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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第2回)

2023-11-01 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

一 汎西方アジア‐インド洋域圏

汎西方アジア‐インド洋域圏は現在時点の国際地理区分における「西アジア」より広汎で、中東及び中央アジアから南アジア、さらに現在時点の国際地理区分ではアフリカに包含されるマダガスカルなどインド洋上に広がる島嶼までを包摂する汎域圏である。現在の主権国家体制下では、中東や南アジアで多くの宗教対立、民族紛争、内戦やテロリズムが吹き荒れる地球上で最も不穏な「火薬庫」の圏域であるが、世界共同体の創設によって平和が確立される。汎域圏全体の政治代表都市は湾岸アラビア領域圏のアブダビに置かれる。なお、南部及び北部の両レバントは歴史的にも特に紛争集中地帯であったため、世界共同体平和理事会の下部機関たる中立的な常設仲裁機関として、レバント高等評議会が設置される。

包摂領域圏:
南部レバント合同、北部レバント、多民族クルディスタン、イラク中央アラビア、湾岸アラビアイエメン合同、環インド洋合同スリランカ、バングラデシュ環ヒマラヤ合同、パキンディアアフガニスタン、イラントルコ、アゼルバイジャン、中央アジア合同

 

(1)南部レバント合同

(ア)成立経緯
現在のイスラエル及びパレスティナ自治区に、多数のパレスティナ難民人口を擁するヨルダンを加えた領域が統合されたうえ、イスラエル民族自治体とパレスティナ・アラブ民族自治体が合同して成立する特殊な合同領域圏。エルサレム及びゴラン高原は世界共同体の直轄圏に移行したうえ、上掲レバント高等評議会の仲裁的管理下に置かれる。なお、レバントは東部地中海沿岸地方の歴史的な名称に由来する(後掲北部レバントも同様)。

(イ)構成主体
上述のような特殊な経緯のため、構成領域圏ではなく、二つの構成主体から成る。

○イスラエル民族自治体
イスラエル人によって構成される自治体。ユダヤ教徒が大半だが、ユダヤ教徒でなくとも、イスラエル人を自認する者は広く包摂される。

○パレスティナ・アラブ民族自治体
アラブ人を自認する者によって構成される自治体。旧パレスティナ自治区民と旧ヨルダンのアラブ系住民が包摂される。

(ウ)社会経済状況
主権国家時代のイスラエルの科学技術力は継承され、中東でも最も先端的な科学技術経済が存在する。

(エ)政治制度
二つの民族自治体はそれぞれ独自の民衆会議を通じて、固有の政策及び法体系を擁する。合同全体の共通政策については、両民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会が決する。協議会で調整できない場合は、前出レバント高等評議会に持ち込み、裁定される。領域圏内の地方自治体についても、二つの民族自治体ごとに別々の民衆会議が併設され、共通政策は両者の協議会で調整する。イスラエル人でもアラブ人でもない住民または両者の混血系住民は、いずれの民族自治体に登録するかを任意に選択できる。合同共通の政治代表都市はアンマンに置かれ、両民族自治体民衆会議も併設される。合同公用語はエスペラント語。

(オ)特記
世界共同体は君主制を容認しないため、旧ヨルダンの王制は廃され、王家であったハーシム家はイスラーム第二の聖地メディナの儀礼的な首長を世襲する特殊な公民となる。

☆別の可能性
確率は高いと言えないが、より高度な理想形態として、二つの民族自治体構成によらない完全な統合領域圏となる可能性もなくはない。また、ヨルダンは合同せず、独自の領域圏として分立する可能性もある。

 

(2)北部レバント

(ア)成立経緯
主権国家のレバノンとシリアが統合されて成立する統合領域圏。イスラエル占領下にあったゴラン高原も、占領終了に伴い、領域に編入される。一方、旧シリア北部のクルド人地域ロジャヴァは分立し、クルディスタン領域圏に移行・編入される。

(イ)社会経済状況
世界革命前は、レバノンとシリアいずれも内戦や宗教紛争により疲弊し、社会経済は崩壊状態にあったが、統合後は環境持続的な計画経済が全土的に導入され、中東では最も成功した計画経済モデルの一つとなる。

(ウ)政治制度
統合領域圏のため、一元的な民衆会議によって統治される。旧レバノン地域では依然として多宗教が混在するが、党派政治によらない民衆会議制度では、宗派別の政治参加はそもそもできない。政治代表都市はベイルート。

(エ)特記
主権国家時代にはレバノンがシリアの事実上の属国と化していた時期もあるが、元来は「歴史的シリア」に包摂される一体的な領域であることから、世界共同体のもとで完全に対等な統合が実現する。

☆別の可能性
より望ましくない可能性として、レバノンとシリアが完全に統合されず、レバノン領域圏とシリア領域圏から成る合同領域圏として成立する可能性もある。一方、確率は高くないが、そもそも南北両レバントが分立せず、全体としてレバント合同領域圏となる可能性もある。(その場合、エルサレムやゴラン高原の係争地は、合同領域圏の共同管轄とする余地がある。)

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