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英国「二大半」政党政へ

2015-05-09 | 時評

2015年の英国総選挙は、英国史にとって大きな画期点とみなされるだろう。すでに日本のメディアも大きく伝えているように、この選挙で、北部スコットランドの地域政党スコットランド民族党(以下、「スコット党」と略す)が大きく躍進し、第三党に座ったからである。

昨年の住民投票では否決されたとはいえ、独立論がなおくすぶる中、元来は完全な独立王国だったスコットランドを代表する政党が国会で第三政党の座を確保したことは、ある意味で自然なことである。

スコット党の勝因は、初めから人為的に割り当てられた配分議席のおかげもあるが、それを地盤のスコットランドで活用し切ったことにある。歴史的には、貧しい労働者階級の貯水池であったスコットランド地方は労働党発祥地とも言い得る強力な支持基盤であったが、今回、スコット党は労働党の地盤を切り崩したのだった。

反面、労働党は最大地盤で惨敗したことで、20を越える議席減となり、さらに後退した。全体としては「惨敗」と呼ぶほどの打撃ではないが、今回の敗北の意味は同党にとって大きい。なぜなら地域政党として根を張るスコット党が今後の国政選挙で大敗する可能性は乏しく、労働党のスコットランド地盤は半永久的に失われたに等しいからである。

となると、労働党は今回議席を堅実に上積みし、単独過半数に達した保守党が将来惨敗する事態にならない限り、半永久的に政権与党に復帰できないことになる。それ以外に政権復帰の可能性が開けるのは、今般総選挙では共闘を避けたスコット党と共闘して勝利し、連立を組む場合だけである。

スコット党は他国にありがちな民族政党とは異なり、イデオロギー的には中道左派で、労働党の路線とも近い関係にあり、本来は共闘・連立可能な関係にある。ところが、労働党はスコット党と組めば、スコットランド独立に傾くと保守党に宣伝されることを恐れ、共闘を回避したことで、自ら墓穴を掘る結果となった。

労働党にとっては万年野党か、それともスコット党との共闘かを選択する歴史的な岐路に立たされたことになる。同時に、英国にとっても100年続いた保守・労働の二大政党政が転換点に立っている。

純粋小選挙区制の古典モデルを固守する英国では、完全な多党政は実現しにくいが、スコット党は今後、党是どおりにスコットランドが独立しない限り、英国会での第三党の地位を長期にわたって確立し、スコットランドの重みからしても、同党は議席数を超えた発言力を持つ可能性が高い。

となると、今後の英国政治は三大政党政とまではいかなくとも、保守・労働の二大政党に、スコットを半分加えた「二大半」政党政のような構成に変化するのではないかと予測される。

とはいえ、20世紀初頭までの古典期二大政党政の一翼を担った自由党の流れを汲む自由民主党は今回惨敗し、ほぼ没落したうえ、自由党を押しのけて今世紀まで二大政党の一翼を担ってきた労働党も「没落」とは言わないまでも、万年野党モードに入ると、今後の英国政治は再び長い保守党トーリーの支配に逆戻りするかもしれない。

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