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中国憲法評解(連載最終回)

2015-05-01 | 〆中国憲法評解

第四章 国旗、国歌、国章、首都

 最終章の第四章は、表題のとおり、国旗・国歌等の国家儀礼に関わる規定の集成である。こうした集成規定が置かれるのも、旧ソ連憲法と同様である。なお、国旗や国章にあしらわれる五星とは、共産党の指導を象徴する大星に、各々労働者、農民、小資産階級、愛国的資本家を象徴する四個の小星が伴われるという政治理念を表現しているという。
 ただし、これは建国時の階級横断的な連合独裁論に沿っており、その後のプロレタリアート独裁の理念とはややずれているが、社会主義市場経済の進展により、共産党支配下で新たに「社会主義有産階級・資本家階級」が誕生してきていることからすると、再びリアリティーを持ちつつあるのかもしれない。
 ちなみに、中国憲法では日本国憲法をはじめ諸国の憲法にしばしば見られる憲法改正に特化した章は置かれておらず、改正手続条項は、第三章第一節に挿入されている。

第一三六条

1 中華人民共和国の国旗は、五星紅旗である。

2 中華人民共和国の国歌は、義勇軍行進曲である。

第一三七条

中華人民共和国の国章は、その中央が五星に照り映える天安門で、周囲は穀物の穂と歯車である。

第一三八条

中華人民共和国の首都は北京である。


※初回でもお断りしたように、本連載の条文訳は個人運営の中国情報サイト『恋する中国』に掲載されている訳を意味内容が変化しない限度で一部変更のうえ、引用させていただいたものである。この点、筆者が調べた限り、国会図書館を含めた日本の公的機関による公式的な中国憲法訳は出されていないようである。重要な近隣諸国の憲法を知ることはその国の理解の窓口となることからしても、これは一つの公的な懈怠と言うべきである。

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