春を背負って」を読みました。
長嶺亨は脱サラをして父親の山小屋を継いだ。
父をなくしたOL、84歳のクライマー、7歳の女の子、ホームレスのゴロさん…
美しい自然に囲まれたこの山小屋には、悩める人を再生する不思議な力があった。
木村大作監督で映画化された原作本です。
笹本稜平作品は良く読んでいますが、これまでに読んだ作品は壮大なスケールの冒険小説や警察小説でした。
本作はそれらとはまったく趣が違ったハートウォーミングな山岳小説です。
とある山小屋を舞台にした6篇からなる連作短編集。
いずれのエピソードもほのぼのとしていて、爽やかな気持ちになります。
この小説の満足度:☆☆☆☆
幻の翼」を読みました。
かつて、能登の断崖に消えた“百舌”は復讐を誓い、北朝鮮の工作員として、日本に潜入した―。
稜徳会病院で起きた大量殺人事件は、明確な理由もなく突然の捜査打ち切りが発表され、背後に政治的な陰謀がからんでいるのではと、取り沙汰されていた。
捜査に当った倉木尚武警視は、大杉良太警部補、明星美希部長刑事などと共に闇に葬られようとする陰謀を執拗に追う。
百舌シリーズの第2弾です。
前作の『百舌の叫ぶ夜』はTVドラマで観ました。
死んだはずの“百舌”が再び蘇える・・・。
一方、倉木と明星は稜徳会病院に隠された闇に挑む、そこに大杉が絡んで来て・・・。
本筋は前作以上のミステリー&ハードボイルド物になっていますが、倉木と明星の恋愛話が入るのがちょっと余計かも・・・。
それにしても、倉木は渋すぎるな~!
明星の女心がいじらしい!
そして、本作では大杉が一番いい味出してます!!
まさに、骨太のストーリーで一気読みです!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
矢月秀作 著 「闇狩人 バウンティ・ドッグ」を読みました。
米国の賞金稼ぎを参考に導入されたプライベートポリス制度。
通称「P2」の腕利き・城島恭介は、死線を潜り抜けた元傭兵だ。
恭介は若者たちが殺し合う凄惨な事件の捜査を発端に、麻薬の利権を巡る闇組織同士の対立に気づく。
日本に根を張る外国人組織も絡み、まさに命懸けの捜査の末に追い詰めたボスの正体とは!?
『もぐら』シリーズに続くド派手なアクション小説です。
傭兵のプライベート・ポリス・城島恭介が麻薬の闇組織と対決する。
これがまた滅法強い!
飛び交う砲弾、巻き起こる爆風を物ともせず巨悪に挑む姿はまさに闇のヒーロー!!
単純明快なスリートーでスイスイと読めました。
シリーズ化に期待!
この小説の満足度:☆☆☆☆
岡崎大五 著 「生還の海」を読みました。
柏木は後輩の太田と菜実を率い、サーファーの救助に向かった。
だが、荒れ狂う海をボートで乗り越えた先にはサーフボードが浮かぶのみ。
柏木が焦って人の有無を双眼鏡で確認しなかったためだった。
大波に呑まれた三人は、自らが漂流する羽目に。
命からがら辿り着いた島にはある危険な人物が待ち構えていた―。
ライフセーバーたちの青春小説かなと思いきや・・・
中盤以降はとんでもない展開に!
表紙のイメージともまったく違う内容に驚きです!!
しかし、残念ながらリアリティーが無かったですね~!!
この小説の満足度:☆☆☆
富樫 倫太郎 著 「早雲の軍配者」を読みました。
伊豆・相模の地を平定した北条早雲の次なる策は、周辺諸国から領地を守る次世代の指導者たちを育てること。
風間一族の少年・小太郎は学問の才を見出され、早雲の直弟子として日本最古の大学「足利学校」へ送り込まれた。
若き日の山本勘助らと机を並べながら兵法・占術・陰陽道・医術・観天望気・軍陣の作法など、「軍配者」に必須の学問を修めた小太郎は、やがて戦場で友たちと再会する…。
「軍配者」とは、戦全般に関して君主に助言する専門家で、占術と戦術の双方の能力を持つ者。
希代の名将、北条早雲の薫陶を受けた幼き風摩小太郎が、やがて北条氏康の軍配者になるまでが描かれています。
この過程が面白い!
小太郎と早雲のエピソードを始めとして、同じ風間一族の幼馴染との関係、足利学校で出会い後にライバルとなる学友など等・・・
登場人物それぞれが魅力的で続きを読む手が止まりません!
クライマックスは小太郎とともに学んだ軍配者との知略を尽くした戦が手に汗握る展開に・・・.
これぞ、まさしく戦国青春エンターテイメント!!
歴史小説が苦手な人にもお勧めの一冊です。
この小説の満足度:☆☆☆☆☆
「疑心―隠蔽捜査〈3〉」を読みました。
アメリカ大統領の訪日が決定。
大森署署長・竜崎伸也警視長は、羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に抜擢された。
やがて日本人がテロを企図しているという情報が入り、その双肩にさらなる重責がのしかかる。
米シークレットサービスとの摩擦。
そして、臨時に補佐を務める美しい女性キャリア・畠山美奈子へ抱いてしまった狂おしい恋心。
竜崎は、この難局をいかにして乗り切るのか?―。
竜崎伸也シリーズの第3弾です。
変人と言われ様が己の原理原則と天才的な判断力で現場の最前線で指揮を取る竜崎
何と! その竜崎に異変が・・・。
だって、恋しちゃったんだもん!って・・・マジかよ!
こんな竜崎は読んでいて、面白くも何ともないよ~!
この小説の満足度:☆☆☆
続けて「初陣―隠蔽捜査〈3.5〉」を読みました。
警視庁刑事部長を務めるキャリア、伊丹俊太郎。
彼が壁にぶつかったとき頼りにするのは、幼なじみで同期の竜崎伸也だ。
原理原則を貫く男が愛想なく告げる一言が、いつも伊丹を救ってくれる・・・。
『隠蔽捜査』シリーズのスピン・オフ短篇集です。
伊丹刑事部長の目線で隠蔽捜査1~3の裏話が描かれています。
成る程、こう云う事だったのかと思わず納得!
こちらの方が面白かった!
この小説の満足度:☆☆☆☆
由良秀之 著 「司法記者」を読みました。
「騙されるな。気合を入れて叩き割れ!」
「…そんな供述のどこが真実なんだ」
美貌の女性記者はなぜ殺されたのか?
口を閉ざし続ける容疑者の守り通す秘密とは…。
特捜検事が、巨大組織の壁の中で、孤独な闘いに挑む。
殺人事件に巻き込まれた司法記者と特捜に配属されたばかりの検事の二人の視点で物語は進む。
著者が元特捜検事ということで、特に特捜部の捜査手法や司法記者クラブと関係などがリアルに描かれています。
厚生省官僚の冤罪事件でも暴かれた検察の強引な捜査手法・・・
権力に胡坐をかくと云うのはこう云う事か・・・
検察内部の問題点を告発するような内容が興味深く、ミステリーとしても読み応え十分でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
司城志朗 著 「許されざる者」を読みました。
一八八〇年、北海道の未開の地。
元幕府軍の“ひと斬り十兵衛”は家族を成し暮らしていた。
ある日、彼のもとを旧友が訪れ女郎の敵討ちに誘う。
亡き妻と結んだ「もう誰も殺さない」という誓い、生きるため他に術のない自らへの葛藤ー。
苦悩のなか十兵衛は、貧しく暮らす子のため再び刀を抜く決意をし、争いの渦へ飲まれていく。
渡辺謙主演映画のノベライズです。
クリント・イーストウッドのオリジナル作品は大分昔に観ましたがこちらの映画の方は観ていません。
西部劇の設定を北海道の開拓史にうまくすり替えたな~と云う感じです。
しかし、設定を変えただけ新しい要素もなく新鮮味に欠けました。
この小説の満足度:☆☆☆
仇敵」を読みました。
幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。
エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。
だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす―。
不正を知った男は謎の死を迎え、恋窪は“仇敵”への復讐を誓う。
銀行業務の云わば裏方のような立場の庶務行員を主人公に据えた物語。
連作ですが読んでいくうちに一つの長編となっていく過程がまた面白い!
ストーリーもミステリー仕立てで最後までぐいぐいと引っ張られました。
この小説の満足度:☆☆☆☆
桜庭 一樹 著 「私の男」を読みました。
落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。
孤児となった10歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。
そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から2人の過去へと遡る・・・。
第138回(平成19年度下半期) 直木賞受賞 作で浅野忠信、二階堂ふみ主演で映画公開中との事で読んでみました。
近親相姦と殺人が組み合わさってまさにドロドロです!
あまり現実にあるとは思えない暗くて救いようのない話。
ん~、これが直木賞か・・・。
内容はどうであれ文章力が評価されたのか?
この小説の満足度:☆☆