黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『朱龍哭く 弁天観音よろず始末記』西條奈加(講談社)

2012-04-13 | 読了本(小説、エッセイ等)
高砂弁天と異名を取るお蝶は、長唄の師匠。
南町奉行所与力であった榊安右衛門が、本妻が早くに亡くなった後、深川で芸者をしていたおきさとの間にもうけた娘だが、八丁堀に身を寄せることを良しとしなかった母の元で育った。
三月半前に、隠居していた安右衛門が卒中で亡くなってからというもの、彼女を溺愛する異母兄で、南町奉行所の当番与力・安之は、一人残されたお蝶を案じ、組屋敷へ同居をしないかと再三誘い続けていた。
そんな安之の妻で、武家の子女でおっとりとした物腰の沙十が、老僕の作蔵を連れて、お蝶の元にやってきた。役目柄何かと雑事が持ち込まれるという榊家に、ある相談事が舞い込んだという。
それはお蝶の弟子でもある、日本橋通町瀬戸物問屋伊藤屋の娘・お久実のこと。陣兵衛長屋の達造という遊び人の男に入れあげているのだという……“はなれ相生”、
柏手長屋から八丁堀の組屋敷に移ったお蝶。出かける時に戸山陣内という若党を供につけられるが、堅苦しい彼の性格に苛立つ日々。
そんな中、榊家に再び厄介事が持ち込まれた。牛込御納戸町にある水天長屋の、書物屋の谷田屋を含む、表に立ち並ぶ四軒が、いたずらの被害に遭っているのだが、それは幽霊の仕業らしいという噂。
その長屋の近くには、水伯の井と呼ばれる井戸があると長屋の子供から教えられたお蝶たち。長い間枯れ井戸であったが、三月前の地震を機に復活し、名水が湧くようになっていた。
そんな中、お蝶が不逞の輩に襲われ、父から預かったものをよこせと言われるが……“水伯の井戸”、
陣内が榊家に来て、ひと月たった頃。菱垣廻船問屋鳴海屋の手代がやってきた。若旦那がお蝶に長唄を教わりたいといっているらしい。だが歌舞伎者のようなぞろりとした格好で町をうろついていると噂の人物で、ただでさえ男弟子を取るのに反対な安之は、けんもほろろに却下する。
翌日。神田通新石町の筆墨硯問屋の相華堂の主と、その娘・お琴が相談にやってきた。お琴の許嫁が五日前にお縄になったという。
許嫁は、浅草諏訪町の袋物問屋遠州屋の長男で覚之介。障害もなくとんとん拍子に話はすすみ、近々結納を交わす運びになってたのだが、同じ町内の杉田屋という袋物問屋のお小枝という九歳の娘に、よからぬ悪戯をしたというのだ。遠州屋の身代を狙っている杉田屋の差し金ではないかと考えるお琴たち。お蝶と沙十、陣内は、お小枝に話を聞きに行くことに。
その帰り道、ふたたび襲われたお蝶たち。そこへ現われ、賊の気を逸らす助けになったのは、件の鳴海屋の若旦那・四十次郎だった…“手折れ若紫”、
四十次郎は、通いでお蝶の稽古を許されるようになった。陣内は、祖父が流行の風邪で身罷ったことから家の手伝いに戻ってしまい、代わりをお蝶の幼馴染の枡職人・千吉と破戒僧・雉坊に頼んでいった。だが、千吉も寝込んでしまい、この日の供は雉坊のみ。
そんな中、相模の干鰯商人だという紀津屋京兵衛が訪ねてきた。安右衛門とは碁仲間だったのだが、先頃ようやく彼が亡くなったのを聞いたのだという。
彼と父の話をしたお蝶は、隠居屋敷として使っていた家を訪ねてみることに。近所に住む者の話では、二度も泥棒に入られているらしい。翌朝、ふたたびそこを訪れたお蝶は、そこで年老いた夜鷹・お綱と出会う。たびたび安右衛門の世話になっていたという彼女は、安右衛門が亡くなった日もここにきていたという……“一斤染”、
金物問屋旭屋のおかみから、尾張徳川家の者から誘われて剣術をはじめた主人・房五郎が、何かしでかしそうな気配だという。折りしも火薬の元である硝石も扱っている旭屋では、山賊に襲われて輸送中の硝石が奪われる事件がおこっていた。
房五郎が通っている道場は、新陰流的場道場。そこはかつて父が入門しており、その縁で千吉も通っていた道場だった。その千吉は、相模の王龍寺に行くと言い残して姿を消して……“龍の世直し”、
皆が自分に黙って姿を消してしまい不機嫌なお蝶は、四十次郎への稽古にも身が入らない。
そんな彼女に、自分の過去を語る四十次郎。生家は三百五十石の旗本の家だったが、次男で冷や飯食いの身の上。道場破りをして荒れていた頃、鳴海屋勘兵衛に拾われ、養子になったのだという。そんな彼が打ちのめされたのが的場道場で、どうやら父の死に関わりのある人物であるらしい男は、その門人・尾賀一馬であると知る。道場に乗り込もうとするお蝶を止めた四十次郎は、自分が彼女の味方であるといい、その証拠を見せるという。
実は、たびたびお蝶を襲っていた者たちが狙っていた品は、安右衛門が持っていた幕府転覆を企む王龍党による、世直し連判状。死の直前、それを託されたのは、紀津屋だった。そこには意外な人物たちの名が記されていて……“朱龍の絆”、
かどわかされた弟子たちを取り戻すため、出向いたお蝶。そこには陣内も捕らえられていた。何故無茶をしたのかと問うお蝶に、竹馬の友であった者が的場道場にいるのをみたからだという。彼のいう人物とは尾賀だった。
さらに南町奉行・岩淵の娘・矢緒も捕らえられており……“暁の鐘”の7編収録の連作短編。

長唄の師匠をしている、ちゃきちゃきした江戸っ子気質のお蝶と、彼女の義姉(兄の妻)でおっとり美人で薙刀の使い手でもある沙十(さと)。彼女たちが持ち込まれた事件を解決するお話…かと思いきや、次第にお蝶の父の死の真相が明らかとなり、どうやら怪しげな企てをしているものがいて、お蝶の周囲の者たちの誰が敵か味方かわからない…という展開になって、ハラハラドキドキでした。
サブタイトルもついているし、続刊もあるのかな?

<12/4/12,13>


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