報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「イリーナの過去」 2

2014-08-03 19:29:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 どのような魔法を使えば、一瞬にして町を1つ消し飛ばすことができようか。

 大きく空高く舞い上がるキノコ雲。

 あれだけの力があれば……。

[1945年7月11日06:00.魔王城・イリーナの居室 イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

「……!」
 イリーナはそこで目が覚めた。
「予知夢……?」

 それから数時間後、水晶玉に久しぶりの姉弟子からの着信があった。
 今はヨーロッパでの調査を終え、アメリカ合衆国に渡っているのだという。
「やっぱ敗戦国はダメだわ。旗色のいい国にいた方が安全ね」
「相変わらずね、姉さん」
「だからやめてくれない?修行サボってたくせに」
「あー、ハイハイ。それで先生は?何か言ってた?」
「別に。『もうすぐこの戦争は終わるが、すぐにまた別の戦争が始まるだろう』ですって」
「先生が既に予知されてるか……」
「こりゃ私も魔界に避難した方が良さそうだわ」
「姉さんは先生から人間界の調査を頼まれてるでしょ。私もバァルの相手が大変なんだから」
「そのことなんだけどね、『魔界の穴』を日本に仕掛けたって?」
「ええ」
「日本はやめといた方がいいよ。大統領府に潜入してみたけど、何か日本に新型の爆弾を落とす計画みたいだし」
「さらっとよくそんな重要機密手に入れるわね。もう日本はこっぴどくやられてるみたいだけど、何を落とそうっての?」
 姉弟子から聞いた情報。
 それを聞いたイリーナは、頭の中で何かが繋がった。
 これなら、あまり廉が立たずにバァルの野望を抑えることができる……。
 しかし……。
 その為に、無辜の市民の犠牲を利用しようというのか。

[1945年8月1日10:00.魔王城・大会議室 イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

「只今より親愛なる指導者、偉大な魔民の帝王、百戦百勝の霊将であられるところのバァル皇帝陛下のご臨席のもと、ここに御前会議を開催することを宣言する!」
 司会の魔族が開会宣言を行った。
(もう少しクールかもしれないけれど、日本の御前会議とどう違うかねぇ……)
 イリーナは宮廷魔導師として、当然出席している。
 会議の様子を冷やかな目で見ていた。
 いつもは文官や軍部の高官達のヤジ飛ばしを見てるだけのバァルが、久方ぶりに積極的な発言をしていた。
「皆も知っていようが、いま人間界では愚鈍な人間共が無益かつ泥沼の世界的な戦を行っておる。これを見かね、我等が崇高かつ高潔な魔族の軍隊が統治に向かうのは至極当然とあるべきやと思うが、どうか?」
 どこかの顕正会みたいに伏せ拝かつ大きな拍手が巻き起こる大会議室。
「崇高な計画でございます!」
「皇帝陛下万歳!」
「人間界をも我らの手に!」
「そして神の世界も手に入れましょうぞ!」
(……本当に実現可能そうだけど、やっぱり町1つの犠牲くらいは……。これも人間界の独立を保つために……)
「計画の布石は既に打っておる。宮廷魔導師、イリーナよ!」
「! は、はい!」
 いきなり振られてイリーナは我に返った。
「皆にお前が打った布石を説明してやれ」
「は?はあ……」
 イリーナは政府高官達の前に立つ。
 そして手に持った水晶玉に手をかざした。
 それはまるでプロジェクターのように、壁一面に画像が映る。
「えー、只今陛下が仰いました通り、人間界では第2次世界大戦が繰り広げられております。既にそれは終焉に近づいておりまして、敗戦国・戦勝国が確定しつつあります。両者が何かの拍子に逆転することなど、もはや有り得ない状態です。そこで私は敗戦が濃厚な国、大日本帝国に皆さんが侵攻するのに十分な穴を用意しました。敗戦国であれば、もはや魔王軍の侵攻に抵抗する余力はまず無いでしょう。そんな状況にあっても、未だ敵国からの進撃の影響をさほど受けていない地域があります」
 イリーナは更に水晶玉に手をかざす。
 今度は日本地図が現れ、中国地方の一部の地域が拡大される。
 よもやその機能が数十年後、人間界で実用化されるとは、この時はイリーナも予想していなかった。
「ここに人口およそ40万人の町があります。広島という町です。人口の割には敵国からの襲撃がさほどでもなく、皆様の初陣を飾るのにうってつけと思われます」
 市内の様子が映像で映る。
「うぬ?魔界高速電鉄の連中、人間界でも商いをしているのか?」
 1人の魔族高官が路面電車を見て呟いた。
 無論、魔界高速電鉄ではなく、広島電鉄である。
「うむ。さすがは宮廷魔導師だ。皆の衆、この町をまずは我らの進撃の足掛かりとしようぞ!」
 歓声が湧き起こる。
「出陣は1週間後とす!各自、準備を怠るな!」

[1945年8月5日15:00.魔王城・イリーナの居室 イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

「イリーナよ、大儀である」
「先生……」
「お前の計画、既に私に伝わっておる。私は止める気は無い。お前が良いと思った通りのことをするが良い」
 水晶玉越しに自分の師匠と会話するイリーナ。
「でも私は……食い止めようと思えばできるんです。新型爆弾の投下を……」
「しかしそれをしてしまうと、今度は魔王軍の侵攻を許してしまうことになる。3回目の世界大戦が始まることになるな。いや、もはや世界には魔王軍とまともに戦える国があるかどうか……」
「もっと他に手があるのかもしれない。だけど、それまでのアメリカ軍の攻撃だけでは、魔王軍を防ぐことはできません。3月10日の東京攻撃並みで、ギリギリではないかと思うのです。ですがもう日本には、それだけの攻撃目標となる都市が無くなってしまいました。ポーリンからもたらされた情報。アメリカが開発し、これから使用しようとする爆弾を利用するしか無いのです」
「そう思うならそうしなさい。確かに町1つを犠牲にすることにはなるが、しかし世界は救われる」
「はい……」
 イリーナは俯いた。
「イリーナよ。『顔を上げて。これからは、しっかり前を向いて生きるんだ。いいね?』」
 大師匠がイリーナを弟子にして1番最初に言ったセリフだ。
「はい……」

[1945年8月6日08:15.広島県安佐郡可部町(現、広島市安佐北区可部) イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 イリーナがいた場所は爆心地から20キロほど離れた所。
 ここでも戸外にいた人達は、熱傷を負わずとも、飛んできた熱風により『熱い』と感じたという。
「ごめんなさい……」
 イリーナもその熱風を感じながら、市街地の方に向かって頭を垂れていた。
 しかし、水晶玉が光ってポーリンから着信があった。
「イリーナ。まだ油断はできないよ!バァルのことだから、自分で他に穴を用意してると思う!」
「ええっ!?」
「そこは私がやっておくから、あんたは逃げなさい!今、あんたは魔界じゃお尋ね者よ!しばらく人間界に身を隠しておくの!」
「分かったわ。ソ連にでも逃げておく。今度はヨシフをからかってやろうかしら」
 スターリンのことか?

[2014年8月6日10:00.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]

「広島の原爆により、魔界の穴は吹き飛ばされて消滅したそうだ。だけど、その穴から侵入してきた爆風とか熱風とかで、先遣隊が全滅したそうだぞ」
「それでイリーナさん、一気にお尋ね者に……」
「ポーリン師がどのようにやったかまでは知らないが、その次の長崎への原爆投下と何か関係があるのかもしれない。とにかくあの時から師匠は今のロシアに逃走して、それから実は21世紀になるまで、表の世界に出てきてない」
「そうなんですね」
「今は魔界も政権が変わって、師匠の指名手配は解除になったよ」
「イリーナさんも、大変だったんですねぇ……」
 2人は空を見上げた。

 今日は雲1つ無い天気。
 だが、夕方はゲリラ豪雨に注意が必要とのことだそうである。
コメント (7)
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“ユタと愉快な仲間たち” 「イリーナの過去」 1

2014-08-03 15:23:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[2014年8月6日08:15.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット]

〔「黙祷!」〕

 テレビでは広島市への原爆投下に対する追悼式典が中継されていた。
「今頃、共和党本部でも黙祷やってると思うよ」
 1分後、イリーナが言った。
「魔界のですか?」
 ユタが意外そうな顔をした。
「共和党は人間の構成員が多いからね。ましてや党首で首相が日本人とあれば、しないわけにはいかないでしょう」
「そういうものですかね」
「そういうものよ。さて、私も出掛けてくるかね」
「本当にお忙しいですね」
「まあ、1000年以上も生きてると、色々と因縁というのがあってね。あ、マリアは置いて行くからね」
「あ、あの、海に行く日は10日ですからね」
「大丈夫。それまでには戻って来るよー」
 イリーナは魔道師のローブを羽織ると、フードを被って魔道師の杖を持ち、出て行った。
「これから魔界に行かれるんだろうね」
 マリアは朝食の後片付けを手伝いながら言った。
「お忙しいですね」
「しょうがない。師匠なりのケジメだから……」
「え?」
「広島の原爆投下には師匠が、長崎の原爆投下にはポーリン師が関わったと言っても、ユウタ君は信じらないだろうな」
「ええっ!?」

[現地時間1945年7月1日15:00.魔界帝都アルカディア魔王城 バァル大帝&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

「イリーナよ。“大水晶”の様子はどうじゃ?」
「芳しくないですね。陛下に封印された悪魔達の不満を吸収して、暴走し掛かっています」
 立派な白いあごひげに金色の瞳、牛のような角が生えた冠を被り、耳は長く尖っている。
「悪魔を1柱か2柱、解放してガス抜きをしてみてはいかがですか?」
「それはできん。1柱を捕獲して封印するのに、どれほどの時間と労力が掛かったと思う?あやつらは、余の軍門に下ることを拒んでおる。だが野放しにしておいては、この魔界の統治にも支障を来たす。だから封印したのだ」
(魔界にも居場所が無いのか、あいつら……)
 イリーナは自業自得とはいえ、悪魔達の立場を少し同情した。
 ここにいるバァル大帝すら、新興勢力の魔王だ。
 それまでは“7つの大罪”の悪魔達がそれぞれ好き勝手に、魔界で暴れ回っていた。
 人間界への出入りも自由で、ちょくちょく歴史にちょっかいを出している。
 それを抑止させたバァルの功績は大きいと思うが、この野心家、いずれ人間界への侵攻を考えるだろう。
「さようで……」
「それとな、イリーナ」
「はっ?」
「一月後、余は全軍に命令を出す」
「……!」
「それは人間界への侵攻だ」
(やっぱり!)
「既に、『魔界からの出口』は選定しておる。お前はこの機密が漏れぬように徹底してもらいたいのだ」
「……かしこまりました」
 イリーナは緊張を隠し、あくまでも平静を装ったつもりでいたが、
「元人間のお前が人間界に愛着のあることは知っている。だが、その人間界も世界規模の戦が起きているそうではないか。ならばこれに乗じ、攻め入るのは千載一遇のチャンスである。愛着を捨てよ」
「……は」

[1945年7月10日10:00.魔王城の一室 イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

『宮城県仙台市内で真夜中の空襲』『ビラ宣告通りの攻撃』『死者・行方不明者、数千名!』

 イリーナに与えられた部屋は広くて豪華なものだった。
 宮廷魔導師とは、言わば内閣官房長官のようなもの。
 謁見の間において、宰相と共に国王の横に控えることが許されている立場である。
 イリーナは机の上に置かれた異世界通信社の新聞を冷やかな目で見ていた。
 人間界では報道規制が行われたりしているようだが、魔界の新聞社はそんな規制を受けることもなく、人間界で起きたことを大きく報道していた。
 反面、魔界で起きていることについては、あまり報道されていない。
 人間界での報道に規制は掛けられていない異世界通信社も、魔界では規制が掛けられているのだ。
 せいぜい、バァル大帝が魔王軍のとある部隊を閲兵したという話くらいだ。
(人間が人間界で戦争をするのは仕方が無い。人間界はあくまで人間のものだから。だけど、魔界が人間界に攻め入ったら間違い無く、人間界が第2の魔界になってしまう……)
 イリーナが宮廷魔導師になった理由は、師匠(大師匠)よりの命令で、バァルの動向を監視して師匠に報告することである。
 まるでスパイのようだが、実はバァルもそれを知っててイリーナを採用した、言わば公然の秘密というヤツだ。
 恐らくバァルも大師匠の力を当てにしてる部分もあり、却ってイリーナを人質にしているつもりなのかもしれない。
 無論、高給、専用部屋付きの高待遇で迎えることにより、表向きはそのようなことがないことになっている。
 師匠に何度も報告しているものの、師匠からは、
「そのまま監視を続けよ」
 という指示だけで、何かせよというものは何も無い。

 イリーナは立場上、軍機を知る側の者である。
 それによると、敗戦色が強く、イリーナの予知で間違いなく一月後には全面降伏するであろう大日本帝国に侵攻の足掛かりを作ることが分かった。
 敗戦国なら新たな軍が攻め入っても、抵抗する力が無いだろうとのバァルの予想だ。
 正々堂々ではないが、こうやってバァルが魔界のアルカディア地方を統一したのだから、悪いとは言えない。
(大軍が攻め込むことができるくらいの大きい穴なんか作れば、さすがの現地の人間も気づくだろう。だから小さく固めておいて、いざという時にはすぐ大きくなるような穴……)
 その魔法を使ったのはイリーナである。
 他にも同じ魔法が使えるのは、姉弟子で今、ヨーロッパの状況を見ているポーリンだ。
 自分で作っておいて破壊すれば、すぐにバァルの耳に入ってしまう。
 一体、どうすれば……。

 その時、部屋のドアがノックされた。
「失礼します」
 そこへ従者の少年が入ってきた。
 ヒト型の姿をしているが、金髪から覗く長く尖った耳と、時折口から覗く牙が人間ではないことを示している。
「イリーナ様、陛下がお呼びです」
「陛下が?」
「聞きたいことがあるそうです」
「! (まさか、バレた?)」

[同年同日10:30.魔王城・謁見の間 バァル&イリーナ]

 玉座に深く腰掛ける魔王。
「……先ほど、余を討伐するという勇者を僭称する者が現れたとの報告があっての」
 バァルはしわがれた声で言った。
「そのような騒ぎ、私の耳には入りませんでしたが?」
「ただの偽者だったようでの、城内に入る前に兵達が仕留めたそうじゃ。お前の部屋まで、届きようはずがない。余はずっとここにいたが、ここでも聞こえなかったくらいじゃ」
「まあ……城門からここまで相当離れてますからね。用というのは、それだけで?」
「そんなわけなかろう。人間界侵攻の件についてじゃ。お前、魔界の穴はどこに仕掛けた?」
「仰せの通り、敗戦国の日本国内に仕掛けましたが……」
「あくまで敗戦が濃厚というだけで、未だ抵抗は続けておるそうではないか」
「私の予知では、あと1ヶ月前後で降伏するでしょう。それとも陛下ともあろう御方が、1ヶ月も待てぬと仰せですか?」
「そうではないが、しかし気になることはある。既に戦勝国に降伏し、敗戦国となって取りあえず戦の終えた国もあろうに、何故そこではないのか?」
「多くの場合、敗戦後は戦勝国に蹂躙されがちです。せっかく今隠している穴も、略奪行為の際、発見される恐れがあります。されば例え敗戦が濃厚ではあっても、未だ抵抗を続け、敵国の侵入を防ぐ国に設置した方が良かろうとの判断でございます」
 イリーナは説明した。
「さようか。そこまで考えるのなら良い。だが、聞いた話ではかの国も、相当侵攻されておるそうではないか。それに巻き込まれて、せっかくの穴が破壊されては困るが、それに対しての手も万全であろうな?」
「はっ。例え都市であっても、比較的敵国からの攻撃が軽微な所もございます。そういった場所を選定しております」
「うむ。さすがは宮廷魔導師は、軍師たる者じゃ。期待しておるぞ」
「……全幅の信頼、真に恐れ入ります」
 イリーナは深々と頭を垂れたが、気持ちは沈んだままだった。

 そして彼女は今夜、とある予知夢を見ることになる。
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業務連絡

2014-08-03 00:41:40 | 日記
オタク42.8%が「恋人は別次元にならいる」 -"嫁"1位はうたプリのあのキャラ#マイナビニュース# - goo ニュース

 冨士参詣深夜便より、尋ね人のご案内です。
 “厳虎独白”管理者の厳虎様の更新が長期に渡り、予告無く停止しております。
 状況の分かる方は、ご一報願います。
 尚、あっつぁ氏、ユージ氏、寒山拾得氏についても、引き続き捜索が行われているもようです。
 もっとも、詳細は【お察しください】。

 冒頭の記事を読まれて、一般の方は素直にキモいと思ったことだろう。
 パラパラ茜氏においては、いいヲタク叩きのネタになるかもしれない。
 まあ、三次元に住む人間達はか弱いヲタクには荷が重過ぎる。
 そこで、二次元に走る者が多数というわけだ。
 何の生産性も無いが、これでも立派な犯罪抑止効果が表れている証拠ではないか。
 まあ、西日本某所では、それでも三次元を諦めることができなかったオッサンがJSを誘拐・監禁して大騒ぎになったが、これはあくまでレアケースと言えよう。

 私は自作の小説で20代にはできなかったこと、そして恐らくこの30代でもできそうにないことを書くことで、自己満を実現している。
 別にそれは判事ではないし、倫理的に悪い事でもないはずだ。
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