黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『黒十字サナトリウム』中里友香(徳間書店)

2009-03-04 | 読了本(小説、エッセイ等)
ある朝、目が覚めて自分が狂っていることに気づいた梶原章吾教授は、唯一その事実を知る、友人であり主治医である飯塚を殺害した後、自殺する為北へと向かった。教授の目的地は、日露戦争の折、負傷した場所<霧の原野>だった。枯野を彷徨いながら、犬神筋の家に生まれた自らの境遇を振り返る教授。そして、そんな彼が辿りついたのは、<黒十字療養所>。……“一.梶原教授は目が覚めて自分が狂っていると気がついた”、
結核患者である凪雲龍司は、幼なじみで、父の旧友の子息・寄近湊が夢遊症状で彷徨い出たのを探すうち、難破船を発見する。
そんな中、その船に自分の荷物を積んでいたというエリーナ・ティシュコフ伯爵夫人と知り合うが、やがて湊が失踪……“二.凪雲龍司は胸苦しさに慣れていたが今度ばかりはいつもと違った”、
寄宿学校に通うミシィカの元に、双子の妹・レイナの危篤を知らせる電報が届いた。
両親は離婚、病弱ゆえに母に大事にされていると思っていたレイナ。
一刻も早く帰郷しようとする彼に、寮母は彼が出した郵便物が戻ってきたと告げる。しかしそれは彼が出したものではなく、レイナから助けを求める手紙だった。実は遺伝病(易出血症)を有する血を疎む母により毒を盛られており、主治医・セトルツもそれに加担していると知る……“三.出してもいない郵便が僕の手元に戻ってきたわけは……”、
黒十字療養所で働く看護婦ナースドリー。その療養所には、いずれも自分を吸血鬼、異形の存在だと思いこんでいる人たちが暮らしていた。そして明日は復活祭……“四.ナースドリーと黒十字療養所の復活祭”、
鏡屋カジミール・フォメンコの元に、鏡を直してほしいとひとりの令嬢がやってきた。そんな彼女は鏡には映らない存在である為、その鏡は特別製。どうやらそれは彼の祖父ソーレンが作ったものらしく、持参した鏡には“イレーナ”と記されていた。銀の代わりになる材料を探す為、祖父の残した記録を探すカジミールだったが……“五.通りの瓦斯燈に青い灯が入ったとき”、
自分を避けるレイナに、賭を持ちかけるミシィカ。そこに現れたのは、死に至る病を抱えた青年アンテク・ランセットだった……“六.絶望を罠にかける”、
療養所のある蓬ヶ原で、発電所の事故が発生。それからひと月、裏手の原生林で夜明けにレイナの姿を見つけたミシィカは、彼女を追う……“七.なけや啼け、蓬ヶ杣のきりぎりす……と、教授は言う”、
原発事故で一時、第三別館に避難していたものの、すぐに戻ってきた面々は何事もなかったかのように療養所で過ごしている。そんな様子に耐えられないナースドリーは、退職願を出そうと考え……“八.石棺と復活”、
デミィトリから逃げ出したイレーナは雪で遭難してしまう。そこを老婆と暮らすカイという少年に助けられ、しばらく彼の元で暮らすことに……短編『逆十字入門』を収録。

第9回日本SF新人賞受賞作ですが、SFというよりはゴシックロマンな感じ?
吸血鬼たちの暮らす、黒十字療養所(サナトリウム)に纏わる連作短編的長編。『逆十字~』は同じ世界観で、先に書かれた番外編(ミシィカはデミィトリの愛称)。
篠田真由美さんとかをちょっと思い出したり。
雰囲気は良い感じなのですが、ラストのチェルブイリの必然性が良くつかめず;(わたしの読解力不足でしょうが…)
今後の作品にも期待したいですv

<09/3/3,4>