報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「メイン電源を復旧せよ」

2014-08-25 22:05:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月19日19:00.廃ホテル“シークルーズ”B1F 防災センター 敷島孝夫、アリス・シキシマ、キール・ブルー、エミリー]

「エミリーもこれ、バッテリーをチェンジして」
「イエス。ドクター・アリス」
 アリスは充電済みのバッテリーパックをエミリーに渡した。
「そうか。俺達と違って、電池残量気にしないといけないんだったな。人間とよく似てるから、たまに忘れるよ」
「ラボに行けば、エミリーと同じ形のバッテリーパックくらいありそうだけどね。じー様が使ってたわけだし……」
「なるほど。それで、これが例のオバハンから分捕ったエレベーター鍵なんだが、肝心のエレベーターがどこにあるかが分からないっていうね」
「防災センターなら、図面くらいありますよ。ただ、ホテル時代の図面で、ドクター・ウィリーがどの部分を研究所として使用していたかが分からないのです」
 と、キールが言った。
「うーん……。怪しい所はどこだろうなぁ……」
 敷島は図面を見ながら首を傾げた。
「ベタなホラー映画の法則だったら、地下が怪しいんだけど……。ほら、こことか」
 敷島が指さした所。
 ポンプ室とか機械室とかあるが、いくら大きなホテルと言えども、地下5階というのは深過ぎやしないか。
「一応、スパ・リゾートホテルですからね。温泉を汲み上げていたようで、その為に地下深く掘っただけかもしれません」
「アリスだったら、どこに研究所作る?」
「アタシだったら、最上階に作る」
「はあ?」
「だって眺めいいし……」
「今の研究所じゃないんだから……。秘密の研究所だぞ?俺だったら、バレないように地下に作る」
「バレた時のことを考えたら、あえて上階に作って、いつでも脱出できるようにするべきだわ」
「いやいや、すぐバレるだろ!」
「だから、それでもバレないように、こんな廃ホテルに作るんじゃない!」
「地下にしろ最上階にしろ、アクセスは難しいかもしれませんね」
「何故だ?」
「肝心のエレベーターが、館内の非常予備電源では動かないようです」
「階段でアクセスできないのか?」
「厨房にいた機能停止中のアンドロイドのメモリーを解析したんですが、階段の一部が崩落していたりしていて、あまり使えそうにありません。エレベーターは無事のようなんですが……」
 キールはエレベーター監視盤を見た。
 業務用も含めて何機もあるエレベーターには、異常を示す物は出ていなかった。
 但し、非常予備電源ではエレベーターは動かないという表示がしてあった。
「この防災センターで、メイン電源を復電できないのか?」
「この、コントロールセンターっていう所で、できるみたいよ?」
「コントロールセンター?」
「地下3階にある。だけどタカオが睨んだB5Fとは逆側だけどね」
「しょうがない。そこに行って復電しないと、エレベーターに乗れないんだからな。行ってみよう。エントランスホールを通って、反対側に回れば行けそうだな」

 敷島達は作戦会議と小休止、バッテリー交換を終えると、防災センターを後にした。
 時折、正体不明のクリーチャー達に遭遇したりしたが、もはやエミリー達にとって、ただのザコキャラでしかなかった。
 弾切れの心配も無い。未だに不明だが、倒せば彼らの体内から実弾が出てくるからだ。
「エントランスホールは、あっちか」
 地下1階から1階に上がる地味な階段を登り、白い鉄扉を開けた。

[同日19:30.“シークルーズ”1階 エントランスホール 敷島、アリス、キール、エミリー]

「うわあ……」
 敷島は感嘆の声を挙げた。
 非常予備電源とはいえホール内の照明は煌々と輝いていて、これだけ見ると、実はまだ営業中なのではないかと思えるほどだ。
 ソファなどは無く、さすがにこれは廃業した際に運び出されたか。
 3階くらいまでの吹き抜け。フロントがあった部分の背後には、時計台がある。
 今も大きな振り子が動いていて、静かなホールに規則正しく『カツーン、カツーン』という音が響いている。
 ただ、時間は狂っていて、1時25分になっていた。さすがに電波時計とかではないらしい。
 BGMにパイプオルガンでも流したいくらいだ。
「バブル時代の申し子は違うね。ちょっとしたオペラハウスみたいだ。こんな無駄に豪華にして。バブル崩壊した時のことなんか、全く考えずに作ったんだろうな」
「そうね。で、コントロールセンターはどこ?」
「ちょっと待て。その前に……」
 敷島はフロント跡に向かった。
「何か、こういう所に秘密の情報とかが隠されているもんだよ、うん。“ベタなアドベンチャーゲームの法則”」
「そんな法則知らないわ」
「あっ、メモ書きがある」
「なに?」

『新潟から来たサトーだぜぇ〜!あ?さっき監視ルームでよ、俺様はよ〜、危うく白い化け物に食われちまうところだったんだよな。あ?他の皆も薄情な連中でよー、俺を見捨てて逃げて行っちまいやがってよー。全く、冗談じゃないぜ!あ?だけどよ、ケンショーの功徳でよー、化け物のヤツ、俺に食らいついたと思ったら、すぐ離れて行ったんだよな。あ?化け物も俺様にビビッたってわけだ。他にテロリストもいるみてーだし、俺はプロムナードっつうレストラン街に逃げるぜ。あ?あそこなら酒も食い物もあるからよー、しばらく立て籠もれそうだぜ。あ?』

「ケンショーだって」
「あのテロリスト一味の1人か」
「監視ルームって、あの防災センターのことですかね?」
「化け物って、クリーチャーいたか?」
「アタシ達が来た時には誰もいなかったね。てか、あのクリーチャー、人間襲うの」
「あの白いオバハンがそうだったからな」
「敷島さん、あれは・生物反応が・ありました」
「似たようなもんだよ。とにかく、ここにテロリストの1人が来てたってわけだな。この内容が本当なら、プロムナードには近づかない方が却って賢明ってことだ。テロリストと鉢合わせになってしまう」
「そうね」
「そもそも、プロムナードってどこだ?」
「……あそこではないですか?」
 キールが指さした。
 船の舵輪のような取っ手のついた観音扉。締め切られていたが、ドアの前に敷かれたマットにはアルファベットで『プロムナード』と書かれていた。
「さっきの図面だと、コントロールセンターはあっちだな」
 敷島が別の方向を指さした。
「行きましょう」

 コントロールセンターに向かうドアも、プロムナードに向かうドアと同じ形をしていた。
 どうやって開けるのかと思ったが、どうやら本当に船の舵輪の如く、右にグルグル回すとロックが外れ、舵輪が2つに割れてドアが開く構造らしい。
 全く。本当に無駄に豪勢な造りだ。
(このホテルのオーナー、船会社作って本当に客船運航していた方が会社も長生きできたんじゃないのか)
 仮にこのホテルが今も尚現役だったとしたら、間違ってもプライベートでは足を踏み入れることが無いだけに、敷島は心の中で悪態をついた。

 しかし、敷島達はすんなりコントロールセンターに行くことはできなかった。
「あっ!?」
 何故ならそこには……。
コメント (6)
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