反骨精神をモットーとする香月玄太郎は、不動産会社・香月地所を興し、一代で成功を収めた社長。
脳梗塞が原因で下半身が不自由となり、要介護認定を受けている車椅子の老人だが、頭の回転が早く、口が達者で、皆をやりこめている。
ある日、彼の所有する土地で死体が発見された。被害者は建築士の烏森で、部屋は密室。
その事件の所為で、決まりかけていた契約が保留になり、商売に影響が出始めたことから、介護士の綴喜みち子を巻き込んで、犯人捜しに乗り出すが……“要介護探偵の冒険”、
脳梗塞で倒れた玄太郎は、一命は取りとめたものの、喋ることもままならず、意志の疎通もはかれない状態。そんな玄太郎の介護を務めるべく雇われたみち子は、彼のリハビリの為、名古屋ケア老健センターに付き添うことに。
戦艦模型好きなところに着目し、それをリハビリに生かすことに成功。めざましい回復を遂げる。
そんなセンター内で、懸命に歩く姿が玄太郎同様、周囲の注目をあびていた老人・領家壮平と、それを応援する息子たち。そんな壮平から、玄太郎はあるメッセージを読み取り……“要介護探偵の生還”、
同じ町内に暮らす、玄太郎の旧知の仲である老婦人・神楽坂美代が、このところ頻発している老人ばかりを狙う連続通り魔に襲われ、怪我をした。市の職員や警察の言動に業を煮やし、町内会長として探索に乗り出す玄太郎。
だがその後、最高齢の90歳で最近痴呆気味の行動をし、周囲に迷惑をかけていた佐分利亮助も襲われた。
玄太郎は、地域のゆとりな運動会で、賞金をかけた車椅子競争を企画、犯人を燻りだす作戦に出る……“要介護探偵の快走(チェイス)”、
ATMで金を引き出すべく、みち子と共に、あおい銀行栄支店にやってきた玄太郎。
ところがその日は計画停電が実施されるということで、通常よりも早い時間に銀行を閉めるという。文句をいっている間に時間になり、そこへ四人組の銀行強盗が現れ、人質にされてしまった玄太郎たち。
どうやら彼らの狙いは現金ではなく、地下金庫にしまわれているものにあるようで……“要介護探偵と四つの署名”、
玄太郎と長年犬猿の仲だった、国会議員の金丸公望が、自宅で青酸カリにより毒殺された。
しかし、何も口にしていない彼を如何にして毒殺できたのか。クラシックレコードのマニアであった金丸の趣味が何か関わっているのではと、音楽に疎い玄太郎は、最近、マンション入居の面接に来た、ピアノ講師の岬洋介に手伝ってもらうことに……“要介護探偵最後の挨拶”の5編収録の連作短編。
『さよならドビュッシー』に登場したおじいさん・玄太郎が探偵役をつとめる連作ミステリ。
要介護の身ながら、そんなことを物ともしない、なかなか痛快な性格でスカッとする言動が楽しく読めるお話……だったのですが、『最後の挨拶』の後にあの事件が起きたのだと思うと切ない;;
<12/1/14,15>