報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「直撃!台風19号」

2014-10-15 16:47:54 | アンドロイドマスターシリーズ
 ※実際に東京都内では大きな被害は出なかったようですが、あくまでもこの作品はそれを元にしたフィクションです。被害状況に大げさな所がありますが、あくまでフィクションです。

[10月13日09:00.東京都新宿区西新宿 財団本部 敷島孝夫、アリス・シキシマ、十条伝助]

「敷島君、どうするのかね?台風の直撃は今日じゃぞ?昨日中に帰れば良かったのではないかね?」
「いえ、まだイベントが中止になるとは限りませんので」
「いやー、これは中止じゃろう。実験期間は今日までの予定じゃったが、現時点でほぼ98パーセント終了した。これだけでも、解析は可能じゃ。あくまで所属員達の安全を優先にする。私も交通機関がマヒする前に、菊川のマンションに戻ることにしよう。キミ達も、最悪の事態を想定した方が良いのではないかね?」
「私もそう思うわ。台風は夜中に東京に来るみたいだし、今のうちに帰った方がいいと思う」
「ダメだ。イベントが中止にならない以上は、それに出る」
 敷島は強く言った。
「中止に決まってるじゃない!」
 アリスは敷島に食って掛かる。
「ボカロが台風に強い所を見せるんだ」
「確かに台風でも稼働状況は変わらんじゃろうな。しかし、観客がそれに付いて来られるか疑問じゃぞ」
「そうよ!」
「オレ達は主催者じゃない。特に、今日はドームシティでのライブがある。MEIKO達も合流しての全員ライブだぞ」
「いや、そりゃそうだけど!その後、帰れなくなったらどうするの!?」
「もうホテルは引き払ってしまったのじゃろ?」
「そうなんです」
「もし何じゃったら、今からでも別のホテルを予約しておくか?逆に今なら、簡単に予約が取れるかもしれん。予算については、私から何とかしよう」
「ありがとうございます」
「ボーカロイド達の成功は大きいからな」
 ボカロの活動による売り上げは、財団の運営資金にも充てられている。
「よし、じゃあドーム行くぞ」
「はーい!」
「私はしばらくエミリー達とここにいるから」
「じゃあ、ドームで会おうな」
「会えたらね」
 因みに敷島達が行くのは本当に野球をやっている所ではなく、ミーツポートの方である。

 敷島達が慌ただしく出て行く。
「実験自体は終了したが、解析の方を進めるかね?」
「そうね」

[10月13日12:00.同場所 財団本部ビル最上階展望台 エミリー&シンディ]

 エレベーターが最上階に到着する。
 そこから降りて来たのは、2人の鋼鉄姉妹。
「ここが展望台ね。本当は眺めがいいでしょうに、台風なのが残念ね」
 シンディの言葉通り、窓の外は灰色に雲に包まれ、強風による不気味な音が響いている。
 ここより高さのある東京スカイツリーの展望台や都庁の展望台も、今日は入場中止だそうである。
 当然、ここもだ。
 ならば何故この鋼鉄姉妹が来たのか。人間ではないからか。
「姉さんは、“彼氏”についてなくていいの?」
 シンディはニヤッと笑った。
 キールは研究室にいて、十条とアリスの護衛をしている。
「ここでは・お前を・1人にするな・との・命令だ」
「すっかり信用無いのね、私。まあ、無理も無いか」
 シンディは肩を竦めた。
「台風ではなかったけれど、あの時も大雨だったわね」
「あの時?」
「ウィリアム博士の最期の日」
「ああ」
「今でも謎なんですって?どうしてあのプロデューサーが生身の体のまま、バージョン達の警備網をかい潜って、真っ先にウィリアム博士の元へ辿り着けたかって……」
「一説に・よれば、ドクター・ウィリアムが・そう仕向けた・との・ことだ」
「私がドクターの元へ戻って来た時は、ほとんどイッちゃってたからね。よく覚えてないんだ。でも……確かにこの手……といっても前のボディだけど、これで何度も刺し殺してしまったメモリーは残ってるよ。三原則も何もあったもんじゃないね」
「……こんなこと・言ったら、ドクター・アリスの・お怒りを・買うかも・しれない。お前が・最後に・殺した人間……ドクター・ウィリーは・そうして・良かったのかも・しれない」
「姉さん」
「敷島さんは・それが・できなかった。お前も・しなかったら・もっと多くの・犠牲者が・出たかもしれない」
「やっぱり、三原則も何もあったものじゃないね。早いとこ第0条とやらを、本物の1条に格上げしてもらわないと。また私達、『大局的に見れば、ある特定の個人を殺すことが、より多くの人間の為になる』と称して、また流血の惨を引き起こす恐れがある」
 エミリーとて製造時の用途はシンディと同じ。
 今はそれが大幅に変更されたとはいえ、根底にあるプログラムは変わっていない。
 その時、
{「エミリー、シンディ、聞こえる?」}
 アリスから無線通信が入った。
「イエス。ドクター・アリス」
「何か、ご用ですか?」
{「今、展望台にいるんだよね?」}
「イエス」
「イエス」
{「ちょっとさ、屋上に出て、アンテナを見てきてくれない?何か、通信システムにエラーが出ちゃってね。もしかしたら、台風でアンテナが折れたなんてことは無いと思うけど……」}
「分かりました」
{「物凄い風だろうから、人間の設備員が出ると危ないからね。人間に代わって、あなた達に診てもらいたいわけ」}
「かしこまりました」
「じゃあ、鍵を取りに行かないとね」
{「地下1階の防災センターで鍵を借りられると思うわ」}

 2人の鋼鉄姉妹は再びエレベーターに乗り込んだ。
「このエレベーターだと、防災センターまでは行けないから、どこかで乗り換えないと行けないのね」
 シンディはエレベーターのボタンを見て言った。
 ボタンは1階までしか無い。
「簡単だ。1階まで・下りて・そこから・階段を・下りれば良い」
「了解」

[同日同時刻 東京都文京区 東京ドームシティ・ミーツポート 敷島&ボーカロイド・オールスターズ]

「電車にそろそろ遅れが出始めている頃だけど、まだ新幹線は無事っぽいな」
 敷島は出演者控え室にやってきて、呆気無く揃ったメンバーを見て呟いた。
「すいません、出演者の皆さん!場当たりしたいと思いますので、1度ステージに集合してください!」
 スタッフがボカロ達を呼びに来た。
「はい!」
 ボーカロイド達が出て行くのを見送って、敷島はスタッフと打ち合わせである。
(それにしても、アリスにメール送っても返してこねーな……)
 台風のせいだろうかと思った。
 とにかく、ここでのライブは予定通り行われることになった。

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