ノベラーエクスプレス関東

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“Gynoid Multitype Cindy” 「廃銃令」 2

2016-11-19 20:36:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月1日19:00.天候:晴 敷島エージェンシー社長室]

 敷島は国家公安委員会から受けたシンディに対する廃銃令に対応するべく、様々な方面と連絡を取っていた。

 敷島:「平賀先生、すいません。こんな時間に……」
 平賀:「ああ、いや……。何の御用ですか?」
 敷島:「実は今日、警視庁の鷲田警視から……」

 敷島が言い終わらぬうちに、平賀が電話口から答えた。

 平賀:「マルチタイプに搭載されている銃を取り外せ、という命令のことですか?」
 敷島:「すると、もしかして!?」
 平賀:「ええ。うちのエミリーにも来ましたよ。エミリーに限らず、バージョン・シリーズも全て含めてです」
 敷島:「平賀先生はどうなさるおつもりですか?」
 平賀:「どうもこうも、従うしか無いでしょう。今のところ、うちのエミリーも銃火器を使う機会は無いんでね」
 敷島:「銃火器は標準装備でしょう?そう簡単に取り外しは……」
 平賀:「腕ごと交換するしかありません。自分、こんなこともあろうかと、実は新しい腕を作っている最中だったんです」
 敷島:「ええっ!?」
 平賀:「幸いエミリーは近接戦、体術も得意としますから。それに……どうも、火炎放射器については、飛び道具ではないから認められそうです」
 敷島:「そうなんですか!?」
 平賀:「通告書を見ていないんですか?銃火器と書いているから、つい火炎放射器も対象となりそうですが、よくよく考えてみたら、民間用の火炎放射器は国内でも認められています。エミリーに搭載されている火炎放射器の力を民間用レベルに押さえれば、搭載が許可されそうです。これは自分の知り合いの法学者にも相談しているところなんですが」
 敷島:「すると、他に認められそうなのは高圧電流ですか」
 平賀:「スタンガンを搭載している体裁で行けば可能かと。あと、有線ロケットパンチも銃火器ではないから明らかに規制の対象外です」
 敷島:「なるほど……」
 平賀:「敷島さんはどうなさるおつもりですか?」
 敷島:「公安委員会と交渉してきますよ」
 平賀:「上手く行きますか?」
 敷島:「分かりませんが、こちらの言い分もちゃんと伝えたいです」
 平賀:「……あとこれは、心理学者というか精神医学者というか……その筋から聞いた話なんですが……」
 敷島:「何でしょう?」
 平賀:「もしマルチタイプの銃火器装備を利権と考えているのなら、それを確保する為の八百長に走ることは絶対に控えるようにと言われましたよ」
 敷島:「はあ?何ですかそれ?」

 “バイオハザード リベレーションズ”というホラーアクションゲームがある。
 その黒幕となった人物は、自らが代表を務める組織の利権拡大の為、わざとテロ組織にバイオテロを起こさせ、それの事態収拾を行うことで世界中からその組織の必要性を認識させるという八百長を行った。
 最終的には主人公達の活躍により、その黒幕の八百長テロ首謀の証拠を押さえ(けしかけたテロ組織のリーダーと密談している映像を入手した)、黒幕は無事に逮捕され、組織は世界中からの信頼を失い、崩壊している。

 平賀:「……ということですよ、敷島さん?」
 敷島:「そんなことしませんって。何の為に、東京決戦で死ぬ思いしたんですか」
 平賀:「あの時を忘れてなければ大丈夫ですね。自分も死に掛けましたから」

 前期型のシンディに刺し殺されるところだった平賀。
 シンディに刺される直前、ウィリーがシンディを呼び戻したことで九死に一生を得ている。
 敷島は暴走したシンディが目の前でウィリーを刺殺し、次は自分の番だと確信した。
 馬乗りになって殴られはしたが、直後に駆け付けて来たエミリーに助けられている。

 敷島:「そうだ。前期型みたいに大型ナイフを持たせてみましょう」
 平賀:「実行したら絶交ですよ」
 敷島:「冗談ですって」

 とは言いつつ、敷島はシンディの右足を見た。
 あの脛の中は収納スペースになっていて、前期型のシンディはそこに大型ナイフを仕込んでいた。
 エミリーは折り畳み傘を仕込んでいたが。

 電話を切った敷島、今度はアリスに掛けてみる。

 アリス:「はあ?公安から?」
 敷島:「そうなんだ。日本は銃の無い国だろ?それなのに、マルチタイプ達がいつまでも銃を持ち続けるのはおかしいだろってことらしい」
 アリス:「KR団と戦う為に、特別に認めるって話だったじゃないのよ!?」
 敷島:「そのKR団が潰れたんだから、もういいだろってさ」
 アリス:「まだ生き残りがいるじゃない」
 敷島:「生き残りについては警察でやるから、ロボットはおとなしくしててくれってことだろう」
 アリス:「日本の警察が頼り無いから、シンディ達が捜査協力してやったのに、随分と勝手なこと言うもんだね。裁判に訴えみたら?」
 敷島:「負けるに決まってるだろ。本来、シンディ達の銃火器標準装備自体が違法だったんだから。素直に従えば、今まで超法規的な措置ということで黙認してきた公安委員会にも責任はあるし、実際にそれでKR団潰しに一役も二役も買った功績を認めて、それまでの銃火器搭載・発砲については不問にするらしい」
 アリス:「でもねぇ……」
 敷島:「鷲田警視にも言われたよ。『デイライトさんが保管していた銃弾をごっそり盗まれたことも、大きな一因だろう』って」
 アリス:「う……」
 敷島:「『盗まれてすぐに取り返したのならまだしも、実際に発砲に使われて重軽傷者を出している。死人を出す前に、何とかしようってことだろう』ってね」
 アリス:「シンディの右腕は、銃火器変形ありきの設計だよ?今更取り外しなんてできないよ」
 敷島:「平賀先生は公安の動きを察知していたのか、銃火器の無い右腕を作っているらしい。アリスも作ってくれよ」
 アリス:「それって、公安が金出してくれるの?」
 敷島:「出すわけないさ。とにかく、早く決断しないと、デイライトさんにも迷惑が掛かるぞ?鷲田警視が少し教えてくれたんだが、ロボット搭載用の銃火器について、抜き打ち査察を入れ、ちょっとした書類の不備だけで違法製造でガサ入れするつもりだって」
 アリス:「なんて汚い!」
 敷島:「一応、俺から公安委員会に出向いて交渉するつもりだけど、アリスの方でも、一応普通の腕を作っておいてくれ。後で、公安からの通告書を送るから」
 アリス:「Ah,shit!(あー、もうっ!)」

 最後にアリスが英語で悪態をつく声が向こうから聞こえた。

 シンディ:(さっきから私、空気状態……)

 だから、こっち睨むなって、シンディ!
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