セピア色の記憶

■　先日のTV「爆笑問題」に野波君が出ていた。周囲に立てられたカメラでコントロールされながら無人超小型ヘリ2機がぶつからずに絡みあうように自律的に空中を飛び回ることができるシステムの開発者として登場していた。未来の科学館とかなにかの屋内システムで入館者の影が自律的に動いて隣の人の影と手をつないだり、その人の声で勝手に歌を作って歌ったり壁に歌詞を投影したり、、というような内容だった。彼のシステムは原発事故の炉心溶融を無人偵察するための、、さすが野波流、研究の方向性にぶれがない。

彼はプロジェクトXに何度も登場し、知能システム工学の分野では有名な学者だからTVに出ていても驚かないが千葉大の副学長という要職にいたばずで、もうそろそろ定年だから、、、そういえば何の肩書きもでていなかったので、、ひょっとするともうやめたかな？

しかし、こんなシステム開発に関わっているのはまだ研究者として現役だということだろう。すごいなぁと感心する。彼とは高校の時から福大工学部機械工学科の時までずっと同級生だった。大学紛争の時は学友会のリーダーとして東大安田講堂陥落の時もその渦中にいた。そうだ、あのころ僕達の学生生活は暗くやるせない毎日だったなぁ。一方でノンポリ体育会系右翼みたいなのがいて他方で中学同級のWみたいに京大時代に革マル活動家となり、紛争時代が終わって某外語大で教鞭をとるようになっても最後まで所在を明らかにすることなく死んでしまった友もいる。７０年安保の時代は学生闘争がセクト化し武装化した内部抗争に走った時代だった。

卒業し僕は工作機械メーカーに就職したが企業組合のなかの不満もあって会社を飛び出した面もあったのかもしれない。東京で１人司法試験の勉強をしていた時、野波と衝撃的な出会いをした。夜、都立大の食堂で急に呼び止められ「おい、お前どうしてここにいるんだ」「えーっ、お前こそ、、どうして、、」

僕はテンプラ偽学生として刑法の内藤教授の夜の講義を聞きに来ており、都立大大学院に進んだ彼は丁度最年少の２８歳で博士号を取ってオーバードクター生活をしていた。彼の博士論文を見せてもらうと回転軸の危険速度のコンピュータ解析だった。「これはむしろお前が専門だろう」と彼は言って僕たちは夢中で話した。

彼は研究員としてNASAへ行ったり、ベトナム戦争後の地雷撤去に例のクモ型ロボットを開発したり、、で千葉大名物教授として活躍していく。学生紛争の洗礼を受けた時代の一つの典型的な成功パターンなのかもしれない。そのころ都内のいろんな大学を歩きまわっていた僕が頼まれて東大構内を案内したことのある猪瀬直樹は今じゃあ東京副知事だ。その時は某出版社のゴーストライターで、チャラいやつだったのが、、。

もう４０年前の古いはなしだ。俺もこんなセピア色の記憶が戻ってくるような歳になったんだ。