kenroのミニコミ

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アメリカ西海岸美術紀行1 サンフランシスコ①

2010-01-14 | 美術
アメリカの美術館はヨーロッパのそれと違って大富豪が名画を蒐集したあげく美術館を創設、というパターンが多い。NYの現在では「国立」的私立であるメトロポリタンでさえもともとの出自はそうである。今回西海岸訪問の目的であったゲティ・センターももちろんそうで、ゲティについては後日書くことにしてまずサンフラシスコ。
基本的に近代美術の蒐集は目を見張るものがあるが、それ以前、バロックやルネサンス、中世美術となるとメトロポリタンを除いて弱いのがアメリカの美術館の一般的傾向であると思う(ボストンやフィラデルフィア、シカゴなど米の有名美術館に行っていない浅はかな思い込みであるが)。であるからと言って、アメリカの美術館が物足りないかというとそんなことはない。サンフラシスコ近代美術館(SF MOMA)はNYのMoMAのサンフラシスコ版で、NYよりかなり規模は小さいもののサム・フランシスやジャクソン・ポロック、マーク・ロスコなど20世紀戦後美術シーンを沸かせたアートシーンが百花繚乱である。そして、フランク・ステラ、ドナルド・ジャッドなどミニマル・アートの大作も楽しめるのが、概してアメリカの近代美術館の醍醐味だ。SF MOMA(なぜか、本家のMoMAはoを小文字で書くのに対し、SFではすべて大文字である)もその例に漏れず、中規模近代・現代美術作品がたくさんあるのがうれしいところ。サム・フランシスの流れるドローイングに身を任せ、ポロックのドリッピングにスーラなどとはもちろん違う点描を、ロスコの突きつめた静謐さ。抽象表現主義はこちらに「あなたはどう考えるのか?」をいろんな意味で突きつける。それは弾劾でもないし、一部知識層の高邁なご宣託でもない。考えることの共有。ロスコに囲まれた至福の空間はすぐにでも手に入る。
一転して、リージョン・オブ・オーナー美術館(Legion of Honor Museum)は、かなりブルジョア趣味というか、「いいところ」である。その証ではないが、ちょうど開催されていた特別展が「Cartier」展。残念ながら、ブランドのカルチェにはとんと縁がないが、展示されている時計、首飾り、ティアラなどため息の出る美しさ。宝石の光も、細工の細微さもあるが、総合芸術としての細密美術の粋をあんな小さな世界で見せてくれる。職人の技術とそれを要した、追い求めたハイクラスのマッチングがいま、輝きをもって甦る。
(ティエポロ「フローラの帝国」 リージョン・オブ・オーナー美術館)
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