朝早く書斎を片付けていたら、椅子がぶつかって壁が剥がれ、そこから推古朝頃かと思われる古い巻物が出てきました。巻頭に「日記」と記され、その下に「此是聖徳太子詩集非会議本(此は是れ聖徳太子の詩集にして会議の本に非ず)」と記されていました。本文とは少し字体が違うようです。
その本文を読んでみたところ、詩の形を用いた男女のやりとりであって、「聖徳」という男性と、「太子」という愛称で呼ばれている「多至波奈太郎女」という女性の交換日記でした。「多至波奈太女郎」は「たちばなのふといらつめ」、「太子」は「ふとこ」と訓むんでしょう。「ふとこ」さんは、時々、署名の下に朱筆でハートマークを記していました。可愛いですね。
壁の中から古文書が出てくる例は、中国ではお馴染みであるものの、我が家は古い土蔵が残っている奈良の旧家などではなく、築15年になる千葉の中古マンションです。推古朝頃の文書がコンクリートの壁に塗り込まれているはずはないのですが、これこそが奇跡というものなのでしょう。
「ふとこ」さんは、聖徳様ご自慢の黒駒に二人で乗って玉虫の羽を集めに行ったのが楽しい思い出だと記しており、また、四天王寺の門前の屋台で食べた「菟道貝鮹炒」は、ソースがおいしかったものの、青海苔が歯について笑われたのが恥ずかしい、と書いています。「たこ焼き海鮮版」みたいなものでしょうか。
なお、聖徳さんはクリスマスの日に厩で生まれたのに、小さい頃は乗馬の練習が嫌いで、いつも「馬、やだよー!」と泣いていたため、「馬やだ王」と呼ばれていたそうです。
このほか興味深い記述満載でした。今日は忙しいため、後日、詳しくご紹介したいのですが、空気に触れたためか、急激に風化が進んで黒ずみつつありますので、この交換日記が読めるのは、つまり賞味期限は今日のうちだけかもしれません。
*なお、この記事は4月1日(エイプリルフール)限定の記事であることを申し添えます。
【2020年9月10日:追記】
「此是聖徳太子詩集非会議本」というのは、『法華義疏』冒頭の「此是上宮王私集非海彼本(此れは是れ上宮王の私集にして海彼の本に非ず=これは上宮王が個人的に編纂されたものであり、海外の種本ではない)」という文をもじったものです。