前回もやはりTechCrunchの記事を元に、ほとんど同じテーマで記事を書きました。ただ前回と違うのは、今回の元記事がワイヤレスネットワーク、要するに3G回線その他移動体通信での内容に絞っていることです。
具体的な内容としては、Googleというサービス提供側と、Verizon及びAT&Tという移動体通信会社が、相次いで「ワイヤレスネットワークはウェブの中立性から除外しないか」という提言を行ったこと。そして、当然のごとくTechCrunchの記事では真っ向から反対の立場をとっています。
インターネットのオープン性や中立性をワイヤレスに対し免除する理由はない–誰もが守れるルールだ TechCrunch
erizonやAT&Tのような通信企業は、ワイヤレスのインターネットを有線のインターネットに対して特別扱いしたがる。しかし、両者に違いはない。インターネットは一つだ。アクセスするネットワークやデバイスが、いろいろ異なるだけだ。どうやってアクセスしたかは問題じゃない。インターネットそのものを支配するルールは、一つであるべきだ。
当然、その一つのルールとは「中立であること」。要するに、通信事業者はサービスによって通信を制限したり、逆に優遇したりしないことというルールを、ワイヤレスでも守れと言っている訳です。
通信事業者にとっては、金を払ったものに対して多くの帯域を提供する=「サービスのタダ乗り」問題を解決できる為、これを新たなビジネスに出来るならば、企業にとってはこれほど有益な事はありません。サービス提供側にとっても、高トラフィックのサービスを安定してユーザーに提供できることは、他サービスに対する大きなアドバンテージになります。早めに回線を押さえてしまえばモバイル分野における寡占も可能・・・例えば、GoogleのYouTubeとか。
実の所、結構ゆゆしき事態だったりします。
ところで、こんなにも大きなニュースであるのに、なんで日本では大きな問題になっていないのでしょうか?
それは、大きなプレイヤーが少ない(Googleのような)のに加え、もともとモバイル通信を制限する仕組みが出来ていたためだと考えられます。例えば、元記事で提言しているこんなルールそのままに。
特定のアプリケーションに対する差別は禁ずるが、アプリケーションを特定しない差別は認める。
つまりキャリアは、SkypeやAppleのFacetimeをブロックすることはできないが、一定の規定値を超えて帯域を大食らいするようなアプリケーションは差別してよい(さらに、デバイスを特定する差別も禁じるべきだろう)。Schewickのようなルールなら、キャリアはワイヤレスネットワークの能力の制約を管理でき、しかもネットの中立性という原則は遵守できる。
ある一定以上の帯域を使っているユーザーを制限するというのは、すでに様々なプロバイダやキャリアが行っていますし、また、帯域に不安のあるキャリア・・・具体的にはソフトバンクは、すでにフェムトセルやWiFiを利用して負荷分散に躍起になっています。こういう点は、光ファイバーなどのブロードバンドのバックボーンがしっかりしており、もともと携帯電話でのパケット通信が非常に盛んだった日本の方が進んでいると言えなくもないです。
ただ、この問題がこのまま進み、GoogleとVerizonの動きを止められないままビジネスとして成立してしまった場合、流れはそのまま日本のキャリアにも持ち込まれる可能性があります。そうなったとき、ドコモは、auは、ソフトバンクはいったいどういう行動に出るでしょうか?
少しでも設備の維持費が欲しいのはどこも一緒でしょうから、この動きが小さいうちに世論に押しつぶされると良いのですが・・・