木下半太 著 「ナナブンノイチ」を読みました。
天才詐欺師の津田は、8年の服役を終え出所した。
裏の世界からは足を洗う。
そう決意したはずだったが、ある日ブーと名乗る男から“仕事”を持ちかけられる。
かつて津田を裏切った犬島から、時価20億円とも噂される宝石“グレート・エッグ”を奪うというのだ。
復讐心をくすぐられた津田は7人の達人でチームを結成するが、犬島は恐るべき怪物に成長していた。
さらに宝石を狙う新たな敵も現れ―。
”ブンノイチ”シリーズの三作目です。
一作目の「サンブンノイチ」が面白かったので読んでみました。
二作目の「ゴブンノイチ」は未読です。
殺されかけた伝説の詐欺師がスペシャリストのチームで復讐に挑む・・・。
一作目と同様にテンポがよくてサクサク読めました。
映画の「オーシャンズイレブン」の日本版みたいで面白かったですがラストがちょっと拍子抜け。
この小説の満足度:☆☆☆
五郎治殿御始末」を読みました。
勢州桑名藩の岩井五郎治は、新政府の命で、旧藩士の整理という辛い役目についていた。
だが、それも廃藩置県によって御役御免。
すでに戊辰の戦で倅を亡くしている老武士は、家財を売り払い、幼い孫を連れて桑名を離れたが……「五郎治殿御始末」。
江戸から明治へ、侍たちは如何にして己の始末をつけ、時代の垣根を乗り越えたか。
激動の世を生きる、名も無き武士の姿を描く珠玉の全6編。
江戸から明治へ移り変わる激動の時代に己の信条と葛藤しながら必死に生きようとした武士たちを描いた短編集です。
この中の一編の「柘榴坂の仇討」が映画化されて現在公開中です。
時代が大きく変わる狭間で、屈折した感情を抱きつつ、不器用に、愚直に生きた”元”侍たち・・・。
名作『壬生義士伝』ほどではありませんが、いかにも浅田次郎という感じの物語ばかりでなかなか楽しめました。
この小説の満足度:☆☆☆☆
渡辺 雄介 著 「MONSTERZ」を読みました。
男が自分の首を捻り折って自殺するという事件が発生した。
その猟奇性に違和感を覚えた刑事課の柴本だったが、二十年のときを経て再び奇妙な事件に遭遇する。
人が次々に操られた末、二人の男がビルから突き落とされたというのだ。
捜査線上に浮かび上がったある男と、二つの事件の共通項。
視界に入った人間を操る力を持つ者と、唯一その力に影響されない者が対峙するとき、世界を揺るがす闘いが始まる。
映画になったと言うことで読んでみました。
著者の渡辺 雄介氏はTVドラマの「ブラッディ・マンデイ」や「相棒 Season 7」、映画の「20世紀少年」や「GANTZ」を手がけた脚本家です。
本作は2010年の韓国映画『超能力者』が原案との事。
小説的には色々と突っ込みどころはありますが、映画を観ている感覚で普通に楽しめました。
映画は観ていませんが主人公の二人を演じた藤原竜也と山田孝之が作品のイメージにぴったりでした。
この小説の満足度:☆☆☆
東京臨海中央署の日向太一は、地域課の巡査部長ながら、その驚異的な身体能力が認められ、ある特命を下される。
ひょんなことから知り合った天才科学者・嶺藤亮の協力を得て、日向は巨大な陰謀が蠢くレインボーテレビへ潜入する!
最強タッグが暴れ回る高速アクションシリーズ、遂に始動。
「もぐら」シリーズに続く新シリーズの第一弾です。
「もぐら」シリーズとは違って、今回は一話完結ではなく長編小説のように三話を通して物語は進むようです。
なので、一話目は序章といった感じですね~!
相変わらず読みやすく、さくさく読めます。
観世懲悪!
さてさて、これからどんなアクションストーリーが展開されるのか、第二弾が楽しみです!
この小説の満足度:☆☆☆☆
伊集院 静 著 「星月夜」を読みました。
東京湾で発見された、若い女性と老人の遺体。
それぞれ身元は判明したものの、二人には接点が見出せず、捜査は難航する。
事件の鍵を握るのは、老人の遺した孫娘、黄金色の銅鐸、美しくも忌わしい星空の記憶―。
伊集院氏の初の推理小説という事ですが、単なる謎解きだけではなく、表現が情緒豊かで読み応えがありました。
登場人物が多く、しかもストーリーは過去と現在、山陰地方と東北地方と複雑です。
終盤まではそれらがどこでどう繋がっていくのかがまったく読めません。
ラストでようやくタネ明かし!!
ん~、ちょっと焦らし過ぎじゃん!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
由良秀之 著 「司法記者」を読みました。
「騙されるな。気合を入れて叩き割れ!」
「…そんな供述のどこが真実なんだ」
美貌の女性記者はなぜ殺されたのか?
口を閉ざし続ける容疑者の守り通す秘密とは…。
特捜検事が、巨大組織の壁の中で、孤独な闘いに挑む。
元特捜検事が書いただけあって検察内部について詳しく描かれています。
特捜部のあらかじめ描いたストーリーに合わせて証拠をとっていく捜査手法や司法記者クラブとのなれ合い等々・・・。
少し前にあった検察の色々な不祥事もこれを読むと”然もありなん”といった感じですね~!
日本の法曹について学びながら、サスペンスも楽しめる一石二鳥?の小説でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
川あかり」を読みました。
川止めで、木賃宿に逗留し、足止めを食っている若き侍、伊藤七十郎。
藩で一番の臆病者と言われる男が、斬れと命じられた相手は、派閥争いの渦中にある家老。
家老が江戸から国に入る前を討つ。
すでに対岸まで来ているはずだ。
川明けを待つ間、思いもかけぬ市井の人々との触れ合い、さらには降って湧いたような災難が続き、気弱な七十郎の心は千々に乱れるが―
ひとびとのためにやると決意したのだ、と自分を叱咤した。
たとえ、歯が立たない相手であっても、どんなにみっともない結果になろうとも、全力を尽くすのみだ。
七十郎は叫びながら刀を抜いた。
「それがしは刺客でござる」。
直木賞受賞作の「蜩ノ記」を読んで作者のファンになりました。
以来、二冊目に読んだ「銀漢の賦」も、三冊目の「橘花抄」も良かった!
そして、四冊目が今回の作品です。
これまでの作品とは違って軽いタッチの娯楽時代小説といった内容でした。
藩で一番の臆病者、伊東七十郎が派閥争いに巻き込まれて家老の暗殺を命ぜられる。
その旅の途中、長雨で川を渡れず足止めにあい、木賃宿で待つことになった。
そこには一筋縄では行かない雑多な男女が同宿していた。
何時しか、彼らとの間に心温まる絆が結ばれて・・・
ついに、暗殺決行の日が訪れる。
登場人物が個性たっぷりで生き生きとしています。
まるで映画かドラマを観ているような感じで読めました。
そして、読み終わった後に優しくてほのぼのとする小説でした。
今野敏 著 「特殊防諜班 連続誘拐」を読みました。
宗教団体教祖の奇妙な誘拐事件が相次いで発生した。
教祖たちは無事解放され、一様に何も覚えていない。
だが、雷光教団・東田夢妙斎の事件は違った。
真相を追う「首相の代理人」真田は、陰にある巨大な陰謀と遥か古代から受け継がれた血の伝承を探しあてる・・・。
作者の初期の作品で、特殊防諜班シリーズ1作目です。
古代のユダヤと日本の関係など伝奇とアクションが巧みに融合されたストーリーです。
武道家でもある著者が描く戦闘シーンはリアルで迫力があります。
1986年の作品ですが古さを感じさせないエンターテイメント作品でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
富樫倫太郎 著 「信玄の軍配者」を読みました。
日本最古の大学・足利学校で学問を修めた勘助は、その後、駿河国で囚われの身となったまま齢四十を超え、無為の時を過ごしていた。
預かる軍配もなく、仕えるべき主君にも巡り合えず、焦燥だけがつのる日々…
そんな折、武田信虎による実子・晴信(のちの信玄)暗殺計画に加担させられることになる。
命を賭けた一世一代の大芝居、学友たちとの再会を経て、「あの男」がいよいよ歴史の表舞台へ―。
ともに足利学校で学んだ三人。
風間小太郎(北条早雲の軍師)、山本勘助(武田信玄の軍師)、曽我冬之助(上杉謙信の軍師)
それぞれが如何にして軍配者となったのか・・・。
軍配者シリーズ三部作の第二弾は山本勘助です。
前作「早雲の軍配者」の主人公の風間小太郎が早くして軍配者としての地位を確立したのに比べて、山本勘助こと四郎左は幾多の不運に見舞われて40歳を過ぎても浪人生活を余儀なくされていた。
しかし、武田信虎と知り合った事から軍配者としての道が開けてゆく・・・。
その過程が面白い!
幾つになっても学友として、また生涯の良きライバルとして接する小太郎や冬之助との友情も心に沁みます。
晴れて軍配者として晴信(信玄)と二人三脚で甲斐制圧に乗り出す合戦の場面では、それまでの苦労が無駄ではなかった事を証明するかのような大活躍に思わず喝采!
最後のエピソードにもホロリさせられて・・・。
いや~、第二弾も面白かった!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
「それでも、警官は微笑う」を読みました。
無口で無骨な巡査部長・武本と、話し出すと止まらない、年下の上司・潮崎警部補。
二人は、特殊な密造拳銃の出所の捜査にあたる。
たどり着いたのは5年前のある事件だった。
覚醒剤乱用防止推進員の拳銃自殺。
その背後に潜む巨悪とは?
中国人絡みの銃弾密輸事件を追う2人と刑事
そこに麻薬取締官がからんできて・・・
登場人物のキャラクターがいすれも魅力的です。
無骨者の武本、奔放な潮崎、そして、一途な宮田
なかなかハードな内容ですが、この三人の織り成す展開が絶妙で長編ですが軽いタッチで読み終えました。
第25回メフィスト賞受賞作
この小説の満足度:☆☆☆☆