロイドもいたりするもんで、それを全部ひっくるめてロイドと呼ぶようにしただけの話ですよ」
 学生B「敷島社長!そのお言葉、是非使わせて頂いてもよろしいですかぁ!?」
 平賀:「卒業論文にでも使う気か、こら?」

 平賀は自分の学生のこととはいえ、少し呆れ顔であった。
 で、応接室では……。

 七海:「コーヒーぬるくなっちゃったけど、まだ来ないのかしら?」

 七海が待ちぼうけ食らっていたという。
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