力と金が全てを支配する街、歌舞伎町。
氷室の勤めるバー『ハイランド』でも中国人マフィアの抗争話が絶えない。
そんなある日、彼の元を一人の男が訪ねてくる。
「入国管理局の第二庁舎に勤務されていましたね?」―
にわかに慌しくなる周囲。
元同僚の死、恋人の襲撃未遂、自宅の火事。
氷室の身に一体何が迫っているのか。
捨てたはずの過去が明らかになるとき、組織との孤独な戦いが始まる。
新宿歌舞伎町はHさんが若かりし頃によく飲みに行った街です。
なので、作中に登場する通りや路地裏などの情景がすぐに思い浮かべられました。
そんな街でバーテンダとして静かに暮らしていた氷室が過去の事件がもとで中国マフィアと対峙する事になる・・・。
不法入国者、アンダーグラウンドマネー・・・
そして、中国格闘技や風水までもが盛り込まれています。
これぞ、ハードボイルドだぜ~!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
世界から猫が消えたなら」を読みました。
僕は生きるために、
消すことを決めた。
今日もし突然、
チョコレートが消えたなら
電話が消えたなら
映画が消えたなら
時計が消えたなら
猫が消えたら
そして
僕が消えたなら
世界はどう変化し、人は何を得て、何を失うのか
30歳郵便配達員。余命あとわずか。
陽気な悪魔が僕の周りにあるものと引き換えに1日の命を与える。
僕と猫と陽気な悪魔の摩訶不思議な7日間がはじまった―――
2013年本屋大賞のノミネートされ30万部を突破し、映画化もされる作品です。
そんなに面白いのかい?・・・と云う事で読んでみました。
で、その感想は・・・
うーん、イマイチ・・・でした。
自分の命を永らえる代償としてこの世にある何かを1つづつ消す・・・
その物が消えた事で初めて価値が判る・・・
凄く当たり前の事を羅列しただけで、まったく新鮮味がなかったですね~。
おまけに消す対象がつまらない!
もっと他に消すべき物が無いのかよ~!と云う感じ。
こういう軟な話は私には合わないな~・・・。
唯一、ストーリーが短かったのが救いでした!
この小説の満足度:☆☆
テッド・Y・フルモト 著 「バンクーバー朝日~日系人野球チームの奇跡~ 」を読みました。
100年前のカナダに、伝説の日系人野球チームがあった。
その名は「バンクーバー朝日」。
過酷な労働と貧困、苛烈な人種差別に苦しむ日系人にとって、彼らは唯一の希望の光だった。
日系人排斥暴動をのりこえて力をつけ、あくまでもフェアープレーを貫きとおす選手たちの情熱は、徐々に白人たちの心も動かしてゆくのだが…。
戦前の日本人の移民先としては思い浮かぶのはハワイやブラジル、そしてアメリカ。
この本によってカナダにも多くの日本人が移住していたことを知りました。
本書はカナダでの過酷な排斥運動、差別にひるまず、日本人だけの野球チームを作り、育て、そしてカナダのトップリーグで優勝するまでを描いています。
とても読みやすい文章で、当時の試合中の様子が鮮明に浮かんできます。
ラフプレーをされても、やりかえさない武士道の精神。
異国の過酷な状況でも日本人としての誇りを失わない姿に感動です!
この小説の満足度:☆☆☆☆
翔る合戦屋」を読みました。
天文19年(1550年)、夏。
武田の信濃への侵攻は、ますます激しくなっていた。
村上、小笠原、遠藤を中心とした信濃勢と武田晴信との戦いの火蓋が、ついにきって落とされる。
真田幸隆、仁科盛明など名だたる豪将がせめぎ合うなか、石堂一徹は、再び天下という夢に向かって動きだす。
「若菜と天下を二つながらに我がものとしてみせようぞ」。
「哄う合戦屋」、「奔る合戦屋」に続く合戦屋シリーズの最終巻です。
本作の前篇に当たる「哄う合戦屋」は、五百名の仁科勢の追撃を石堂一徹が六蔵とたった二人で死を決して立ち向かう場面で終わっていました。
ん~、この終わり方・・・あの名画「明日に向かって撃て」とダブりますね~!
「明日に向かって撃て」の続編はありませんでしたが、本シリーズではいっかりとその続きが書かれています。
何とか窮地を脱した一徹は遠藤家に戻り、再び合戦の地へと向かう!
勇猛かつ智略に長けた一徹の戦いぶりには毎回思わず唸らせられます。
また、戦国時代の武将の生き様といったものもリアルに伝わってきました!
史実に基づき、その中で架空の人物である石堂一徹等をあたかも実在した人物の様に巧みに織り込んで読ませる作者の力量に拍手です!
続々編にも期待です!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
さだまさし 著 「風に立つライオン」を読みました。
1987年、熱い志と明るいエネルギーを持つ日本人医師・航一郎は、恋人を長崎に残し、ケニアの病院に向かった。
劣悪な環境で奮闘する航一郎の前に、激しい銃創を負った少年兵・ンドゥングが現れる。
心を開かないンドゥングだったが、航一郎の熱さ優しさエネルギーを受け、少しずつ変わっていく。
そして、遂に医師を志すことを決意するまでにいたる。
しかし、その後、航一郎に哀しい運命が訪れ――。
2011年3月、医師となったンドゥングは、津波に襲われた石巻を訪れる。
そこで出会った避難所明友館のリーダー・木場に航一郎の面影を見る。
木場と共に被災者に寄り添うンドゥングは、ある日、かつての自分と同じような目をした少年に出逢う……。
アフリカ・ケニアで国際医療活動に従事した、実在の日本人医師をモデルに作られた、さだまさしさんの名曲「風に立つライオン」(1987年)。
この曲に感銘を受けた俳優・大沢たかおさんの熱意に応え、さださん自らがこの同名小説を書き下ろしたそうです。
私はこの歌を聞いた事がなく、この小説を読み終えてから初めて聞きました。
歌の背景を知っているだけに余計に心に響きました。
小説の方はアフリカの僻地医療で奮闘する主人公の医師航一郎の姿を 周囲の人々からのインタビュー形式で語られます。
周囲の人々の話から航一郎の人となりが徐々に明らかになっていきます。
さらにケニアの戦場病院の状況や子どもたちが少年兵になったいきさつなど、その厳しい現実に胸が痛くなります。
人の命だけでなく心まで救うのが「医師」という職業。
まさに、”仁”ですね~!
その”仁”の精神が一人の日本人からケニア人へ、そしてケニア人から逆に日本人へと受け継がれていく過程に感動を覚えました。
遠い異国の地で一人奮闘した医師がいた。
その姿はまるで”風に立つライオン”・・・
”ガンバレ”は相手に言うことではなく、自分を奮い立たせるための言葉。。。
”ガンバレ~!” が心に沁みます!
三池崇史:監督、大沢たかお:主演、映画『風に立つライオン』は3月14日(土)公開です。
この小説の満足度:☆☆☆☆
竜の道」を読みました。
矢端竜一は魑魅魍魎が蠢く裏社会の支配を目論んだ。
手始めに、株の業界紙を発行する新聞社に潜り込み、その乗っ取りに成功する。
億を超える金に群がるクズ共を冷徹に操る竜一は、大物ヤクザ・曽根村の信頼を勝ち取るべく、殺人にまで手を染める。
野心の塊のような竜一の疾走。
それは、双子の弟・竜二と交わしたある約束を果たすためだった…。 (上巻)
矢端竜二は、エリート官僚の世界に飛び込んだ。
兄・竜一との約束―ある大物実業家への復讐―を果たすために。
表と裏から攻めて、あいつを叩き潰す…。
第二、第三の殺しに手を染める竜一、企みを抱いてある女を篭絡する竜二。
金と欲が行き交う修羅の道を鋼の意志で突き進む双子が行き着く先は? (下巻)
この作者の作品を読むのは「天国への階段」、「海は涸いていた」以来、久々です。
前2作も面白かったですが、本作もなかなか面白い!
捨て子であった一卵性双生児の竜一と竜二。
廃品回収業者の義父母に拾われるが日々虐げられ、世間からは蔑みの目で見られていた。
そんな、クソのような人生とオサラバするために嵐の夜、竜一の身代わりを探し出し、養父母と一緒に燃やしてしまう・・・。
やがて、兄は裏社会の力を味方につけ、弟はエリート官僚としてそれぞれ裏・表の世界でのし上がってゆく・・・。
巨大暴力団組長、大物右翼、医療グループ会長、仕手集団・・・
様々な大物、曲者を巻き込み、欺きならが、双頭の竜が野望に向かって修羅の道を突き進む・・・。
ん~、ハードボイルドだぜ~!!
サクサク読めて、次のページをめくるのが楽しみでした。
早く続きが読みたい!
この小説の満足度:☆☆☆☆
桜木 紫乃 著 「硝子の葦」を読みました。
道東・釧路で『ホテルローヤル』を営む幸田喜一郎が事故で意識不明の重体となった。
年の離れた夫を看病する妻・節子の平穏な日常にも亀裂が入り、闇が溢れ出した――。
愛人関係にある澤木と一緒に彼女は、家出した夫の一人娘を探し始めた。
短歌仲間の家庭に潜む秘密、その娘の誘拐事件、長らく夫の愛人だった母の失踪……。
次々と謎が節子を襲う。
作者は2013年「ホテルローヤル」で第149回直木賞されています。
Hさんはこの作者の小説を読むのは本作が初めてです。
女性特有のどろどろした情愛をサラリとしたタッチで書き上げています。
北海道出身なので舞台となっている道東・厚岸や釧路の情景も目に浮かびました。
しかし、登場人物にあまり魅力が感じられず、最後までのめり込み度はイマイチでした。
この小説の満足度:☆☆☆
佐々木 譲 著 「婢伝五稜郭」を読みました。
明治二年、箱館戦争は榎本軍の敗北で幕を閉じようとしていた。
聡明な若き看護婦の朝倉志乃は、思いを寄せる青年医師を官軍に虐殺される。
この日から、志乃の過酷な戦いが始まった・・・。
「五稜郭残党伝」、「北辰群盗録」に続く「五稜郭」三部作の完結編です。
幕末から明治へと移り変わろうとする大変革の時代に、官軍と旧幕府軍による戦いの最終舞台となった箱館五稜郭。
榎本武揚率いる旧幕府軍が降伏したのちも北の大地で「共和国建設」の夢を追って戦う残党たち・・・
前2作はそんな夢を追いかけた男たちを描いていましたが、本作の主人公は女性です。
五稜郭陥落時、傷病兵や介護する医師までを惨殺した官軍に対し、その理不尽さに生き延びた看護婦が復讐鬼と化す!
NHK大河ドラマの「八重の桜」に似ていますが、こちらはもっと生生しい・・・。
医療現場で得た知識を用いてヒロインが殺しのメスをふるうさまは、まるで必殺仕事人!
さらに、ヒロインを陰で支えるドイツ人農園主やアイヌ青年など脇役も個性豊かでいいですね~!
榎本武揚がどのような共和国を目指していたのかと云う歴史的事実も興味深く描かれていて読む手が止まりませんでした。
この小説の満足度:☆☆☆☆☆
「約束の森」を読みました。
警視庁公安部の刑事だった奥野侑也は、殺人事件で妻を亡くし退職を決めた。
孤独に暮らしていた侑也に、かつての上司を通じて潜入捜査の依頼が入る。
北の果てに建うモウテルの管理人を務め、見知らぬ人物と暮らしながら疑似家族を演じろという。
侑也が現地に赴くと、そこにいたのは若い男女と傷ついた1匹の番犬だった。
やがて闇に隠れた謎の組織の存在と警察当局の狙いが明らかになり、侑也は眠っていた牙を再び甦らせる―。
沢木作品は「償いの椅子」に続いて2作目です。
それぞれに孤独な生活をしていた3人がある作戦のために集められ疑似家族を演じる事になる。
そこには虐待されていたドーベルマンが1匹いた。
やがて3人と1匹は絆を深かめて行くが、そこに謎の組織の手が迫る・・・。
前半は家族を演じながら徐々に絆が深まる過程がじっくり描かれています。
そして、後半は一気にヒートアップ!
クライマックスに近づいてからのアクションシーンはドキドキハラハラです!
面白かったけど、前半が少し長すぎたかな~!
この小説の満足度:☆☆☆☆
「昨夜のカレー、明日のパン」を読みました。
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。
七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。
結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。
本屋大賞2位に選ばれ、NHKでもドラマ化された作品と云う事で読んでみました。
その感想は・・・
確かに、ゆるゆるですね~!
若いして夫を亡くし、義父と一緒に暮らしている主人公徹子。
徹子の恋人の岩井、そして義父。
この3人の暮らしぶりがゆったりと描かれています。
何てない、ある家族のおはなし・・・。
それ程心に響くものも感じられずにするすると読み終わりました。
ほのぼのとし過ぎていて、ちょっとリアル感に乏しいな~!
現実はもっと厳しいんじゃない?
この小説の満足度:☆☆☆