報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「ウィルス・スキャン」

2014-08-15 18:11:01 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月13日15:00.東京都区内 敷島孝夫、MEIKO、KAITO、巡音ルカ]

「はい、行きまーす!」
 ドラマ出演の3人のボーカロイドは写真スタジオに赴き、今回出演のドラマの写真撮影に挑んでいた。
 MEIKOやKAITOはウェットスーツや防弾チョッキなどを着用した、エージェントの衣装だ。
 ルカは2通りあって、クリーチャーロボに破壊される前の姿。そして、クリーチャーロボに破壊されて、自身もウィルス感染し、クリーチャー化(変化途上)した姿での撮影だった。
 敷島はスタジオの後ろの方で見ているだけだったが、そこへ電話が掛かって来たので席を外した。

「もしもし?」
{「タカオ、あたし」}
「ああ、何だ?」
{「大変よ。午前中、本部で暴走したメイドロボット達、全員がウィルスに感染していたの!」}
「はあ?何で?」
{「感染経路はまだ調査中。だけど昔、じー様が秘密裡に開発した空気感染タイプだったらヤバいことになるわ」}
「空気感染するコンピューター・ウィルスなんて聞いたこと……って、あれか!確か、ルカがそれに感染して、歌唱機能を破壊されたことがある」
{「突拍子も無い研究だったから、誰も見向きもしなかったけどね」}
「それがどうして本部にばら撒かれたんだ?」
{「だから今、調査中だって言ってるでしょ。幸い、エミリーやキールには感染していないみたいだけど……」}
「お前は知らないのか?ルカが感染した時、まだウィリーは生きていて、お前も一緒に行動していたんだろう?」
{「本部のメイドロボのウィルスは、アタシも知ってるタイプだった。だから一応、“ワクチン”は作れる。エミリーとキールにはそれをインストールしたから、彼らは大丈夫だね。だから、ルカ達もインストールしておいた方がいいと思う」}
「それもそうだな。雑誌の撮影が終わったら夜のテレビ出演があるんだけど、その前に本部に行っておこう」
{「OK.それじゃ、本部で待ってるわ」}

[同日16:00.財団本部 敷島、アリス、MEIKO、KAITO、ルカ]

「メイドさん達が暴走を?」
「攻撃力の大して無い連中だから良かったものの、七海みたいに若干の戦闘力のあるヤツだったら大変だ」
「確かに……」

 ピンポーン!

「外で待ち構えてるかもしれん」
 敷島は身構えた。
「あのねぇ……」
 ドアが開く。
「キールの話によると、ドアが開いた瞬間、いきなり襲われたそうだ!」
 そう言いつつ、壁側に逃げる敷島。
「誰もいないわよ」
 MEIKOが呆れて言った。
「いや、分からんぞ。今度は警備ロボットが襲ってくるかもしれん」
「ここにいるロボットは全員、ワクチンを使用したんですよね?」
「まあ、そうだけど。しかし、アリスが片手間で作れるワクチンとは……」
「裏を返して言えば、アリス博士が作れるウィルスでもあるということですよね?」
 ルカが聞いた。
「まあ、そういうことになるなぁ……」
 そう言いつつ、研究室に向かう。
「敷島さん。お疲れさまです」
 研究室の入口には、エミリーが立っていた。
「ボカロの3人を連れて来た。アリスは中に?」
「イエス」
「じゃあ、失礼します」
 KAITOが先に入った。
「メイドさん達はともかく、エミリーが感染したりしたら大変なことになりますね」
「南里所長の話では、考えつく限りのアンチ・ウィルスソフトをインストールしたという話だけどな」
 だから今日これまでエミリーがウィルスに感染したことは、1度も無い。
「間違い無く、ウィリーの隠し遺産捜索にはエミリーが指名されると思うな」
「イエス。お任せ・ください」
 エミリーは大きく頷いた。

[同日17:00.京王プラザホテル 敷島、アリス、十条]

「夕食にはちと早いが、まあおかげでレストランは空いておるじゃろう」
 と、十条。
「はい」
「先遣隊の派遣も決まったことじゃしな」
「やはりエミリーが……」
「いや、エミリーではない」
「えっ?」
「キールと同様、マルチタイプをモチーフにしたアンドロイドがおっての。そいつを、どこかの研究者が出してくれるそうじゃ。エミリーは大将じゃぞ?大将をいきなり使うわけにはいかんよ」
「そんなもんですかね」
「人間のエージェントも行くみたいじゃが、何しろウィリーのことじゃからな、ちと心配じゃ。まあ、ダメならダメでそういう時にエミリーが行けばいいだけの話」
「まあ、そうですね」
「その時には、わしのキールも出そう」
「えっ?」
「モード変更で、まるで敵基地に潜入する特殊部隊員のような行動も可能じゃ」
「あの執事ロボットがねぇ……」
 敷島は意外そうな顔をした。
「ところで、ボーロカイド達のウィルス・チェックはどうじゃ?」
「幸い、ウィルスには感染していなかった。だから空気感染というよりは、誰かが意図的に本部のメイドロボット達を感染させたのよ」
「誰かが、のう……」
「そんな裏切り者……というか、テロリストみたいなのがいるのかよ?」
「分からないね」
「……本部の充電コンセントを調べてみろ」
「えっ?」
「あやつら、充電時間が決まってるはずじゃ。ウィリーのヤツ、昔、『人間は絶対に食物を取らなくてはならない。だから食中毒の脅威からは逃れられん』と言っていた。『ロボットも今現在は電気で動く者が大多数である。その電気に何か仕掛けられんか?』と、わしに振っておったな」
「後で調べてるわ」
「お、俺も!」

 果たして、メイドロボット達が使用している充電コンセントの中から、ウィルスが検知された。
 誰が仕掛けたのかは不明である。
 今度からは、充電する時にもいちいちウィルス・チェックをしなければならないことになってしまった。

 更にマズいことに、数日後、先遣隊が現地に派遣されたわけだが、全員が消息を経ってしまったとのことである。
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“アンドロイドマスター” 「新ウィルス」

2014-08-15 15:20:51 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月13日09:30.東京都新宿区西新宿 日本アンドロイド研究開発財団 敷島孝夫、アリス・シキシマ、エミリー]

「ったく。何で俺まで……」
 敷島がぶつくさ文句を言っている。
「本当は今日も撮影に立ち会わなきゃいけなかったのに……」
「いいじゃない。あのコ達なら、アンタがいなくても大丈夫だよ」
「あのな!」
「その後の、午後からの雑誌の撮影だけ行けばいいじゃない」
「あのなぁ……」

 ピンポーン!(←エレベーターが着いたチャイム)

「着いた着いた」
 エレベーターを降りる。
「会議室に行けばいいんだっけ?」
「そうよ」
「そうそうたるメンバーが出そろう中で、オレなんか場違い過ぎるぞ」
「いいのいいの。あ、エミリーは会議のもようの撮影をお願い」
「イエス。ドクター・アリス」
「わざわざ撮影係やらせに、エミリーまで連れて来たのか?仙台から」
「それだけじゃないんだけどね」
 敷島達は会議室に入った。
「まだ少し時間があるだろう?」
 会議室の中はお茶の用意をするメイドロボット達がいた。
 メイドロボット達を見ると、敷島は七海を思い出す。
 今は平賀家専属メイドのようなもので、ほとんど財団事務所に顔を見せなくなったが。
 最近になって、忙しくなった敷島の代わりにアリス研究所の事務作業の手伝いをしてくれるようになった。
「そうね。取りあえず、会議室はここだから。リフレッシュコーナーに行く?」
「そうするか」

[同日09:40.財団本部会議室フロアのリフレッシュコーナー 敷島、アリス、エミリー]

「今回の緊急会議の議題は?」
「『新たなウィルスの脅威について』よ」
「コンピューター・ウィルスのことか」
「実はまだウィルスの解析には至ってないの。何しろ、現物を見てないからね」
「“鍵”の解析がようやく終わったばかりじゃなぁ……。その解析結果には、ウィルスについて何も書かれていないのか?」
「いないんだよねぇ、それが……。『モノは見てのお楽しみである』としか書いてなかった」
「ほんと、ドクター・ウィリーって南里所長や十条理事と似てるわー」
「まあ、研究生時代からの付き合いだからねぇ……」
「解析結果の資料は無いのか?」
「エミリー」
「イエス」
 エミリーはスリットの深いロングスカートを捲り上げた。
 そしてビキニ・アーマーのショーツの中に手を入れて、そこからメモリーを出した。
「どこから出してるんだよ!?」
「まさか、その中に入ってるとは思わないでしょ?」
 アリスは得意げに言った。
「そもそもエミリーに預けてる時点で、これ以上のセキュリティは無いと思うぞ。エミリーから奪おうとするだけで、流血の惨を見ること必至だろう」
「まあね」

[同日10:00.財団本部会議室 敷島、アリス、エミリー]

「十条理事は、また遅刻か……」
 敷島は呆れた。
 もっとも、十条の時間のルーズさにおいては何を今更なのか、他の理事達も気にしている様子は無い。
「えー、では、十条理事が先に始めておいてくれということなので、早速始めていきたいと思います」
 司会の職員が前に立って喋る。
 これも何を今更といった感じなのか。
 まずは今回の会議の目的について説明があった。
 アリスがシンディの鍵についての解析に成功したこと、そしてそこに書かれている意外なこと。
 さすがに現時点ではエミリーはメモリーを手に持っているので、スカートを捲って……ということはしなかった。

 まず、ウィリーは海の中に真実を隠したわけではなかった。それもフェイクであったことが判明した。
 しかし、日本国内に隠したことは事実である。
 隠したものはそれまでの自分の研究成果と、その1つである新種のコンピューター・ウィルス。
 特にウィルスに至っては世界中のコンピューターを破壊し、ロボットを暴走させる危険なものである。
 当然それを欲しがるならずもの国家、テロ組織は存在するため、そういう所に売り払えば巨万の富が手に入るだろう。
 しかしながら、そう簡単には渡さない。欲しければ、流血の惨を見ること必至である。そこへ足を踏み入れることを覚悟せよ。
 そのようなことが書いてあったという。

「曲がりになりにも“孫娘”であるキミですら、無条件に手に入らないのか?」
 アリスが“鍵”の解析内容を説明すると、他の財団幹部から質問があった。
「じー様は……ウィリアムは、『これは負の遺産である』と書いてましたので、恐らく私に渡すつもりも無かったんだと思います。ただ、『後進が私の研究成果をどうしようが、それは勝手である』ということでした」
「? どういう意味だ?」
「仮に私がウィリアムのその負の遺産を受け継ぐ覚悟があるのなら、それは渡そうということだと思います」
「流血の惨を見ること必至というのは、具体的にどのようことかね?」
「厳しいセキュリティが掛けられていて、ウィリアムのことですから、侵入者や強奪者の命を簡単に奪うような仕掛けを施しているということでしょう」
「孫娘をそんな危険な目に遭わせるとは……」
「いや、意外とそのセキュリティシステムは孫娘には作動しないようなシステムを組んでいるかもしれんぞ?」
「むしろ、解除できたりしてな?」
 銘々と口々に自分の意見や見解を述べる理事達。
「……して、その場所はどこにあるのかね?」
「東北地方です。青森県と秋田県の県境にある廃ホテル。ウィリアムはそこにアジト……秘密の研究室を作っていました。そこです」
「よし、分かった。先遣隊の派遣について、あとは……」
 その時、ドアの入口に立って会場内を撮影していたエミリーの左目がボウッと光った。
「皆さん!この会議室から・出ないでください!」
「何だって!?」
「館内で・異常が発生しました!危険ですので・外へ出ないで・ください!」
「何をバカな……!」
 その時、外から大きな金属音が聞こえた。
「な、なにいっ!?」
 エミリーが外に飛び出す。

[同日11:00.財団本部会議室外 エミリー、十条伝助、キール・ブルー]

「くっ!どうしたんですか、あなた達!?」
 メイドロボット達が、キール達の行方を阻む。
「お前達!何をしている!」
 エミリーがメイドロボット10体に怒鳴りつけた。
 しかし一斉に振り向いたメイドロボット達は、正常に作動しているわけではないことが分かった。
 ケタケタと笑う者、無表情の者、口をポカンと開けている者……。
 共通しているのは、目が弱い光を放っていることだ。
 そもそもメイドロボットやセキュリティロボット達にとっては、エミリーは畏怖の対象でもあるので、彼女の怒鳴り声でフリーズするのが普通だ。
 それが全くしない。つまり、“自我”が無い。
 エミリーへの畏怖の思いはどこへやら、手に持っている刃物やら工作機械やらでエミリーに向かってきた。
「では・排除する」
 エミリーはメイドロボット1機につき、1秒で倒した。
「あっという間……」
 キールは驚いた様子で、ホールの陰から出て来た。
「キール。これは一体・どういうこと?」
「私も知らない。博士をお連れしてエレベーターを降りたら、いきなり襲われたんだ」
「ドクター十条は・どこへ?」
「ふー、スッキリしたー」
 ハンカチを手にトイレから出てきた十条。
「おーっ、片付いたようじゃの!ご苦労さん!」
「博士……」
「……狂ったメイド達は・排除しました」
「相変わらず、ぶっ飛んだ博士だ」
 会議室のドアから覗いていた敷島は呆れた。
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“アンドロイドマスター” 「ボカロの収録」

2014-08-15 02:18:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月12日17:00.東京都内のラジオ局 MEIKO、KAITO,巡音ルカ]

「『夜まで生ですか?!ラジオ!』皆さん、こんにちは。アフター5、もはや死語と化しつつあるこの言葉、この時間、いかがお過ごしでしょうか?さて、早速ですが、本日のゲストを紹介しちゃいましょう!今日のゲストは、この方々!いま巷で話題のボーカロイド、MEIKO、KAITO、そして巡音ルカの3人です!」
「こんにちはー」
「どうも、こんにちは」
「よろしくお願いします!」
「いやー、間近で見ると、本当に人間と変わらぬ動きですね。本当にスタジオに生身の人間が入って来たかと思いましたよ。さて、色々とお話を伺う前に一曲お聴き頂きたいと思います。同じくボーカロイド、初音ミクで……」

「!」
 スタジオの外で収録を見ていた敷島だったが、そこに電話が掛かって来た。
「何だ、アリスか。いま、収録中だから……」
{「それどころじゃないって。じー様の遺産のことなんだけど……」}
「あれ、まだ続いてたのか?もういいじゃないか」
{「シンディの胸の中から出て来た鍵!あれの解析に成功したから!」}
「マジかよ!?よくできたな!?で、どこに隠し財産が?いくらくらい?」
{「あいにくとカネじゃないよ」}
「何だ、違うのか……」
{「でも、ある組織に売りつければ、一生遊んで暮らせるだけのお金は手に入るかもね」}
「ある組織って?」
{「1つはテロリスツ、もう1つは……国家よ」}
「はあ!?」

 再びスタジオ内。
 FMラジオらしく、陽気なDJの司会によってトークが進む。
「ホラーアクションに、初めてチャレンジしたんだって?」
「はい。それまでエキストラとして出演させて頂いたことはあったんですけど、主演を務めさせて頂くのは、これが初めてです」
 MEIKOが答えた。
「へえ。それじゃあMEIKOさん、ネタバレしない程度に、ちょっとここでスリリングなストーリーを紹介しちゃってもらえます?」
「はい。舞台は近未来の大西洋、そこに浮かぶ廃船になったはずの豪華客船です。私とKATIOが日本の対コンピューター・ウィルス組織のエージェントとしてその船内に潜入し、様々な戦闘に巻き込まれます」
「はーい、ありがとうございます。近未来はコンピューター・ウィルスを使ったテロが頻発し、それに感染したロボット達が暴れまわるようになったので、その対策として結成された組織のエージェントという設定ですね?」
 今度はKAITOが答える。
「はい。人間のエージェントでは命の危険にさらされる恐れがあると判断される現場に、僕達ボーカロイドが代わって派遣されるという設定です」
「なるほど。……」

 敷島の電話は続いている。
「……おい、それ今ここにいるあいつらが出演してるドラマみたいじゃないか」
{「よくよく思い返してみたら、じー様、研究資金を稼ぐ為にコンピューター・ウィルスなんかも作ってたね」}
「それを早く言え。そんなのテロ組織に渡ったりしたら大変じゃないか」
{「しょうがないじゃないのよ!解析終わったの、たった今なんだから!」}

 またまたスタジオ内。
「……ルカさんは、クリーチャー役でしたっけ?」
「ええ。もう第1話の時点で、クリーチャー・ロボットに破壊されてしまいます」
「ああ、予告編で既にそんなシーンあったねぇ……。で、その後は?」
「MEIKOがある事情で、再び私が“殺された”場所に戻ってくるんですけど、その時には……」
「ああ、なるほど。これはですね、予告編でも放送できないほど怖いシーンみたいですよー」
「はい。私もビックリしました」
 MEIKOが笑いながら同調した。
「この暑い日が続く中、ボーカロイドの皆さんが演じるホラーアクションで涼しくなってください。怖いシーンだけでなく、手に汗握るアクションシーンなんかもありますので、リスナーの皆さんも……」

 またまたスタジオ外。
{「じー様、日本だと目立たないって言ってたし」}
「本当に死んでからも迷惑な爺さんだな。で、財団は何と?」
{「緊急会議をやるから本部に来てくれって。タカオも」}
「俺はプロデューサーの仕事が忙しいっての。だいたいウィルスなんて、そんなの研究者達の分野で、オレ達事務職は関係無いだろう?」
{「いいから!あんたもエージェントの1人なんだから参加しなさい!」}
「勝手にエージェントにすんなよ!」

 スタジオの方は順調のようで、敷島の電話が終わる頃には、MEIKO達が歌うドラマの主題歌が流れて来た。
 そのCDだけでも、相当な枚数の売り上げがあるだろうと言われている。

[同日18:00.東京都内の道路 敷島孝夫、MEIKO、KAITO、巡音ルカ]

「今日はご苦労さんな」
 ハンドルを握りながら敷島が言った。
「いいえ」
「今日はもうこの後、予定無いの?」
 MEIKOとKAITOが同時に言った。
「お前達はな。これから本部に戻るから、また明日の撮影に備えて整備を受けてくれ」
「はーい」
「でも、良かったですね。ドラマの撮影中だけでも、僕達を本部で預ってくれるなんて」
「まあ、そうだな。それだけお前達が活躍してくれるようになったから、頭の固い本部も少しは融通利かせてくれるようになったんだよ。こうして、車も借りられるし」
「で、プロデューサーは相変わらずビジネスホテル?」
「ま、そこは経費節減の折……。長期滞在になるしね」
「本部が新宿にあるんだから、京王プラザにでも泊まればいいのに」
「俺も実力が買われれば、それも叶うんだろうけどな」
 敷島は苦笑いした。
 そこへ、電話が鳴る。
「あっ、いいよ。アタシが出る」
「悪い」
 MEIKOは敷島のポケットから、ケータイを抜き取った。
「アリス博士からだ」
「何だよ、あいつは……」
「はい、MEIKOです。今、プロデューサーは運転中で……。はい?……はい。分かりました。じゃあ、それを伝えておけばいいんですね?……はい、分かりました。じゃ、失礼します」
 MEIKOは電話を切って、敷島のポケットに電話を戻した。
「で、何だって?」
「今度の緊急会議だけど、財団が京王プラザホテル取ってくれたから、後で場所教えてって」
「……エミリーに連れて来てもらえよ……!」
「何で京王プラザ?」
「地方や海外在住の研究者だと、日帰りできない場合もあるから、一応宿泊先を用意してくれたってよ?」
「ぷ、プロデューサー。アリス博士は、特別な人ですから……」
 ルカがフォローするように言った。
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