kenroのミニコミ

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アメリカ東海岸美術館巡り2013 2

2013-01-10 | 美術
ワシントンD.C.と言えばスミソニアンである。スミソニアンが擁する博物館・美術館などは19あるが、ナショナル・ギャラリーは前回記述の通りアンドリュー・メロンが私的に蒐集した作品がそもそもの始まりで厳密にはスミソニアンには含まれない。スミソニアンでやはり有名なのは、広島への原爆投下に肯定的解説を付したエノラ・ゲイを展示する国立航空宇宙博物館であろう。エノラ・ゲイはともかく飛行機や宇宙船など見てもよく分からないので、行かなかったが、ほかにも自然史博物館とか国立アメリカ歴史博物館とか純粋に美術館と呼べるのは少ないので結局行ったのは現代美術を展示するハーシュホーン美術館だけである。
ちょうど艾未未(アイ・ウェイウェイ)展をしていた。今でこそ北京オリンピックの「鳥の巣」を制作したことで有名になっているが、日本で艾未未展が大きな国立美術館で開催されることなど考えがたい。もちろん筆者とて艾未未の仕事をよく知っていたわけではなく、自身が被写体になることも含めて、一風変わった写真や、木材や多分スチールなどを使用した大きなインスタレーションなどを見たことがあるだけである。艾未未自身は、今回知ったが、その言動から中国共産党からにらまれ拘禁されたりしてもいるらしいが、結局発言しないことにより(撤回や反省ではなさそう)、劉暁波氏のようではなく完全な拘留状態は脱したようである。いずれにしても、中国という一党独裁の国で、アーティストであれ発言するということ、弾圧されないように発言するということの重みは、艾未未展を開催することのできない日本のアート状況とアーティストの政治的発言(の少なさ)と比べると、その覚悟において差があり、また、艾未未を紹介できるアメリカの言論状況からも後背の感を抱かざるを得ない。(アメリカによる中国の反民主主義的状況に対する一種のけん制、プロパガンダと勘ぐることもできるがここでは触れない)
スミソニアンとは違うプライベートの美術館を回ったが、これがよかった。コーコランギャラリーは、規模は小さいが館の美術館特有の峻厳さに満ちている。ここではルノアールのようなやさしいタッチか、ゲインズバラのような威厳が似合うのかもしれない。私人の館を美術館に改装し、ついには居住者が出て行って、美術館専業になったフィリップス・コレクションはすばらしい。近代以前の作品以外に近代の抽象的作品 ― マーク・ロスコやパウル・クレーの部屋があるのは、僥倖 ― もしっかりと位置づけされていて、個人の館であっても美術史の一渡りを感じされる展示はセンスが抜きん出ている。ナショナル・ギャラリーのような公立の大きな美術館ももちろんいいが、小さな私立美術館、それも私邸をそのまま使用した場合は、その管理の難しさとともに、展示のセンスが問われる。審美眼とはこのような場でこそ養われるのではないか。(フィリップス・コレクション外観)
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