報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「直撃!台風19号」 2

2014-10-15 19:42:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日12:30.財団本部ビル展望台行きエレベーター→展望台→屋上 エミリー&シンディ]

 ピンポーン♪
〔上に参ります〕

「これで展望台に直行よ」
 2人の鋼鉄姉妹は防災センターで鍵を借りて来ると、再び展望台を目指した。
 鍵と言っても、カードキーである。

 ガッシャーン!

「何だ?」
「ガラスの割れる音……?まさか、暴風で展望台の窓が割れた?」

 ピンポーン♪

「!」
 エレベーターのドアが開くと、鋼鉄の姉妹を暴風雨が襲ってきた。
 本当に窓が割れていた。
「マジで!?強化ガラスよね!?そう簡単に割れるものなの!?」
「防災センターに・連絡だ」
「了解!」
 シンディは非常階段の踊り場にある非常電話で、防災センターに連絡した。
「……はい。原因は不明ですが、窓ガラスが1枚割れて、風雨が室内に入り込んでいます。すぐにでも修理または応急処置が必要です。では、よろしくお願いします」
 電話を切った後で、
「どうする?警備員や設備員が来るまで待ってる?」
「……ノー。今・ここは・立ち入り禁止で、一般人は・入って・こない。私達は・ドクター・アリスの・命令を・優先しよう」
「分かったわ」

 2人は屋上に移動した。
 地上でも風雨なのだろうが、超高層ビルの屋上ともなると、人間は危険だ。
 人間に代わって危険な仕事を請け負うのもまたロボットの役目。
「見た感じ、アンテナが折れてることはなさそうね」
「配線を・チェック・してみる」
「お願い」
 エミリーは左脛の中から、ドライバーを取り出した。
 折り畳み傘ではなく、今はドライバーやレンチなどの工具が入っている。
 それで配線盤の蓋を開けた。
 その間シンディは暴風雨に警戒していたが、ある物を見つけた。
 それは、普段から強風に注意していなければならない超高層ビルの屋上にあってはならないもの。
(木箱?)
 暴風雨に飛ばされ、塔屋(屋上にある小屋。大抵は機械室や窓清掃用のゴンドラ格納庫になっている)の壁に激突した跡があった。
 木箱は一たまりも無かったのか、完全にコンクリート壁に負けて大破してしまっている。
 中身があったのだろうか。中身はどこだろう?
「!」
 シンディは右目をオレンジ色に光らせている。
 スキャニングの最中だというのが分かる。
 そして、オイルの跡を発見した。
 それは屋上の縁(へり)に続いており……。
(あの窓だ……)
 手すりから下を覗き込んで見ると、あの割れた窓ガラスがあった。
(木箱の破片が窓ガラスに当たって割れた?……いや、違う)
 そもそも何故、そんな危険物を屋上に置いてあったのかだ。
 台風が接近してくるのが分かっているのだから、もし仮に置いていたとしても、撤去させていたはず。
 まさか、忘れていたのか?
「シンディ!」
 後ろからエミリーの声が聞こえた。
「修理が・完了した」
「さすがね!ミッション・コンプリート!早いとこ、館内に戻りましょう」
「ああ」
 屋上から展望台に戻る階段を下りる。
 もちろん、屋上出入口の鉄扉があるわけで、それを開施錠するのにカードキーが必要だったのだ。
 シンディがカードを手に、ドアに近づいた時だった。

 ドンッ!ドンドン!ドンッ!!

「なに!?」
 鉄扉が内側から、物凄く強い力で叩かれた。
 エミリーが咄嗟に、スキャンする。
「解析・不能!シンディ、気をつけろ!何か・いる!」
「一体、何だってのよ!?」

 そして、ついにドアが破られた。

「ブオ……ブオオオ……!シュー……!シュー……!」

 それはドアの間口ギリギリの大きさの何か
 2足歩行ではあるが、どういう姿なのかは形容しがたい。
 しかし、今スキャンしたシンディには、一応『ロボット』と出た。
 確かに、ボディの色は全体的にメタリックさを感じるシルバーであるが……。
 何の用途なのかは分からなかったが、少なくともエミリー達を見て、
「ブオオオオ!」
「うっ!」
「来ないでよ!気持ち悪い!」
 巨体に似合わず、軽い身のこなしで鋼鉄姉妹に向かってきた。
「シンディ、撃て!安全性が・見受けられない!」
「言われるまでもないよ!」
 2人は右腕をショットガンやライフルに変形させた。
 そして、一斉に射撃する。
「こんなの財団にいた!?」
「データに・無い!」
 銃撃は恐らく効いているのだろう。
 シンディのライフルで被弾した箇所からは、どす黒いオイルが吹き出ている。
「ブオオオオ!」
「うっ!」
 巨体に似合わず、2人に突進してくる。
 もちろん、2人はかわした。
「気をつけろ!あんなの・まともに・食らったら・ダメージが・大きい!」
「あいつの電子頭脳を撃ち抜いてやるわ!そしたら、動けなくなるでしょ!」
 正体不明のロボットは、屋上の手すりに激突した。手すりがぐにゃりと折れ曲がる。
「シンディ!ビルの外に・出しては・いけない!被害が・出る!」
「アドバイス、どうも!台風が直撃してるってのに、こんなキモいヤツまで来て、作者並みにツイてないわね!」
 何故シンディはそんなこと言うのかというと、台風による暴風雨で銃が濡れてしまい、発砲に支障が出始めたからだ。
 エミリーもそれは分かっているのだろう。
「シンディ!レーザービーマー・だ!それなら・濡れても・支障は無い!」
「ちょっと待って!」
「カスタムパーツを・使って・改良していた・だろう!?私より・攻撃力が・高い・はずだ」
「そりゃそうだけど、溜めるのに時間が掛かるのよ!」
「私が・引き付ける!その間に!」
「わ、分かったわ!レーザービーマー最大電圧充電!」
「ブオオオオ!」
 再び突進してくるロボット。
 エミリーもまた体術でもって組み付いた!
「充電率……28……54……68……」
「ううう……!」
「ブワアアアッ!」
「!!!」
「姉さん!」
 エミリーが屋上の外に投げ飛ばされた。
 人間だったら真っ逆さま。戦闘は強制終了だっただろう。
 だが、そこはマルチタイプ。すぐにエミリーは両足に組み込まれた緊急用の超小型ジェットエンジンを吹かして、速やかに元の場所に復帰した。
 ただ単に戻ったわけではない。
 ジェットエンジンによる高速移動を利用して、ロボットに体当たりした。
 突進して体当たりする能力はあっても、される方は慣れていないらしい。
 エミリーの体当たりを食らって、ロボットはフラついた。
 人間で言えば、ダウンした状態と言えるだろう。
「充電率100パーセント!行くわよ!食らえ!」
 シンディは左目から緑色の光線を放った。
 それはロボットの頭部に突き刺さる。突き刺さって、貫通した。
 案の定、やはりそこに電子頭脳はあったらしく、火花や煙を噴き出しながら、まるで酔っ払いの千鳥足のような足さばきで、あっちへヨロヨロ、こっちへヨロヨロといった感じになった。
 そして、ついに倒れ込み……。

 ボーン!

 小さく自爆した。
「一体、何なのコイツ?どこから来たわけ?」
「!」
 その時、エミリーは自爆して散乱したロボットの部品の中から、あるものを見つけた。

 

「これは……?」
「コイツの中から出て来たの?一応、持っといた方がいいわね」

 展望台に戻ると、エレベーターのドアがまたもや向こう側から叩く音がした。
 一瞬、新手かと思ったが、スキャンしてみると、人間の反応だった。
 どうやらエレベーターが故障して、閉じ込められたらしい。
 エミリー達がこじ開けると、中にいたのはシンディの通報を受けて駆けつけて来た警備員と設備員だった。
 向かっている最中、エレベーターに衝撃が走り、そのショックで止まったという。

「人的被害ゼロ。ミッション・コンプリート!」
 シンディはオーナーであるアリスに、そう報告した。
 無論、現時点では屋上と展望台に現れたロボットの正体については分からなかった。
 ただ、十条の顔色だけが良くなかったが。
コメント (7)
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“アンドロイドマスター” 「直撃!台風19号」

2014-10-15 16:47:54 | アンドロイドマスターシリーズ
 ※実際に東京都内では大きな被害は出なかったようですが、あくまでもこの作品はそれを元にしたフィクションです。被害状況に大げさな所がありますが、あくまでフィクションです。

[10月13日09:00.東京都新宿区西新宿 財団本部 敷島孝夫、アリス・シキシマ、十条伝助]

「敷島君、どうするのかね?台風の直撃は今日じゃぞ?昨日中に帰れば良かったのではないかね?」
「いえ、まだイベントが中止になるとは限りませんので」
「いやー、これは中止じゃろう。実験期間は今日までの予定じゃったが、現時点でほぼ98パーセント終了した。これだけでも、解析は可能じゃ。あくまで所属員達の安全を優先にする。私も交通機関がマヒする前に、菊川のマンションに戻ることにしよう。キミ達も、最悪の事態を想定した方が良いのではないかね?」
「私もそう思うわ。台風は夜中に東京に来るみたいだし、今のうちに帰った方がいいと思う」
「ダメだ。イベントが中止にならない以上は、それに出る」
 敷島は強く言った。
「中止に決まってるじゃない!」
 アリスは敷島に食って掛かる。
「ボカロが台風に強い所を見せるんだ」
「確かに台風でも稼働状況は変わらんじゃろうな。しかし、観客がそれに付いて来られるか疑問じゃぞ」
「そうよ!」
「オレ達は主催者じゃない。特に、今日はドームシティでのライブがある。MEIKO達も合流しての全員ライブだぞ」
「いや、そりゃそうだけど!その後、帰れなくなったらどうするの!?」
「もうホテルは引き払ってしまったのじゃろ?」
「そうなんです」
「もし何じゃったら、今からでも別のホテルを予約しておくか?逆に今なら、簡単に予約が取れるかもしれん。予算については、私から何とかしよう」
「ありがとうございます」
「ボーカロイド達の成功は大きいからな」
 ボカロの活動による売り上げは、財団の運営資金にも充てられている。
「よし、じゃあドーム行くぞ」
「はーい!」
「私はしばらくエミリー達とここにいるから」
「じゃあ、ドームで会おうな」
「会えたらね」
 因みに敷島達が行くのは本当に野球をやっている所ではなく、ミーツポートの方である。

 敷島達が慌ただしく出て行く。
「実験自体は終了したが、解析の方を進めるかね?」
「そうね」

[10月13日12:00.同場所 財団本部ビル最上階展望台 エミリー&シンディ]

 エレベーターが最上階に到着する。
 そこから降りて来たのは、2人の鋼鉄姉妹。
「ここが展望台ね。本当は眺めがいいでしょうに、台風なのが残念ね」
 シンディの言葉通り、窓の外は灰色に雲に包まれ、強風による不気味な音が響いている。
 ここより高さのある東京スカイツリーの展望台や都庁の展望台も、今日は入場中止だそうである。
 当然、ここもだ。
 ならば何故この鋼鉄姉妹が来たのか。人間ではないからか。
「姉さんは、“彼氏”についてなくていいの?」
 シンディはニヤッと笑った。
 キールは研究室にいて、十条とアリスの護衛をしている。
「ここでは・お前を・1人にするな・との・命令だ」
「すっかり信用無いのね、私。まあ、無理も無いか」
 シンディは肩を竦めた。
「台風ではなかったけれど、あの時も大雨だったわね」
「あの時?」
「ウィリアム博士の最期の日」
「ああ」
「今でも謎なんですって?どうしてあのプロデューサーが生身の体のまま、バージョン達の警備網をかい潜って、真っ先にウィリアム博士の元へ辿り着けたかって……」
「一説に・よれば、ドクター・ウィリアムが・そう仕向けた・との・ことだ」
「私がドクターの元へ戻って来た時は、ほとんどイッちゃってたからね。よく覚えてないんだ。でも……確かにこの手……といっても前のボディだけど、これで何度も刺し殺してしまったメモリーは残ってるよ。三原則も何もあったもんじゃないね」
「……こんなこと・言ったら、ドクター・アリスの・お怒りを・買うかも・しれない。お前が・最後に・殺した人間……ドクター・ウィリーは・そうして・良かったのかも・しれない」
「姉さん」
「敷島さんは・それが・できなかった。お前も・しなかったら・もっと多くの・犠牲者が・出たかもしれない」
「やっぱり、三原則も何もあったものじゃないね。早いとこ第0条とやらを、本物の1条に格上げしてもらわないと。また私達、『大局的に見れば、ある特定の個人を殺すことが、より多くの人間の為になる』と称して、また流血の惨を引き起こす恐れがある」
 エミリーとて製造時の用途はシンディと同じ。
 今はそれが大幅に変更されたとはいえ、根底にあるプログラムは変わっていない。
 その時、
{「エミリー、シンディ、聞こえる?」}
 アリスから無線通信が入った。
「イエス。ドクター・アリス」
「何か、ご用ですか?」
{「今、展望台にいるんだよね?」}
「イエス」
「イエス」
{「ちょっとさ、屋上に出て、アンテナを見てきてくれない?何か、通信システムにエラーが出ちゃってね。もしかしたら、台風でアンテナが折れたなんてことは無いと思うけど……」}
「分かりました」
{「物凄い風だろうから、人間の設備員が出ると危ないからね。人間に代わって、あなた達に診てもらいたいわけ」}
「かしこまりました」
「じゃあ、鍵を取りに行かないとね」
{「地下1階の防災センターで鍵を借りられると思うわ」}

 2人の鋼鉄姉妹は再びエレベーターに乗り込んだ。
「このエレベーターだと、防災センターまでは行けないから、どこかで乗り換えないと行けないのね」
 シンディはエレベーターのボタンを見て言った。
 ボタンは1階までしか無い。
「簡単だ。1階まで・下りて・そこから・階段を・下りれば良い」
「了解」

[同日同時刻 東京都文京区 東京ドームシティ・ミーツポート 敷島&ボーカロイド・オールスターズ]

「電車にそろそろ遅れが出始めている頃だけど、まだ新幹線は無事っぽいな」
 敷島は出演者控え室にやってきて、呆気無く揃ったメンバーを見て呟いた。
「すいません、出演者の皆さん!場当たりしたいと思いますので、1度ステージに集合してください!」
 スタッフがボカロ達を呼びに来た。
「はい!」
 ボーカロイド達が出て行くのを見送って、敷島はスタッフと打ち合わせである。
(それにしても、アリスにメール送っても返してこねーな……)
 台風のせいだろうかと思った。
 とにかく、ここでのライブは予定通り行われることになった。
コメント
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