ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

近代革命の社会力学(連載第1回)

2019-07-29 | 〆近代革命の社会力学

序説

 近代は世界各地で様々な革命が継起し、社会が変革される中で作り出されていった時代であり、そうした近代における革命を「近代革命」と総称することができる。現代まで包括された広い意味での近代とは、大小様々な近代革命の継起を通じて形成されてきたと言うこともできる。  
 それら個々の近代革命の事の起こりやそれぞれが帯びていたイデオロギー、その後の方向性は様々であるが、そうした相違はさておき、個々の近代革命が成功し、あるいは失敗した要因を社会力学的に探求することが、本連載の目的である。  
 ところで、本連載が対象とする革命の範囲には、拡張と限定がある。拡張としては、通説的な時代区分では「近代」に属しない「近世」の革命―例えば、英国清教徒革命―も、対象に含めることである。元来、「近世」は英語でearly modernと呼ばれるように、近代の始まりでもあるからである。
 他方、同時代に近い過去十数年以内の「現代」に発生した革命も拡張された考察対象に含める。その点、例えば、英語のmodernは、日本語にいう「近代」と「現代」双方を包括した概念(近現代)であるように、「近代」と「現代」とは抱合的関係にあって、厳密に区別する意味はさしてないからである。
 次に限定としては、世上「革命」と通称されていても、その革新性に対する比喩的名辞にすぎない事象―例えば、「産業革命」―は本連載の対象ではない。  
 同様に、「革命」と公称されていても、単に権力の所在が強制的に移動するだけのクーデターも対象外である。言葉の真の意味での革命とは、単なる権力の移動ではなく、支配的な社会経済構造そのものの下克上的な変革を伴うものだからである。  
 他方、革命的ではあるも、その実態が民族的独立運動であるものも除外する。ただし、独立運動であると同時に、近代革命としての歴史的意義を持つような事象―例えば、アメリカ(合衆国)独立革命―は、社会力学的な探求対象に含めるに値する。  
 ここに社会力学とは、アカデミズムの領域で「集団力学」と呼ばれるものに近いかもしれない。集団力学とは、簡単に言えば、人間の集団行動のダイナミズムを研究する行動科学のことであるが、集団行動といっても、個々人の行動の集積には還元できないような凝集的な集団行動のダイナミズムに焦点を当てるものである。  
 その点、革命という事象は多数の人が社会経済的な既成構造を変革するために決起する一つの集団行動ではあるが、それが成功するに当たっては個々人の総力を超えたより大きな集団的力が凝集されなければならない。そうでなければ、少数グループの単なる反乱行動に終わってしまうだろう。  
 そうした意味で、革命という事象は、集団力学的な探求に適した事象であると言える。ただ、本連載では学術的な意味での集団力学を越えて、革命を惹起させた社会経済的な構造にも視野を広げて探求する。
 というのも、革命という事象は人間が社会経済的な既成構造を変革するために決起する集団行動であるからには、変革を待つ社会経済構造が所与されていなければならないからである。そのように、集団のダイナミズムと社会経済的なダイナミズムを総合するゆえに、「社会力学」なのである。   

コメント