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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第4回)

2023-11-15 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

一 汎西方アジア‐インド洋域圏

(5)中央アラビア

(ア)成立経緯
君主国のサウジアラビアとクウェート、バーレーン、カタールが統合され結成される統合領域圏。いずれの君主制も廃止される。ただし、旧サウジ領内にあったイスラーム教聖地メッカは世界共同体との条約に基づき独立宗教自治市として分立したうえ、旧王家のサウード家が世襲の総督として統治することが認められる。

(イ)社会経済状況
統合される旧四か国は主権国家時代には中東の中心的な産油国として繁栄したが、石油資源の管理が世界共同体に移行し、産業構造の転換を強いられたことで、統合の機運が生じる。計画経済下で、特に工場栽培を含めた農業開発が進行しているほか、自動車生産などの新規分野にも注力する。革命後は人口の大きな部分を構成した外国人労働者が去るため、外国人依存の労働構造が消滅することも旧四か国統合の動因となる。

(ウ)政治制度
四か国の完全な統合によって成立するため、統一的な民衆会議制度が導入される。かつては厳しく制約された女性の参政権も完全に認められる。イスラーム伝統のシャリーア法による司法は否定されないが、民事分野の一部に限定される。クウェート、カタールの首長家、バーレーンの王家は儀礼的称号のみ残して一般公民化される。

(エ)特記
人口の相当数を占めていた在留外国人労働者は領域民として統合されるか、帰還するかの選択権を与えられる。

☆別の可能性
専制君主体制に対する国民の不満や怨嗟が蓄積しているとすれば、旧四君主国、中でもサウジアラビアでの革命は君主の処刑に象徴される流血の革命となる可能性もなしとしない。逆に、専制君主体制が強固な自己保存性を持つならば、革命は不発に終わり、革命化未成領域として残存する可能性もある。他方、旧主権国家のクウェート、バーレーン、カタールが高度な自治権を保持する準領域圏となる複合領域圏として統合される可能性もある。

 

(6)湾岸アラビア

(ア)成立経緯
アラビア半島の旧湾岸君主制諸国のうち、アラブ首長国連邦(UAE)とオマーンが統合して成立する連合領域圏。いずれにおいても君主制は廃止される。

(イ)社会経済状況
石油依存の経済体制を脱し、経済計画に基づく多角的な産業構造への転換を志向する点で、中央アラビアと共通する。中央アラビアとは経済協力協定を締結し、共通経済圏を構成する。ここでも革命後は人口の大きな部分を構成した外国人労働者が去るため、外国人依存の労働構造が消滅することもオマーンを含めた連合形成の動因となる。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、旧アラブ首長国連邦を構成した7つの構成主体にオマーンを加えた8個の準領域圏を代表する代議員で構成される。中央アラビア同様、女性参政権が完全に認められる。アブダビは、汎西方アジア‐インド洋域圏全体の政治代表都市ともなる。かつて各国に存在した首長家または王家はいずれも儀礼的な称号のみ残して一般公民化される。

(エ)特記
中央アラビアと同様、湾岸アラビアを特徴づける人口の相当数を占めていた在留外国人労働者は領域民として統合されるか、帰還するかの選択権を与えられる。

☆別の可能性
連合領域圏ではなく、中央アラビアと同様に統合領域圏を形成する可能性もある。または、統合領域圏となる旧UAEとオマーンとで合同領域圏を形成する可能性もある。一方で、旧君主国の一部または全部で革命が不発に終わり、革命化未成領域として残存する可能性もなしとしない。

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