百田尚樹 著 「フォルトゥナの瞳」を読みました。
その若者には、見たくないものが視えた。
他人の「死」が。 「運命」が――。
幼い頃に両親と妹を亡くした木山慎一郎には、友人も恋人もいない。
一日中働き夜寝るだけの日々。
夢も自信も持てない孤独な人生だった。
その日までは――。
死が近い人の体が透けて見えてしまう瞳を持つ青年の話です。
目の前の人がもうじき何らかの原因で死ぬと判っていたら、果たして見ぬ振りが出来るのか・・・。
しかも、その人を助ける事によって、自分自身の命を減らさなければならないとしたら・・・。
仮に、その人を助けたとしても、その後、その人がどんな人生を歩むかは判らないのに・・・。
ん~、究極の選択!
人間は一日に九千回の選択をしているそうですが、こんな能力が備わったら毎日悩んで暮らさなければなりません。
切ない話です・・・。
同じ透けて見えるのならば、もっと違う物が透けて見える能力が欲しい~?
この小説の満足度:☆☆☆
池井戸潤 著 「銀翼のイカロス」を読みました。
頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。
政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い――
プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?
半沢直樹シリーズの第4弾です。
今回は業績不振の帝国航空の再建に関し、半沢が銀行内部、金融庁、政治家の圧力と対峙しながらも己の正義を貫き通すと云うストーリー。
帝国航空は日本航空がモデルとなっている事は容易に想像がつきます。
半沢が悪をあばき、最後に正義は勝つ!という相変わらずの勧善懲悪パターンですが
次々に襲いかかる強敵や難題を半沢が解決して行く過程が相変わらず面白いですね~!!
そして、スッキリ解決の結末が何とも小気味良い!!
本作も倍返しの面白さでした!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
森沢明夫 著 「虹の岬の喫茶店」を読みました。
小さな岬の先端にある喫茶店。
そこでは美味しいコーヒーとともに、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。
その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人人―彼らの人生は、その店との出逢いと女主人の言葉で、大きく変化し始める。
著者の作品を読むのは初めてです。
高倉健さんの遺作「あなたへ」のノベラリゼーションも担当された方だとか。
小さな岬の先端にポツンと立つ喫茶店を舞台にした全6章からなる短編集。
出会い、別れ、そして再会…。
どの話も読み終えてほっこりとなりました。
久々にいい話を読んだな~という感じ。
吉永小百合さんプロデュース、主演映画「「ふしぎな岬の物語」の原作。
ちなみに、この喫茶店は千葉県鋸南町、明鐘岬に実在するそうです。
この小説の満足度:☆☆☆☆
和田竜 著 「村上海賊の娘」を読みました。
和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。
海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。
その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった…。 (上巻)
織田方の猛攻を雑賀衆の火縄が止め、門徒の勢いを京より急襲した信長が粉砕する。
毛利・村上の水軍もついに難波海へ。
村上海賊は毛利も知らぬ禁じ手と秘術を携えていた…。(下巻)
信長vs.本願寺、瀬戸内と難波の海賊ども…。
ケタちがいの陸海の戦い!
これまでに読んだ「のぼうの城」や「小太郎の左腕」、「忍びの国」、いずれも面白かった!
本作も本屋大賞を受賞したということで期待して読み始めました。
最初は物語の途中で歴史的な解説がちょいちょい入るのが気になりましたが、それも徐々に気にならなくなり、合戦が始まると一気に作品にのめり込みました。
村上海賊や木津川合戦など、これまで知らなかった歴史がまるで当時の映像を観ているかのように目の前に浮かびました。
登場人物も皆それぞれ胸に思惑を占めながらも、一本筋が通っていて魅力的です。
上下巻ともに500ページ近い長編ですが、ワクワク、ドキドキで一気読みの大スペクタクル・エンターテイメント作品でした!!
や~、面白かった!!
この小説の満足度:☆☆☆☆☆
「電子の標的 警視庁特別捜査官・藤江康央 」を読みました。
パスモ、Nシステム、監視カメラに偵察衛星。
臨場した捜査官が発した至急報は、誘拐犯を追尾する!
視えない静かな大捜査網の開幕を告げた―。
著者は元公安部出身だけに、警視庁と云う組織や捜査に使う設備、新しい捜査手法などが詳しく描かれています。
しかし、ストーリーは子供の誘拐と云う大事件の割にはハラハラする場面も少なく、単調で盛り上がりに欠けました。
なにより、主人公の藤江康央がかっこよすぎる!!
この小説の満足度:☆☆☆
角田光代 著 「紙の月」を読みました。
ただ好きで、ただ会いたいだけだった―――
わかば銀行の支店から一億円が横領された。
容疑者は、梅澤梨花四十一歳。
二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。
真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。
そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった・・・・・・。
昭和56年(1981年)に三和銀行で起きた伊藤素子1億円横領事件をモチーフにした小説です。
夫と二人暮らし専業主婦、夫の言動に違和感を感じる日々・・・
銀行のパート店員として外回りをしている内に若い男と知り合い、いつの間にか入れ上げて・・・
ついには、顧客のお金に手をつけて破滅の道をまっしぐら・・・
ん~、予想通りの展開過ぎて、目新しさが何もないな~。
読後感もどんよりです・・・。
第二十五回柴田錬三郎賞受賞作。
映画が宮沢りえ主演で11月15日公開予定。
映画の方はきっと面白いかも!?
この小説の満足度:☆☆☆
「雪が降る」を読みました。
母を殺したのは、志村さん、あなたですね。
少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。
苦い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、
取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の六篇。
「テロリストのパラソル」で史上初の
「サスツルギの亡霊」を読みました。
カメラマンの矢島拓海のもとに届いた一葉の絵はがき。
差出人は二年前に南極で死んだはずの兄だった。
時を同じくして、拓海に越冬隊への密着撮影の仕事が舞い込んでくる。
「死の真相を知りたければ南極に行くといい」。
これは偶然なのか、それともあいつが―。
冷たく広大な“密室”で、過去の事件が甦る。
神山作品を読むのは「カタコンベ」以来2冊目です。
「カタコンベ」の舞台となっていたのは洞窟!
その洞窟内での救出&脱出を描いた冒険ミステリー作品で歴代最年少で江戸川乱歩賞を受賞しました。
そして、本作の舞台は何と!南極!!
東オングル島、雪と氷に閉ざされた巨大な密室で南極観測越冬隊に様々な事件が起こる・・・。
それらの事件は2年前に行方不明となった兄と関係があるのか・・・。
南極にある日本の施設や観測隊の生活などが克明に、リアルに描かれています。
相変わらず文章が読みやすくてサクサク読めました。
しかし、謎解きとしてはそれ程ヒネリは無かったです。
この小説の満足度:☆☆☆
「まほろ駅前番外地 」を読みました。
東京都南西部最大の町・まほろ市の駅前で便利屋を営む多田と、高校時代の同級生・行天。
相変わらず、汚部屋清掃、老人の見舞い、庭掃除に遺品整理、子守も料理も引き受ける多田便利軒。
ルルとハイシー、星良一、岡老人、田村由良ら、お馴染みの愉快な奴らも健在。
多田・行天の物語とともに、脇役たちが主人公となるスピンアウトストーリーを収録。
直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』の続編です。
前作では脇役だった人たちの視点で描かれた7つのストーリー。
もちろん、主役の二人も登場します。
前作と同様に、どこか懐かしく、まったりとした空気感がいいですね~!
曾根田のばあちゃんの若き日のロマンス「思い出の銀幕」がよかったです。
インパクトには欠けるけど、たまにはこんな小説もいいか・・・。
この小説の満足度:☆☆☆
富樫倫太郎 著 「謙信の軍配者」を読みました。
曾我冬之助は新たに宇佐美姓を名乗り、若き長尾景虎(上杉謙信)の軍配者となる。
しかし実際に戦況を支配していたのは「毘沙門天の化身」景虎その人だった。
常識外れの発想で勝ち続ける天才・景虎に、足利学校の兵法は通用するのか?
冬之助の旧友・山本勘助が率いる武田軍との攻防が続く―。
軍配者シリーズ第三弾にして完結編です。
風魔小太郎,山本勘助,そして宇佐見定行。
足利学校で共に軍楽を学び、生涯の友として、ライバルとして戦場で相見えることを誓った三人。
三人三様の生き方をしながらも人生の節目節目で再び出会う事になる・・・。
完結編は上杉謙信の軍配者となった宇佐見定行(曾我冬之助)の登場です!
が・・・
この物語の主役は宇佐見定行と云うよりも長尾景虎(上杉謙信)でした。
当時の常識を覆す天才的な閃きと倫理感で戦に挑む景虎!
それを迎え撃つのはご存知、武田信玄!
幾度となく繰り返された川中島の合戦を通して、景虎と定行、信玄と勘助の主従関係が描かれています。
さらに、サブストーリーの山本勘助一家の物語には思わずホロリ・・・。
ストーリーが変化に富んでいて、どんどん引き込まれて、一気読みです!
いや~、このシリーズは面白かったな~!!
時代物が苦手な方にもオススメです。
この小説の満足度:☆☆☆☆