kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

アメリカ東海岸美術館巡り2013 5

2013-01-20 | 美術
銀行家アンドリュー・メロン ワシントン・ナショナル・ギャラリー、石油王ジャン・ポール・ゲティ ロサンジェルス・ゲティ・センター、化粧品ビジネスなどの実業家ノートン・サイモン パサデナ・ノートン・サイモン美術館、ミシン業者ロバート&フランシーヌ・スターリング・クラーク ウィリアムズタウン・クラーク美術館、製薬会社アルバート・クームズ・バーンズ フィラデルフィア・バーンズ財団美術館…。
アメリカの美術館は、企業家・富豪が公立美術館に資金提供、作品寄贈したコレクション、あるいは自ら美術館を設立してできたものが圧倒的に多い。そして、世界でも屈指、アメリカ最大のメトロポリタン美術館。パリで開かれたアメリカ独立を祝う会合で政治家ジョン・ジェイの「国民の美術館をつくろう」との呼びかけにより、資金と作品が集まった。呼びかけに応じ、提供したのは金融王ジョン・ビアポンド・モルガン、石油王ジョン・ロックフェラー、鉄鋼王ジョン・デイビスなど。現代のウォール街に対しオキュパイ運動した99%から見れば1%、後の富豪たちである。これらの富豪の作品寄贈、資金提供によりメトロポリタンは設立され、現在でも作品寄贈は続いているという。また、入館料は基本的にはdonation(寄付)。といいながら、ちゃんとadmission25ドルと明記されていて、それを支払わないと、入館許可の証であるバッジをもらえないので、結局みんな25ドル支払っているのだが。
広さについては言うまでもない。今回は午後半日ということもあり、最初から全館回るつもりはなかった。それでも、中世美術、ヨーロッパ絵画・彫刻、近現代美術までで、アメリカ美術は行かなかったのに、夕方まであまり休まずへとへとに。エジプトやアジア、イスラム美術は全然行っていない。また、館内中央西側を占めるロバート・レーマン・コレクションやいくつかの企画展もあり(その日は、マチス展のほか、18世紀の西洋家具展、戦前の著名なアメリカ人画家George Bellows(読み方がよく分からない。ジョージ・ベロウズか?)の回顧展など)、とてもでないが、一日で回りきれる質・量ではない。しかし、今回ワシントンD.C.はフィラデルフィアの大美術館を回って再認識したのは、アメリカは近現代美術は充実しているが、中世美術は弱いということである。これはもちろん、アメリカという国の新しさ故であるし、ピューリタンの国として、キリスト教芸術たるカトリックの基盤がないアメリカでは、ある意味近代以前のキリスト教美術をすべて捨象して新たな美術世界を求めることを可能にした。それが近代美術の充実、それも印象派とその流れのなかでの作品の蒐集、そして、第2次世界大戦で国土が傷つかなかったアメリカが戦後美術をけん引することを運命づけられたのだ。メトロポリタンは、弱い中世絵画はさておいて、印象派のほか金に飽かせて集めまくった!エジプト美術など、世界3大美術館の一角に数えられているにしては、ルーブルやエルミタージュがそのコレクションはにおいてキリスト教美術が西洋美術の基本というわりには歪である。
ヨーロッパ諸国が第2次大戦後、国土復興に時間をとられている間、アメリカの富豪はそれこそ、近代絵画を浚えまくった。その典型がルノワールを集めたバーンズであり、マチスを集めたコーン姉妹(ボルチモア美術館)などである。そして、その集大成がメトロポリタンであるとすれば、今、よき状態でルノワールなどを満喫することができるのは、そのような「浚えた」故であろう。文化保護主義の観点からは、そのような所業が正当かどうかはわからない。ただ、資本主義アメリカのおかげで、貴重な美術作品が一堂に集められた眼福は否定できない。覇権主義と美術作品の維持。キリスト教美術に対する一方の核であるイスラム世界では、偶像崇拝禁止厳格化の下に過去の美術作品を破壊する勢力もある。そして、資本主義ゆえにここまで拡大した貧富の格差に目を向けないで美術擁護か?
大きなメトロポリタンで、身に余る大きな課題を少しだけ考えた。(ジャクソン・ポロック「秋のソナタ」)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アメリカ東海岸美術館巡り201... | トップ | アメリカ東海岸美術館巡り201... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

美術」カテゴリの最新記事