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比較:影の警察国家(連載第49回)

2021-10-17 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

1‐0:州警察機構の共通要素

 前回概観したとおり、ドイツ警察の構造は連邦‐州‐自治体の三層から成るが、連邦レベルの警察組織は同じく連邦国家であるアメリカに比べても簡素に構制されており、現在でもアメリカのように連邦警察相当機関が複雑に林立するような状況にない。
 そのため、基本的警察業務の大半は各州(及び州級都市[都市州]:以下、都市州を含めて「州」という)の警察機構に委ねられる。こうした広い意味での州警察機構はすべて各州内務大臣の監督下に活動する点で、規格統一されている。
 すなわち、ドイツにおける広義の州警察機構は、州内務省を拠点に、州警察(Landespolizei:LaPo)・州刑事庁(Landeskriminalamt:LKA)・州憲法擁護庁/局(Landesbehörde für Verfassungsschutz)を基本的な共通コンポーネントとして成り立っている。その中核を成すのは、言うまでもなく州警察である。
 州警察の組織構造は各州で異なるが、制服部門として地域警邏を担う保安警察(Schutzpolizei:SchuPo)及び警備活動を担う機動警察(Bereitschaftspolizei:BePo)、私服部門として犯罪捜査を担う刑事警察(Kriminalpolizei:KriPo)を三大基軸としつつ、警察としての全機能を備えた自己完結的な警察組織である点でも、全州共通である。
 これに対し、州刑事庁は、組織犯罪やテロリズム、経済犯罪等の重大犯罪の捜査を担う犯罪捜査特化型機関として、州警察の刑事部(KriPo)を補完する役割を持つ。
 また、州憲法擁護庁/局は基本的に諜報機関であるが、機能的に公安警察の役割を果たす。これは連邦レベルにおける連邦憲法擁護庁に相応する州機関であるが、連邦の出先機関ではなく、独自の憲法を擁する各州の憲法秩序の擁護を担う。

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