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飛騨の自然と巨木に親しむブログ

飛騨をうろうろぐるぐる歩き、飛騨高山の自然と巨木をご紹介します。あと、宮笠、登山、トレランのネタなども登場します。

宮笠の製作技術 その3

2009-03-05 00:03:35 | 宮笠の製作
 3日午後からの雪は、4日朝方まで降りましたが、地温が上がっているためか、降っては溶け降っては溶けして、結局ほとんど積もりませんでした。


 さて、宮笠製作工程の3回目。編み目は下の写真のように、3枚飛ばしで網代に編んでいくのが基本です。3枚飛ばしを、1,3,5と変えることで、菱形の模様が現れます。


 さて、編み進んでいって、十分な大きさになったら、「ほん」と呼ばれる木の定規でコンパスのように円を描きます。「ほん」は、笠の寸法によっていろいろな長さのものがありますが、長年使われているため、黒光りして歴史を感じさせます。



 描いた円に、「ふち竹」を編みつけるのですが、竹は一之宮町周辺では成長が悪いので、少し南の下呂市(旧益田郡萩原町)の竹を使います。削った竹を輪にするのにも笠ヒデを使うんです!
 

 ふちの竹を固定したら、いよいよ余分なところを切り落とします。せっかく編んだのに、なんかもったいないような気がしてしまいます・・・。


 余分なところを切り落とすと、かなり笠っぽくなってきました。 (つづく)

宮笠製作技術 その2

2009-03-02 23:11:28 | 宮笠の製作
 今日は、夕べの雪がうっすら積もり、気温も低めで、冬に逆戻りの一日でした。


 宮笠製作工程撮影2日目。仕事を休んで、撮影に同行しました。今日は、セミ笠と呼ばれる飾りのついた笠の製作を撮影しました。

 ご紹介するのは、セミ笠ではなく、紅白と呼ばれる笠の写真です。




 まず、「イカダ」と呼ばれる編み方で、作業台に笠ヒデを並べて、縦横に組んでいきます。立の白っぽい笠ヒデはヒノキ、横の赤茶色のがイチイの笠ヒデです。編むときの基本は、3枚飛ばし(3枚くぐって3枚飛んでを繰り返す)で編むことです。編み目の模様のところは、1枚、3枚、5枚の順で飛ばす編み目の数を変えていきます。問坂さんは指先に目がついているかのように、目にも留まらぬ速さで編んでいかれます。




 次に、「辻つくり」。平面だったイカダのヒデを立体になるように編んでいきます。笠ヒデを引いていくと、見る見る立体になっていくのが不思議な感じです。




 これで辻が完成!ヒノキとイチイの材の色の違いで、もう模様ができています。編んだ笠ヒデに隙間があかないように、頻繁に締めながら編んでいきます。そしてさらに、「中作り」「すそ作り」でヒデを足して大きく編んでいきます。 (つづく)

宮笠のバリエーション

2009-03-01 03:06:54 | 宮笠の製作
 今日は、気温は低めでしたが、気持ちよく晴れた一日でした。

 今日は、町内で古民具を収集・動態保存されているAさんをお訪ねし、さまざまな宮笠を見せていただき、玄関先で撮影させていただきました。



 左から順に紹介すると、左端は現存する宮笠の中でも最古級のもので、大正か昭和初期のものとのことです。材料はイチイ。幅2~3mmの細いヒデで、編み目のひし形が渦巻状になっています。昔の作者が、腕試しのような感じで作ったものではないかとのことでした。

 その横の一番大きいものは直径三尺(約90cm!)あり、迫力があります。材料はヒノキのようで、中心のツジにはセミ笠の飾りがありますが、今のものよりちょっと簡略化されたものです(これが原型かも?)。母屋から蔵へ行くときなど、ちょっとした用事に使ったものではないかとのことでした。

 その横は、30年ほど前のもので、Aさんが村内の作者に依頼して作ってもらったものとのことでした。材料はイチイ。これも細いヒデで編んであります。

 次いで、イチイのセミ笠。これも細いヒデで編んであります。今のものよりちょっと大きめのようです。

 最後はイチイ笠。編み方は現在のものと基本的には同じようですが、細いヒデを使っているため、菱目の数が多くなっています(写真ではそこまではわかりませんが・・・)。

 宮笠は、もともと生活道具で、使って破れたりすれば捨てられる(きっと焚き付けに使うなど、無駄に捨てることはなかったと思いますが)運命のものなので、古い宮笠で残っているものは、装飾用など限られた用途のものだけになってしまいがちです。それだけに、宮笠の歴史をたどる試みは、謎解きのようで面白さがあるといえるかもしれませんね。

 あさっても撮影予定で、セミ笠の製作工程とヒデ工場を撮影する予定です。ヒデ工場は、味のある渋い機械や道具が並んでいます。お楽しみに!

宮笠製作技術の映像記録、撮影開始!

2009-02-26 00:13:40 | 宮笠の製作
 昨夜からの小雨で、平地の雪はかなり溶けてしまいました。何度も書いていますが、もうちょっと雪積もらないかなぁ。


 

 夏以降、宮笠をかぶっての登山記録を書いてきましたが、そもそも『宮笠』とはなにか?それは、江戸時代から高山市一之宮町問坂(といさか)地区を中心に作られている笠で、ヒノキやイチイの木をリボン状に薄く加工した”ヒデ”を編んで作られています。ヒノキを使った『桧笠』は各地で作られています(といっても、ざっと調べた範囲では石川県白山市、長野県南木曽町、高知県くらいしか今はのこっていないようです)が、イチイを使った『一位笠』は、イチイの木の利用が古くからある飛騨一之宮だけのようです。
 今では作る人も少なくなって、後継者の育成が課題になっていますが、この度、宮笠の製作技術を映像等に記録する事業に取り組むことになりました。今日、その撮影初日で、カメラマンと共に技能伝承者の問坂さんをお訪ねし、撮影を開始しました。

 撮影した今日の印象として、やはり”すごい”ですねー。一見の価値あります!撮影の合間に撮った写真と、以前撮影した写真を織り交ぜながら、宮笠の製作過程をご紹介したいと思います。紹介するのは、「『紅白』と呼ばれる、イチイとヒノキを編んだ、宮笠の定番のものです。

 まずはじめは、材料をそろえるところから始まります。笠ヒデの他には竹を使用します。



 この写真は完成間近の宮笠ですが、ここに見える外周の円(ふち)と、中ほどにある円(おたて)、そして放射状に6本あるホネ(さしぼね)は竹でできています。竹は飛騨地方でも標高の低いところでないと成長しにくいので、少し南に行った下呂市萩原町の竹を伐ってきて使います。



 竹割で4等分した後、小刀で割っていき、「ふち」×1、「おたて」×1、「さしぼね」×6(3本は少し太め、3本は少し細め)の3種類の材料を作ります。(つづく)


 今回の記録とあわせて、3月13日(19時~21時)には高山市一之宮公民館で「宮笠伝承セミナー」を実施予定です。興味のある方、ぜひご参加を!