紀州新聞 THE KISYU SIMBUN ONLINE

和歌山県の御坊市と日高郡をカバーする地方紙「紀州新聞」のウェブサイトです。主要記事、バックナンバーなどを紹介。

日高川町 真冬に映える紀州備長炭の炎 生産量日本一も原木確保が課題 〈2020年1月31日〉

2020年01月31日 08時30分00秒 | 記事

谷久保さんの炭窯から出される真っ赤に燃えさかった紀州備長炭(29日)


 今年は暖冬傾向が続いているが、冬の山里は朝夕の冷え込みが厳しい。紀州備長炭の生産量日本一を誇る日高川町の山間部では、気温の下がるこの時期に仕上がる高品質な炭を目指して、川辺、中津地区などを中心に町内に点在する約40基の炭窯から煙があがる。「窯だし」と言われる作業で窯から取り出された真っ赤に熱された紀州備長炭の炎が真冬に映える。将来的な大きな課題は原木となるウバメガシの減少だという。

 株井トンネルを抜け、日高川沿いから北に山道を進むと広がる三十井川地区。澄み切った川の畔にある谷久保浩二さん(46)の炭窯では29日、4人の職人が「エブリ」と呼ばれる道具で、約1000度に上がった窯から真っ赤な備長炭を取り出す「窯だし」が続いた。「夏は暑さで本当に大変だが、ウナギなどの需要が多い夏場は炭の需要も高い。原木は生ものと同じで冬場の方が新鮮で質の良い備長炭が出来る」という。
 一時は、国内の技術を用いた高品質の中国産備長炭
が生産され、3分の1ほどの安価で流通して国内産が売れない時期もあったが、中国からの輸出がストップ。価格は20数年前に比べて1・5倍に上昇し、最近は製炭者を志す県内外の若者が増えて後継者問題は和らいだ。約25年製炭を続ける谷久保さんは、2年前に製炭業を法人化して株式会社紀(はじめ)を発足。同町高津尾の丸山裕太さん(26)、兵庫県出身の中尾直樹さん(38)、長畑成敏さん(50)が加わり、谷久保さんと製炭に励む。焼き鳥店経営の経験を持つ中尾さんは「他の炭を使ったが、紀州備長炭に優る炭はなかった。いつか製炭したいと思っていた」と話す。
 丸山さんが「紀州備長炭生産日本一の町を次世代に受け継ぎたい。そのためにも原木のことを考えないといけない」と話すように、紀州備長炭の生産を取り巻く最大の課題は原木となるウバメガシの不足。一度伐採すると、苗を植えても十分な大きさに育つまで40~50年はかかると言われ、町外からの原木を調達することが多くなり、谷久保さんも「原木確保は本当に大きな課題」と話すが、製炭業を法人化することで、細い原木を残したり、木のサイクルを考えた伐採で原木の問題に向き合っている。
 県内の備長炭生産量は1179トン(平成28年)で、高知県(土佐備長炭1186キロ)に僅差で続く全国2位。紀州備長炭としては1位で、町村合併以前は、旧南部川村が県下トップで、旧中津村が2位だったが、合併後に日高川町が1位となり、県生産量の約4割を同町産が占める紀州備長炭生産量日本一の町に。町内で約50人が従事している。


 その他の主なニュース

和佐小(日高川町)1、2年生がお年寄りとお手玉や竹とんぼなどの昔遊び体験

 和田小(美浜町)4年生が松を学び植樹

学童野球日高選抜Jrスターズが阪神ボーイズ杯で3位入賞

こじか園(美浜町) 新園舎上棟を祝い餅まき